明けぬ夜の宿痾   作:moti-

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 長めです


アンドロギュヌスの……

 ──理解が追いつかない。現状の把握はできている。けれど理解はそうではない。

 

 頭が意味の変わらないくらいにぐるぐる空回り。そこで発生した熱はファンがないので処理しきれない。手で仰いで風を起こしたとて同じこと。そんな微風では拭い去れないくらいの熱があった。

 水冷が必要である。水嚢ください。

 

 そんな俺と、同じように固まっている周囲はお構いなしにむんずと目の前の女──高山ソラは俺の顔を掴み、じーっと覗いている。

 

 俺よりも早く復活を果たした善悪ががっと距離を作らせて、俺の前になふだが立った。どことなく猫が威嚇しているようにも思える。いやふしゃーってお前はマジで猫か。

 あくまでもコミカルな表現として言っているだけなのだろうが、普段から気まぐれなところのある彼女がすると本当に猫っぽいからなんとも言えなくなってくる。

 

「な、なにをやってるんですか先輩はー!」

 

「反応を見たかっただけよ?」

 

「たちが悪い……! ていうかなんでですか」

 

「なふだならわかると思うけど」

 

 そう言って、彼女は俺を指差す。

 

「ハピコさん、こんなに綺麗でしょう? 心だって、女の人みたいな繊細さと男の人みたいな荒々しさを持ってるじゃない?

 まるで一人で完結した、両性具有の人みたいじゃない。体は女の人、心は男の人──そんなものじゃなくて。

 心が雌雄どちらもに均衡してる、とても珍しい中性の人ね。だからなふだも高く買ってるのでしょう?」

 

「……まぁ、わからなくはないですけど……」むっとしたなふだはあまり怖くない睨みを利かせて。「だからってそれは無理やりすぎでしょう。私だってやってないのに。ずるい」

 

 あまり聞きたくない言葉まで聞こえてしまった。俺の耳は馬鹿になってしまったのだろうか。

 まぁ、彼女がそんなことを言うわけがないだろう。俺の間違いだ。記憶の底に放り込んで忘れることにした。

 

「涼ちゃんは肉体的にどちらにもなれるけれど、心は男の人のものでしょう? それはそれでまた別の美しさがあると思うけど。

 ハピコさんはそれと違って、女の人の器に対して、その中身は──どちらにも傾くような、まだ分かたれてない中性。一人称からすると少し男の人のほうに寄ってるのかも?

 なんにせよどちらも一生に一度出逢えればすごく幸運なほうじゃないかしら。そんな人と出逢ったんだから、少しくらい楽しんでもいいんじゃない?」

 

「がるるるるる……ふしゃー!」

 

 「それは私のキャラー!」と三丁目の家猫が訴えるのを無視してなふだは俺にひしっと抱きついた。

 

「……怒らせちゃったかしら? ごめんなさい」

 

 少ししゅんとしながら謝った彼女は、俺に視線を定め。

 

「ハピコさん、いきなりごめんなさい。これからも仲良くしてくれますか?」

 

「まぁ、それはいいけど……」

 

 よくわからない。

 掴みどころがない……というか、目から表情が読めない。何を考えているかわからないし、なにを思っているかすらよくわからない。

 浮世離れした雰囲気は、画面越しに見ていた彼女と全く同じ。

 

 昔俺は彼女を天才だと思った。そしてそれは間違っていない。まごうことなく彼女は天才だ。

 

 けれど。

 それではまだ温い評価だったかもしれない。

 

 未だに熱の残る唇を袖で拭って、俺はそう思った。

 

 

 

 

「はじめまして! 私三丁目にゃんこだにゃ──です! よろしくおねがいします! あー! 前から会ってみたかったんですよ!」

 

「お、おう。語尾は?」

 

「にぐっ……え、えっと……その……恥ずかしくて……」

 

「語尾は?」

 

「う、ううう、ううぅ──……にゃ、にゃん?」

 

「結局にゃんにしたんだ」

 

「あ、はい。そうだにゃ──です」

 

「にゃんじゃないんだ」

 

「いじるのはやめてくださいよぅ、もう……。

 会ってみたかったっていうのは嘘じゃないですよ、ちゃんと私も家から出て探したんですからね……」

 

「……あー、うん。あのときはごめん。探してくれてありがとう」

 

 配信と印象が全然違った。

 普段配信で見ているのは、もっと性格がひどい感じだったのだが……どうしてだろうか。

 

 次。

 

「はじめました。出逢い販売、はじめましたよー。ハルハハール・ハルハールですー」

 

「冷やし中華みたいなノリで言われましても……」

 

「敬語要らないですよ。ということで、私とあなたとの出逢いを記念してこれをあげますー」

 

「……あの、これって羽ペン……?」

 

「ペン先が普通のニブになってるやつだから本物とは言えませんけどね。これからも文房具の沼にハマってください」

 

 そう言って去っていったが……これはどうしよう。高いものじゃないんだろうか。

 まぁいいや。もらえるならもらってしまえ。

 

 次。

 

「よーっす。俺っちが座津田(ざった)からくりだよーん」

 

「こんにちは。この前はすみませんでした」

 

「別にいいよあんなの。日常のアクセントと思えば全然よ、全然。興味ないことやるよか全然よかったさ」

 

「そういってもらえると助かります……」

 

「敬語も要らねぇぞ? にしても……ソラから狙われるとかかわいそうに。あいつ押しが強いから何するかわからん。気をつけろよ。もしなんかあった場合はなふだだったらどうにかするから頼ってけな?」

 

「あ、……おう。わかった、忠告ありがとうよ」

 

 こちらといえば、かなりイメージ通りの顔つきと性格だ。いわゆる兄貴分といった感じの、さっぱりとして気持ちいい話し方をする。

 だからこそVTuberという、機械を実際に見せることのできない……いわば強みを潰されているようなコンテンツの中で生きているのにも関わらず、人気を獲得することができたのだろう。

 

 しかしドモールの機材はからくりが監修しているという噂があるし、意外と相性が悪くなかったりするのかもしれない。

 少なからず天才ということは間違いない。

 

 次。

 

「はじめましてー、ふわりですー」

 

「あ、うん。はじめまして。……何歳かな?」

 

「ナイショですよ?」

 

「そっか。よろしくね」

 

「ハピコちゃんとは前から会いたかったのですー」

 

「そう? 嬉しいな」

 

「実際あったら、思ってたよりもふわふわしててかわいい人でした」

 

「…………そう?」

 

「あ、照れてますねー?」

 

 動画で見たようなふわふわしたよくわからない生き物ではなくちゃんと人間だが、異常に幼い見た目をしている。頬なんかは触れるともちもちどこまでも伸びそうだ。美少女。まごうことなくそれであることは間違いない。

 とは言え流石に幼すぎるだろう。正直びっくりした。

 

 次。

 

「はじめましてー! 羚羊(かもしか)蝦夷鹿(えぞしか)ですっ!」

 

「あ、善悪とはじめて一緒に配信したときに見に来てくれてたよな? ありがとう。この間探してもくれてたらしいね。ほんとにごめん」

 

「あ、覚えててくれたんですね! それとあのときのことは問題ナッシングです! 私は私のやりたいことをしただけですから」

 

「どうして俺を探すのがやりたいことになるんだ?」

 

「えへ。私、善悪さんにはすっごくお世話になりましたから。ハピコさんの前だとすっごく先輩生き生きしてますし、楽しいんだろうなぁって。だからあれは終始私のためにやったことです! そんなのに謝られてもノンノン! こっちがむしろ謝りたいくらいですよー!」

 

「そっか。でも、ありがとな」

 

「……えへへ。そういうところがみんなに好かれるんだと思いますよ?」

 

 とにかく明るそうな雰囲気を絶やさない子だ。こちらをまっすぐと見据え、ほにゃっとした笑みを浮かべるさまは犬を連想させる。一挙一動にキレがあるから、彼女の3D配信がこのあと行われるのを見るのが楽しみになる。

 声もハリがいいので、おそらくは昔舞台なんかを経験している子だろう。演劇部とかだったのだろうか。

 

 次。

 

「はじめましてぇ──! ノーブル・ベルゾナーだよ! あ、カワイイ! 実物は思ったよりもカワイイよすっげーカワイイ! そりゃあソラちゃんも気に入るわけだ! はいぎゅー!」

 

「ふむぎゅっ……あ、あの!?」

 

「……ヤバ。すっげ-抱き心地。革命だよこれ……ハピコちゃん、私の抱き枕として永久就職しないか……?」

 

「え、嫌だけど」

 

「がーん。マジショック。でも会った時くらいは抱きついてもいいよな? な?」

 

「……まぁ……それなら……」

 

「よっし! 言質はとったぞ!? 絶対だ! 絶対だからな!」

 

 なんとも勢いのある彼女。動画などでは天才物理学者を豪語するが、実際はどうなのだろうか。天才を名乗るならそれくらい自分で作ってくれと思うのは駄目だろうか。そもそも俺は物理学を全く知らないからなにをやっているのかもわからない。

 ただ、彼女のハグはちょっとだけ求められている感覚を満たすような気がして、駄目になりそうな気がする。あんまり乗らないようにしよう。

 なふだと善悪と連理の視線がちょっと怖かったし。それ以上に怖いのはソラのなにを考えているのかわからない目。

 

 次。

 

「はじめましてー、夏目(なつめ)死織(しおり)ですー」

 

「あ、この間探してくれてたよな。ありがとう。あとその服装暑くない?」

 

「別に礼を言われることじゃないですよっと。服は結構快適なんですよこれ。ほら、上着にファンがあるでしょう? だからこんなコートでも結構涼しくなるんですよ。まぁ汗は出ますけど……」

 

「駄目じゃない? 大丈夫か?」

 

「外ではこれ脱げませんね。透けちゃったりしたら恥ずかしいし」

 

 そう言ってからからと笑った彼女はにこやかだ。目の下に大きな隈ができている彼女だが、むしろそれこそがチャームポイントのように見える。モデルも彼女の特徴をそのまま流用したのだろう。同一人物といえば納得できるくらいには、アバターはそっくりだ。

 というか、『じぐざぐ』のキャラクターは中身ありきでの作成をされている。それぞれの持つ特徴を活かすために、個人個人の目立つポイントはかなり押さえているのだ。

 絵師さんがすごい。

 

 次。

 

「はじめまして! 三橋(みつはし)八橋(やつはし)って言います! シャレみたいな名前してますけど素面ですからね! このネーム案出したの俺なんですけど、結構ハマってると思いません?」

 

「そうだな。名前とセットで少し話せばすぐにどんなタイプの人間かわかるくらいにはハマってると思うぜ」

 

「でしょう!? 同期には結構馬鹿にされるんですよねぇ、特に死織! あいつ昔から──あいたァッ!?」

 

 後ろから飛んできた何かが八橋の頭を打つ。そのまま倒れた彼は死織に引きずられていった。

 そのときのにっこり笑顔は、なんというか凄みがあった。なるほど、彼女は彼との付き合いの長さを隠したいわけだ。

 バレバレなわけだが。曖昧に笑って流しておく。

 

 次。

 

「はじめまして! ネクロム・ミーナでーす! ハピコちゃん、かわいい!」

 

「流行らないし流行らせないでください」

 

「あ、敬語は要らないぜぃー! それとその願いは私の力を大きく超えている」

 

「じゃあ何ならできるんだよ」

 

「超越的存在とか根源的破滅招来体の招来とかとか!」

 

「助けてウルトラマン……!」

 

 設定的には自分をネクロノミコンの擬人化と思い込んでいる魔術師の彼女だが、見た目はかなりかわいらしい。耳にちゃらりと星型のイヤリングをつけ、二又の赤黒い髪の先端はゆるやかにカールしていた。喋り方と勝ち気な表情がとても設定とマッチしているようにも思える。

 

 次。

 

「アリューニア・ベルケット。よろしくおねがいします」

 

「この間探してくれてたらしいね。ありがとう」

 

「その敬語の付けるつけないの判断はどこが基準なんですか?」

 

「あ、ごめん嫌でしたか? すみません、動画の配信でのユーザーとの雰囲気とかから考えてました」

 

「あ、あ、いえ、違います! 違いますよ! 大丈夫です! タメ口でおねがいします! 単純に疑問だっただけですから! あわ、あわわ、ごめんなさい!」

 

「そう? じゃあそうするな。別になにも思ってないし慌てないでいいよ」

 

 といって手をばたつかせていた彼女の頭を撫でた。ちょっとあれかとも思ったが、それでも意外と受け入れてくれるようでよかった。こっちの手に頭を擦り付けてくる彼女を見て少し癒やされる。

 動画では比喩が上手な子だ。丁寧な比喩から生み出される笑いは、俺もかなり好きな部類に入る。

 クールぶっているがすぐにテンパるギャップもある。そりゃあ人気も出るだろう。

 

 次。

 

「はじめまして、テレスト・アリアですー。お会いできて光栄ですー」

 

「この間はありがとうございます、わざわざ探してもらって……」

 

「いえいえ、大丈夫ですよー。あ、敬語も入りません。ところで、このあとの歌も聴いていくんですよね?」

 

「その予定だけど、それがどうした?」

 

「じゃあ、聴いててくださいね。私の歌声。絶対に後悔はさせませんから!」

 

 そうして、芯の通った視線が俺を刺した。思わず笑みが出る。

 こういう自信のある子は好きだ。それが結果として伴わなくても、自信を持ち続けている人というのは成長するからだ。

 俺は知っている。何より知っている。

 まるでそれは──。

 

 次。

 

「はじめまして、ウルセラ・レミックスですー! あ、これLINEのQRコード印刷したやつです。よかったらどうぞ!」

 

「あ、ありがとう」

 

「にしてもやっぱり肌綺麗だなぁ。いっつもどうやってお手入れしてるんですか?」

 

「え? えっと……してない」

 

「神様を殺してきますね」

 

「え、あ、ちょっ」

 

 もともと動画でもおかしなところがあったが、それにしたってよくわからない。俺が首を傾げているのとは逆に、女性陣は共感するような顔で去っていく姿を見送っていた。

 これは俺がおかしいのだろうか。

 

 次。

 

「始めまして。黒墨(くろすみ)黒桐(こくとう)です」

 

「あ、うん。なんというか……キャラよりも顔がいいんだな?」

 

「美人は三日で飽きるって言うじゃないですか。男もたぶん似たようなもんでしょう。だからすごく普通な顔にしてもらったんですよ。自分の顔、立ち絵のほうが本当の顔だと思えるくらいには好きじゃなくて。

 ──ハピコさんは、そう思ったことないですか?」

 

「ないな。ただ、自分の顔が本当の顔に思えないっていうのはわかるぜ。

 それもよくわかる」

 

「……そうですか。

 共感されたのは、はじめてです」

 

 少し笑っての最後の発言。彼はそうして、握手をしてから後ろに下がっていった。

 顔が自分のものとは思えない。俺もそうだ。ひょっとすると彼も俺と同じ事情を抱えているのかもしれない。そうじゃないのかも知れない。でも、この共感だけはおそらくは持っていてもいいはずだ。

 間違っていることじゃないはずだった。

 

 次。

 

「はっじめましてー! しじま静謐(せいひつ)ですよー!」

 

「え、誰?」

 

「あ、配信見ててくれたんですね! ありがたいなぁ……もうなんかこの返しがくるだけで嬉しくて涙が……うう……」

 

「え、嬉しいのか!? あれ悲しくての涙じゃなくて!?」

 

「ああ、様式美ってあるじゃないですか。あれを自分で生み出したんだなぁって実感がすごくあって! それがなにより嬉しいんすよ!」

 

 『じぐざぐ』内部でも影の薄い彼は、そう言って朗らかに笑った。目は少し潤んでいる。

 それだけテンプレート──様式美としての流れが出来たことが嬉しいのだろう。

 自分の配信内で通る記号。それが彼にとっての『誰?』なわけだ。

 不本意ながら俺の言われている『ハピコちゃん、かわいい!』みたいなものだろう。あれは元ネタがあるからあれだが。

 

 次。

 

「はじめまして。白雪ゆきのですの」

 

「かわいいですね」

 

「──あら? そんな……照れて溶けてしまいます。あんまりそう、褒めないでいただけると……。

 あと、私に敬語は要らないです。自然体で、好きなように、のんびりと話してくださいませ」

 

「あ、そうか? じゃあそうするよ。ありがとう。

 あと、この間はわざわざ探してもらってごめん」

 

「気にすることじゃないですよ。私がそうしたいからしただけですから。

 ……なにもかもから逃げたいときってありますものね。でも、自分の命からだけは逃げちゃいけないんですよ」

 

「……うん。わかってる」

 

「ですから、そんなときは私達『じぐざぐ』に頼ってくださいね。あなたはまるで、昔の私みたいで……ちょっと危うく見えちゃうんです」

 

 そう言って穏やかに笑った彼女は、口に手を当てて「それでは」と下がっていった。

 流石は『じぐざぐ』随一の清楚。まさにおしとやか。大和撫子の体現のようだ。

 

 ──わかっている。

 自分の命から逃げるときは、それが本当に最後の終わりになる。

 だから逃げられない。

 わかっているんだ、そんなこと。

 

 今は向き合える。きっと向き合える。だから大丈夫だ。

 大丈夫のはずだ。

 

 次。

 

「はじめまして! ミクルミック・ミーニャです!」

 

「はじめまして。何歳かな?」

 

「ミーニャは十六歳! 涼くんと同じなのですよ!」

 

「十六歳……見えないな。あと一人称がミーニャなのか。ロールプレイとかじゃないんだな」

 

「ミーニャは……そう……オタクのパパとママがこう、理想の教育としていろいろとこうしろとかああしろとか言われたせいで……癖になっちゃって……」

 

「そんなのもあるのか……」

 

 「また今度コラボしてねー!」といいながら下がっていく彼女は、やっぱり十六歳には見えない。

 癒やされる気分だ。絶対にどこかでコラボ配信したい。

 

 次。

 

「はじめまして、こいつが凶鳥です。俺はノブル。よろしくおねがいします」

 

「うん、よろしく。……どうして二人で来たんだ?」

 

「こいつ極度の緊張しいでして。特に美人の前では異常に緊張して暴走しそうになるっていう」

 

「ああ、なるほど」

 

「今度なにかの企画で一緒になることがあればよろしくおねがいします」

 

 そう言って、二人は去っていった。

 結局凶鳥は喋ることもなかった。大丈夫だろうか。内弁慶なんだろうか。配信ではあんなに喋ってるのに……。

 

 次。

 

「はじめまして! 長寿庵(ちょうじゅあん)あずきです!」

 

「よろしく。この前探してくれてたんだよな。ありがとう」

 

「わーい! 褒められちゃいました! 愛してます!」

 

「……軽々しく言うことじゃないぞ?」

 

「あ、はい。わかりました。マクドナルドのポテトくらい好きです」

 

「わかりづらい……!」

 

「えへへ。大好きってことですよ。特に理由はないですけど」

 

 よくわからない。

 俺にはよくわからない。理由なく人を好きになるような、その心がわからない。

 なんとなくで人を好きになることは──俺にはないのだ。

 

 次。

 

折手(おりで)切片(せっぺん)です。よろしくおねがいします」

 

「あ、どうも。この間探してくれたんですよね。ありがとうございます」

 

「どういたしまして。今日の生歌、楽しんでいってくださいね」

 

 それだけ言って、彼は下がっていく。

 

 次。

 

「はじめましてー! 憂鬱間(ゆううつかん)みなかです!」

 

「はじめまして。よろしくね」

 

「はい! あ、ハピコさんハピコさん! これあげます!」

 

「え? ──ああ、ありがとう。似合ってるかな?」

 

「ええ!」

 

 「それじゃ!」と言ってあっさりと去っていく彼女。配信とは違ってかなりアッパーなテンションだった。

 かけた首飾りは、少しだけ重みに違和感がある。それが心の重みなのか。俺にはいまいちわからなかった。

 ──いつかわかるのだろうか?

 

 次。

 

「は、はじめましてっ! アルト・ワルターですっ! 涼くんから話はかねがねっ!」

 

「あ、緊張しなくていいぞー。涼の友達?」

 

「友達というか……なんというか……仲はいいです! でもネットから知り合ったのでそう言っていいのか……」

 

「難儀な子だなぁ。友達で問題ないだろ。

 ま、仲良くしてやってくれよ」

 

「は、はいっ!」

 

 わたわたとして後ろに下がっていく彼──彼でいいんだよな? 彼は、なるほど。連理がなつくのもわかるとおりに素直な性格をしていた。

 

 ……今ので全員か。

 とりあえずこれで終わりだ。

 結構時間を食ってしまった。とりあえずここからどうしようか。そう思っていると、統括・カイラが提案した。

 

「──じゃあこっからリハで! 僕はいなくてもいいよな! あとハピコさんには本番を見せたいよな! ということで俺とハピコさんはちょっと外で話してくるからその方針でよろしく!」

 

 不満は上がることはなかった。異論もない。

 だから、そういうことになった。

 

 

 

 

 外。少し歩いた場所にあるカフェ。

 その席に二人対面で話す。

 

「で、どういう話がしたいんだ?」

 

「ちょっとしたことです」

 

 彼はテーブルを人差し指の腹で叩き。

 

「──今後のあなたと『じぐざぐ』の関係性について、しっかり話しておいたほうがいいでしょう?」






 キャラ紹介いれたら普段より3000字オーバーしちゃった……
 日付変わってないので……。

 音楽系VTuberたちのコンピレーション・アルバムがまた発売しますよ
 前回は「こだまのうた」と「Lunatic Mountains」と「勇者のくせに」が特にぶっささりましたね……。いくつかYouTubeに上がってるのでぜひぜひ前回の曲も聴いてみてください。上の三つはあります。

番外編をするとしたら

  • 過去編
  • 公式ライブ
  • なふだちゃんお家騒動
  • 全部
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