青の魔法少女と水のヒーロー(旧:魔法少女と超英雄)   作:ジョン・N

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第15話 ショッピングモール大バトル!①

 

 

 

 ショッピングモールの広間に、シクルキとヒューニが現れて間もなく、沙織の使い魔であるミーは、二人の放つ魔力を感じ取っていた。

 

「ホントなのミー、近くにハデスがいるって?」

《間違いないよ。今もハデスの邪悪な魔力を感じるから!》

 

 沙織はミーの後を追う形で、混雑している人の合間を縫いながら走る。

 お店で選んだ服を試着しようとしていた彼女であったけど、ミーがハデスの魔力を感じて走り出すと慌てて後を追った。もう今の沙織は、俺が待っていたことも忘れている。

 

「キャーー!」

「逃げろォ!」

 

 ミーに続くままに走っていると、やがて彼女の向かう先から人々の悲鳴がこだました。そして沙織は、向かう先から逃げてきたと思われる人たちとすれ違う。その皆の顔には怯えや恐怖の表情が張り付いていた。

 瞬間、地鳴りのような轟音が鳴り響いた。

 

「うわぁぁ、な、なにィ!」

《この先でハデスが暴れてるんだ!》

 

 前方から聴こえてきた大きな音に驚き、沙織は足を止める。

 今の轟音でノーライフがいることを実感した沙織は、ポケットに仕舞っていた宝玉を取り出して握った。

 

「もぉぉ、せっかくの休みだったのにぃ! マジックハーツ、エグゼキューション !」

 

 キーワードを唱えると、宝玉から発せられた神聖な光が彼女の身体を包む。

 やがて閃光が消え、沙織はマジック少女戦士のコスチューム“キューティ・サマー”となった。

 

《沙織、一人で大丈夫?》

 

 ミーに訊かれ、一瞬、沙織の顔つきが変わり、大人しくなった。

 

「……確かに、私ひとりで戦うのって今回が初めてかも。だけど、だからって黙って見てらんない!」

 

 そう言って駆け出しながら、沙織はキューティ・サマーとして騒ぎの中心へと足を踏み入れた。

 たどり着いた場所では、シクルキが辺りを破壊しながら愉快そうに高笑いしていた。

 

「あっ! アンタは!」

「来たか、小娘!」

 

 暴れていたシクルキは、邪な笑みを向けた。

 

「またアンタなの? いい加減にしなさいよ!」

「キャーシャシャ、なんだ今日は一人だけなのか?」

「ふん、アンタなんか私ひとりで十分よ!」

「ほざくなガキが!」

 

 お互いに思った言葉をそのまま吐き出す。もう既に何回も戦い、逃がしたり仕留め損ねた相手だ。怒気の差異はあれど、顔を見るのも鬱陶しく感じるらしい。

 

「……まぁいい。何人で来ようと関係ねぇ。今日こそ俺様の鎌の錆びにしてやる!」

「ふん、やれるものならやってみろってのぉ! シャインロッド!」

 

 サマーは自分の武器である(ロッド)を、ブンブンと風を斬る音を立てながら回して先端をシクルキに向ける。対して、シクルキは両腕の鎌を構えて威嚇した。

 

「待ちなさい」

「えっ!」

 

 戦闘開始と思われた瞬間、広間に低い女の声が響いた。

 すると、シクルキの背後から大鎌を持ったヒューニが姿を現す。無感情の瞳と大きなクマ、闇のように深い黒の長髪と装飾の付いたドレスを着た彼女に、サマーは目を見張った。

 

「あなた、誰?」

「あなたの敵よ」

 

 どこか小馬鹿にした口調でヒューニは答えた。

 

「敵って……でも貴女、ノーライフって感じじゃないよね。てことは、ハデス?」

「クスっ、敵がいちいち教えるわけないでしょ」

 

 見下した眼でサマーを見ながら、ヒューニは大鎌を振った。

 

「ちょッ危なッ!」

 

 その場にいるとマズい……そう今までのバトルから感じ取ったサマーは、すぐにその場から退いた。

 瞬間、サマーが立っていた床にキズが走る。ヒューニの振った大鎌から発せられた風が斬撃となって走ったのだ。ショッピングモールの床はえぐれ、峡谷のようになっていた。

 事前にシクルキが暴れていたこともあり、その場の荒れた様は、もはや戦場だ。

 

「何がなんだか分かんないけど敵だって言うなら……サマーマジック!」

 

 サマーが始動呪文を唱えると、シャインロッドの先端に魔力が収束されていく。

 

「暗闇を照らす浄化の光よ、敵を撃ち払え!」

 

 収束された魔力はキラキラ輝きながら、数発の光の弾丸となって、ヒューニに向かって飛んだ。

 しかし、ヒューニは表情一つ変えず、何事もないように大鎌を振るって飛んでくる弾丸を斬った。いずれの弾丸も、ヒューニにたどり着く前に音もなく飛散した。

 

「そんな……!」

「私は遊ぶつもりで来たんじゃないの。命が惜しければ、私の質問に答えなさい」

 

 サマーの放った弾丸の威力は、シクルキのような頑丈なノーライフでも、ただでは済まないはずだった。

 その弾丸をヒューニは埃でも払うように、いとも簡単にあしらった。

「“ラッキーベル”はどこ?」

「ッ!」

 

 ヒューニの問いに、驚愕していたサマーの表情が、一瞬にして曇った。

 

「な、なんのことかなぁ……!」

「……チッ!」

 

 額に汗を浮かべてわざとらしく誤魔化すサニーに、ヒューニは不愉快そうに顔を歪めて大きな舌打ちをした。そして次の瞬間、彼女の姿がブレて、立っていた場所から消える。

 

「グッ!」

 

 するとサマーの身体が横に吹き飛んだ。彼女はボールのように床をはずみ、お店の陳列棚に衝突する。サマーが立っていた場所には、ヒューニが脚を上げて立ってした。どうやらヒューニがサマーを横蹴りしたらしい。

 

「い、痛ぁぁ!」

 

 サマーが横腹を押さえて痛みに耐いる間に、ヒューニがゆっくり歩み寄る。

 

「おい、ソイツは俺の獲物だぞ!」

「黙ってて、クソ虫」

「あん?」

 

 途中、シクルキが苛立った顔になったけど、ヒューニはそんなことは知ったことではないといった感じで無視した。彼女は倒れたサマーのそばに立ち、サマーを見下しながら大鎌の刃を向けた。

 

「もう一度訊くわよ、“ラッキーベル”はどこ?」

「……誰が言うもんか!」

「あっそう……じゃあ、死ねクソガキ」

 

 ヒューニは鋭利な大鎌の先端でサマーを突き刺そうと、鎌を振り下ろした。

 目の前に迫ってくる刃に、サマーは反射的に目をつぶることしかできなかった。

 

 

 

 ***

 

 

 

 ヒューニがサマーに大鎌の刃を振り下ろそうとした瞬間、ショッピングモールの広場に一発の銃声と金属が弾ける音が響いた。

 

「ヒューニ、武器を捨てて投降しなさい!」

 

 そして、凛とした女性の声がヒューニに投げかけられる。

 下す大鎌の手を止められたヒューニは、無表情になって声が聴こえてきた方へ視線を向けた。

 そこには、ハンドガンの銃口を向けたガーディアンズのエージェントが一人立っていた。

 

「ゼロさん?」

 

 サマーがエージェントのコードネームを溢した。

 

「あらあら、お早いご到着ね」

「ガーディアンズはネット情報や高宮町の監視カメラを常時チャックしてるわ。あなた達が現れれば、10分も掛からずに現場に出動できる」

「ご丁寧な説明、どうも」

 

 ガーディアンズの本部から高宮町までは電車で2時間ほどかかるが、出動時に限ってはジェット機やヘリコプターを使用するので、移動時間は5分も掛からない。

 この場にいるのは、エージェント・ゼロ……玲さんだけだが、出動しているのは彼女だけではない。

 

『エージェント・ゼロ、市民の避難完了しました』

「了解。各員、引き続き周囲の警戒と避難誘導を続行せよ」

『了解』

 

 現場の周辺では玲さんと共に来たガーディアンズのエージェントが市民の避難誘導を行っていた。

 

「それに、来てるのは私達だけじゃないわよ」

 

 瞬間、何かの影が過ぎり……というか、まぁ、俺なんだけど……俺は、ヒューニ達に向かって思いっきり走り込み、飛び蹴りをかました。しかし、勘の良かったヒューニはその場からすぐに飛び退き、進行方向の先にいたシクルキだけに攻撃が当たる。俺の飛び蹴りを受けたシクルキは床に弾むこともなくまっすぐ飛んでいき、大きな音を立てて壁にめり込んだ。

 玲さんと示し合わせたようなタイミングになったけど、それは偶然だ。

 

「えっ……ハイドロード、さん?」

 

 ハイドロードのコスチュームを着た俺を見て、サマーは瞬きした。ちなみに、玲さんが気を利かせてくれたおかげで、スネークロッドも装備済みだ。

 

「やぁ、キューティ・サマー」

「おっ、覚えててくれたんですか!」

 

 うわぁ……声がいつもより高いし、眼がキラキラしてる。

 今回でサマーとは二度目の顔合わせになるけど、沙織(サマー)から憧れの眼差しで見られると、なんだか心がむず痒い。

 多分、今の俺は顔を引きつらせたような微妙な表情をしていると思う。ハイドロードのマスクがあって助かった……いや、マスクを被っているから、こうなってるのか?

 

「グラァァーーッ!」

 

 そんなことを考えているのも束の間、俺が蹴り飛ばしたシクルキが雄叫びを上げて、思いっきり瓦礫を殴りながら土煙の中から出てきた。

 

「人間の分際でェ、よくも俺様を蹴りやがったなァ!」

 

 過去に何度か遠目で見たことあったし、話にも聞いていたが、ホント柄が悪いな。やられ役の三下みたいだ。

 

「サマー、あのカマキリをお願い。そこの魔法使いは私たちが引き受けるわ」

「えっ、あっはい!」

 

 ハンドガンの銃口と鋭い眼光をヒューニに向けながら、玲さんはサマーに言った。戦闘時とあって、いつもより張り詰めた雰囲気になっている。

 それを見てサマーは若干戸惑った様子だったけど、すぐに返事をして気を引き締めなおした。

 

「死ねェ、サルがァァ!」

「アンタの相手は私だぁ!」

 

 鎌の手を振り上げながら俺に向かって飛びかかろうとしていたシクルキだったけど、横からきたサマーに思いっきりロッドで殴られ、またどこかに吹き飛んでいった。

 どうでも良いけど、魔法少女の杖でその戦い方はあってるのか……?

 

 

 サマーは飛んで行ったシクルキを追って、その場を後にした。そして、残された俺と玲さんはヒューニと対峙する。

 

「言っても無駄だと思うけど、規則だから言っておくわ。ヒューニ、我々ガーディアンズは雪井彰人の件であなたに訊きたいことがたくさんあるわ。大人しく投降して私達と本部まで来なさい」

「イヤよ」

「同行を拒否するなら、取り押さえて連行することになるわ」

「ふーん、やってみれば良いんじゃない?」

 

 玲さんに銃を向けられながら警告されても、ヒューニは平然としている。

 素人が余程自分の力量に自信があるのか。それとも……。

 

「そう。それなら……」

 

 俺がヒューニの思惑を勘ぐっていると、突然、銃声が響いた。

 振り向くと、玲さんの持っているハンドガンの銃口から煙が上がっていっていた。

 

「えっ、撃った?」

「そりゃあ敵なら撃つでしょ」

 

 いや、最初の一発は威嚇射撃とか……ね?

 ノーライフならまだしも、一応ヒューニは人間(?)なんですから。

 

「チッ、痛いわねぇ」

 

 お前も無傷なのかよ!

 急所じゃなかったとはいえ、ガーディアンズのハンドガン……ベレッタって言ってたかな……それを肩に受けて、すれ違いざまに肩と肩がぶつかったようなリアクションで済むのはおかしいぞ?

 

「どうやらノーライフと同じで、彼女にも物理攻撃は効きにくいみたいね」

「魔法って便利だなぁ」

「貴方の身体や能力も似たようなものでしょ」

 

 それはまぁ、はい……おっしゃる通りで。

 そんなやり取りを玲さんとやっているうちに、ヒューニが大鎌を構えて怖い顔をしながらこっちを向いた。対して、玲さんは銃を握る手の力を強め、俺はスネークロッド構える。

 

「先に仕掛けたのは、そっちだから」

「いやいや、そもそもここに暴れに来たのはそっちだろ?」

 

 そんな会話を交わした後に、ヒューニとの戦闘が始まった。

 

 

 

 

 

 

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