インフィニット・ストラトス 最強と天才の幼馴染 (更新終了) 作:灰崎 快人
セシリアのISから四機のユニットが展開された。どういったモノなのかは不明なため、おとなしく様子を見ることしか出来ない。
「何だそのユニットは?」
「これはブルー・ティアーズ。私のISであるブルー・ティアーズの最大の特徴でもある武装ですわ」
しっかりと説明してくれるんだな。優秀なのが仇にならなければいいがな、それにしてもISの機体名と同じ武装か……一体何をしてくるんだ?
「今からその真髄を見せて差し上げますわ!」
そう言ってセシリアが右手を前に突き出すと同時に四機のユニットからレーザーが放たれる、瞬時に反応が出来なかった俺は胸部装甲を失ってしまった、これによりもう二度と被弾することが許されなくなった。胸部丸出しの状態とかかなり不味いな。
「レーザー!?無線型のビット兵器なのか、しかし未だに試作段階だったはずだが……」
遠隔無線誘導型兵器、未だに完成の目処が立っていない兵器の一つである。これを扱うにはかなりの空間把握能力が必要とされているのだが、扱える者が誰一人居ないとして未だに実験的な意味合いで開発されている。しかしまさかそれをセシリアが扱えるとは思わなかった。だがモノは試作段階、どこかに欠点などが必ずあるはずだ。
「その通りです、私のISに搭載されているこのビット兵器は未だに試作段階。しかし私ならば全て扱うことが可能なのですわ」
「とは言っても所詮は試作品、何かしらの欠陥は必ずある。機械ってのはそういうものだからな」
しかし流石にまずいな、四機のビット兵器が連携良く動いているためセシリアに近づくことが難しくなったものがさらに困難になった。これを動かしているセシリアの技量には驚きしかない。IDのモニターに表示されている装甲が少しずつ削られていく、セシリアよりもビットを破壊しようと試みるも他のビットから一斉にレーザーが放たれさらに削られていく。防戦一方の試合へと変わっていった。
(いややべぇ!もう被弾できねぇだろ!下手に受けたら死ぬ!)
「黒神さん追い込まれてますね、やはりISの技量の差が激しいのでしょうか」
「確かに技量不足というのはあるが黒神には知識がある。そこで差を埋めていくのがあいつのやり方だ。ただ今回はビットに気を取られすぎているがな」
実際に千春はセシリアよりもビットの攻防に集中しているため、セシリアがどのように行動しているかを見ていないのだ。千春の欠点は知らない物事に集中してしまうことだ、そこから周囲の状況を確認するまでに時間が掛かる。
「もう少し視野を広げればセシリアの弱点にもすぐに気がつくだろう」
「流石幼馴染ですね、昔からそうなんですか?」
「まぁ昔から抜けていることは日常的にあったな、しかしそれが役に立つときもあるからなんとも言えんのだがな」
しかしこのままでは千春のISの装甲は無くなり地面に衝突して敗北するだろう……千春、お前の底力を見せてやれ!でなければ死ぬぞ!
「流石にこの状況が続くのはまずいな、どうにかして打破しないと」
(レーザーがわき腹付近を過ぎていっただけで火傷している気がする……後で手当てしよ)
カノンで撃ってもビットが避けてしまい当たらない、ブレードも届かない……一か八かでセシリアにワイヤーを打ち込んでみるか。これで駄目だったら雪片を使うしか無い!
「これでも喰らえ!」
ワイヤーブレードがビットの隙間を縫ってセシリアへと向かっていく、その瞬間ビットからの攻撃が止まった。
「―――っ!」
突然向かってきたブレードに対してとっさの反応ができすに装甲を削ってしまう。このとき俺の脳内ではとある仮説が思い浮かんできた。
(セシリアに向かってブレードが飛んだ瞬間、ビットは動きを止めた。つまりセシリアは自身が動くこととビットを動かすことの両立ができないということか、だんだんと攻略法が見えてきたぞ。そうと決まれば!)
俺はカノンの空薬莢を排出し新しい薬莢と交換する、武装から近接ブレードである『黒龍』を取り出す。黒龍とか書いてあるが実際はただの黒い刀である。カノンを左手に持ち替え、黒龍を右手で握り締める形となった。これで近中距離は問題ないだろう。
「セシリア、大体だが君のISの特徴はわかったよ。だから、ここらで仕切り直しとしよう」
「そうさせるとお思いですか?させませんわよ!」
作戦は簡単だ、セシリア本人に向かってカノンで牽制し避けている間にビットを切り裂く。問題はやはりカノンの残弾数だろう、本体に入っている弾数を除けば残り弾数は12発。一ビット壊すのに最大3発まで使っていいことになる、逆に3発で破壊できなければ終わりだ。
「狙い撃つ!」
標準をセシリアに向けて弾丸を放つ、予想通りビットは動きを止めた。その隙きにビットを一機破壊する、これをあと3回繰り返せばこちらのものだ。
(不味いですわね、千春さんはこちらの弱点にお気づきになられたようですわ……)
(予想通り、セシリアはビットを動かしているとき自身は動けないという弱点を持っている。逆に自身が動いているときはビットは動かせない、これを利用していけば勝てる見込みが出てくる。セシリアもそれには気がついているはず、こっからは技量と運の問題だな)
ここからはお互いの実力と経験そして知恵がものを言う戦闘になる、俺が彼女に劣っているのはIS経験と実力。だが戦闘経験と知恵ならばこちらの方が上だろう。
「こっからは俺がリードしてやるから覚悟しろよ!」
「それは楽しみですらね、しかし勝利するのはこの私ですわ!」
中遠距離のセシリアに対して正面から進んでいく。シールドエネルギーとビットの数を削りながら突き進んでいく千春に対し、セシリアは少しでもシールドエネルギーを削られないように正確な射撃を打ち込む。時にブレードでセシリアを切り倒そうとする際には『ブルー・ティアーズ』に搭載されているショートブレードで相殺していく。中遠距離が基本ということもあり近接戦闘は苦手のようだった。
「どうやらセシリアの機体の欠陥、癖を理解できたようだ。あとは油断しなければ黒神の勝利だ、油断しなければだがな」
「そうですね、セシリアさんの機体にはあと2機のブルー・ティアーズが搭載されていますからね。しかもその2機からはミサイルが射出可能なので使いどころが肝心ですね」
「あぁ、それに黒神の機体にも隠し武装が備わっているからな。あいつは使いたがらないがな……」
おそらく千春は自分自身の力で成長したいのだろう、雪片を使ってしまえばセシリアから放たれたレーザーなど簡単に切り裂くことができるからな。壊れている性能を持つ雪片は万が一のときのみ使うのだろうな。それにしても……
「なんか戦略が酷すぎないか?あそこまでする必要があるのか?」
「何を言っている、この戦いはどちらかのシールドエネルギーがなくなったら負けなのだぞ?自身よりも相手のシールド値を削るのに手段は沢山ある、それをうまく使うことが重要なのだぞ?」
「わかってるけどさ……あそこまで卑怯な手を使うことはないだろ?たかが数字を削ればいいだけじゃないか」
織斑一夏にはこの作戦が卑怯なものだと感じたらしい。何処が卑怯だむしろいい作戦だろう、お互いに自身の全力をぶつけ合っているのだ。
「甘いな織斑」
織斑の背後から出席簿が振り下ろされる。
「千冬姉ぇ!」
大きなたんこぶを撫でながらも犯人である姉に視線を合わせる。
「織斑先生だ大馬鹿者が。よく考えろ、この戦いで有利なのは中遠距離から仕掛けられ、なおかつISの操縦技術を身に着けているセシリアの方だ。しかし黒神はセシリアの搭乗しているISの弱点である近距離戦を発見した為距離を詰めて形勢逆転したのだ、武装だけで有利だと決めつけるのはナンセンスだ」
「そうですよ、ISの性能・武装を十分理解して戦わなければ強くなることは難しいですからね」
「そういうものなのか……」
戦闘や争いなどとは無縁だった一夏には理解できない話なのかもしれないな、これから先嫌というほど理解するだろうがな。
(弾数を一発残し4機のビット全てを破壊した、残すはセシリア本人のみだ。しかしこちらもかなりの手負いを受けてしまったな、やはりセシリアの狙撃技術は大したものだ。そのおかげでこちらのシールド値は残り50まで削れてしまった……これ本当にSE値あるの?装甲もうほとんど無いよ!?しかしSE値が少ない状況はセシリアも同じはず……最後の一撃に全てをかける!)
(完全にあちらのペースに持っていかれましたわ……まさかビットを四機も失ってしまうとは、しかしまだビットは二機ありますわ。黒神さんが一気に近づいてきたタイミングで放てば勝利はつかめなくとも相打ちくらいにはなるでしょう……あれ本当にISなのかしら?どう見ても黒神さんの身体から血が出ているような……いえ気のせいですわね)
「この一撃で最後だぁ!」
カノンを収納し黒龍を両手で握りしめる。これが避けられれば千春の負けである、しかしセシリアはミサイルで相打ちを狙っているため回避はしない。黒龍の刃がセシリアのIS装甲を切り裂いていく。
「これで決まりだ!」
力を入れて黒龍を横になぎ払おうとする、しかしセシリアが俺の腕を掴む。腰に搭載されていたミサイルがこちらに向けられる、高確率で当たるようにわざと喰らったとでも言うのか。彼女は腕を引っ張り俺との距離を縮めて離れないようにする。
「申し訳ないですが相打ちとさせていただきますわ!」
腰部に搭載されているビットの砲口が俺を捉える、そしてセシリアを巻き込むように大爆発を引き起こす。
(あっ……俺死んだ……)
「ブルー・ティアーズ、黒式両方共にSE残量0。よってこの第一試合は引き分けになります!」
山田先生のアナウンスが終わるとともに周囲の生徒達から歓声が湧き上がった。
SEの切れた機体を安定させながら着地する。
「まだビットがあったとはね……完全にやられたよ」
「こちらもです、まさかこんな短時間にこちらの弱点をついてくるとは思いませんでしたわ」
「またいつか再戦したいところだな」
「えぇ、そのときは勝利をいただきますわ」
「それはこっちのセリフだっての」
互いに固い握手を交わし再戦を誓った。
疲労感の残る体を動かしながら元のピットへと戻っていく、付近には千冬の姿があった。
「お疲れ様だな、代表候補生の実力はどうだった?」
「正直驚いた、最初は隙が生まれなくて攻め込むのに時間がかかったがな。しかし機体の欠陥がひどいな。特にビット、あれはまだ試作品なんだろ?正直言って無線よりも有線型にしてAIで制御するほうがまだ使えるかもしれない」
「そうか。それはさておき何故雪片を使わなかった?使い方は黒龍と変わらないはずだが?」
満身創痍の状態で説教の時間か?少しくらい休ませてほしいんだけどな~?さてなんと言うべきだろうか?適当な言い訳でも考えて抑えることにしよう。
「いやぁ〜何というか最初から強力な武装を使っても自分自身が強くなれないと思ってな、それだったら使い方の変わらない黒龍でいいかなと」
「まぁそれはいい、傷を見せろ手当てしてやる」
千冬が傷の手当だと!?いやそれだけは勘弁してくれ。
「いや、別にいらないんだが……」
(千冬手当てするの下手なんだよな、やるなら自分でやりたい)
「遠慮するな、これでも上手くなった方だ。次はセシリア対織斑だ、その時に手当てしてやる。ついでにほんの少しでも休憩しておけ」
そう言うと千冬はスポーツドリンクを千春に向けて投げ渡した、千冬なりの気遣いなのであろう。だが手当てはしないで良いからな?これくらいなら一人でも大丈夫だから。
「おう、いただこう。そういえばモニター室で見ても大丈夫なのか?」
「まぁ構わないぞ、邪魔にならなければな」
そうか、と呟き疲労の溜まった体を動かして千冬の後ろをついていった。黒式の装甲は予備のパーツで無理矢理組み合わせるとしよう。
これにてセシリア対千春の戦いは終わります。
成績
織斑 0勝0敗0引
セシリア 0勝0敗1引
千春 0勝0敗1引
千春達の戦いを見てた一夏が取った作戦とは!?