インフィニット・ストラトス 最強と天才の幼馴染 (更新終了) 作:灰崎 快人
あれから少し日が経ちある程度帰省していた生徒達が帰ってきた、学園内は少し騒がしくなっていたがそれが懐かしく感じてしまった。わずかな時間でこう思ってしまうとは、俺は意外とさみしがり屋なのかも知れないな。
現在俺は回復した手脚の慣しをしていた。軽く動かす程度は問題ないだろうが、IDの戦闘など今までしてきたような戦術は不可能だ。
黒式もまだ修復出来ていない状態だ、一度束に送り修理してもらおうと思ったのだが……IDが束に対し拒絶反応を示した。恐らく黒式はここまで自身を酷使してきた俺に責任を取って修理させると考えているのだろう、それを見てしまった俺はため息をつきながらも俺自身が起こしてしまったことを素直に受け入れた。
ただ問題なのがそれが今俺の手元には無いと言うことだ。黒式は今現在千冬の手にある為俺は一切触れることが出来ない状態だ。
だが付近にあると言うことなのだろうか?よく夢で話しかけられる。昨日は黒式と白式と紅椿だった、勿論内容は俺への説教だ。
あれだけ無理なことをしてしまったのだ、絞られてしまってもおかしくは無い。
白式からは
「お前が身を削るのは間違いではない、だがそれが正しいとも限らない。その行動が生んでしまう状態をしっかり考えるんだ。
きっと考え方はそう簡単に変わることは無いだろう、だがいつか自分自身が気がつくはずだ。今のままではダメだとな」
紅椿からは
「やっぱり私はあのやり方に納得がいきません、千春さん自身の為にもなりませんし……なにより周囲の人に大きな影響を与えてしまいます。
白式が言ったようにしっかり考えて行動するべきだと思います、千春さんは皆さんにとって大きな存在なんですから!」
黒式からは
「二人が言ったように私は貴方のやり方が嫌い、貴方が正しいと思っていても絶対に違うって断言できる。
貴方は何のために戦うの?何で一人で戦うことを選ぶの?何で自分を犠牲にしてしまうの?
その理由を貴方自身がはっきりと意思証明してくれないと、私は力を貸すことは出来ない。
だから次私と会うときまでに納得の出来る答えを考えて」
とのことだった。俺がどうして戦うのか、どうして自己犠牲をしているのかが彼女たちには理解が出来ないらしい。自己犠牲をするのも単純にあいつらに辛い状況を任せられないという気持ちがある、これは信じていないというわけでは無く今のままでは不十分だと思ってしまっている。
大人が子供を守らなくてどうする、その考えのもの行動をしてきた。だがそれは間違っているのか?わからない。俺が起こしてきた出来事は俺に干渉する人間全員に影響を与えるのは確かだと思う。
俺が使用してきたIDの特性を完全に理解した千冬達は、俺を前線に出さないように制限をかけてきた。俺はその提案を否定したがこれは専用機持ち全員からの願いだったと聞いたとき唖然してしまった、俺がしてきたことは間違いだったのか?本当に正しいことなのかと疑心暗鬼になり始めてきた。
「俺は……どうしたらいいんだ」
そんな言葉を呟いてみるが答える物は誰もいない。
自暴自棄にはならないようしっかりと自分自身の力で解決するしか無い。時間の猶予はたくさんある、それが許すまでゆっくり考えることとしよう。
黒神が一人悩んでいたその頃、専用機持ちはとある部屋へと集まっていた。部屋は薄暗く大きなモニターが立ち並んでいる。盗聴などされないように細心の注意を払われている。
「それではこれより黒神について会議を始める」
「「「「はい!」」」」
何故黒神以外の専用機持ちが集められたのか答えは簡単だ、福音との戦闘で大きなダメージを受けてしまった彼にこれ以上の自己犠牲をさせない為の予防線を張るためだ。
彼の考え方も大きな問題を抱えているのだが、それよりも彼が使用しているIS――IDの特性が問題だった。
「ではまずこのIDについて説明する。と言ってもお前達はあの戦闘で大体は把握できたみたいだがな」
千冬がそう言うと大きなモニターから黒式のデータが開示される。ISの兄弟機であるが特性は全くと言って良いほど異なっている、そのデータを再確認した彼女たちの額には冷や汗と戸惑いが現れていた。
「こんな物がっ!」
「やはりあの時に感じていた違和感の正体は……」
「千春さんが苦戦していた理由も理解できるわ」
「副教官……貴方という方は」
「常にハンデを抱えての戦闘なんて無茶ですよ!」
「「…………」」
それぞれ反応は様々だった、特にセシリアはどこか心の中で合致したのだろう。他の奴らもどこか気がついている様子だった。
箒と一夏は自分たちが失敗した任務を尻拭いされたときに、しっかりと彼が墜ちていくのを見てしまっている。トラウマになってしまってもおかしくは無いだろう。
実際にあれを見てしまった数人の教員は少し精神に影響が出てしまっていた、このままでは他の関係者までにも悪影響を出しかねない。
そう思った私たちは彼にしばらくの間IDを使うなと申し入れた。最初は拒否されたが私たち全員の頭を下げて無理矢理納得させた。そして黒式は没収した。
「黒式の特性と黒神の性格が嫌なほどあってしまった、それが招いた結果がこれだ。私たちはこれから先何かあったとき、彼に頼らず自身の力で対抗するしか無い。アイツには休息を与えなければいけないからな」
そういった千冬は今まで見せたことの無い表情を見せた、あのブリュンヒルデが本心から彼女たちに訴えているのがわかってしまうほどだ。そしてどこか自分にも言い聞かせるようにしていた彼女を見て彼らが出した結末は簡単だった。
「黒神さんにIDを渡さないでください、もうあの人には頼っていられないんです」
「大人として確かに間違ったことはしていないのでしょう、ですが私は理解しかねます」
「これ以上彼を傷つけたくない」
「僕たちの力でなんとかしないと……」
「アタシ達は代表候補生、千春さんに頼っているわけには行かないしね!」
「私は私の力で紅椿を扱ってみせる、だからあの人は安静にしてほしい」
「俺はまだアイツみたいに戦えるわけじゃ無い、まだ白式に振り回されている状態だ。
でもいつかアイツを超えて立派な男性操縦者になる!アイツにもまだ押してもらいたいことが山ほどあるんだ、だから今は休んでいて欲しい」
それぞれ黒神への思いを話しながら、彼を酷使させないためそれぞれが努力し彼を超える準備に取りかかっていった。その裏では恐ろしいISが開発されているとも知らずに。
私は千春にとんでもない物を渡してしまったと後悔している、彼ならあの機体を扱いきれると思った。
実際にアレを扱うことは出来たけれど、彼の戦術と黒式の最悪の特性がかみ合ってしまった。
これ以上黒式と千春を酷使することは出来ない。黒式のデータはある程度こちらに渡っている、武装のデータも最初からこっちにある。それなら黒式に変わるISを造ってあげれば良いんだ。
そうすれば彼がこれ以上傷ついて行くことはないんだから。IDはそのISを渡したときに回収させてもらおう、そして完全に分解してシステムも廃棄してしまえばいい。
そもそもあの福音とか言うやつが急に暴走したのはどう考えてもおかしい、そんなことが出来るのは私くらいのはずなのに……今回の事に私が関わったのは紅椿を与えたことだけ、ISのコアを回収して解析したけど怪しいと思うところは一切無かった。
つまり何が言いたいのかというと、あのISは自分の意思で暴走した可能性がある。だけどそんなことが可能なのか?黒式や白式でも何かしらの変化があった、なのに福音にはそれが存在しない……仮の話をしよう。
もし私より天才が居て、ISが解析される際に干渉した事そのものを消してしまう程の精密プログラムを組める人物がいたとしたら?そんな人物がいるのかは定かではない、だけど千冬や千春の様な特殊な存在が世の中居に居る。おかしな話では無いだろう。
「待っててね千春、今私に出来る最高のISを送るから……」
そんなことをボソボソと呟いている天災の後ろ姿を不安そうに眺める少女が一人。
彼女の名前はクロエ・クロニクル、彼女には謎が多いが特徴としてラウラと同じ銀髪であり幼いと言うことだろう。
幼い割りにはどこか凜々しく言葉使いも丁寧である、束に拾われてから彼女の意見には絶対的忠誠心を見せている。
千春よりも彼女といる時間は短いものの、彼女の事を理解している数少ない存在であった。
「束様……それ以上はお体に危険です。少し休憩いたしましょう」
言葉をかけるが彼女の耳には一切届かなかった、束が設計している開発図をこっそりと覗いてみる。
そこには驚愕するほどのスペックを持ち世界中で開発されていないシステムが搭載されている、完全なオーバースペックを持った機体の設計図がそこにはあった。
これほどの物を彼は扱うことは出来るのだろうか?それよりもこんな物が渡ってしまったら彼は世界中から狙われる存在に成りかねない、完成していく設計図はどこか白騎士と黒式の面影を残していた。
「第五世代型IS――いや新世代型