青の魔法少女と水のヒーロー(旧:魔法少女と超英雄)   作:ジョン・N

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第2話 おしごと

 

 

 

 片側二車線の大通り。周りは見上げるほど大きなオフィスビルが並んでいる。駅からそれほど遠くないその場所は、普段は多くの人達が行きかい、様々な車が走っている活気のある高宮町の一角だ。

 だが、今そのオフィス街の大通りは、陰鬱な雰囲気が漂っていた。

 

「キャーシャシャシャシャッ!」

 

 道の中心には、普通の生活では絶対に見かけないマスコットのような生き物が高笑いしている。

 大きなカマキリのマスコット。言葉にすればそんな感じだ。だがマスコットといっても、その二メートルはある大きな身体と大鎌のようなハサミの腕は、見た者に恐怖を与える。

 

「キャーー!」

「な、なんだアレはッ!」

「化け物よ! 化け物だわ!」

「とにかく逃げろォ!」

 

 突如現れた生命体の姿に、周囲にいた人々は悲鳴を上げながら逃げ出していた。

 カマキリはその逃げ惑う人々をあざ笑うように大きな笑い声を響かせ、周りのドライバーが乗り捨てた車を斬り裂いていく。

 

「恐れろ! 怯えろ! もっと悲鳴を上げろ! お前らの絶望が俺たちの餌となるのだァ!」

 

 “ハデス”という悪の組織から生まれた“ノーライフ”と呼ばれるその生き物は、周りの逃げ惑う市民から負のエネルギーを吸収して力をつけていく。

 その様に市民は恐怖して、更にノーライフが狂暴化していくという悪循環が生まれていた。

 

 

「そこまでよ!」

 

 突然、その場に鋭い少女の声が響く。

 

「あァん?」

 

 カマキリのノーライフが声のした方に眼を向けると、そこには三人の少女が立っていた。

 

「この街で悪さをするものは、私たちが許さない!」

「これ以上、皆を怖がらせるわけにはいかないわ!」

「覚悟なさい!」

 

 ピンク、ブルー、イエローのドレスを着た少女たちは、ノーライフに挑むように構えを取った。

 対して、ノーライフは三人少女たち……マジック少女戦士“キューティズ”を睨みつけ、ハサミのようになったアゴをカチカチと鳴らして威圧する。

 

「テメェら、また邪魔しに来たか!」

 

 カマキリのノーライフ、名前は《シクルキ》。気性の荒い性格で、その腕の鎌は鉄を切り裂くほどの力を持っている。

 過去5回、今のように高宮町に現れて暴れたが、いずれもキューティズによって追い払われていた。

 

「今日こそ、ブッ倒してやらァ!」

「それはこっちのセリフよ。今度こそ逃がさないわ!」

 

 シクルキは「やってみろやァ!」と腕の鎌を大きく広げて、キューティズに斬りかかった。三人はその場から飛び上がり、シクルキの斬撃を躱す。

 

「ウィンドガンナー」

「シャインロッド」

「メイプルブレード」

 

 着地と同時に、三人はそれぞれが携帯している固有の武器を出現させた。

 魔法で作られたそれらの武器は、それぞれ三人のコスチュームにあったカラーリングとなっている。ピンクの“銃”、ブルーの“杖”、イエローの“剣”だ

 ちなみに、武器を出現させる際に三人が武器の名前を言うのは、それが発現させるためのキー……いわゆる呪文の役割をしているからだ。

 それは、技も同様である。

 

「スプリング・ブレット!」

 

 ピンクコスチュームの少女“キューティ・スプリング”がシクルキに狙いを定めて、風を凝縮した弾丸を撃つ。瞬時に放たれた弾丸の群れは、大きなシクルキの身体の各所に命中して、その衝撃は硬い装甲を持つシクルキに「グっ!」とうめき声を上げさせた。

 

「テェヤァァ!」

 

 続いて、ブルーコスチュームの少女“キューティ・サマー”がシクルキに飛び掛かってロッドを振り下ろす。

 シクルキは両腕の鎌でロッドの一撃を防いだが、腕をあげたことで逆に懐ががら空きになった。

 その無防備になった腹部に狙いを定め、サマーは回し蹴りを打ち込んだ。

 

「ガァッ!」

「まだまだぁー!」

 

 シクルキの体勢が崩れたのを見切り、サマーはロッドを巧みに扱って二撃目、三撃目と攻撃を打ち込む。

 

「グっ、なめんなァ!」

 

 怯んでいたシクルキが怒りをぶつけるように鎌を振って反撃に出た。

 

「サマー、避けて!」

 

 後ろから聞こえてきた声に、サマーは跳躍してその場から離れた。そのおかげで、またシクルキの大鎌が空を斬る。

 自身の攻撃がかわされ、シクルキが舌打ちをした。だが次の瞬間、サマーの立っていた場所にイエローコスチュームの少女“キューティ・オータム”が現れる。

 

「斬り伏せる!」

 

 オータムは両手で持ったロングソードを構え、大きく踏み込んだ。

 

「メイプルスラッシュ!」

「ぬぅぅ!」

 

 シクルキのうめき声と共に、鉄を叩いたような音が辺りに響く。

 振り抜かれたオータムの剣は、シクルキの硬い皮膚にヒビを入れた。

 

「このッ、またしても俺の身体にキズをォ!」

「くっ、ホントに硬いヤツ……!」

 

 お互いに苦い顔をして、シクルキとオータムは睨みあった。

 

「オータム、もう一撃!」

「そんな簡単に言わないでよ」

「サマーと私で援護するよ」

 

 三人は自身の武器を持つ手に力を込めて、まっすぐ自分達の敵を見据えた。

 

 

 

 マジック少女戦士は、ノーライフと戦い、街の人々の平和を守るのが使命だ。だが、その使命は、決して誰かに押しつけられたモノなんかじゃなく、彼女たちが自ら背負ったものだ。

 この話も、また次の機会に話すとしよう。

 

 

 今、俺……水樹優人が話したいことは、このマジック少女戦士たちが戦っている裏で、別の物語が進んでいるということだ。

 

 

 

 ***

 

 

 

 キューティズがノーライフと戦っている大通りから少し離れた所には、一件の銀行があった。

 よくある大手銀行の支店だ。いつもはサラリーマンや主婦たちが利用しており、昼頃にはATMに行列ができてたりする。

 

「オラァ、早くしろ!」

 

 だが現在、銀行の中ではサングラスとマスクで顔を隠して全身黒の衣類に身を包んだ男が窓口係の銀行員にハンドガンを向けていた。

 脅している男の他にも、仲間と思われる男二人がATMに入っている金を奪うべく、なにやら見慣れない機械を使って、ATMを静かに破壊している。

 

 

 そんな現代日本ではまず見られない銀行強盗事件が起きているにも関わらず、銀行周辺はまったく騒ぎになっていなかった。

 

 

 それもそのはず、ノーライフの騒ぎのせいで銀行の周りに人はおらず、騒ぎに気づくものは銀行員と数名の利用客を残していないのだ。

 銀行に備え付けられている通報装置や警備装置も、シクルキが暴れたことによって区域の電気が供給されなくなっているため作動していない。

 

「よ、用意できました!」

「よし、そこに置け。怪我したくなかったら、余計なことするんじゃねぇぞ!」

「は、はい!」

 

 窓口係の女性銀行員は犯人に向けられた銃口に怯えながら、奥の金庫から運んできた現金の入った鞄を震える手でカウンターに置いた。

 すぐに鞄を取り、男は銃口を向けながら、出入口まで後退る。

 

「おい、早くしろ!」

「ちょっと待て、あとちょっと!」

 

 あとはATMの現金を持って逃げるだけだが、思いの外、ATMから取り出した現金を積めるのに手こずっていた。

 

「残りはいい! 早くズラッ!」

 

 早くずらかるぞ、そう口にしようとした男の言葉は途切れ、代わりに何かを打つような鈍い音と男が倒れる音がした。

 

「なっ!」

「おい、どうした!」

 

 現金を積んでいた男二人は、急に仲間が倒れたことに驚き、視線を移す。

 すると彼の立っていた後ろには、見慣れない人影があった。

 

「なんだお前ェ!」

 

 男の一人が持っていた銃を取り出して人影に向ける。そして同時にその影の正体をハッキリと目にした瞬間、男はその目をギョッと見開いた。

 

「なっ、なんでお前がこんなところに!」

「お前らみたいのがいるからだよ」

 

 人影の男は強盗の二人を見ながら煩わしそうに言った。

 

 その男は、体型のハッキリした青いスーツに身を包み、その上からプロテクターのような薄く強固な装甲を纏っている。武者が使う面頬のようなマスクで口元を、強化レンズでできたゴーグルで目元を隠され、顔はまったく分からない。

 だが、見たものに『水の戦士』という言葉を想起させるその姿は、いまや日本全国の誰しもが知る姿だった。

 

「“ハイドロード”だ!」

 

 銀行にいた客の誰かが希望を見つけたような声で、その男……つまり、()の名前を呼んだ。

 

「いいか一度しか言わないぞ。銃をおいて、投降しろ」

 

 とは言ってみるけど。

 

「うるせェ!」

 

 やっぱり……わかってた。

 

 強盗の男の一人が「この蛇野郎ォ!」と大きな罵声を俺に飛ばした。そして強盗二人は揃って持っていたハンドガンを俺に向けてくる。

 だが、二人が引き金を引くよりも早く俺は射線上から身をかわした。

 

 銃声が響き、弾丸が俺の横を横切った。銃弾とすれ違いながら、俺は強盗の二人に迫る。

 

 強盗は銃を持った手をまっすぐ伸ばしている。その腕を殴って上に打ち上げ、がら空きになった腹部に拳を一発、続けて顔面に一発。

 

 銀行の自動ドアをくぐって十数秒、強盗三人を制圧できた。

 

「この街も治安悪くなったなぁ」

 

 多分、日本の犯罪上昇率一位じゃない?

 

 そんなことを思いながら、俺は倒れた強盗三人を引きずって運ぶ。

 

「あのぉ、何か縛るものあります? ロープとか、ガムテープでもいいけど……」

「は、はい!」

 

 俺が頼むと、奥にいた銀行員の男性がガムテープを持って走ってきた。

 銀行員からガムテープを受け取り、そして俺はガーディアンズに入った時のエージェント研修でやった技能を駆使して、強盗犯三人を拘束するのだった。

 

 

 

 

 

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