インフィニット・ストラトス 最強と天才の幼馴染 (更新終了) 作:灰崎 快人
「千春、気分転換に遊びに行かないか?」
それは突然の事だった。俺は答えを見つけるために自問自答を繰り返している状態だった、そんな中千冬から提案されたのは今月に出来たばかりウォーターワールドでの遊泳だった。
たしかその場所は今月の前売り券が完売していたはずだ、それを彼女がこうして手に持っている。
どうやってそれを手に入れることが出来たのか謎だが、それでもあの競争から勝ち取ったのであればそれは素晴らしいことだ。
「ウオーターワールドか、前の水着を引っ張り出さなければならないな」
「ちなみに今日行くぞ、準備しておけ」
大体千冬が提案してくるときは当日の可能性が高い、前日に説明してくれればある程度こちらで準備が整うのだが、当日に言われるのは少し困る。
「せめて前日に教えてくれないか?」
「悪かったな、だが嫌では無いだろう?」
「まぁそうだけどさ……少し準備しながらご飯食べてくるから、少し待っていてくれ」
「あぁのんびり待たせてもらうさ、なにせ今は朝の四時なのだからな」
朝の四時?俺は自信の腕につけられている腕時計を確認する、時計の針は間違いなく四時を示していた。俺はそんなに朝早くから自分と向き合っていたのか……気がつかないとはかなり追い詰められているな。
「ご飯食べてくるよ」
俺は千冬を部屋に残し、朝食を取るために食堂へと向かった。このあと大きな問題になるとも知らずに。
今朝は少し冷えるがそれでも冷たい物がおいしい、それに生徒も朝から活発に動いている。夏休みだというのに元気なことだ。
さて今朝私がいただくのは鮭の塩焼きとだし巻き卵です、シンプルだがしっかりと栄養は取れる。備え付けはツナサラダにアサリの味噌汁、ご飯は勿論大盛り。ご機嫌な朝だ。
「むっ?教官お早いですね、なにかご予定が?」
近づいてきたのは銀髪の少女、ラウラ・ボーデヴィッヒだった。俺の弟子でもあるが今でもしっかりとした軍人だ、そんな彼女だからこそこの時間に起きることが出来るのだろう。
彼女の左目は眼帯で隠されているが、普段つけている物とは異なる。それは俺が彼女の眼帯を拝借しているからだ。前の戦闘で俺は右目を失ってしまった、義眼を入れるまで彼女の眼帯を借りることととなった。義眼の開発を急いで一刻も早く彼女に返したいところだが、ラウラに「ゆっくりで構いません」と言われてしまった。
大人として少しどうなのかと考えてしまうのだが、ここは素直に甘えるべきだろうか?
「まぁそうだな、千冬と一緒に今月出来たウオーターワールドに行く予定だ」
「ウオーターワールドですか、私もご一緒しても?」
「構わないが、チケットは持っているのか?」
チケットは既に完売しているそれをどう手にいれるのだろうか?
「問題ありません大体目星はついているので」
「……???」
目星がついている?つまり誰が持っているかわかっているのか?いや例えそうだったとしてもどうするつもりなのか、まさかとは思うが奪い取るとかでは無いよな?そうだよなラウラ?
「シャルロット、チケットを渡せ」
「ラウラ!?これはダメだよ!やっとの思いで手に入れることが出来たんだから!」
「では箒」
「なっこれはダメだ!一夏と行くと約束しているんだ!」
食堂の一角。そこでは専用機持ち達がなにか言い争っていた。事の発端は勿論千春が関係してしまっている。
彼がウオーターワールドに行くと言うことを知ったラウラは、そのチケットをもって居るであろう人物達に声をかけそれを奪――譲ってもらおうとしていたらしい。
譲ってもらおうとしている理由は簡単、千春達と共にウオーターワールドを楽しみたいからだ。
「そうか……教官達と共に行ってみたかったのだが」
「どういうこと?」
「実は先ほど教官から聞いてな、二人で行くのであれば共にと行きたかったのだが。叶いそうにはないな」
「千冬さんと行くんだ……なるほどね」
千春が千冬と共に行くと言うことを聴いた彼女たちの表情はどこか恐ろしい笑みを浮かべていた、ラウラはそのことに気がついてか言葉を続けた。
「今ならまだ間に合うぞ、チケットを一枚渡してくれないか?」
「僕ので良ければ一枚上げるよ」
直ぐさま行動に移したのはデュノアだった。
セシリアと簪は自室に戻り外出の準備を、箒と鈴は織斑を連れていくために部屋へと向かった。
彼女たちが学園を出たとき、千春達も学園を出てウオーターワールドへと移動した居た。
このことを聴かれていたとも知らずに。
学園から少し離れた場所にあるウオーターワールド、その施設で一際目立った二人組が居座っていた。その正体は――
「これは凄いな!流石新施設と言うだけはある!」
「落ち着け。そこまで興奮してしまってはあいつらと一緒だ、ゆっくり楽しむとしよう」
世界最強とその幼なじみが堂々とこの施設を楽しんでいる。千冬クラスになるとどこに居ても注目を浴びてしまうのは必然と言うことなのだろう。
そんな視線や言葉を一切気にせず堂々としている様はまさに世界最強、俺はその隣に立つだけの実力はあるのだろうか?
そんなことを思いながらも笑顔の彼女の隣に居られることに安心しながら、この施設を堪能することにした。
感じ取ったことのある視線を受けながら。
「教官楽しそうですね」
「あそこまで楽しそうな織斑先生達見たこと無いもんね」
「幼い頃の千春さんもあんな感じだったのかな……」
そこには水着姿のラウラ、シャルロット、簪の姿があった。その後ろには織斑と篠ノ之、セシリアに鈴が立っていた。
織斑はここに無理矢理引っ張り出されてしまったため、現状を未だ理解していない状態だ。
そんな彼を除いてヒロインズは二人の後ろ姿をゆっくりと眺めていた。
「絵になるわよね……美男美女だし」
「普通なら近づく事すらできないでしょうね、私達もこうしてのぞき見していますし」
「織斑先生は千春さんの心情を理解しているのかわからないけど、あの人をここまで連れてきたのは何かしら意図があると思うよ。千冬さんだもん」
確たる証拠は無いが千冬さんだから教官だからと簡単な理由で片づけられている辺り、流石千冬の存在であると言うことがわかる。
そんな事をしていると係員さんから不審者のような視線の感じたため、彼女たちもこの施設をゆっくり楽しむことにした。決して千冬達から眼を離さないように。
「これはウオータースライダーってやつか、やってみるか?」
「おもしろそうだ」
こういった施設はある程度利用してきたつもりだったが、ここのスライダーは見たことが無いほど大型の物であった。
大型の物は大体二人一組で滑ることが多いのだがこれは一体どうなのだろうか?浮き輪とか必要だっただろうか?
「これはどうやって遊ぶんだ?」
「こちらはですね、二人一組でこの浮き輪に乗っていただきます。まずは男性の方が座っていただいて、その上に女性が乗ってもらいます。
男性の方は彼女が飛ばされないようにしっかりと密着した状態をつくってもらいます、しっかりと彼女の腰に手を回して離れないようにしてあげてくださいね。」
なるほどつまり千冬が離れないようにしっかりと抱きしめれば良いんだな、それならばお安いご用だ。
どれだけ彼女を抱きしめていると思っているのだ、毎日朝起きれば彼女が目の前に居て抱きしめている。それくらい抱きしめているのだからな!
「よし来い千冬」
「ノリノリだな、そんなに楽しみなのか?」
「このスケールは初めてだからな!楽しみにもなる!」
少しため息を着きながらもなんやかんや楽しんでいる彼女は、俺の足の上に乗り身体を預けた。それに答えるように俺はしっかりと彼女の身体と密着し離さないようにした。
「それでは行きますよ~」
その言葉と同時に俺の身体が押されてゆっくりと前に進み始めたと思ったとき、浮き輪は急加速を始め滑走を始めた。
「はっ速い!?」
「これは流石に不味いぞ!」
急加速にある程度なれているとは言え、素肌をさらけ出してしまっているこの状態では流石に恐怖を感じてしまった。
目の前には背中を任せることが出来る千冬が、彼女に抱きつくことが唯一恐怖心を無くす方法だったのだろう。
恐怖心に勝てなかった俺は彼女の身体を強く抱きしめ、いずれ来るであろう衝撃に備えた。途中、彼女が驚いた様な声を上げた気がしたが気のせいだろう。
「はぁはぁ、凄かったな!」
「……そうだな」
「千冬どうした?」
彼女の表情はどこか恥ずかしがっているような様子だった、特に印象的なのは自身の身体に授けられているその二つの膨らみを腕で抑えているということだ。もしや降っているときに彼女の胸に触れてしまったのだろうか?確かに手に柔らかい感触があった気がする、もしや触ってしまったか?いや仮に触っていたとしてもいつも押しつけてきてるから何の問題も無いはずなのだが……
「気にするな、次に行くぞ」
「あ、ああ分かった」
少しギクシャクしてしまったが、気にすること無く俺たちは引き続きこれを楽しむことにした。