インフィニット・ストラトス 最強と天才の幼馴染 (更新終了) 作:灰崎 快人
あれは確かに私だった、動きが似ているとかそういったものではない。まるで私が二人いるような感覚だった。
VTシステム、そのシステムの膨大な負荷により世界各国で開発が中止されたものだ。だが当時のシステムにはあそこまでの力はなかったはずだ、もしかしたらどこかの国が研究を重ねて築き上げたのかも知れないな。そう言えば束がそんなことを前言っていたような……あれはこのことだったのか!まさかドイツがこんなことを仕出かすとは、第三世代型の開発に焦ったか?
そんなことを考えていると私の携帯端末から束の名前が浮かび上がる、あいつも何かしら感知したようだな。
「私だ」
『ちーちゃん!くろちーは!?』
「今戦っている、私のデータをコピーしたシステムとな。やはりあれはドイツで開発されたものなのか?」
『ご名答、あれはドイツの機密研究所で開発されたものだよ。束さんはそれを発見したのは良かったんだけど、どのISに組み込まれているかまでは調べられなかったの。くろちーは何処かで確信を持ったみたいで、その研究所の破壊をお願いされたよ』
「それは既に終わっているのか?」
『勿論!綺麗さっぱりに消し飛ばしてあげたよ。だからあとはあのシステムを破壊するだけだよ!』
「だがあれを倒せるのか?私が言うのもなんだが……千春が倒せる未来が見えない。あれは間違いなく全盛期のころの私だ、あれを倒すのは至難の技だと思う」
『信用しなくてどうするの!それにあの機体には私が創ったシステムが入ってるんだよ、それが発動すればあんなのへっちゃら!』
「だがな束……黒式のSEは残り50未満なのだぞ?」
『…………マジ?』
「大マジだ、だから問題なのだ!」
残りSEをすべて使用してもあれを倒せるとは思えない、だからこそ彼には生存を優先してもらいたいのだ。IDはISとは違いただの強化アーマーという立場に近い、装甲が削られてしまえば本体である装着者が丸見えになる。それにあれには防御機能はない、完全に削られてしまえば終わりだ。だが端末が無事なのであれば装備だけは取り出せる、最悪の場合は……生身での戦闘になる。最悪の場合は私が出る、こんなところであいつを死なせるわけには行かないからな!
さて本当にどうしたものか。二人に追い込まれてボコボコにされかけ、織斑と一緒に壁に叩きつけられたこともあって黒式と俺は満身創痍の状態だ。だがそれは相手も同じだ、元であるレーゲンもかなり満身創痍に近い状態だ。おそらく一撃でも与えることができれば形状を安定させることができなくなると思う、だが当てられるかは別だ。それにあの中にはラウラがいる、下手に斬りつけてしまえば彼女にも被害が出てしまう。
「これは厳しいな……」
最初からわかってはいたが、まあこうなってしまった以上戦うしかないな。この状態で零落黒月を使おうものなら、黒式は一分と持たずに消えてしまう。となればこの《雪片》は通常状態で使用するしかない、あとはあのシステムに対抗するものをいつ発動させるかだ。《対VTシステム・ノルン》、黒式を束からもらったときに判明したものだ。これを使用することんがあるとは思っていなかったが、まさかこんな所で発動させることになるとは思わなかった。俺自身もこのシステムを一度も稼動させていない。もしこのシステムが暴走してしまったらと考えてしまう、それにどういった状態になるのかすらわからない。なぜなら稼動させていないから!
「とりあえず軽―――できるわけねえよな!」
少し力を抜こうとしたところを隙と見たのか、それが横払いに一閃してきた。勿論力は中途半端に抜けている状態であった俺は、その斬撃を防ぐことに成功はしたもののはるか後方へと吹き飛ばされてしまった。隙を見せてはいけないな……何時死んでもおかしくない死合を俺はしているのだから。
「悪かったな、じゃあここから先は遠慮なしだ。ちゃんとやり合うか!」
俺は雪片を片手に突撃していく。まずは離れてしまった間合い詰めだ、俺とあいつの雪片は大きさに差がある。俺よりも相手のほうがリーチが長い分こちらが不利だ、だが距離さえ詰めてしまえば俺の刃は届き相手の長物は不利になる。剣術はとにかく間合いが大切だ、間合いひとつで戦況が変わってしまうこともある。
雪片と雪片が激しくぶつかり合い火花を散らす、力はこちらのほうが上……と言いたいところだが相手のほうが上だった。鍔迫り合いになりお互いに引けない状態になる、だが力押しでこちらが少しずつ後方へと押されていく。全盛期もそうだったがここまで力の差を再現することになるとは思わなかった、これで距離を取ろうとすれば距離詰めの一閃、横に逃げようものなら巻き技で装備を飛ばされる。いや……これゲームで言う負けイベントなのでは?
「ラウラ、ちゃんと助けてやるからな!」
「…………」
中にいるであろうラウラに言葉をかけるが、帰ってくるのは鉄が擦れる音のみだった。なかのラウラは一体どうなってしまっているのだろうか?これの動力、コアとして縛られているのだろうか?そんなの可哀想でならない、少しでも早く助け出してやらないと命にかかわるかもしれない。こんなクソシステムなんかに弟子を危険にさらしてしまったのは大人の責任だ、これだけは完全に殲滅する!とは言うものの……
「ぬおおお!」
ここから進展がない状態だ。何か切っ掛けがあればいいのだが……最悪の場合黒月を発動するのも視野に入れなければ、この勝負は動かないだろう。ライフルを最大出力で放とうとも考えたが、装甲を吹き飛ばすのに彼女も巻き込んでしまわないかと心配になる。下手に高火力で吹き飛ばせないのが悩みどころだ。剣術と低火力の装備で相手を追い詰められるだろうか?ワイヤーは切られる、カノンと焔摩は撃ったとしても銃弾が切られる。影縫はリーチが短く投擲したとしても弾き落とされる。盾であるヴォイド……一度だけだが囮に使えるかもしれない、問題は俺の展開スピードが追いつけるかどうか。いや……やってみる価値はあるな。
俺は無理やり相手を押しのけて距離を取る、その瞬間に盾を展開し俺と偽者の間に投げ飛ばす。もちろん相手は千冬少し押しのけた程度では動じるものではない、すぐさま体制を立て直しこちらへと突っ込んでくる。こいつの目の前には盾が投げ飛ばされている、払いのけるか叩き切るかで判断が分かれる。払い飛ばされた場合は構えた雪片で相手のものを弾き飛ばす。切られた場合は……弾き飛ばす。うんノープランだな!
(さあどうする?)
後退しながらも相手の様子を伺う、そして相手が判断したのはそのどちらでもなかった。
突然後ろから衝撃が伝わる、振り返ってみるとそこには先ほどまで目の前にいたあいつの姿があった。一瞬で背後に回るほどの速度までコピーされていたとは……いや俺の判断が悪かっただけだな。俺は斬撃の痛みとその衝撃で壁に叩きつけられる、黒式の装甲は光へと戻り消えていった。これで完全に生身の状態となってしまった。辺りには装備していたものが散らばり俺は丸腰となった……これは完全に死んだな。
そう思い瞳を閉じて覚悟を決めようとしていたとき、目の前に一振りの刀が転がってきた。視線を上に上げると千冬の形をしたそれが構えたままこちらを見ていた、どうやら止めをさす気はないらしい。再び刀を取り私と戦えということだろう。まったく……手を抜くなってか、この野郎!
「お前がその気なら……死ぬまで付き合ってやるよ!」
俺は一振りの刀を掴み取り再び対峙した、こんなことされるとは思わなかった。あの中にはラウラもいるが過去の千冬の感情もコピーしている可能性がある、だからこっちにこれを投げてきたんだ。決して手加減させないために逃がさないために。それならばこちらも答えよう。そしてラウラを必ず助けだす。
「いくぞ最強……俺の全力を持ってお前を打ち砕く!」
ここから先、ストックがないので停止します。