インフィニット・ストラトス 最強と天才の幼馴染 (更新終了) 作:灰崎 快人
福音との戦闘を終えた俺たちは気を失った千春をつれて旅館へと戻った、千春の状態ははっきり言ってよろしい状態ではないだろう。血の流しすぎと無茶苦茶な行動、その両方が身体に更なる負荷をかけてしまっていたようだ。もしも俺があの立場であったらと思うと恐ろしくてたまらない、それをいとも簡単に行動に起こしてしまうアイツは少しおかしいんじゃないかと思う。いや確かにその行動は俺たちにとって結果的に有利になった訳だが、それに対する千春のデメリットが大きすぎる。そこまでする必要が本当にあるのか?俺たちは千春に頼りすぎなのではないかと思ってしまう……一人で強くあいつには頼らずになれるように努力しなきゃな。
「作戦完了と言いたいところだがここまでの損傷を受けてしまってはな。ひとまず一度休憩を挟んだ後診断をする、身体の状態をしっかりと確認する必要があるからな」
「千春さんは……」
「私がしっかり看病するさ、色々と言いたいこともあるからな」
千春を安静にさせるのは問題ないが、なんで千冬姉が看病するんだろう?やっぱり幼なじみだからある程度心配とかするのかな?
千春には最大限の処置がされた。輸血や点滴そして人工呼吸器、骨折に対しては千春がある程度無理矢理戻していたようでそえ木固定が施された。骨折を無理矢理戻すなっておかしいだろ。
「それじゃ、皆さんまずは水分補給してくださいね。夏はそのあたりとか意識しておかないと、急に体調とか悪くなってしまいますからね」
山田先生から渡されたスポーツドリンクを受け取った、冷たい物はあまり身体に良くないとのことである程度ぬるめの状態になっている。ここら辺は千春もよく言っていたことだからな。
一口飲んでみるとスポーツドリンクの他に鉄っぽい味がする、どうやら戦闘の中で口に中を切ってしまっていたみたいだ。些細なことに気がつかないほど、あの戦闘は死に物狂いであったと言う証拠だ。
「口の中切ってる……」
「ボロボロだな」
「それでも生きて帰ってこれた、それだけで十分だろ」
「……そうだね」
なんとも言えない空気感の中、俺たちは休憩をした後診察を開始した。勿論男女別なので俺は大人しく別室での待機となった。
夢の中で出会った少女は、詳しいことは全て千春が知っていると言っていたな。そもそもなんで千春のことを知っていたんだろう?詳しいことは後で聞いてみるとするか。
織斑達から少し離れた救護室、そこでは千冬を含む教員数名が気絶した状態の千春の看病に追われていた。血液がほとんど無い状態の中辛うじて生きている状態であった。幸いなことに血は千冬から提供された為、一時的な繋がりとなった。千冬と千春の血液が同じなことが本当に幸いだった。
他にも身体を診断したところ、内部にまでダメージが浸透しておらず臓器類にも特に問題は無かった。しかし身体は無数の傷跡がありそこからおびただしい程の血を流してしまった事で悪化してしまっていたと言うことだろう。流石の千春でも出血多量はどうしようもないと言うことだろう。
「どうして……お前は」
千春に言葉を嘆かれる千冬、その状態はとても弱々しく普段の彼女からは考えられない状態であった。それだけ彼女の中で千春の存在が大きいと言うことを周囲の教員も改めて感じ取るほどだった。
「―――ぁ」
「千春!」
かすかな意識の中で目を覚ました千春に、周囲の教員は驚愕する。その中でも一番驚いていたのはやはりというべきか千冬であった。朧気な意識の中その目ははっきりと千冬の顔を捉えていた、右目は戦闘の影響で失われてしまったようで何も見えていなかった。
「ちふ――」
「良かった!本当に良かった!」
千春からの言葉を待たず彼女は直ぐさま思い人を抱きしめた、彼の身体が悲鳴を上げているがそんなことはお構いなく。
大好きな彼を大切な存在である彼を抱きしめた。最初は戸惑いつつも次第に彼女のことを思った千春は、優しく抱き返し自身には問題ないと言うことをしっかりと認識させた。
その光景を目の当たりにした他教員達はどこか羨ましそうでありつつも、部屋を立ち去り山田先生への報告と事後処理へと移動していった。
「千冬、大丈夫だから」
「馬鹿者!たわけ者!どれだけ心配したと思って――!」
「ごめん」
「その言葉を何度聞いたと思っている!この前もそうだ!すぐにお前は自己犠牲をする、その癖を直せ!」
「……肝に銘じておく」
心配させてしまったのは確かなことだ、だがあれをしなければどうなっていたかわからない。万が一の予防線を張っておくのは大人としての務めだと思ってしまう。多少はあいつらに任せなければ成長に繋がらないか?俺のしていることはあいつらによろしくない状態を与えてしまっているのかもしてない。
それならば俺は多少なりとも前線から身を引かなければならないな、現状がこれならばその理由にもなるだろう。
「ならばここで誓え、私にはっきりと言ってくれ」
「もう二度と無理しません」
「はっきりと言え!」
「うっ……例え状況を優位に進めるためだとしても、自身が犠牲になったり千冬達を不安にさせるような行動は一切しません」
「よろしい」
ここまで誓わせるとは余程の事だったのだろうな、俺もその罪の意識をしっかりと憶えておかなければならないな。
他の奴らは大丈夫だったのだろうか?特に織斑には無理させてしまったからな、後でしっかりと確認しておくか。
「少ししたら夕食になる。だがお前はこの状態だからな、この部屋で食べてくれ」
「俺の姿を見たら何があったかわかってしまうからな……右目はなんとかしておかないと」
身体の傷などは服などで隠せるが、この右目だけはどうにもならない。ラウラの様に眼帯でも隠すしかないだろうが、顔の変化という物は一番目立つと言う物だろう。例えば普段眼鏡を使っている山田先生が急にコンタクトなどにした場合、その変化に気がつくのは簡単だろう。
「眼帯で隠すか義眼で戻すか……」
「最初は眼帯で良いだろうが流石に怪しまれてしまうからな、義眼は束に頼んで造ってもらうか?」
「人間に戻れなくなりそうだからやめておく、それにそれくらいなら俺でも造れるから大丈夫だ」
「え~!せっかく造ってあげようと思ったのに!」
突然そんな声が聞こえてきた、勿論神出鬼没な束の声だった。その声はとても残念そうであった、だが束の開発は人知を遙かに超えてしまっている。下手に手を出してしまえば人間をやめてしまう可能性もある、だから下手に信用や利用をすることは出来ないのだ。
「すまないな束、もしもお前を頼るときが来るのであればそれは――」
「わかってるよ、だけど無理しないでね」
流石の束も今回ばかりは心配していたようだ、それだけ俺の状況がヤバかったのか。
「黒式はしばらくの間使えない、修理しようとしてもお前がこれだからな。私が預かっておく時が来たら渡すとしよう」
「それで頼む」
きっと精神世界で黒式にボコボコにされるんだろうな……あいつらも含めて