―これはシスティーナが結婚を決めた前日の話だ―
「レオス先生随分と顔色よくなりましたね?」
そう言う先には馬車から出てきたレオスがいた。先程までは顔色も悪かったのに今では普通になっていた。
「おやナハトさんですか..............ですが、剣をもってそこまで殺気を向けてくるとは穏やかではありませんね?」
そう、レオスの言う通りナハトはその手に双剣を握り臨戦態勢だあるのだ。
「そうですね............でも、いい加減茶番はやめにしましょうレオス先生...............いえ、《正義》のジャティス=ロウファン」
そう言うと目の前にいるレオスはらしくない狂気的な笑い声を上げながら姿を歪めると現れたのはレオスとは別の風貌の青年だった。
「いやいや流石だねぇナハト..............最初から疑っていたね?」
現れたのは一年前たった一人で帝都を恐怖に陥れ、特務分室に大きなダメージを与えた錬金術の天才ジャティス=ロウファンだ。一年前死んだはずだが予想通り何らかの手で偽装して今ここに立っていた。
「それは貴方の固有魔術でもわかってたんじゃないですか?そもそもここに来ることだって読んでいたはずだ」
「ククッ、あぁそうだとも。勿論〝読んでいた〟さ」
「さて、ならお話はやめて始めましょうか............」
「一年でどこまで成長したか見てあげるよナハト!!!」
その瞬間ナハトはためらいなく領域指定を済ませてある眷属秘術【第七園】を自身の異能とのかけ合わせの《獄炎》ともに起動させるジャティスもお得意の
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「アハハハハハハハハ!!素晴らしいよナハト!さすがの実力だ!!」
ジャティスはそう狂気的に笑い声を上げながらナハトを称賛する。その中でもジャティスは
「『どうもです先輩』とでもいえばいいですか?」
ナハトは冷静にそう返しながら迫りくる
(チッ!気に食わないが本当に強いんだよなこの人!)
ジャティスはなかなかナハトに懐に入りこませるだけの隙は見せず、絶妙なタイミングで
「ッ!神千斬り!」
ナハトは捌き続けていると〝見えない何か〟を感じ取りそこに得意技である神千斬りを放つ。すると何もない場所を獄炎が焼く。
「へぇ..........【
【
「見えない刃..................ホント貴方に相性のいい最高の技ですね」
「お褒めいただき光栄だよナハト。だが、まさかこれを対処されるとはねぇ、流石は音に名高き《月》だ」
ジャティスは表情こそ笑みを浮かべているものの油断なくナハトを見る。ナハトも同様に周囲への警戒を常に怠らずどんな場面にも対応できるようにしている。
(正直まだ開始早々に使いたくないが【
「《真なる業火よ・我は原初の炎の担い手・原初の焔をここに灯そう》」
ナハトの周囲の紅蓮の炎と漆黒の炎が混じり赤黒い炎が形成され圧倒的熱量がナハトの領域内にすさまじい勢いで広がる。ジャティスも表情を鋭くし、地面に立っているが危険と判断し
「クッ...........コホッ………まさかここまでの火力の魔術とはねぇ.........」
(さすがにこの火力にこの範囲............不味いね)
そしてナハトは剣に赤黒い炎を纏いつつ業火をジャティスめがけて放ちながら足元に集めた炎を爆発させた勢いと純粋な脚力で空中に駆け上がり斬りかかる。
(紫電一閃・焔)
ジャティスは放たれた業火を
(クッ!腕が………!)
空中であるとはいえナハト最速の剣技を行動予測するもあまりの速さに完全には回避しきれず腕を斬り飛ばされる。すかさずナハトは追撃しようとするが
(まさか一年でこれほどまで技が洗練されているとは本当に〝読めなかった〟..........だが、これは〝読んでいた〟よ)
ジャティスは圧倒的不利であるはずなのにいまだに狂気的かつ不敵な笑みを浮かべている
そんなジャティスをナハトは油断なく見据えていると新たな人の気配がした。
(!人の気配もしかして奴の仲間か.............いや違うこの気配は!?)
「ククク、流石に気づいたようだねぇ、ここに来た人は誰なのか........」
「何でこんなに燃えて.................ってこれナーくんの魔術だ!?」
その場に現れたのはセラだった。ナハトはルミアにみんなには心配せず帰るように伝えたのに何故と考えていた。
だが、その回答は簡単で事前にジャティスはレオスに指示させセラに魔導兵団戦後この場に来るようにしたためである。さらに、ナハトが残ることをジャティスは読んでいたためナハトが残るというならルミアに先に戻っていてと言われていてもナハトの面倒を見たがるセラなら確実に残ると踏んでのジャティスの保険であった。
そしてさらに.......................
「これはどうするかな?」
ジャティスはいやらしい笑みを浮かべながら視線をセラから少し外れたとこに向ける。そこには..........
(ナッ!?
そこには武器を持たされた末期中毒者がいた。ナハトはすぐさまそこに向け走り出す。
「セラねぇ!!伏せて!!!」
「えっ!ッ!?」
セラは一瞬驚くもすぐにナハトの言う通りにするとすぐ目の前にまで迫る末期中毒者がいた。セラはやられると思った瞬間...............
〝ゴウッ!!〟
剣は間に合わないと判断したナハトは業火を細く収束させて放ち中毒者を焼き倒す。
「さすがだねぇナハト。まぁ、助けられることは〝読んでいた〟けど」
そう言うジャティスはすでに【第七園】の領域外に出ていた。
「あれはジャティス!?」
セラも驚愕と怒りを浮かべそう奴の名を叫ぶ。
「やぁセラ相変わらず元気そうだね?」
セラねぇを死の寸前まで追いやった諸悪の根源が何をと思っていると尋常じゃない数の気配を察知した
「ッ!なんだこの数................まさか!?」
ナハトはすぐにでもセラをその場からの離脱させようと考えていたが下手に逃がすことができなくなってしまったなぜなら...............
「危なかったよ。もし...........あとほんの少しでもセラが来るの遅かったら僕の敗北は90%を越えていた」
その言葉と同時に森からぞろぞろと末期中毒者が出てくる。それも10や20なんかじゃない。何百単位..............いやもしくはそれ以上かもしれない。
「君の相手は流石に骨が折れる.............彼らが来るまでの時間稼ぎだったというわけさ」
「この数..........お前どれだけの人を!!」
ただの足止めのためだけに沢山の罪のない人々を巻き込んだことにナハトは怒りを隠さずに沿うジャティスに言い放つ。
「仕方のない犠牲さ。僕が正義を執行するための必要なことなんだ」
何でもないように、それが当然であるように言い放つジャティス。知ってはいたが想像以上の狂人だ。
「流石にこの数相手では、いくら君でも僕は追えない。しかもさっきの魔術は相当の魔力を消費するうえ、君の最強幻術の射程距離は長くないからね」
そう、ナハトの固有魔術【奇術師の世界・幻月】を掛けられる射程はそれほど長くない。さらに一度に五人までにしかかけられないのである。なのでジャティスを狙ってかけることも末期中毒者に対しても有効手段にならない。さらに
「それじゃあ僕はこれでおさらばさせてもらうね。グレンの代わりに君はセラをちゃんと守り切れるかな?」
そう言ってジャティスが歩き去っていくのと同時に末期中毒者たちが勢いよく襲い掛かってくる。いくらナハトが多対一を得意としていたとしてもあまりの数に、無理な魔術行使ができないセラを護りながら切り抜けるのはかなり絶望的といえる。だが、自身のもう一人の姉でもあり兄貴分でもあるグレンの大切な人を二度と傷つけさせやしないと闘志をたぎらせるナハト。
「クッ!セラねぇは無理に魔術を使わないで俺のそばから離れないで!!」
ナハトは両手の剣を今一度強く握りなおし油断なく構える。ここからナハトの死闘が始まるのであった。
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時と場は変わり、システィーナは一人学院のバルコニーで夜空に浮かぶ月を見ていた。今日のレオスの豹変に追いついていなかったため一人になりたかったのである。何が彼をあそこまでしたのかとずっと考えていた。
「なに一人こんなとこにいんだよ白猫」
「先生..............」
そこにグレンが歩み寄ってきた。
「どうして先生が.......」
「ルミアに頼まれたんだよ。ナハトの奴がなんか用があるとかで行けないから代わりに様子を見てきてくれってな」
「そうですか................先生はなんであそこまでレオスが私にこだわるかわかりますか?」
こんなこと聞いても仕方ないのは知っていた。でも今のシスティーナは聞かずにはいられなかった。
「知るかそんなもん。ぶっちゃっけ俺はやつの正気を疑うレベルだ」
いつもの調子でそう言うグレン先生にシスティーナは気分が落ち込んでるはずなのにいつものようにムキになって食い掛る。
「なんですって!!聞いた私が悪いですが、仮にも教師なら少しは真面目に.............」
「そういうすぐかみついてくるところとか特にだ................だが、奴はお前のことがどうしようもなく好きなんだろな。だからその想いがいき過ぎちまうんだろうな」
「~!はぁ~そうなんですかね............」
突然の真面目な切り返しに少し詰まるもため息を吐きそう返す。システィーナ自身異性を好くというのがまだよくわかっていない。自身の親友であるルミアはナハトに思いを寄せていることは分かるがそれがどういうものなのかはきちんと理解できていない。
「身近で言えばルミアがいい例えだろ?ルミアの奴ナハトといると明らかに普段とテンションが違うぞ?」
そう、ルミアはナハトといると普段に増して雰囲気がとても明るくなるのだ。それを見ている周りの男子どもはかなわぬ恋だと涙を流し続けているらしい。
「確かに変わりますね...........すごくわかりやすく」
「あれで気づいてないの本人だけだろ...........鈍感だよなぁ~アイツ」
(あなたがそれを言えるんですか唐変木...........)
システィーナは内心でグレンに突っ込んでいた。
「!そういえばもう一人あいつといると態度が変わる奴がいるな」
グレンはそう言ってシスティーナを見てニヤニヤしている
「誰ですか?セラ先生ですか?」
「ばーかアイツのは唯の姉と弟のそれだ。お前だよ白猫...........お前もなんだかんだナハトといるとき明るいもんな?」
「え/////////?」
「その感じじゃ自覚ねぇか...........お前あいつといるといつも以上に笑顔でいることが多いんだぞ?」
そう言われてもシスティーナ自身に心当たりは全くなかった。だけどそう言われて納得する自分もいるのも事実だった。
「要はその無意識の想いや普段から思ってることがいき過ぎちまったのが今回のレオスの件ってことだろうな。ナハトの言う通り冷静にお互い話し合うといいだろうな」
何となく今ならシスティーナはグレンの言葉を理解できた気がしていた。そんなシスティーナはなんだかんだでアドバイスをくれたグレンに感謝を伝えようとすると...................
「実に卑怯な男ですねグレン=レーダスさん。婚約者を差し置いてほかの男性を紹介するとは」
「レオス................」
そこに薄ら寒い笑みを浮かべて歩んできたのはレオスだった。
「私は軍用魔術の研究に携わるうえで軍の機密情報に多少触れていましてね..........................知っているんですよ、過去に貴方がしてきたことを.........ねぇ、《愚者》のグレンさん?」
そう言い放つレオスを鋭く睨みつけるグレン。システィーナは普段とは違うグレンの様子に少しおびえていた。
「貴方は本来こんな日向の世界にいる資格はない人間だ。その血塗られた手で生徒たちに何を教えるつもりですか?」
「黙れ.............それ以上言うなら問答無用でお前を潰す」
グレンはレオスをにらみつけてそう冷たく言い放つ。だが当のレオスはその余裕そうな表情を変えずに続ける。
「フッ、貴方にはもっとふさわしい場所と立場があるでしょう?帰ってきなさい元帝国宮廷魔導師団特務分室執行官NO.0《愚者》のグレン=レーダスさん」
「警告はしたぞ!!」
そう言って一旦距離を取りグレンは愚者のアルカナを引き抜き【愚者の世界】を起動させ帝国式軍隊格闘術で殴り掛かる。だが.......................
「フッ、暴力はいけませんね」
そう余裕な笑みを浮かべながらグレンと同様に帝国式軍隊格闘術で応戦し............
「グハッ!?」
「グレン先生!!」
殴り飛ばされたのはグレンのほうだった。そのグレンを見たあシスティーナは悲痛そうな声を上げ心配しているとレオスは人口精霊タルパを出す。
「な!?
「知ってますよ貴方がこんなものではないことを............」
グレンを見下すレオス。そのレオスはとても狂気的で明らかにシスティーナの知っているレオスではなかった。
「.................」
グレンは落としてしまったアルカナを拾いそのまま無言で傷口を抑えながら去っていった
「先生!」
そしてそんなグレンをシスティーナは追いかけようとした。しかしそれはレオスが腕をつかんだせいでできなかった。
「れ、レオス?は、放して!」
システィーナは明らかにおかしいレオスに恐怖を抱いたためややパニック気味に大きな声でそう言った。だが.................
「うるさいぞ小娘..........二度と表を歩けない顔にしてやろうか?」
「ぇ?」
レオスはまさしく鬼の形相というべき表情でシスティーナに凄んだ。そのため先程からの状況に呑み込めていないシスティーナはか細い声を上げ委縮しきっていた。
「さて、話がありますシスティーナ。私と結婚してください」
「!?」
先程までの恐ろしい顔から一転普段の表情になりそう言い放つレオス。また、システィーナは困惑のあまり声を出すことができなかった。
「あぁ、ちなみにあなたには拒否権はありませんよ?
例えばそう.....................
貴方の親友ルミア=ティンジェルの素性と能力.............リィエル=レイフォード秘密とかね?」
「なんで........」
「あとはナハト=リュンヌ..............いえナハト=イグナイトのことや元《女帝》セラ=シルヴァースに元《愚者》のグレン=レーダスと言いこの学院には隠し事をしている人たちが多すぎる」
システィーナはレオスから出てくる極秘の情報がスラスラと出てくることにもはや絶句するしかなかった。この男は敵なのではという考えがよぎるもレオスの異常な雰囲気がシスティーナを完全に委縮させていた。
「わかってもらえたと思いますがあなたは私と結婚するしかないんですよ。よろしいですねシスティーナ?」
「..........ぅ、ん」
頷くことしかシスティーナにはできなかった。自身な大切なもの..............それを護るために彼女は恐怖とともに感情を押し殺しレオスに従うことを選んだのであった。
そして後日、そんなシスティーナがレオスの求婚を受けたことが学院に知れ渡った。そうなると当然レオスに挑んだナハトについても注目されるがその日ナハトは学院に現れることはなかった。
また、それはグレンとセラも同じで二組の生徒は不可解なその三人の失踪に言いようのない不安感を感じていた。
だが、ただ二人の少女たちだけはいなくなった三人のことを信じて待っているのであった。
今回はナハトvsジャティス戦を入れてみました。それにしてもジャティスの狂気的な口調を書くのは難しいですね。もっと小説読んで勉強しなくては............さて、天使の塵編も終盤に差し掛かってきてあと2~3話で終わると思います。これからの話も楽しんでもらえるように頑張りますのでどうかよろしくお願いします。
今回もここまで読んでくださりありがとうございました!またお気に入り登録、コメント、評価をしてくださり本当にありがとうございます!
再計:システィーナのヒロイン追加について
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