ロクでなしとチート主人公   作:graphite

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銀の少女は彼を光に導く

 

 

 

「よし............準備は完璧だな」

 

グレンは自室で今日実行する作戦のための準備の確認を済ませていると

 

コンコン

 

「はいよ~」

 

「先生準備は整いましたか?」

 

そう言って部屋に入ってきたのは特務分室の礼装を身にまとい、その上からローブを羽織ってる仕事姿のナハトだった。

 

「お前はその恰好なんだな」

 

「えぇ、恐らく奴は先生が作戦通りに動いたら式場にも末期中毒者を送り込んでくると思います。だからそれの対応を特務分室でやります。終わり次第援護に向かいます」

 

「なるべく早くきてくれよ?ブランク以前に憎たらしいが奴は強いからな」

 

「わかってます。ここの安全も確実に確保したいので少ししてから俺も式場に向かいます」

 

グレンが住むアルフォネア邸にセラを残していく予定であるナハトは準備期間のうち回復に専念する以外に屋敷全体にトラップを仕掛け難攻不落の要塞にしていた。今日はすべての罠の確認を念入りにしていくために遅れてナハトとしてではなく《月》のフレイとして式場に向かう予定だ。

 

「それじゃ俺は準備が終わったから行くな」

 

「わかりました。最後に一ついいですか?」

 

「なんだ?」

 

ナハトは真剣な表情でグレンの目を真正面からみて次の言葉をかけた。

 

「死なないでくださいよ。貴方は〝俺達の〟恩師なんですから」

 

そう..............貴方はもう《愚者》のグレン=レーダスじゃない。貴方は《魔術講師》のグレン=レーダスだ。過去は消して消えない。それでもこの人が《愚者》として生きなくていいのはわかる。この人は《教師》だ。これからは《教師》として眩しいこの光の世界にいるべき人なんだ。

 

「死なねぇよ。俺のしぶとさはお前も知ってるだろ」

 

「そうですねゴキブリ並み...............それ以上ですもんね」

 

「ひでぇ例えだな」

 

そんなやり取りをしていつも通り笑いあうとグレンは式場に向かうため歩き出す。そしてすれ違いざまにお互い手を掲げ………

 

 

       〝パンッ!!〟

 

 

乾いた音のが響くとグレンはそのまま何も言わず、こちらを振り返ることなく静かに歩んでいくのであった。

 

 

(俺は〝こちら側〟だから.............貴方の事本当に尊敬してるんですよ?)

 

 

 

--------------------------------------------------------------------------------

 

 

式場では二組の生徒たちがシスティーナ側の参列者席に座りこれまでの異常に怪しんでいた

 

 

「グレン先生はともかくとしてセラ先生とナハトがいないのはおかしくね?」

「そうだよな.........グレン先生はともかくあの二人に限って変だよな」

「そうですわ!システィーナも何を聞いても答えませんし………何かあったとしか....................」

 

若干グレンが無慈悲にディスられているが不安に感じる生徒が大多数でこれから始まる式に集中できていない様子だった。

 

生徒たちがひそひそ話していると式の始まる合図の鐘がなり、花婿姿のレオスと花嫁姿のシスティーナが現れ祭壇の前まで歩いていく。

 

「レオス=クライトス。汝、健やかなる時も、病める時も、喜びの時も、悲しみの時も、富める時も、貧しい時も、これを愛し、敬い、慰め、助け、共に支えあい、その命ある限り、永久に真心を尽くすことを誓いますか?」

 

「誓います」

 

「システィーナ=フィーベル。汝、健やかなる時も、病める時も、喜びの時も、悲しみの時も、富める時も、貧しい時も、これを愛し、敬い、慰め、助け、共に支えあい、その命ある限り、永久に真心を尽くすことを誓いますか?」

 

「..............誓います」

 

システィーナはレオスと違い躊躇いがちにぼそりと宣誓する。

 

「今日と言う佳き日に、大いなる主と、愛する隣人..........................

 

 

司祭が最後の祝詞に入る途中、ここで彼は現れる。

 

「その結婚意義ありだあぁぁぁぁ!!!!!」

 

 

式場の扉をけ破り現れたのはグレンだった。

 

そしてグレンは大きく振りかぶり手に握ったけむり玉を投げ込むと煙が式場を包み込む。その煙はとても濃く張れるまでにかなりの時間がかかる。そして、その瞬間その場にいるものはシスティーナの姿が消えているのを確認すると二組の生徒は事態はつかみ切れていないが大きな歓声を上げていた。

 

 

だが、レオスもいなくなっておりその代わりに.........................

 

 

 

「ぐおおおおぉぉぉぉぉ!!!!」

 

 

レオス側にいた参列者たちと外から入ってくる大量の天使の塵エンジェル・ダスト末期中毒者たちが雄叫びを上げ襲い掛かろうとしていた

 

 

 

 

 

 

-------------------------------------------------------

 

 

グレンはとっくに式場を後にしたとき式場は混乱の渦に包まれていた

 

 

「な、なんだよこいつら?」

 

生徒たちは異常な人間たちに恐怖を覚え震えていた。そんなみんなを背にかばいながらリィエルが隠す爪(ハイドゥン・クロウ)で作り出した大剣を構えいつでも迎え撃てるという状態で睨みつけていると..............

 

 

    〝パリーンッ!!〟

 

天井を突き破り複数の影が式場に飛び込む。

 

そのうちのフード付きローブの者が呪文を唱える

 

 

「《紅蓮の竜よ・猛き咆哮もって・蹂躙せよ》」

 

 

黒魔改【ドラゴニック・フレア】竜のブレスのごとく熱線が迫りくる末期中毒者を焼き尽くす。

 

 

「す、すげぇ!なんだあの火力………」

 

生徒のうち誰かがそう呟くのが聞こえた。そんな風に呆然としている生徒達にアルベルト達は軽く挨拶をする。

 

 

「俺はアルベルト=フレイザーだ。帝国宮廷魔導士の一人でお前たちの味方だ」

 

「僕も同じくクリストフ=フラウルです」

 

「儂はバーナード=ジェスタじゃ」

 

そして.....................

 

「俺はフレイ=モーネです。皆さんはここは自分たちにまかせて外に逃げてください。リィエルみんなを頼む」

 

ナハトは正体を明かさずクラスメイトにそう言うとリィエルに指示を出す

 

「ん。任せて.............みんな行って!」

 

 

リィエルはみんなを外に誘導して逃がす。みんなが走り去っていく中ルミアと目が合う。

 

 

(頑張ってねナハト君)

 

本当にそう思ってるかわからないがナハトは多分ルミアがそう思っていることを確信していた。だからナハトは小さくうなずき返した。

 

 

「さて、全員避難できたようだなナー坊よ」

 

「翁、任務中にその呼び方はダメだ」

 

アルベルトがそう言うと変わらない軽い調子でバナードは謝罪する

 

「おっと!そうだったな、悪かったなフー坊よ」

 

「いいですよ。それよりもバナードさん敵が来ますよ?クリストフさんどれくらい来ましたか?」

 

ナハトはそれよりも現状の敵だと考え既に索敵結界を張っているだろうクリストフに尋ねる

 

「すぐに200人の末期中毒者が来るよ。」

 

「200かい...........かぁ~面倒だのぉ」

 

「翁文句を言うな。............構えろ、来るぞ」

 

バナードがめんどくさいと思うのを隠さずそうぼやくとすぐにアルベルトが注意をする。そしてそのあとすぐに末期中毒者が来た

 

「「「「あぁぁぁぁぁぁぁ」」」」

 

 

 

「さて皆さんいきましょう」

 

ナハトがそう言うと各々戦闘態勢に入るのであった

 

 

 

------------------------------------------------------------------

 

 

 

ナハト達が戦闘を開始してしばらく、そのころグレンはシスティーナの手を引き迫りくる追手............末期中毒者達から逃げていた。

 

グレンは連れ去ってすぐにシスティーナに何があったか聞いてると予想通りではあるものの末期中毒者の追撃が始まりシスティーナをかばいながら苦しい逃走劇をしていた。

 

 

「チッ!《駆けよ風・-》」

 

俊敏な動きで襲い来る中毒者たち。だが、グレンはある程度油断していたことであるため呪文を唱えながら飛び上がり襲い来る中毒者を蹴り飛ばす。

 

「《駆けて抜けよ・-》」

 

さらに襲い来る中毒者に仕込んでおいた鋼線で足をからめとりそのまま壁に投げ飛ばす

 

「《打ち据えよ》!」

 

完成した【ゲイル・ブロウ】で複数の中毒者を吹き飛ばしシスティーナを守り切る

 

「悪い..........行くぞ白猫」

 

 

グレンはシスティーナに謝罪するとまた手を引いて逃げ始める。しのいだばかりなのにまだ近くから中毒者たちのうめき声がするからだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、先の戦闘からすぐにまた多くの中毒者たちが迫ってきており迎撃せざるおえない状況に陥った。

 

「オラッ!」

 

グレンは多くの魔導器を使い必死にシスティーナを守り切る。中毒者は皆グレンではなくシスティーナを執拗に狙って襲い来る。

 

(怖い.............怖いよ..............ごめんなさい先生)

 

システィーナは守られてばかりの現状と〝グレンに恐怖を抱いてる事〟ことに対し心の中で謝罪していた。だが、それも無理はない話だ。グレンは今昔の感覚を取り戻していってるため普段のグレンの様子とは全く違うものだ。システィーナも自分を守ってくれるためと言うのは分かってはいてもシスティーナ良くも悪くも〝普通の女の子〟だ。こんな状況下でおびえるなと言うのは無理な話だろう。

 

 

だが、システィーナが恐怖に捕らわれていること。グレンの余裕の無さが二人との間に心理的な距離と物理的な距離を作ってしまった。

 

 

(しまった!前に出過ぎた!!)

 

 

2人との間に大きな距離ができてしまいシスティーナを狙って5人の中毒者が素早い動きで襲い掛かる。

 

(あ................)

 

システィーナは恐怖で魔術の起動も逃げることもできずに固まってしまう。グレンも距離が空きすぎたため〝殺さず〟の対処は無理と考え国区の表情で魔銃を引き抜きうとうとしたその瞬間............

 

 

「《深紅の竜よ・ー》」

 

〝ヒュンッ!〟   〝グサッ!!グサッ!!〟

 

 

詠唱の声と黒と白の夫婦剣が鋭い風切り音とともにいち早く迫りくる中毒者二人の急所に突き刺さり、勢いのまま二人を吹き飛ばすと............

 

 

 

「《ー・我が敵を喰らえ》」

 

 

赤い炎の竜が大きく口を開け残りの中毒者に食らいつきながらそのまま壁に突き刺さし焼き消す

 

 

「無事かシスティーナ!!」

 

そう言って後ろからフードをめくりながら駆け寄ってきたのはナハトだった。ナハトは二人を見た瞬間に距離があって先生じゃギリギリだと判断したのですぐに剣を投擲し、【操火:炎竜の顎】で迎撃したのだ。【炎竜の顎】のメリットは射程が長く、軌道を自由に変えられるため利便性の高い技だ。

 

 

だが、安全を確認したいのはやまやまだが建物の上からまた多くのものがとびかかってくる。

 

「クッ!《紅蓮の竜よ・蹂躙せよ》!」

 

黒魔改【ドラゴニック・フレア】を二節で詠唱し左手を大きく振り払うようにして全方位に高火力の熱線で消し飛ばす。

 

「ぁ、あぁ...............」

 

「ごめんシスティーナ!.............先生走って!!」

 

この場にとどまるのはまずいと判断したナハトは投擲した剣を死体から引き抜きグレンに声を掛けてシスティーナの手を引き走り出す。

 

 

 

 

 

 

 

しばらくして開けた場所にたどり着いた。予想通りならここが決戦場だ。

 

 

「すまないナハト...........」

 

グレンは同級生の前でナハトに殺しをさせたことに謝る。

 

「気にしないでください。必要なことですから」

 

ナハトは何でもないようにそう言い切る。あの場での最善はそうすることだった。確かにナハトの実力をもってすれば〝殺さずに〟と言うのも可能だったかもしれない。だがそれでは確実ではない。だからこそ必要だったとナハトは言い切る。確実を取るために当然だとナハトは思っていた。そう、〝この時〟までは..........

 

 

ナハトは確実を取るため当然とは考えているが流石にクラスメイトの前でしたことは謝るべきだと思いシスティーナにけががないか尋ねることをついでに近寄る。

 

 

「ごめんな気分の悪いもの見せて。怪我とかは...........」

 

 

そう言い手を伸ばす..............だが

 

 

「ッ!?嫌!さ、触らないで!?」

 

「!」「ッ!」

 

システィーナはナハトが近寄ると震えながら一歩後ろに避けるように逃げた。

だが、すぐに自分の行動を理解してシスティーナは謝る。

 

「あ...................ご、ごめんナハト...............」

 

システィーナは泣きそうな............いや、涙を流しながらそう謝っていた。自分でも助けてくれるためにしたこととわかっているのに、感謝するべきなのに自分が避けてしまったことに後悔しながらシスティーナは謝る。

 

 

「ごめん.................俺のことそりゃ怖いよな。システィーナは気にしなくていいよ。悪いのは俺だから」

 

「ぁ..........」

 

 

ナハトはフードをかぶり顔を見せないようにして背を向けた。人殺しの顔など見たくないと考えたからだ。ナハトはもう殺すことにためらいはない。嫌悪感を抱いても必要だとなれば躊躇いはない。初めからナハトは分かっていたのだ自分が汚れた殺人者なのだと。ナハトはルミア達と楽しく過ごしている内に〝自分がここにいていいのか〟と考えたこともあった。でも、楽しかった...............楽しすぎたのだ。だからこそ、〝こういうこと〟になるまでずっと具体的なことを考えていなかった。

 

 

(俺は...........未熟だな。ここまで怯えさせたんだ責任を取らないとな.....)

 

俺は決戦を前にした先生のもとの歩み寄り声を掛ける

 

「先生...........これを切り抜けたらシスティーナたちのこと頼みますね?」

 

「何を言って............まるでいなくなるみたいな..........」

 

「俺はこの事件解決後皆から〝俺の記憶を消して〟裏から守ることにします」

 

ナハトは責任を取るため固有魔術で一人一人から俺の記憶を完全に消すことにした。今になってようやく考え付いたこと。そもそもの話学生として任務につかずとも遠距離からでもできたことをしなかったのが悪かったのだ。

 

「何言ってんだ!そんなこと!」

 

「最初からわかってたんです。俺が学生するには汚れすぎてるって」

 

そう、いくらルミアがそのことを気にするそぶりがなかったからってそのことに甘えすぎていた。

 

ナハトは表情が見えないもののシスティーナのほうを見てから歪な........壊れそうな雰囲気で口を開く。

 

「俺は先生と違って偽りばかりで............根っからの〝殺人者〟ですから」

 

ナハトは本当の顔すら使わず、こうして隠してきたのだ。とんだ卑怯者だと考えていた。

 

「............!」

 

(いくら...............いくらこいつが俺より強くて、大人っぽくて、尋常じゃない数と状況の修羅場くぐってきたとはいえ俺はなんてことを!年相応なことして楽しんでたやつを俺はッ!?)

 

 

グレンはナハト過去を聞いたからこそ余計に後悔した。ナハトは自分よりも若くして特務分室に入った。それも9歳という幼少期ともいえるほどの年齢でだ。そのころからナハトは生きるためとはいえ悪い魔術師を殺してきたり、それに加担してきた。それがどれほど幼いナハトを歪めたのか想像に難くない。だがそれでも学院でのナハトは楽しそうだった。自身の弟のようにも思っていたからこそグレンもうれしかった。なのにこんなことになってしまってと考えていた。

 

「優しい先生は気にするなと言っても気にするでしょう............だから先生も消しておきますから」

 

「馬鹿なこと言うな!それにまさかお前ルミアからも消す気か!!」

 

「............そうですね。消しますよ、こんな殺人者なんて知らないほうが幸せですよ...........きっと」

 

ナハトはそう言ってるがグレンは息をのんだ。なぜなら...................

 

(お前..........今自分がどんな雰囲気かわかるか?)

 

 

 

 

 

(今のお前は................物凄く『辛そう』だぞ.......)

 

 

 

 

 

 

グレンから見たナハトはとても今までに一度も見たことない弱弱しい姿に見えた。泣いているようにすら見えた。だがナハトは苦しいことは自覚していてもその理由は今のナハトには分からなかった。

 

グレンがナハトにどう声を掛けようか悩んでいると............

 

 

「いやぁ、見事だよグレン。よくその小娘を守ってここまでたどり着いたね?まぁ、ナハトがいたことも大きいけど」

 

狂人は笑いながらそう言って現れた。そう笑ってだ。とても歪な笑みで、目の前のグレンたちをぎらついた目で見て笑ってる姿は狂人と言う言葉がとても似あうものだった。

 

「このあいだぶりですね............ジャティス」

 

「あぁ、ナハトか。よくあの状況でセラを守り抜きその程度のけがで潜り抜けたね。正直今日は動けないと思っていたのに〝読めなかった〟よ」

 

「生憎と頑丈な体なのでね」

 

ナハトがジャティスと言いあっていると...............

 

 

「てめぇ!今回のレオスの件と言い俺が目的なんだろ!!」

 

「あぁ、そうだとも!もっともナハトがそれにたどり着き君に教えたみたいだけど」

 

そう当然だというように言い切るジャティスにグレンの怒りは高まる

 

「本当に苦労したよ。君を引き出すためにレオスを使ったのにその時点でナハトが疑って出てくるから参ったよ。ナハトは特務分室の中でも特に厄介だからね............500人相手に魔力尽きかけでロクな戦闘ができないセラを守りながらなら殺せなくても動けなくなるくらいの消耗はしてくれると〝読んだ〟のにこの場まで出てくるから本当に肝が冷えるよ」

 

 

「お前.........どうしてそこまで俺にこだわる!!」

 

グレンは自分の生徒たちに余計なことを背負わせる羽目になった原因に激昂する

 

「正義のためだよ」

 

「は?」

 

「君たちは知らないだろうけどこの国はあってはいけないんだよ。邪悪な意思のもとに作り上げられた魔国」

 

ジャティスはいきなり語りだすためその場にいた三人は呆気にとられる。だがそんなことをお構いなしに語り続ける。

 

「僕はこの世界の真実を知った。本当の悪が何なのか気づいてしまったのさ!それを見て見ぬふりをするなど僕の正義が許さない!故に!一年前、僕は正義を執行したんだ。この機に道上げ、与する偽善者どもを根絶やしにするために動いた。だが!そんな僕の前に君が立ちふさがった!僕の正義が君の正義に負けたのだ!」

 

ジャティスは演技っがかった様子でそう熱く語る。その様子はまさしく演者が物語に入り込んでるようだがいってる意味が分からないものが多かった。

 

 

「僕の正義が《愚者》の正義に負けていいはずがない!だからこれは君への挑戦だ。どちらの正義が勝っているかを決める....ね」

 

「いてぇよお前..................」

 

「先生大分好かれてるみたいでよかったですね」

 

「よくねぇよ!勘弁してくれマジで.........」

 

そう言って俺は剣を引き抜き臨戦態勢を取ろうとすると..................

 

 

「ナハト.......お前は手を出すな」

 

グレンはナハトの前に出るとそう言った

 

「何言ってるんですか?先生一人じゃ不利すぎですよ?」

 

この間は追い込んだとはいえ彼は本当に強い。前回のだってもしかしたら負けていたっておかしくないのだ。ナハトがいても確実に勝てるという保証はないのに何故と考えていた。

 

 

「アイツの狙いは俺だ。なら俺一人でやって白猫を安全に逃がすのが得策だ」

 

「それはそうですが.............」

 

グレンは表情の見えないナハトのほうに振り返りナハトの顔を正面から見つめながら短く..........

 

「頼む」

 

強い意志のこもった目でそう言った。流石にそう言われてはナハトも納得しざる負えなかった

 

「............わかりました。でも、逃がしたらすぐに向かいます」

 

「それでいい..............白猫悪いな。ナハトとここから去れ」

 

「え?」

 

「おいジャティス!お前の目当ては俺なんだろ?ならナハトとシスティーナは関係ないな?」

 

「そうだねぇ、ナハトはいてもいいけどいないほうが君と戦うのに盛り上がっていい。それにそこの小娘はもう邪魔だしね。....................早急に消えてほしいくらいだ」

 

 

ジャティスはそう言って冷たい視線をシスティーナに飛ばす。その視線を受けたシスティーナは顔を青ざめて後退する。そんな視線の間にナハトがかばうように入り込む。

 

「用がないならそんな目を彼女に向けるな」

 

「くくく、すまないねぇグレンと戦えると思うと昂ってしまってね?」

 

その言葉を聞いた後ナハトはシスティーナに一回手を伸ばしそれを一度引っ込め躊躇う様子を見せるがどうせ後で記憶を消すのだと自分に言い聞かせシスティーナの手を取った。

 

「先生..........俺が来るまで持ちこたえてくださいよ」

 

「無茶言うな.......................だが、まぁ〝生徒〟の言うことだ。できるだけ聞いてやるよ」

 

それだけ聞いたらナハトはシスティーナを連れ走り出す。

 

 

 

「さぁ始めようかグレン?」

 

「.......あぁ、このクソッタレが!!」

 

 

そう言って二人の死闘の幕が開かれるのであった

 

 

-------------------------------------------------------------------------

 

 

 

 

ナハトはシスティーナを連れて走り続けた。目指すのはアルフォネア邸だ。自分で大量に仕掛けた罠のあるあそこなら最も安全だろうと判断したのだ。そう考えながら走り続けているとシスティーナが辛そうにしているのがわかる。すぐにナハトは立ち止まりシスティーナを気遣うようにうかがう。

 

 

「ごめんシスティーナ大丈夫か?無理なら抱えるが..........」

 

ナハトはそう言ったものの自分の手を見て果たしてそれは俺がしていいことなのかと考えていた。いや、そもそも俺と二人でいるのさえ彼女を傷つけているのではと思っていた。

 

「俺が怖いのは分かる.............でも、無理はしないで俺を利用してほしい。辛いなら言ってくれれば君を抱えて逃げるから」

 

 

システィーナは話しかけても何も返さず黙り込んでいた。ナハトはどうするべきかと悩んでいると.........

 

 

「ごめん................ごめんねナハト私.................」

 

システィーナの口から謝罪の言葉が出てきた。

 

足手まといなこと。親友なのに................自分のことを大切な親友だと思っていてくれたのに避けてしまったことを謝る。システィーナは恐怖と罪悪感に苛まれた末の純粋な謝罪だった

 

「いいんだよ、俺が悪いんだから。だからシスティーナは俺の事なんてさっぱり忘れればいい。今日が終われば楽しい日々に戻れるから..............」

 

そう言い一度区切るナハト。するとフードをめくりシスティーナと正面から向き合い話続ける

 

「だから今だけは.............最後にもう一度だけ信じてくれないかな?どんなことになっても君を守るから。俺は君の親友だったんだから」

 

そう言って微笑みかけるナハトを見てなんでそこまで戦えるかと思った。どうしてそんなに苦しそうにしてるのに守るといってくれるのかと思った。だから、システィーナは無意識のうちに聞いていた..........

 

 

「どうして...............拒絶したのに................そんなに苦しそうなのに.............どうして...........」

 

 

「大切だからかな」

 

だが、ナハトは気づいていないがそれだけじゃない。ナハトは恐怖してるからこそ助けることに執着している。

 

 

ナハトは大切に思う人に非常に義理堅くなる。それは自分が捨てられるのが無意識に怖がっているからだ。かつて家から追放された時のことが気にしていないようで無意識化でトラウマになってしまっているのだ。自分が守れば相手は離れていかないと心のどこかで思い続けているからこそナハトは今ほどに歪んでいるのだ。その結果自分の意思で守りたいと思ったルミアの時の想いさえ忘れ行きついたのはシスティーナや辻褄合わせにみんなの記憶を消そうとしているのだ。記憶さえ消せば嫌われたことさえなかったことにできるとどこかで思っているからだろう。

 

 

「それだけなの?本当にただそれだけで...........拒絶した私を助けるの?」

 

「それだけ...............じゃないかもな。わかんないや。でも守らないとって思うんだ」

 

システィーナはそういうナハトを見て微笑んでいるが何となくナハトが苦しんでいるというよりも何かに怯え、歪んでしまっているように見えた。そしてそれには既視感もある気がした。だから...............

 

 

 

 

 

 

 

 

「ナハトは...............もしかして嫌わるのが怖いの?」

 

システィーナは思いついたようにナハトの心の奥底に抱えているものを直感で探り当てる。ナハトは守ることや大切にすることに普段から固執していたように思い至った。システィーナも最初は違和感を感じたが、ただ人がいいと思っていた。でも、そうじゃないと今わかった気がした。

 

 

「え?」

 

「ナハトはルミアによく似ている。だから何となくそう思ったの」

 

ルミアもいい子であろうとしているとシスティーナは感じていた。勿論彼女は元から優しい子なんだというのは分かっている。だが、それだけでもないのは付き合いが長いシスティーナは感じていた。それと似たものをナハトに感じたのだ。

 

「そうか...........多分........いや、間違いなく言う通りだと思う.....」

 

 

だがそれに気づいてしまったシスティーナは余計に罪悪感を感じた。あの強くたくましいナハトがここまでおかしくなってしまうことを自分がしたのだと思い自己嫌悪に陥っていると...............

 

 

 

 

「例えそうでも俺は...........自分が嫌われたくないだけだとしても..............システィーナを守りたい。嫌われるよりも...............システィーナが...............ルミアが............大切な人たちが傷つくほうが嫌だから」

 

ナハトは己が恐れているのを理解してそのうえでそう宣言した。純粋に心から何のしがらみなく守りたいのだとそう宣言したのだ。

 

(そっか............嫌われたくなくても怖くても大切だからナハトは戦うのね私は..............)

 

システィーナはその時グレンから聞いた言葉を思い返していた。

 

それは朝稽古をつけてもらっていたある日「どうして恐怖を感じず先生は戦えるのか?」と聞いた時のことだった。前の学院のテロ事件で先生とナハトは怯えずに戦っていた。先生は傷だって負っていたのにもかかわらずなのにだ。だが帰ってきたのは予想に反し「自分も戦うのは怖いという」回答だった。

 

それに続きグレンは自分の経験の基づく持論を語ってくれた。

 

そしてその中でも『自分がなぜ力を手に入れたのか。自分にとって何が大切なのか』と言うフレーズが今のシスティーナの頭によぎる

 

 

(何のため............私もルミアを......大切な親友を守りたいと考えたから)

 

そう、親友である彼女が大切だから守りたくて力を欲し、手に入れたのだ

 

(私が大切なのはルミアがいてリィエルやナハトや先生方がいて、みんなで笑いあう日常)

 

そういつも通り楽しく過ごす日常が何よりも大切なのだ。だが、このまま逃げたらどうなる?

 

ナハトはいなくなり、先生もいないそんな世界。考えただけで寂しくて.................何よりも恐ろしく感じた。それこそあのジャティスの冷たい視線よりもずっと怖い。

 

(嫌だ!ナハトが...........グレン先生がいないなんて嫌だ!絶対に嫌なんだ!!)

 

「ナハト..............私決めたわ」

 

「システィーナ?」

 

 

「私先生を助けに行くわ!何ができるか...........いえ、何もできないかもしれないけど...........でも、先生があの人に殺されるのは嫌なの!」

 

「そうか...............わかった。行こう先生を助けに」

 

ナハトは一瞬驚いたが彼女の決意の固さを見て先生の救援に向かうために歩き出した。すると.........

 

 

「ナハトもいなくならないでね!」

 

「え?」

 

「私やみんなの記憶を消していなくなろうとしてるんでしょ?私はそんなの嫌なの。それに私やルミアのこと守りたいんでしょ?ならずっとそばにいて守ってよ。..................記憶を消して、なかったことにしていなくなるなんて言わないでよ............私も貴方が本当に大切なのよ.............お願いよ、私のそばからいなくならないで」

 

システィなは最初は気丈に振舞っていたものの最後になるにつれ涙をこぼしながらそう言い切った

 

 

(あぁ、ほんと俺って未熟者だな。大切な〝親友〟泣かして………)

 

 

ナハトは自己嫌悪しながらも決意を決めたようで歩み寄る。そして、先程まで手を伸ばすことを躊躇っていたが今度はためらわずシスティーナの頭に手を乗せた。そして....................

 

 

「わかった。俺が近くで守り続けるよ。いなくなったりしない。〝三人〟で帰ろう」

 

 

システィーナはナハトの言葉に涙をぬぐい笑顔で頷いた。それを見たナハトも微笑み軽くシスティーナの頭を撫でると先に歩き始めた。

 

システィーナはナハト本来の温かさに触れ安心し、ナハトの背を追うように歩き始めるのであった。

 

 

 

 






長くなりましたが今回はここまでです。今回はナハトの歪さをテーマにしました。この話はなくてもよかったのですがナハトがただ強い主人公っていうのもそれはそれで何か違うと思ったのでそうしました。普通に考えて幼い子が親から追われることになればどれだけ姉に愛されても傷は残りますよね?それに幼いころから人を殺すことを生業にしていればと思えばなおさらですよね。この話はルミアでもよかったのかもしれませんがリゼロのスバルとエミリア、スバルとレムの関係を意識しつつ、システィーナが普通の女の子であることから彼女が適任だと思いました。さて、あと一話か二話で天使の塵編は終わるので最後までしっかり頑張ります!



そして、今回もここまで読んでくださりありがとうございました。また、いつもコメント、お気に入り登録、評価をしてくださりありがとうございます!

再計:システィーナのヒロイン追加について

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