リィエルが学院に来てから約一週間たった。リィエルは自分から話すことこそ少ないがそれでもうまくやれているようで基本は俺たちと行動することも多いがそれ以外でもほかのクラスメイトともかかわりを持っているようで当初の不安ほど憂慮するほどでもなかったかと一安心して過ごせた。そうして過ごしていくうちにちょうど『遠征学修』という行事が来た。現在俺たちも目的地に向け移動中なのだが、これは生徒にどこの魔術研究所に行きたいかなどを調査されてそこに向かって現地で学ぶというものだが、実際当然ではあるが学院側が最終的に決めるので完全に運である。
「なぁ、セシル、ナハト。俺白金魔導研究所よりもカンターレの軍事魔導研究所が見たかったぜ。」
「仕方ないよカッシュ。僕だってイテリアの魔導工学研究所のほうがよかったんだぞ?」
「ん~俺は正直どこでもよかったから何とも。しいて言うならセシルと同じで魔導工学研究所のほうが興味あるかな?って程度だし」
俺はクラスの男子とのかかわりはそれほど多いわけではなかった。基本的にはルミアたちといることも多いし休日もたまにルミアたちの勉強に付き合ったり遊んだりまたは自室にこもるか王都に戻って手の足りない特務分室の事務作業をしたりとなんだかんだで同性の友達と話すことがあまりなかった。だが競技祭のおかげで俺に話しかける奴らも増えたうえ実際に鍛えていたカッシュとそのカッシュの親友であるセシルとはよく話すようになった。
「まっ、仕方ないんじゃないか?そもそも行先決めるなんて完全に運次第だし」
俺がそう言うとそうだなと頷き二人ともそれなら調査なんて取らないほうがいいのにねと言い出した。そのまま他愛ない話でもしようとしていると。
「フッ、甘いな生徒たちよ」
「「「「???」」」」
(あっ、またロクでもないこと言いそうだなこの人......)
クラスの男子たちはグレン先生が不敵な笑みを浮かべそう言い放ったので興味を持ちそちらに視線を向ける。俺は今度は何をしでかすのだろうと思っているとまたグレン先生はまた意味ありげなことを言い放つ。
「お前らは別の研究所がよかったなんて考えているだろうが、断言するぞ。お前らは幸運だと。幸運の女神さまは俺たちを見捨てていなかったと」
「先生いったい何を?」
「お前ら、白金魔導研究所があるのはどこか思い出してみろ」
白金魔導研究所は文字通り白金魔術の研究所である。そもそも白金魔術というのは白魔術と錬金術を利用して生命神秘のに関する研究を行う複合術である。その研究所には大量の綺麗で上質な水が欠かせない。そのことから白金魔導研究所は地脈的にサイネリア島というところにあるわけだが................あぁ、成程。先生の言いたいことがわかったわ。だってサイネリア島は..........
「リゾートビーチとしても有名な所だ!?」
誰かは分からなかったがそういったのが聞こえた。そうなのである。サイネリア島はリゾートビーチとしてとても有名でもあるのだ。そこから導き出されるのは................
「ようやく気付いたかお前ら!さらにこの遠征学修では自由時間が多く取られている。時期は少しはやいが海水浴は十分に可能!!さーらーに、このクラスはやたらレベルの高い女子が揃ってる!あとは.........言わなくてもわかるよな?」
「「「「..............先生」」」」
(お前ら女子に全部筒抜け名のわかってる?)
「お前ら後は黙ってついてこい!!お前らに
「「「「はい!!」」」」
ここに男子生徒とグレン先生との間に下心にまみれた友情が築かれた。
「バカしかいないのこのクラスは..........少しは蔑んだ目で見ているナハトを見習ってほしいわ」
「ははは」
システィーナはその様子を呆れたように罵倒し、ルミアは苦笑いを浮かべている。そしてルミアはシスティーナの口から出たナハト本人に顔を向けると..............
「?(何か考え事かな?)」
先程までナハトもシスティーナ同様呆れたように男子たちを見ていたが何やら真剣な様子で思案するように変わっていた。だが、ナハトには軍のこともありやや気になるが自身もこの遠征学修が楽しみであるため気づけば頭の中から消えていた。
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俺は先生たちが騒いでいるときに姉に聞かされている白金魔導研究所のきな臭いことについて考えていた。俺は姉さんと定期的に連絡.................いや毎日連絡とってるのだがその時は事務的な連絡もするが普通の姉弟の会話もしたりするのだが出発の前日の会話は前者だった。
『こんばんわ姉さん。今日は何か仕事関係あるの?』
『こんばんわナハト。えぇ、少しね。あとは、その............リィエルは大丈夫かしら?』
『正直最初は姉さんの正気を疑ったけどそれなりにうまくやってるよ。それにしてもなんでリィエルだったのさ?」
『それは上からの指示だからしかたないわよ。それよりも確か貴方達遠征学修で目的地が白金魔導研究所なのよね?』
『そうだけど............もしかして何かあるの?』
『あそこの所長のバークスが天の智慧研究会と接触した報告があるのよ』
『そういえばあそこってあんまり言うわさ聞かないよね』
『そうね、気を付けてねナハト。向こうは貴方の護衛しているエルミアナ王女のことも知っているわ。あとは貴方の素性ももしかしたら知られているかもしれないわ。その時は貴方も狙われる可能性が出てくるから何度も言うけど気を付けて』
俺のことは正直、天の智慧研究会や〝アイツ〟にもばれているかもしれない。そのことについて俺と姉さんはたいして問題視していない。天の智慧研究会にばれるのは想定の範囲内で、あいつらは実態が謎すぎるうえつい先日までエレノア=シャーレットが帝国内部の深くまで潜入しているのが露呈しているのだ。そして気に食わないが〝アイツ〟の情報量も侮れないのでばれている可能性が高い。ただ、いまばれているとしてもさほど問題でもない。ばれているなら当然俺の
『わかった。俺が狙われるとしたら大方異能というよりも俺の魔力特性かな?異能も実態不明のレアもんだろうけど............俺の特性なら〝アレ〟も再現できる可能性があるしね』
『そうね。貴方の異能も目を見張るものがあるでしょうけど本命は間違いなく魔力特性。〝アレ〟の完成を目論んでいるのではという話も聞くわ。貴方もそうだけど〝リィエル〟にも気をつけなさい。...........もしもの時は彼女を殺しても構わないわ。』
リィエルは〝アレ〟の今のところでは唯一の完成体。もしもの場合は殺してでも相手に手札が増えることを阻止しろということか。
『ごめんなさい。ナハト。貴方にこんなことを頼むことになって本当に申し訳ないわ。』
『気にしないで姉さん。あくまで〝もしも〟の話でしょ?だったらどうにかすればいいだけだしいつも俺たちはそうしてきたんだし慣れてるよ。』
『ありがとうナハト。貴方のことは信じているけどちゃんと無事に帰ってくるのよ?』
『大丈夫だよ姉さん。俺は姉さんの弟なんだからさ!お土産でも期待して待ってよ。』
『そうね。貴方は私の弟だものね。ならあなたからのお土産期待して待っているわ。』
俺たちはそれから少し他愛ない話をしてから明日に備え寝ることになった。
俺はその前日の夜の会話を思い出して今回起こるかもしれないことについて考えていた。何が起こるかというのは正直全くわからない。確かバークスはきな臭いうわさで〝アレ〟に興味があるのは聞いているがどこまで本当かわからない。少なくともこちらの内情のある程度は知られていると考えたうえで対応するしかない。
(せめてみんなを巻き込まず俺だけでも対処可能ならいいんだけどな......)
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俺たちはしばらくしてサイネリア島に向かうための港町であるシーホークに着き班ごとと自由行動の時間になった。クラスメイトは昼食やお土産の購入などを集合時間まで楽しんでいた。そして集合時間になったが.......
「遅い!もう集合時間すぎているじゃない!!あいつはどこほっつきまわってるのよ!」
「まぁまぁシスティ。まだ五分しかたってないし、出発まで時間あるからさ........」
「そういう問題じゃないわよ。決められた時間に来ないのが問題なのよ」
グレンは集合時間になってもその場に来ていなかった。大方時間も確認せず適当に過ごしているんだがそこは問題じゃない。問題なのはリィエルだ。
「リィエル。グレン先生を探しに行くのはだめだぞ?さすがにここじゃ人が多すぎるから」
「でも.............」
「大丈夫だよ。もしもの時は俺が魔術で探せばいいだけだし。な?」
リィエルを何とか説得しているがこのままじゃリィエルも動き出し始めない。リィエルを止めるのは骨が折れるからなるべく早く帰ってきてほしいものだ。
「へ~いそこのお嬢さん達?可愛いね!ちょっといいかな~?」
そんな声がルミアたちの後ろからかけられた。その軽薄そうな声の持ち主のほうを振り向くと気取ったポーズをとった藍色がかった黒髪の青年がいた。シルクハットに色付き眼鏡、ステッキといかにも軟派師ですと言わんばかりの見た目だった。
「(!)俺の親友に手を出さないでくれますか?俺たちは遠征学修なので狙うならほかの人にしたらどうですか?」
俺はこの人が誰だかわかっているがあえて接触してきたということはグレン先生含めて用事があるのだろう。だから俺はルミアたちをかばうように前に出た。
「邪魔だよ君~?僕は後ろのかわいこちゃんに用があるんだけど~」
「へ~そうなんですか。それで用とは?」
「なんで君が聞くのかな~?僕は………」
「はーいストップな。」
青年の言葉を遮るようにグレン先生が割り込んできた。俺はグレン先生に視線を送り先生もそれに小さく頷くとその青年の首根っこをつかむ。
「お前!何してるんだよ?!邪魔しないでくれ!!」
「はいは~い。俺たちがく・わ・し・く聞いてやるから安心しろ」
「そうですよ。それじゃルミアたちはここで待ってくれ。すぐ終わらせるから」
そうして先生と俺はクラスのこと含めて頼むと伝えた後に人の少ないところまでその男を連れていく。
俺たちは青年を人気のないとこまで連れてきたところで俺は防音結界の魔術の発動をする。
「ち、ちょっと!こ、こんなところで僕をどうする気だ~!暴力だけはやめてくれよ?!痛いのだけはいやだよおおおぉぉぉ!!」
「………もういいって。ナハトも防音結界張ってるしな。アルベルト」
グレン先生がそう言うとその青年は瞬時に姿を変え帝国宮廷魔導師団エースの星のアルベルトその人になる。
「久しいなグレン。ナハトも先の事件以来だな」
「お久しぶりですアルベルトさん。あの時来てくれたのがアルベルトさんで助かりました。」
「俺は任された任務を全うしたまでだ。もっともお前だけでもどうにかなったかもしれんがな」
アルベルトさんはややグレン先生に挨拶だけ少しだけ冷たい気がしたがそのままいつもの冷静な声であいさつを続けた。その俺たちの様子を先生は頭を抱えてみていた。
「なんだグレン?」
「いや、お前が任務のためとあらばどんな役も演じ切るのは知っていたが久しぶりに見るとそのギャップがな............」
「フンッ。惰弱だな。精神修行が足りていない。ナハトを見習え。」
「(お前のその変わりよう見たらだれでもそうなるわ!てかなんでナハトの奴は平然としてんだよ........)」
ナハトが平然な理由は単純に同じことができるうえそれを教えたのもアルベルトであるためだ。教えられていれば当然何回も見ていたので慣れてしまった。いい精神修行だったなと今になって思っているとグレン先生がアルベルトさんに話しかける。
「今のお前の姿でようやく納得したわ。アイツ......リィエルは囮だな?」
「ご名答だ。もっともナハトは当日にすぐさま気づいていたようだがな。わかりやすい杜撰な護衛がつくことで仕掛ける側も杜撰になると期待したものだ。王女の護衛の本命は俺だ。軍でも上層部の一部しか知らない極秘任務だ。」
「リィエルをよこした日にはついに特務分室の頭おかしくなったかと思ったぜ。(てか、お前と言いナハトと言い過剰戦力すぎね?)」
「それでアルベルトさん。アルベルトさんが誰にも知られないようにするのが今回の任務の最も重要な点だというのが容易に予想できる中、わざわざ自分たちに接触してきたのはどうしてですか?」
俺の問いかけに少しの間沈黙するとその問いかけに答える。
「リィエルには気をつけろ」
アルベルトのその鋭い視線に黙り込むグレン先生。そしてグレン先生はその真意を確かめるべくアルベルトさんに問いかける。
「はぁ?リィエルに気をつけろだ?そんなもんいつもアイツが暴走しないように..............」
「そういう意味ではない。リィエル.............あいつは危険だ。その危険性はお前と俺だけが...........いや、あの女とナハトも知っているのだろう。」
(流石アルベルトさん。どこかで姉さんが勘づいて知ったことに気づいたのか)
「は?なんであれをアイツとナハトが............いや、それはいい。そのことは昔のことだぜ?リィエルはリィエルだ。今は特務分室の暴走脳筋娘のリィエルだ!」
「そう思いたいだけだろ?俺は今でもあいつを処分か封印すべきだと考えている。現にナハトも昨日言われたんじゃないのか?」
先生はアルベルトさんのその発言ににつかみかかろうとするがアルベルトさんの最後の俺への問いかけに思いとどまり俺のほうを向きグレン先生が問いかける。
「おいナハト。アルベルトの言った意味もしかして..................」
「...............〝万が一の場合〟はリィエルを殺せとの任務を受けてます。言っておきますが〝万が一の場合〝は俺は躊躇はしませんよ?」
当然だが俺は殺すことはしたくない。リィエルにも情はあるし、妹がいたらこんな感じなのかと思ったこともある。だが俺は軍人であり、何よりルミアを護ることが何よりも大切なことだ。必要なら手にかけることに今更躊躇いもない。
「ッ!何言ってるかわかってるのかお前!?あの女ッ!前から気に食わなかったが.............」
「やめろグレン。この場においていっていいことと悪いこともわからんか戯け。」
アルベルトさんはどうやら先生が俺の前で姉さんの悪口を言おうとしているのを俺に気遣って止めてくれたのだろう。
「ッ.............すまねぇナハト。お前の唯一信用できる家族の悪口言って。」
「気にしなくていいですよ。それとわざわざありがとうございますアルベルトさん。先生その代わりと言ってはあれですけど、今回〝もしも〟の時が起きたら最後まで俺のことだけ恨んでください。俺はそれだけ最低なことをするんですから覚悟なんてとっくにできてますから」
俺はそう先生に微笑みながら言うと先生は悔しそうに顔をゆがめる。本当に優しい人だなと改めて思ってると突然先生は俺の頭に手を乗せガシガシと雑に撫でてくる。
「ち、ちょっと先生?何してるんですか?」
「...........馬鹿言うな。たとえそうなっても俺はお前の教師でお前は俺の生徒だ。教師が生徒を..........お前を憎んだりしない。憎むとしても無力な俺自身だ。どうせ俺の工作がどっかでミスってたんだろからお前にも余計なこと背負わせてるんだしな。」
「............ありがとうございます。ホント、〝グレンさん〟は〝先生〟が似合いますね?」
その俺の言葉に「そうかよ」と適当に答えるグレン先生。その様子を見ていたアルベルトさんはは最後にと忠告を伝えた。
「ナハトがしっかりしてくれていて助かる。だがナハト、お前も標的にされかねないことを忘れるなよ?そしてグレン。忠告はしたからな?もしもの時はお前がナハトの足を引っ張らないことを祈るばかりだ。」
そう冷たく言い放ちアルベルトさんは去って言った。
「ナハトも狙われるかもしれないって...............お前の魔力特性か?」
「えぇ、姉さんがもしかしたらと言ってました。確かに俺ならうまくいけば完成させられるかもしれませんね?」
「確かにお前のその魔力特性ならそうかもな...........」
「安心してくださいよ?別に俺個人としてはあれを完成させるつもりなんてないですから。あんな外道の魔術あっちゃいけない。...............【Project Revive Life】通称【Re-L計画】なんてね」
「は~やっぱりほんとに全部知られてんのか...............マジで当時の俺何やってんだよ.........」
俺がそう言うと先生は頭を抱え嘆く。
「まぁ、知っているからこそできる対応もあると思いますよ?とにかく今はどうするべきかですよ。夜に宿で対策をできるだけ考えませんか先生。」
「そうだな。リィエルのため..............そしてお前にも最悪の手を使わせないために!」
(ホント優しすぎるんだよなグレン先生は...........軍人にはホント向いてない。今の教師ってのが似合いすぎるのもあるんだろうけど)
俺たちは今後すべきこと、今後起きうるであろうことを念頭に置き今回の遠征学修を対価なく無事に終えられるようにと考えながら船場に戻っていった。
次回は普通に水着での日常回の予定です。楽しい水着回にできるようにしたいです。後アルベルトですが自分結構好きなキャラなんですよね。グレン先生みたいに優しく熱い男性キャラも好きですがアルベルトみたいに冷静沈着で実は優しい人、いい人であるもののいざとなったら非情に徹しきれるキャラもいいと思うんです。でもアルベルトの過去を知ってるとアルベルトにもちゃんと報われて救われてほしいですね。
今回もこの駄作を見てくださりありがとうございました!
再計:システィーナのヒロイン追加について
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