インフィニット・ストラトス 最強と天才の幼馴染 (更新終了) 作:灰崎 快人
時刻は十一時半を過ぎた。七月の日差しは相変わらず晴れ渡り、容赦なく降り注いでいた。俺と箒はお互いの専用機を展開して指定の場まで向かっていた、その少し前ではセシリアによる超音速飛行のサポートが行われている状態だ。一撃必殺の武器を持つ白式と第四世代の紅椿、この二つがあれば確実に勝てる……勝てるのかな、正直言って不安だ。それに千春から言われたあの言葉
「イレギュラーな存在は無視しろ」
これはたぶん俺の甘さを捨てろって事なのかもしれない、あいつは俺に「ある程度認めている」と言っていたが認められていないのはその甘さなのかもしれない。例外な事があったとしても敵を逃さずに、自身が落とされないようにする。最低限度の忠告だったのか?それとも紅椿を過信しすぎるなって事なのか?
どちらにしろ油断するなって事だろ、成長したところしっかり見せてやら無いとな!
『織斑、篠ノ之聞こえるか?」
ISのオープン・チャットから千冬姉の声が聞こえる。声を出さずに俺と箒はうなずいた。
『今回の作戦は
「了解!」
「織斑先生、私は状況に応じてのサポートをすればよろしいですか?」
『そうだ、だが無理はするな。お前は専用機を使い始めてからの実戦経験は皆無だ。突然問題が出るとも限らない』
「わかりました、出来るだけ支援します」
彼女の言葉は何処か落ち着いているが、何処か弾んでいて浮ついているような気がした。
『織斑』
「はい!」
突然千冬姉からプライベートのほうで通信が入ってくる、急なことだから声が裏返ったじゃないか
『篠ノ之はどうも浮かれている、あの状況で何か面倒なことを起こす可能性がある。そのときはお前がサポートしてやれ』
「わかりました、意識しておきます」
『頼んだぞ、黒神から言われたことを忘れるなよ』
そうしてプライベートからオープンに変わったとき、作戦開始の命が出た。紅椿のサポートを終えたセシリアは寮へと戻り緊急時の対応を任されることになった。彼女が離れたとき箒のISは瞬く間に加速して行った、そしてハイパーセンサーの補助機能により標的を見据えることに成功した。
「あれだ一夏!一気に加速するぞ!」
「おう!」
「標的に接触するのは十秒後だ!しっかり集中しろ!」
わかっている、だがなんだこの違和感は嫌な予感がするぜ。
紅椿がスラスターと展開装甲の出力を上げる、心の中でカウントをしながらしっかりと着実に雪片を当てるイメージを作り出す。
そして十秒後、俺は零落白夜を起動した。それと同時に瞬間加速を使いさらに間合いを詰める、この距離なら外さない!そう思っていた次の瞬間だった。
福音は最高速度を維持したまま、こちらに反転し後退の姿勢を取った。センサーが反応したのだろう。だがこれによって一度体制を立て直すくらいなら、このまま一撃を押し込んだほうが確実に良い。この間合いで引くには遅すぎる、相手の反撃が来る前にSEを全て削りきればいいだけだ!
「敵機確認。追撃モードへ移行。《
突然オープン・チャットから機械音声が流れてくる。無機質の声のはずなのに俺はその音声からハッキリと『敵意』を感じ取ることが出来た。嫌な予感は当たってしまったか、予想は数秒も掛からずに現実となる。
福音が身体を一回転させ、零落白夜によって生み出された刃を超精密コンピュータが叩き出した僅か数ミリの精度で回避した。千春でもここまで精密な回避は出来ないだろう、最低限の動きで攻撃を回避するのに、
「あの翼が急加速を生み出しているのか!」
紅椿のようにウイングが加速装置になっている
「箒!援護頼む!」
「任せろ!」
時間をかければかけるほどこちらが圧倒的に不利だ、箒に背中を預けて再度福音へと斬りかかる。しかし相手は紙一重の回避を何度も繰り返して行く、それはまるで踊っているようだった。おちょくられている様な気もするが気のせいだろう。
見事に相手の動きに翻弄され、零落白夜の残りエネルギーが迫ってきていることもあって俺は内心焦っていた。その隙を見逃すほど相手は生易しくない。
銀色装甲の一部、それが翼を広げるかのように開く。そして見えてきたのは―――
「砲口!」
一斉に開いた砲口からは光の弾丸が発射されてくる。その弾丸は、高密度に圧縮されているエネルギーで、羽のような形をしている。それが次々とアーマーに突き刺さったかと思うと、次の瞬間には圧縮されたエネルギーが暴発するかのように一気に爆ぜた。
爆発する弾丸。ゲームやアニメで例えるとするのであれば炸裂弾や榴弾、起源弾とかだろう。それらだ無数にこちら目がけて放たれくる、恐ろしいことこの上ない。救いなのはそれほど高くない精度、それを連射性能で補っている。わずかでも触れて起爆してしまえば連鎖反応は拒否できないだろう。
「箒、左右から攻めるぞ!お前は左から頼む!」
「了解した!」
複雑な回避行動をしながらも、連射の手を止めない福音へと左右からの二面攻撃を仕掛ける。だが軍用ISの出来のよさは俺たちの腕ではどうにもならなかった、俺たちの攻撃はかすりもしない。福音は回避に特化した動きで、それ以上の反撃までしてくる。特殊型のウイングスラスターは、奇抜な外見とは裏腹に恐ろしいレベルの実用性を秘めている恐ろしいものだった。
「一夏!私が動きを止める、だからお前は残っているもので斬れ!」
「わかった!」
そう言うなり、箒は二刀流スタイルで突撃と斬撃を交互に繰り返す。腕部展開装甲が開き、そこから発生したエネルギー刃が攻撃に合わせて自動的に射出して福音を狙って行く。
福音も化け物だが、束さんが造ったこの機体も十分化け物だな。
紅椿の機動力と展開装甲による自由自在の方向転換、急加速を使って福音との間合いを詰めて行く。この猛攻にはさすがの福音も防御を使い始めた、だが箒それはいくらなんでも無謀だ!
「La……♪」
そう甲高いマシンボイスが響いたその刹那、ウイングスラスターはその砲門全てを開き箒に向けてきた。箒は瞬間加速によって福音と距離を詰めている途中だった、彼女も間に合わないと思ったんだろう必死に防御体制に入っている。
光弾は無慈悲にも箒にと放たれる、紅椿の装甲が抉られるように削られて行く。だが隙は出来た。標的が箒に集中して定められているのであれば、背後から斬りつけてしまえば良い!
瞬間加速を使っての一撃、これが当たらなければ撤退せざるおえない。失敗するわけには行かない!
「当たれ!」
そうして福音の装甲に刃が届いたときだった、雪片から光が消えて展開装甲が閉じてしまった。エネルギー切れだった。最大にして唯一のチャンスにて頼りであった零落白夜は消えてしまった、作戦の要もなくしてしまった。
「しまった!」
「こんなときに……」
白式と紅椿から光の粒子が出始めている、ISを展開しているのがやっとな状態であると言うことだろう。ここがIS学園であったのなら既に試合終了だろう、だがこれは実戦。福音は俺たちから一端距離をとり、再び一斉射撃モードへと移行していた。
このままでは二人ともダウン。仮に絶対防御分のエネルギーを確保していたとしても、あれを喰らってしまっては一溜まりもない。
「箒!」
気がつけば俺は箒の前に飛び出し、彼女を庇っていた。こうすれば被弾するのは一人で済む
「ぐああああっ!!!」
光弾が一斉に降り注ぐ。エネルギーシールドでは相殺できないほどの衝撃が何十発と続き、みしみしと骨が悲鳴を上げている。アーマーは爆発で破壊され爆破の熱波で肌が焼けて行く。
気が狂いそうなほどの激痛が無限に続く中、一筋のレーザーが福音に降り注いだ。あぁこれはあいつだな。
「織斑!篠ノ之!」
黒い機体に身を包んだ千春の姿を最後に、俺は気を失ってしまった。