インフィニット・ストラトス 最強と天才の幼馴染 (更新終了) 作:灰崎 快人
「それじゃあ試験運用もかねて飛んでみて、その後くろちーとの模擬戦ね」
「わかりました」
音を立てて連結されたケーブル類が外れていく。それから篠ノ之が瞳を閉じて意識を集中させたと思ったら、急加速で飛翔した。
急加速による余波によって砂が舞い上がる。ここまでの衝撃波を生み出すとはな……出力も制御できんのか?
「どうどう?箒ちゃんが思った以上に動くでしょ?」
「えぇ、まぁ……」
束は何でもありだな、ISを装着しているわけでもないのにオープン・チャンネルが可能なのだから。俺も後で飛ばないとな
「じゃあ刀使ってみてよー。右は『雨月』左は『空裂』ね~武器の特性データを送るよん」
武器のデータを受け取った篠ノ之は二本の刀を同時に抜刀した。まだ少し時間がかかりそうだな、それなら俺のデータもさっさと取ってしまおう。BT兵器を扱うのは今回が初めてだからな、セシリアでさえ扱いに問題が出来ている状態それをどうしたものか。今のところ二つのシステムをこのパッケージには搭載している。
一つはBT兵器を自分の意思で全て操るシステム、もう一つは全てAIによる制御による完全制御。自分の意思でBTを動かせた方が本来はいいのだが俺自身がそこまでの技量に達することが出来なかった場合、このAIに頼ることになる。まずは自分の意思で扱えるようにコントロールしてみる事にしよう。
大きな空間能力とそれぞれのビットをコントロールする集中力、それに尚且つ本体である俺自身が棒立ちにならないように動き回らなくてはいけない。ISはIDと違って実際に身体を動かさない限り動くことは無い。つまり身体を動かしながら相手を見据えビットの遠隔操作を行わなくてはいけない。
いきなり難しいパッケージを造ってしまったものだな。
「セシリアちょっといいか?」
「なんでしょう黒神さん」
「ブルー・ティアーズをどう扱っているんだ?」
「私の場合常にビットの制御を意識してしまっているので、私自身の行動が疎かになってしまうことがありますわね。正直もう少しうまく扱えれたらと思っていますわ」
「なるほど意識の集中か……これは長期戦になるな」
つまりシングルタスクでは絶対に扱えない兵装と言うことだ、マルチタスクが常に必要となってくる。単一の考え方ではなく並列した考え方をしなくては成らない、これには得意不得意があるため人によってはセシリアよりもBT兵器の扱いに疎い人達もいるだろう。それが俺なんだけどな
「次は空裂ね~こっちは対集団仕様の武器だよ。斬激にあわせて帯状の攻撃エネルギーをぶつけるんだよ。振った範囲に自動的に展開するから超便利~それじゃあこれ打ち落としてね!」
そう言うなり束はいきなり二十連装ミサイルポッドを
「―――やれる!この紅椿なら!」
確かに全てのミサイルは篠ノ之によって振るわれた一太刀で打ち落とした。
爆煙が晴れていく中、そのISは威風堂々たる立ち姿をしていた。その姿はどこか懐かしさもあった。その場にいた全員がそのスペックに驚愕し、魅了されていた。そんな光景を俺と千冬は眺めていたが
その視線は厳しく、まるで敵機を見ているかのようだったと。山田先生は後に語った。
「じゃあくろちー行ってみようか」
「あぁ」
軽くだが性能は確かに見た、だがそれ以上のポテンシャルを本来なら持っているのだ。これでもリミッターを掛けているというのだから恐ろしい、ビットにはあるシステムと埋め込んでおいたから大丈夫だろう。一切試運転していないが
そうして俺は上空で待っている篠ノ之の元へと飛翔していった
「それじゃあどちらかのSEが200切ったら終わりにしよー」
「「了解」」
「それじゃあスタート!」
束の言葉で模擬戦スタートの合図がなされた。紅椿のSEは600なのに対しこちらは黒式の300+150の450となっている。つまりこちらは半分も削られてしまえは戦闘不能、あちらは1/3まで削られてしまえば戦闘不能になる。
SEの数値、スペック共にこちらが不利ではあるものの最終的にはそれを扱う操縦者によって決まっていく。
「行きます!」
そう言って二つの刀を手に取り接近してくる、黒式から掲示される紅椿のデータを見ながら回避行動に専念する。
紅椿。世界初の第四世代型IS。スペックは今まで公開されているISをはるかに凌駕している、近接戦闘であるが万能型に調整が施されている。先の束の説明の通り、二本の刀を振るいこちらに余裕を持たせまいとしている。
全ての機能を使わなかったとしても一つ一つの装備が強大すぎる、軽く装甲が掠め取られていると共にSEもごっそりと持っていかれていた。
「おいおい……」
「この程度ですか?」
「おー良く吠えるな」
大きな力を持ったから心に余裕が出来たか、それともはなっから俺の存在が気に入らなかったか?ちっどちらにしろ面倒なガキだ、軽くお灸をすえるとするか……出来るのだろうか?この機体で
「じゃあ本気で行くぞ!」
俺は6機のBT兵器を展開しオールレンジ攻撃を仕掛ける、セシリアの改良型とはいえ結局は実験兵器。完璧に扱いこなすことなど不可能だろう、だがシステムがうまく動いていることはしっかり確認できる。6機のBTは紅椿を囲むようにレーザーを放ち徹底的に篠ノ之を追い込んでいく
「この程度!」
「よしっいけるな」
少しずつそれでも確実に紅椿のSEを削っていく、少しばかりあの機体スペックを生かした回避行動をしてくる為狙いが外れてしまうことがしばしばだ。BT兵器は良く見ているだろう、まさかその程度の認識しかないのか?それとも全てスペックで勝っている分慢心したか?
「………」
「あの最新のISを箒は使ってるのに、圧倒的だ」
「どうやってあそこまでBT兵器を扱っているのでしょう」
「流石くろちーだね」
下の方では感心している生徒とその大人たちでいっぱいだった。試験的なBT兵器をほぼ自由に扱える技術と、先ほどまで圧倒的な性能を見せていた紅椿が一方的に押されている。そんな現場を今皆は見ているのだから
「終わりだ!」
6機のBT兵器と大型ライフルによるフル・バースト、全ての兵装が一方に向くのが欠点だがその分火力は最高潮だ。既に紅椿には危険メッセージが表示されているだろう、さぁさっさと避けないと200以下まで行くぞ。
「たっ大変です!織斑先生!」
引き金を引こうとしたその瞬間、下の方で山田先生が焦っているのが見て取れた。いつも焦っているが今回ばかりはどうも様子がおかしい、無人機いやVTシステムが発生した時よりも異常性を感じた。
「どうした」
「これを!」
千冬に端末を渡している、渡されたものを見て彼女の表情が曇っていく。下手なことにはならないでくれよ?
そんな事を思っていた時
「隙あり!」
状況を一切理解していない篠ノ之の一撃に反応できなかった、高機動型と言っても扱う本人の反応速度が疎かになってしまえばそれも意味を成さなくなる。
紅椿の放った一撃に俺は対応できず直撃を喰らい、海に叩きつけられる。急所の防御は出来た、だがそれ以外の至る箇所にダメージが入っている。自身の身体から赤い液体が少しずつ出ているのを実感しながら、ゆっくりと海をあがっていく。
「くっ……」
完全に油断したところに必殺の一撃、確かに本気でやると言ったのは俺だ。模擬戦でもあり真剣勝負でもあったこの戦いは完全に俺の負けだ、皮膚に塩水が入り込んでいく。これはかなりきついって……
「千春さん大丈夫ですか!?」
「傷口に塩水が入った、染みて激痛だぜ。それで何があった?」
様子が一変した千冬たちを見る、完全にただ事ではない。彼女のあの表情は過去に織斑が誘拐されたときくらいだろう。
異変を感じた篠ノ之もゆっくりと地面に降りてくる、その表情はどこか達成感があった。
「全員注目!」
山田先生が走り去った後、千冬は手を強く叩いて生徒全員を集めさせる
「現時刻よりIS学園教員は特殊任務行動へと移る。今日のテスト稼動は中止だ、各班ISを片付けて旅館へもどれ。連絡があるまでは各自室にて待機すること。以上!」
いきなりの不測事態に生徒が不安げな声を出す、こう成ってしまえば不安の声を上げるのは当然だ
「とっとと戻れ!以後、許可無く室外に出たものは我々で身柄を拘束する!いいな!」
「「「はい!!!」」」
全員が慌てて動き始める。接続していたテスト装備を全て解除し、ISの起動を強制終了させてカートに乗せる。
「専用機持ちは全員集合しろ!織斑、オルコット、凰、デュノア、ボーデヴィッヒ、更識、黒神!―――それと篠ノ之も来い!」
「はい!」
先の戦いで実力を確かに感じたのか、気合の入った返事をした。これで篠ノ之も専用機持ちになったのか……本当に?
負けてしまった俺にはどうしようもないか