インフィニット・ストラトス 最強と天才の幼馴染 (更新終了) 作:灰崎 快人
剥離剤によって操縦者の安全を確保すること、それには成功したものの……お互いの機体はボロボロ、稼動しているのがやっとの状況だ。
ナターシャを救出しISもおとなしくなってくれると思ったが、やはりと言うべきか物事はそんなに上手くいくものではない。
「ISが、自分の意思で動いてる!?」
操縦者は居ないはずなのに、どうやって動いているんだ。本来操縦者が居るであろう場所は装甲が変形し塞がっている、ウイングからはエネルギーのようなものが飛び出ていて、それがウイングの機能になっているのか。いやそもそも先ほどまでの福音ではないこれではまるで―――
「
二次移行は本来稼働時間と戦闘経験が蓄積されることにより搭乗者とコアの同調が高まることで単一仕様能力が発現するのだが、この福音は搭乗者とコアが離れている。まず移行することは無いはずなのだ。
だが今目の前に居る福音は先ほどまでの機体ではない、完全に装甲は復活している。戦闘で追い詰められたことで防衛機能でも働いたか!?それだとしても機体自らが第二形態移行するなど不可能、となれば無理やり移行したか……恐ろしいものだな
「Laaaaaaaa」
確実な殺意だ、無機質音なのにも関わらずそう感じた。瞬時にブースターを起動しあいつから離れる、今回ばかりは本当にまずいことになった!あいつらでも対処しきれるか?いや……対処できるようにしないと駄目か。
「とにかくナターシャを安全なところまで非難させないと!」
気を失ってしまっている彼女を岩場などに置かなければ、あのISと対峙することが出来ない。狂気的なISを対処できるのはマジで代表者やよほどの訓練をつんだ操縦者しか居ないだろう、だがこの状況でそんな人材が居るわけも無い。最悪だ。
「―――けて」
か細い声が聞こえてきた。声の主は福音の操縦者であったナターシャ・ファイルスだった、機体に振り回されていたが何とか身体は大丈夫そうだな。
「大丈夫かよ?」
「あの子は……」
「システムがエラーを起こしているみたいでな、暴走状態だ」
「そんなっ」
「お前はここで救助を待ってろよ、絶対に動くなよ!」
千冬たちにも発見しやすいように、発信機を渡しておく。俺は福音の対処だ!
旅館の一室。壁にかけられている時計は三時前を指している。
ベットで横たわる織斑一夏はあれから一切目を覚まさない、その傍らでは篠ノ之箒が酷くうなだれていた。
(私のせいだ)
織斑をここまで追い込んでしまったのは自分のせいだと攻めるように、ぎゅうっとスカートを握り締めていた。
『作戦は失敗。状況は黒神による維持。状況に変化があれば招集する、それまでは各自現状待機だ!』
黒神とすれ違い、どうにか旅館まで戻ってこれた彼女を待っていたのはその言葉だった。負傷した織斑の手当てを指示した千冬は、すぐさま作戦室へと向かう。
(どうして私は……いつも)
いつも力を手に入れるとそれに流されるように振るってしまう、その得た力を使いたくてたまらないのだ。どうしても抑えられなかった、その結果がこれだ。
自身のわがままでISを欲し、それを使った結果がこれなのだ。彼女の心の中ではISに乗りたくないとさえ思えてくるような出来事が目の前で起きてしまったのだ、わがままであるが好奇心に負け忠告を無視してしまったのは自分の責任だ。
ひとつの決心をわがままにも自身で片付けようとしているときに、突然ドアが乱暴に開かれる。音に驚いた箒だったが、その方向に視線を向ける気力すら失われていた。
「わかりやすいわね」
遠慮なく部屋に入って来た彼女は、うなだれた箒の隣までやってくる。その声の主は鈴だった。
「あのさぁ」
話しかける鈴に対し、箒は一切答えることなくうなだれている状況だ。答えないのではなく答えられないのだ。
ISには操縦者を保護するための絶対防御がある、しかしそれにも限界がある。織斑一夏はその致命領域対応によって昏睡状態になっている。
この状況はISに存在する全エネルギーを防御に回すことで操縦者の命を守ることが出来る、しかしこの状況が起きるということはISの補助機能を深く受けてしまった状態でもあるのだ。それが故に、ISのエネルギーが完全に回復するまで、操縦者は目を覚まさない状態になってしまうのだ。
「で?落ち込んでいますってポーズ?ふざけてるんじゃないわよ!」
烈火の如く怒りをあらわにする鈴は、うなだれたままの箒の胸倉を掴んで無理やり立ち上がらせる。
「やるべきことがあるでしょうが!今戦わなくてどうするのよ!黒神さんだって限界があるのよ!」
「私は……もうISは、使わない」
「ッ―――!甘えてんじゃないわよ!」
次の瞬間、彼女は箒の頬を打つ。支えを失った箒はその場に倒れる。そんな箒を再度鈴が締め上げるように振り向かせた。
「専用機持ちってのはね!そんなワガママが許される立場じゃないのよ!アンタは何のために専用機を造ってもらったの!?」
鈴の瞳が箒と瞳を直視する、そこにあるのは真っ直ぐな闘志と怒りに似た赤い感情だった。
「誰かを守りたいとかじゃなかったの!?ただ力がほしかっただけなの!?違うでしょ!」
その言葉が箒の心に届いたのか、箒の表情には闘志が燃え上がっているように伺える。
「ではどうしろと言うんだ!頼みの綱である一夏はこの状態だ!私たちのISで出来る範囲は限られている!」
自分の意志で立ち上がった箒を見て、鈴はふぅとため息をついた。
「行くわよ、黒神さんが何とか足止めしてくれてるんだから!」
「わかった」
気がつくと俺は砂浜にうつ伏せになっていた、確か俺は箒を庇って……
「気絶した」
突然背後から少女の声が聞こえた、振り返るとそこには白いワンピースを身にまとった少女が立っていた。こんなところに女の子一人と言うのはおかしな話だ、保護者は一体どこへ行ったのだろう?
「状況が飲み込めていないようだけど、今はそんな場合じゃないの。さっさと目を覚ましてくれなきゃ死人が出るわよ?」
「死人だって?」
「貴方も良く知ってるでよ?黒神千春」
そんなはずは無い、ISには絶対防御があるから死ぬはずは無い。なのになんであいつが死ぬんだ!?俺はやっとあいつに認められてきたばかりなんだ、きっちり男として認められるまで絶対に死なせるものか!
「私もそろそろ本気で行きましょうか、第二次移行形態……」
「なんだそれ?」
「詳しいことはお友達に聞きなさいそれじゃあね!」
そういって彼女は消えていった。いや俺がその世界から消えたのだろう。
再び目を覚ますと見たことのある天井だった、身体の痛みは癒えていないが動くには十分だった。その後どうなったのか確認をするために俺は作戦室へと向かっていった。
「黒神!頼むから応答してくれ!」
「千春さん!」
『とことん潰しやがって……そこまで憎いかよ」
大型モニターを見れば千春があのISに追い込まれていたところだった、見た感じ人は乗っていない。操縦者の命は守れたみたいだな。
「千春!」
「織斑お前身体は大丈夫なのか!?」
「これくらい!それより状況を、あいつの状況を!」
その瞬間、目のまで映っていた千春の身体から赤い液体が流れた。あれは間違いなく血だ、何故なんだISには操縦者を守る機能がついているんじゃないのかよ!?それとももう既にエネルギー切れが起きている状況なのかよ!
『やべっ!身体が持たな―――』
その言葉があいつの最後だった、次の瞬間千春の身体に無数の光弾が降り注ぎ大爆発を引き起こした。
その爆煙の中から、身体を赤く染めた千春が墜ちて……海の中に沈んでいった。