インフィニット・ストラトス 最強と天才の幼馴染 (更新終了) 作:灰崎 快人
「『サード・サーフィス』、変わった名前だな」
「結構人気のあるお店みたいだよ、ほら女の子も沢山いるし」
目の前には男が絶対は入れそうに無い女物を扱うお店がある。二人と手を繋いだ状態で入れるかと言われれば入れないと答える。
もしこれが一夏だとしたら?気にせず入ってるんじゃ無いか?
「な、なぁ……俺店の外で待ってたらダメか?」
「「ダメ」」
即答された。大人しく二人の後ろを着いていくしかなさそうだ。
店内はシャルロットの言った通り、女子高生・女子中学生で埋め尽くされていた。男の影など一つも無い。
セール中と言うこともあるのだろうか?店内は思って居たよりも騒々しい、その為接客もおざなりになっている状態だ。しかし――
「
店長と思われる人物がそう呟くと、ぱさりと客に渡す紙袋がすり抜けるように落ちた。いや落としたらダメだろ!
店長の異変に気がついた他の店員、客もその視線を追う。
というか二人の髪色ってブロンドとプラチナって言うのか。知らなかった。
「お人形さんみたい……」
「何かの撮影……?」
「ちょっとお客さんお願い……」
店長は二人に視線を向けたまま、ふらふらとこちらへ向かってくる。それはまるで魅了された様に、あるいは熱にやられてしまったかのように。
俺場違い過ぎて逃げたいんだが、誰か助けてくれないか?
「ど、どんな服をお探しで?」
若干うわずった声を上げる店長は見るからに緊張していて、スーツを着こなしている大人とは思えなかった。
それが少しおかしく笑ってしまいそうになるのを押し殺す。
「この子に似合う服を探しているんですが、いいのありますか?」
「あっ!こちらの銀髪の方ですね!今すぐ見立てましょう!はい!」
言うなり、店長は展示品のマネキンからセール対象外の服を脱がせる。
確かマネキンに着せている服っていつか売れるかも知れないから店頭に飾ってあるんだったか?仮に売れるとしてもそれは『とっておきのお客様』とかの為だった気がした。それを初めてのお客の為にわざわざ脱がすというのは普通ならないだろう。
普通ならな。
「どうでしょう?お客様の綺麗な銀髪に合わせて、白のサマーシャツになっております」
「へぇ、薄手でインナーが透けて見える様になってるんですね、ラウラはどう?」
二人が何を話しているのか俺は分からない……インナーが透けると何が良いのだろうか?きっと何か意味があるのだろうが俺にはその知識が無い。
「わから――」
「わからない、はナシで」
「むぅ……」
わからないはナシ、そう言ったシャルロットの顔が少し怖く感じたのは気のせいだろうか?気のせいだよな?
ラウラはむくれてしまってる、まるで子供だな。まぁ子供なんだが。
「白か、今着ている服と同じだぞ?」
「ラウラ。確かに着ている服の色は一緒だが、服の種類は変わってる。それだけでも印象はがらりと変わるんだぞ」
これは千冬でしっかり体験したからわかる。一見凛々しい彼女だがそれは服装が関係していることもある、基本的にはスーツなどスタイリッシュなもの身に着けているが過去にはフリルのついたワンピースやホットパンツを履いていた時期もある。
ここ最近の彼女はスカートすら履いていない完全なズボンスタイルだ。たまにはそれ以外の服装を見たいものだ。
「千春さん?」
「教官?」
「ん?」
二人に声をかけられた。考え事をしているうちにラウラの試着が終わっていたようだ。
シャルロットと店長が選んだ服を見ると『クール系』というような感じだった。確かにそれはラウラにあっているスタイルでもあるが、たまにはクール系よりも『可愛い系』を見てみたいと思うのは俺だけだろうか?
普段とは違う服装を着てみれば意外な一面が見れるかもしれない。
「うーん……悪くはないんだが、ちょっと待っててくれ」
個人的にラウラに似合いそうな服をいくつか選んで彼女のもとへ運ぶ、少し露出が高いかもしれないがそれでも彼女には似合いそうだった。あとはアクセサリーなどをいくつか持ってきたが、これは彼女の好みでつけてもらう事にする。
「露出が高いが黒で少し落ち着いていると思う、アクセサリーはラウラの好きなものを付けたらいい」
「……わかりました」
「あー着方がわからなかったらシャルロットに聞いてくれ、俺は力になれないからな」
シャルロットのアドバイスを受け入れながらラウラは試着を始めた。
「お子さんですか?」
「お子さん……違いますよ、同僚です」
何処をどう見て親子だと思ったのだろうか?眼帯か?それとも雰囲気か?
同僚と聞いた店長はあらっ!と驚いた声を上げていた、まぁ年齢的にも同じではないからな仕方ないだろうな。
20分後、着替えの終わったラウラ試着室を出ると店内の全員が息をのんでいた。
「すごいキレイ……」
「可愛い……」
店内の視線を受けて、さすがのラウラも照れくさそうにしていた。
俺が彼女に渡したのは黒のワンピース、肩が出ており部分的にフリルがあしらわれているのが特徴だ。
やや短い裾がラウラの雰囲気と合っていて、まるで妖精のような雰囲気を醸し出していた。
「靴まで用意されていたとは、驚きました」
「ん?靴を選んだのはシャルロットだぞ」
「せっかくだからと思ってね、ミュール選んでみたよ」
恐らく初めてヒールのある靴を履いているのだろう、彼女の足元はまるで生まれたての小鹿のように震えていた。
「大丈夫か?」
「す、すみません」
「慣れていないんだ、仕方ないだろう」
流石に心配なので体勢を崩す前に彼女の手を取る。ヒールのある靴はある程度慣れてからにしたほうがいいだろう。
それからシャルロットの私服もいくつか選び買った、その後店を出ようとしたところで二人の写真撮影が行われてしまった。
俺にはどうしようもないので大人しく待っていた。
「流石に疲れたな」
「まさか最初のお店であんなに時間使うことになるとは思わなかったね」
「ふたりとも人気だったな~」
時間はちょうど十二時を過ぎたところで、三人はオープンテラスのカフェでランチを取っていた。
ラウラは日替わりのパスタを、シャルロットはラザニアを、千春はホットドックをそれぞれ食べている。
「人気とか言って、数人と撮影してたの見逃してませんよ?」
「教官までも客寄せになってしまいましたね」
「いや俺は関係ないだろう、それより良かったのか?歩きにくくはないのか?」
買い物を終えた後、ラウラは俺が選んだ服装のまま店を出た。
当然といえば当然なのだが何度もバランスを崩していた為、何回か履いてきた靴に戻すかと提案したが彼女はそれを拒否してきた。
まぁ早く慣れることに越したことはないが、それが今日でなくてもいいと思う。
「千春さんが選んでくれたから着ていたいんだよね~」
「なっ!そんなことは……」
「そんなことは?」
俺が問いかけるとラウラは少し頬を赤に染めて「その通りです」と答えた、シャルロットは小悪魔的な笑みを浮かべていたが俺は見て見ぬふりをした。
午後は生活雑貨を見て回ることになっている、計画通りにいかないのはいつものことだ。
しかし生活雑貨とはいえラウラは何が欲しいのだろうか?俺は彼女を知っているようで知らないこともあるからな。
「二人は何が欲しいんだ?」
「僕は腕時計!日本製の時計ってちょっと憧れてたし」
「日本刀だな」
こんなところに日本刀は売っていないぞ?それに買ったとしても銃刀法違反で捕まるからやめておけ、模造刀ならコスプレのお店などで扱ってるかもしれないがな。
「日本刀以外に何か欲しいものは?」
「ないな」
即答だった。分かっていたとはいえ俺とシャルロットはがくっと首を落とした。
その隣席でスーツを着ている女性がうなだれていた、歳は大体俺と同じくらいだろうか?
「はぁ……」
深々と漏らすため息は、深淵の色が見て取れた。
そんな彼女に気が付いたシャルロットは――
「二人とも」
「「お節介はほどほどに」」
二人声を揃えていうことでもないだろうが、その言葉に驚きつつも嬉しそうな表情をしていた。
「二人とも僕のことちゃんとわかってくれてるんだね」
「た、たまたまだ……」
「それでどうしたいんだ?」
「とりあえず話だけでも聞いてみようかなって」
そう言うなりシャルロットは席を立って女性に話しかけていた。
「あの、どうかされましたか?」
「え?―――!?」
女性が二人を見るなりガタンッ!と椅子を押し倒す勢いで立ち上がった、そしてそのままシャルロットの手を握った。
「あ、あなたたち!」
「は、はい?」
「バイトしない!?」
「「えっ?」」
これはまた問題が起きそうだな……