青の魔法少女と水のヒーロー(旧:魔法少女と超英雄)   作:ジョン・N

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第3章 玄武とスプリング、明かされる青龍の過去
第66話 試験終了!打ち上げだぁーっと思ったら?


 

 

 

 

 

 拝啓、この文章、読んでいる誰かさん。あなたは今どこで何をしていますか?

 この異常気象な青空の下で、今日も元気に暮らせていることを、私、水樹優人は願っています。

 そして、そんな俺は今、夏休み直前の期末試験の真っ只中。いつもの学校の教室でクラスメイト達と共に黙々と物理の試験問題を解いています。

 けど、このテストを終えれば、期末試験も終わりです。

 

 

 高校生でありながら、突然イカれた科学者によって人体改造され、水を操る能力を得た俺……水樹優人は、“守護神(ガーディアンズ)”という組織に属している高校生アルバイターヒーローだ。『青龍』の称号を持ち、ハイドロードと名乗り、正体を隠しつつ活動している。

 この前は、廃工場で繁殖した強力な蜂怪人を、ガーディアンズと魔法少女の共同作戦で殲滅させた。

 

 

 そんな高校生ヒーローの俺だけど、小さい頃から何かと一緒にいる幼馴染がいる。それが俺の席の斜め前にて、答案用紙を消しゴムでゴシゴシしている少女……夏目沙織だ。

 沙織には、ひとつ秘密がある。それは彼女が中学校からの友達である綾辻千春と秋月麻里奈と同じく、魔法少女であることだ。

 今言った共同作戦を行った魔法少女というのも、彼女達三人のことだ。

 

 

 ある日、“ニャピー”という異界の生き物から素質を見込まれ、マジック少女戦士に変身する宝玉を手渡された沙織達。以降、キューティズと名乗り、日夜、高宮町に現れるハデスという悪の軍団と戦っている。

 そんな彼女たちを、俺を含めたガーディアンズは表と裏から支援している。ハデスが現れれば彼女たちが戦っている間に周辺の市民を避難誘導するし、ハデスの悪い気に誘発されて犯罪に走った人を制圧する。必要とあれば彼女達と共闘してハデスの手下であるノーライフを倒し、俺も自身の武器であるスネークロッドで撲殺……もとい牽制したりする。

 

 

 そんなこんなで、幼馴染の俺達二人はお互いに自分の正体を隠しつつ、それぞれヒーローと魔法少女として人助けをしているわけだけども……。

 実は最近、またひとつ厄介事が増えた。

 

 

 

 ***

 

 

 

 テストの終わりを告げるチャイムが鳴り、先生が答案用紙を回収し始める。期末試験最後の科目とあってクラスの皆、すっかり脱力した。先程まで漂っていた緊張感も、完全に散ってしまった。

 俺もグイッと背を伸ばして、貯まった疲労を吐き出すように、大きく息を吐いた。

 

「どうだー、テストの出来は?」

「あぁ。良くも悪くも、いつも通りって感じ」

 

 帰りのホームルームが終わってクラスが解散すると、背後から葉山がやってきて訊いてきた。

 

「葉山は?」

「俺も似たような感じだ。けど、補習は回避したと思う」

「なら、十分だな」

「あぁ、十分だ」

 

 志が低い?

 まぁ、否定はしないけど。

 

「夏目ちゃんは?」

「訊かないでぇ」

 

 続けて葉山が訊くと、自席で椅子に寄りかかって天井を見上げていた沙織が、力の無い声で返す。

 彼女の机の上ではパートナーであるニャピーのミーが燃え尽きた沙織を心配そうに見上げていた。

 

「あらら、夏目ちゃんたら夏休みは補習確定な感じ?」

「いやいや、まだ希望はある!」

「どれくらい?」

「シュレディンガーの猫くらい!」

 

 つまり、採点されるまで分からないと?

 ガバッと姿勢を正して言い放った沙織だが、口元が引きつっていて空元気まる出しだ。いずれにしろ、出来は良くないってことだろうな。

 

「まぁ結果はどうあれ、もう期末も終わったんだ。折角だし、どっか遊びに行こうぜ」

「おっ、良いねぇ! 千春と麻里奈も呼んで良い?」

「オフコース! もちろん大歓迎よ!」

「あぁ悪い、俺今日この後バ」

「それじゃあ、呼んでくるねぇ!」

「聞けよ、人の話!」

 

 この後バイトがある、という俺の言葉をかき消して、沙織はさっさと綾辻さん達のクラスへと飛んでいった。本人としても、遊んで試験への鬱憤を晴らしたいのだろう。

 

「えっ何、水樹ってばこの後バイトなの?」

「あぁ」

「おいおい、期末試験が終わってすぐにバイトって。その年でもう社畜かよ。学生の本分は遊ぶことだろうによぉ」

 

 勉強だよ。

 

「まったく、折角可愛い幼馴染みが近くにいるってのに。もっとこう、青春を楽しもうぜぇ。甘く切ないヤツ!」

「アホか。ラブコメ漫画の見すぎだぞお前。それに、こっちにも事情ってもんがあんだよ」

「貴重な青春時代を代償してバイトすることに、どんな事情があるんだよ?」

「それは……機密事項だ」

「はぁ? 意味わかんねぇ」

 

 葉山はため息をついて、やれやれと首を振る。

 

「もう良いや、俺だけで夏目ちゃん達とハーレムするから。もたもたしてると俺が夏目ちゃんのハート取っちゃうからなぁ?」

「はァ?」

「ごめん冗談。悪い冗談だからそんな睨むなよ……怖ぇって」

 

 俺が首を傾げて見ると、葉山は反射的に謝り、後退りして寒気に襲われたように身体を震わせた。特に睨んだつもりもなかったが無意識に威圧させてしまったようで、俺は顔をそらす。

 その態度をいじけたとでも勘違いしたのか、葉山は苦笑いしながら「まぁまぁ」と俺の肩をたたく。

 

「安心しろって。NTRは俺の趣味じゃねぇーし、俺の好みは夏目ちゃんみたいなスレンダータイプじゃなくて部分的にふくよかな子だ」

「それ沙織の前で言うなよ。俺より怖いぞ」

 

 胸を張って言い切る葉山を、俺はジト目で見る。高校入学からの付き合いとあって葉山が良いヤツなのはよく知っているし、女好きといっても、どこぞのエロ同人みたいに人の嫌がる事をするヤツではない。

 というより、そうでなければ、付き合っては別れるを繰り返すなんて、モテ男ムーブはできないだろう。これまで別れたのも、すべて彼女側から「別れよう」って言ってきたとのことらしいし……。

 原因は未だ不明だけど。

 

「千春たち連れてきたよー、二人とも行こ行こー!」

 

 俺が5秒くらい葉山の振られる原因について考えていると、沙織が綾辻さん達を連れて戻ってきた。三人の様子から察するに、綾辻さんと秋月も半ば話を聞かされずに連れられて来たようだ。けど二人とも、いつものことだとよく慣れたものだ。

 俺は沙織の通学鞄を持って、葉山と共に教室を出た。

 

「どこ行くどこ行く? カラオケ? ボーリング? それともキャロルでパフェでも食べる?」

「あぁ、悪い沙織。俺、これからバイトあるから」

「「えぇーー!」」

 

 鞄を渡しながら言うと、沙織と葉山が声を揃えて肩を落とす。

 葉山の悪ノリはとりあえずスルーして、俺は「ごめんな」と沙織に謝った。

 

「うそぉ!」

「ホントだよ」

「えぇー、折角みんなで遊べると思ったのに!」

「ごめんって。また今度時間作るから」

「むぅぅ……じゃあ、夏休みにプール、奢りね」

「はいはい。分かったよ」

 

 沙織は残念そうに口を尖らせる。けど俺が愛想笑いをしながら了承すると「やった!」とガッツポーズした。

 ちゃっかりしてるなぁ。

 

「試験終わってすぐになんて、随分と忙しいバイトみたいね」

 

 そう言って、沙織の隣にいる友達二人の内の一人が声をかけてきた。背中くらいまである黄色っぽい長髪を後ろでひとつにまとめた少女……秋月麻里奈は、妙に疑り深い目つきで俺を見る。彼女の肩にいるニャピーのムーはそうでもないが、先日の屋上での一件以来、秋月は俺のことを怪しんでおり、隙あれば今のように探りを入れるようなことを言ってくる。

 だが証拠も何もないためか、どうやらまだ沙織や綾辻さんには何も話していないようだ。

 

「あぁ、常時人手不足なもんでね」

 

 俺はまったく動揺することなく、いつもの態度で秋月へ返した。

 

「というわけで、悪いけど俺は先に帰るわ。それじゃあ、お先に」

「うーん、じゃあねぇー」

 

 俺が手を振りながらその場を去ると、沙織と葉山は手を振り返し、秋月はずっと睨んでいた。

 だが、その中でもう一人。秋月の隣にいた少女……綾辻千春は何かを理解したような顔で立っていた。

 

 

 

 ***

 

 

 

 学校から出てすぐの裏道にて、俺は見覚えのある車を見つけた。この辺りは、学校から最寄り駅へ向かうルートとは反対に位置するためか、通行する生徒も少なければ、一般人も少ない。そんな人通りの少ない道にセダン車が一台停車している。その黒いセダンには運転席に一人だけ人が乗っていた。

 後ろから近づいていくと、サイドミラーを通してその運転手と目があった。俺は周りに他の人間の目が無いことを確認した後、流れるようにその車の後部座席に乗り込んだ。

 

「お疲れ様です」

「綾辻はどうしたの?」

「もうじき来ますよ」

「なんで一緒に来なかったの?」

「なんか、その場の流れで」

 

 運転手である黒髪ショートカットの女性……エージェント・ゼロこと滝沢玲さんは、ルームミラー越しに俺へ目を向けた。彼女の目線から逃げるように、俺は顔をそらして窓の外を見た。

 いつものエージェント服を着た玲さんは、ため息をついて俺を睨むのを止めると、俺が着た時と同じようにまたサイドミラーで後方を監視し始めた。

 

「あれからあの黒ニャピーの様子はどうですか? 何か反応ありました?」

「さぁ。私たちには認識できないから、なんとも。でも、計測機器からの反応は変わってないから、研究室のゲージの中からは出ていないみたいよ」

 

 それならひとまず安心だ。

 『七色作戦』が行われた日、俺が帰宅している途中に捕まえた黒いニャピーは、どうやらまだ逃げ出していないようだ。先日、飼い主と思われるヒューニがやってきて彼を探していたようだったので、もしかしたら悟られて本部が襲撃されるのではとも考えたけど、杞憂に終わった。

 

「貴方の方も最近どうなの? あれから身体に何か異常とか感じない?」

「大丈夫ですよ、元気満々です」

「……そう、なら良いけど」

 

 そんな世間話にもならない会話を玲さんとしていると、やがて後方から一人の少女が歩いてきた。

 ウチの高校の制服を着た彼女は、俺達が乗る車を見つけると、緊張した面持ちでこちらまで歩み寄り、そのまま俺と反対側の後部座席に乗った。

 

「お、お待たせしました」

 

 扉を閉め、その少女……綾辻さんは玲さんに声をかけた。肩には彼女のパートナーであるニャピーのマーもいる。

 

「意外と早かったな。どうやって抜けてきた?」

「うん、お母さんにお使い頼まれてたって言って出て来ちゃった」

「へぇー。沙織のヤツ、拗ねてなかったか?」

「あはははぁ。ま、まぁ少しね」

「話は後。車出すからシートベルトしなさい」

「は、はい!」

 

 玲さんに言われ、綾辻さんは慌ててシートベルトをしめた。そして、玲さんはエンジンを掛けて、そのまま車を走らせる。

 

 

 変身していない俺と綾辻さん、そして玲さんの三人がいる車内。

 俺と玲さん、あるいは綾辻さんと玲さんであれば、特に問題ない組み合わせだが、本来なら正体を隠している者同士の俺と綾辻さんが変身せずにいるのは、普通ではあり得ない組み合わせである。

 さてさて、どうしてこんなことになったのか……その話は期末試験が始まる前日までさかのぼる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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