「はぁ............はぁ...........クソッ」
息を荒げながら膝をつくグレン。そんなグレンの視線の先には五体満足で何の消耗のないジャティスがいた
「.......勝負あったねグレン」
グレンはあらゆる魔道具や巧みな戦闘で健闘したが、最後には圧倒的な差の前に膝をつき憎しみのこもった目でジャティスを睨みつけることしかできない状況にまで追い込まれていた。
「惜しいな..........もし君が『イヴ・カイズルの玉薬』を入手するかナハトと組んでいればまた違った結果になっただろうに。まぁ、前者は軍属でない君には無理か」
憎たらしいがグレンはそのジャティスの発言を正論だと認めざるおえなかった。ジャティスの言う通りあの玉薬かナハトがいれば確かに結果は違っていただろうと考えていた。
「だが、この勝負は僕の勝ちだ!魔導士として全力の君を.........ついに僕の正義が打倒したんだ!やはり『
グレンが絶望していると反対にジャティスは歓喜していた。それはもうこれ以上ないくらいに騒いでいるのだ。その上、自分と言う三流魔術師風情に勝って何がうれしいのか、そしてジャティスの意味不明な発言など理解に苦しむ。だがもうそれは今となってはどうでもいいことだった。
「ガタガタうるせぇよ..............殺るならとっとと殺れよ」
「あぁ、勿論さ!だが、ずっと待ち焦がれた勝利に、つい浮かれてしまう僕の気持ちも理解してほしい」
そしてジャティスは穏やかな笑みで続ける
「安心してくれグレン。君は苦しませずに一瞬で殺す。それが、かつて僕の正義を脅かした唯一無二の人間に対する最大限の敬意と礼儀だ.......」
「フンッ.......ありがとよ地獄に落ちやがれ」
「それと、ナハトやシスティーナにセラは殺さない。ただ、歯向かってきたらその限りではないけど」
「そうかよ」
するとジャティスは指を鳴らすと自信を囲んでいた人口精霊タルパ【
「神千斬り!!」
「《集え暴風・戦槌となりて・打ち据えよ》!」
「何ッ!?」
彼の得意技である黒い獄炎の斬撃が高速で放たれ、さらにそこに追撃が放たれる。
ジャティスは咄嗟のことで新たに自身の盾である【
漆黒の獄炎の使い手はどこを探しても〝1人〟しかいない。だからこそグレンは一人の正体は分かる。そしてジャティスも『彼が戻る』ことは想定内だった。だが、『〝彼らが〟戻ってくる』のは想定外だった。そんな風の魔術を使ったものは...................
「よく燃えるな~やっぱシスティーナ(の魔術)と相性いいな俺」
「あ、相性がいいなんてそんな///////////」
そこには呑気にそういう右手の剣を肩に乗せているナハトと火の魔術と風の魔術との相性の事を誤解して赤面している〝システィーナ〟だった
彼と彼女はグレンをかばうように前に立ち燃え上がる黒炎を見ていた。その二人の背中は先程立ち去った時と違いより一層たくましい背中だった。
「なっ!..........なんでお前らがここにいるんだよ!?おい、ナハト!お前に白猫は任したって言っただろう!それが何で二人でここにいる!ここは白猫がいていい世界なのはお前もわかって............」
いくらたくましい背中だと感じてもグレンはそんなことよりもなぜこんなことになっているのかと二人に激昂する。だが..........
「そうですね..........私がいていい世界ではないです」
グレンの言葉を遮ったのはだれよりも怯えていたはずのシスティーナだった。
「でも...........ナハトや貴方がいていい世界でもない」
「!?」
「先生さっきの俺はどうかしてたからさっき言ったこと撤回します..............ちゃんと〝三人〟で帰りますよ先生」
「ナハト............お前.........」
「そうです、私達は貴方を連れ戻しに来ました」
グレンは二人の発言に呆気に取られていた。でも............
「いやおかしいだろ!?俺は...........白猫、俺はお前を.........学院の奴らをだましてたんだぞ!」
「何言ってるんですか先生?そんなこと言ったら先生以上に俺は皆をだましてますよ?まぁ、俺も人のこと言えないですがシスティーナがいなくなったら悲しいっていうので居なくなれなくなりましたよ」
ナハトがそう自分とグレンに向け呆れたように笑う。本当のことを皆に言えないのは罪悪感を感じる。だが、まだそれを言うべきじゃない。
「お前..............」
「先生私今すごく怖いんです。でも、それはあの男の事じゃなくてナハトや先生が居なくなった世界を想像したからなんです。普段はロクでなしのくせに..........こういう人知れないところで傷ついて、私たちを守ってくれて...........。でも、今回のことで分かったんです!私たちの日常の中にグレン先生が.............貴方がいるんです!」
その心からのシスティーナの叫びをグレンは黙って耳を傾ける。そしてそれはナハトも同じだ。
「私は今の先生も肯定するわ!だから...........だから、帰ってきて先生!私たちに............もっといろんなこと................教えてよ〝先生〟!」
「今回は俺も先生と同じようなもんなんで後で一緒に怒られましょう.........セラねぇに」
「白猫...............ナハト.........」
決意のこもった瞳のシスティーナに普段通りに戻った..............いや、より一層頼りになる顔つきになったナハトを見てグレンは次第に憑き物が取れたように穏やかな表情になる。
するとその時だった............
「やれやれ..............」
天使の肩に手をかけ黒炎を割って出てきたジャティスはグレンたちの数十メートル前に降り立った
「折れた左足と右腕をつなげるのに.............さらに火傷と黒炎の対処に少し時間がかかってしまったよ.............」
静かにしていたジャティスはどうやら治療に専念していたようで礼装の端々は焼け焦げているが大きなけがの対処は済んだようだった
「ジャティスさんでしたっけ?貴方との確執は少し聞いたことがあります。ですが、もう二人にかかわらないでください。貴方と先生たちが住んでる世界は違うんです」
涙をぬぐいそまま睨みつけたシスティーナはジャティスにそう言い放った
「は?君は何言ってるんだい?」
「要は関わるなってことですよ。まぁ、この後はアンタは俺たちに捕まって一緒会うことなんてなくなるでしょうけど」
「君たち二人はこちら側に決まっているだろ!?君は二人について何も知らないから.............」
ジャティスは反論しようとするも………
「うるさいです!黙ってください!」
システィーナはそれを許さない。大きな声ではっきりとジャティスの言葉を遮る。
「正直二人が昔何をしてきたか............今何をしているかなんてどうでもいいです。大切なのは二人はこちら側の人間で、私たちの先生で、私の大切な〝親友〟です!」
「………ッ!」
システィーナのことを今まで大して歯牙にもかけない様にしていたジャティスが初めて苛立ちのようなものを感じさせた
「..........ウザいね君。容姿だけでなく性格までセラに似てるなんて」
「私とセラ先生が?」
「アンタにしては気づくの遅かったな?鈍ったんじゃないか先輩?」
システィーナはジャティスの言葉に困惑してるがナハトはそんなこととっくに知っている。だからこそナハトは皮肉一杯にジャティスを煽る。
「なんだとナハト!..............だが、君の言うことは聞けない!グレンは僕の最大の宿敵なんだ!グレンを倒すことで僕の正義は............」
「くだらないな」
ナハトはジャティスが大声で話している途中で口をはさみバッサリその発言を切り捨てる。
「............なんだと?」
「俺とグレン先生が本気で100回戦えば99回は俺が確実に勝つ。グレン先生はそのたった一回を〝最初〟に引き出すことのできる特別な人で俺も尊敬はする」
「そうだとも!グレンは特別な人間だ!だからこそ僕は.............」
だが.............
「でも普通にやれば瞬殺がいいとこだ。何ならハンデを付けたって秒殺できるくらいには先生は滅茶苦茶ひ弱だ。.......................そういえば、よく考えればあの人よく生きて特務分室辞められたな............まぁ、それはいいとしてそんな相手に二回目で挑んで何の意味がある?天才って呼ばれてきたアンタも馬鹿になったのか?お前はもう絶対にその正義とやらを掲げられないんだよ」
ナハトの言うことは事実でグレンは100回中99回負ける戦で最初に1回の勝利をもぎ取る男と言われてきたのだ。だからこそ、そんな魔導士であるグレンをナハトは尊敬もしていた。だが普通にやりあえばナハトの言う通り一瞬で倒すことのできる相手でもあるのだ。
だがナハトのグレンがひ弱だと愚弄したこ、自身の正義を愚弄したことがジャティスの怒りに触れる
「貴様ぁぁぁぁぁぁ!僕の正義を...........僕の認めたグレンを馬鹿にするというのか!!!」
怒り狂ったジャティスはそのままナハトに向かってたくさんの天使たちで攻撃を仕掛けるが...............
「《
ナハトは冷静に腰に吊っている鞘からもう一本の剣を引き抜き双剣に獄炎を付与するとまるで美しい演武のように周囲に獄炎の斬撃で襲い来るすべての天使を焼き斬る。
「どうしたんです?冷静さにかけてるんじゃないですか?」
攻撃なんてなかったかのようにナハトはジャティスに声を掛ける
「ック!何が何でも君を殺すよナハト!..........それに僕に口答えしようとした君もだ!」
「ひっ........」
システィーナはジャティスに殺気を向けられ怯えたような声を出すだが............
「させるかよ.....」
グレンが二人の前にかばうように立った
「お前ら馬鹿だなぁ...........あいつに喧嘩なんて売って...........地獄まで追って来るぞアイツ」
「うぅ.....」
「まぁ、別にここで倒しちゃえば問題なんて何もないじゃないですか」
「間違っちゃいねぇが..........滅茶苦茶だなオイ...........」
グレンはナハトの言葉に確かに間違ってはいないがため息をつきたい思いになっていた。そしてグレンはそのまま着ていた学院のコートを脱ぎ、余っていた魔道具をその場に投げ捨てた。
「...........何のつもりだグレン?」
グレンのその行動に眉を顰めるジャティス
「あん?もういらねんだよこれ。こんなもん使ってもついてこられるのはナハトだけだしな」
そう言い終えるとグレンはすべての装備を脱ぎ終えた。そして拳と手を打ち鳴らすと
「お前の相手なんざ拳闘コレで充分なんだよ」
「な!?ダメだ!それじゃあ意味がない!魔導士として本気の君を倒してこそ僕の正義は.................」
喚くジャティスを無視しグレンはナハトとシスティーナのほうに振り向き告げる
「白猫、ナハト
「!」
「妥当ですね.........わかりました」
ナハトはそう言って左の剣だけしまい、左手を開けるとグレンの右隣に立つ。
「白猫。お前はお前が思っている以上に強くなってる。一対一の魔術戦は無理でも前衛の援護に専念すれば通用する」
「それに俺もいるからね。システィーナがしたいようにするといい。完璧に二人に合わせるからさ」
そう二人から言葉を受けたシスティーナは..............
「わかりました!先生、ナハト................三人で帰りましょう!」
そう言ってグレンの左隣に立つ。これで三人が同じ位置に並んだ。
「おうよ!頼りにしてるぜ〝システィーナ〟」
「やっとちゃんと名前で呼んでくれたわね」
三人は笑いあいそして顔を引き締めジャティスを睨みつける。
「君の正義はそんな子供に頼るものじゃないはずだ!もっと特別な..........」
「いちいちうるせぇ~よ。行くぞお前ら!」
グレンがそう返すと三人はそろって走り出す。
「システィーナ=フィーベル!僕とグレンの神聖な戦いを穢した魔女め!!」
ジャティスは叫びながら【
「《集え暴風・
システィーナは頭上の襲い来る【
「な!?風の
風の魔術は元来弱いといわれる。その理由は操作しなければならないパラメータが多すぎて炎熱や冷気や電撃などの単純なエネルギー調整で事足りるものに比べ威力が出ないのである。
だが、それこそ風の魔術の強い点の裏返しである。操作するパラメータが多いならばそれだけ改変のバリエーションは無限大と言うことだ。術者のセンスと技量次第でどんな状況にでも対応できる抜群の応用力を発揮できる。
「小癪な!」
だがジャティスはすぐさま切り替え【彼女の御使いハーズ・エンジェル・火刑】を展開し炎の翼はためかせ渦巻く炎で三人を焼き尽くさんとするが...................
「《獄炎竜よ・万象焼き焦がし・その咆哮を轟かせろ》!」
ナハトの固有魔術【ドラゴニック・インフェルノ】。獄炎の咆哮は放たれた炎をもろとも天使までもまとめて焼き尽くす。この場において最強の炎熱系の魔術の使い手はナハトだ。そのナハトを前に放たれる炎などちゃちなものでしかない。
「馬鹿な!?」
「《焔と光よ灯せ》!」
「何これ!でもサンキュー!」
ナハトは続けざまにさらに魔術を使う。【ウエポン・エンチャント】を改変させ炎をグレンの拳に付与し合わせて強化もする。そのままグレンは足を止めずにジャティスに殴り掛かる。
そのジャティスは防ぐために【
「《集え大気・集いて固めよ・圧搾せよ》!」
システィーナが発動させた呪文により【
「なんと!?」
「よそ見してんじゃねぇ!!!」
炎纏う拳がジャティスの頬を掠め肌を焼く
「クッ」
「うおぉぉぉぉぉぉ!」
さらに追撃をと迫りくるグレンに後退して距離を取ろうとするジャティス。だが...............
「ガアッ!?............何!?」
ジャティスは体に痛みとしびれを感じその個所を見ると腕と脇腹に噛みつく雷の狼がいた。そしてそれは弾けるとジャティスを痺れさせ動くことを許さない。
「あぁぁぁ...........クッ........」
(こんなことできるのは.................)
ジャティスは感電し、動けずに今の攻撃をについて考察する。そして当然、痺れて動けないでいるその隙をグレンは逃さない。
「オラッ!!!」
「ガハッ.............!?」
炎の拳はジャティスの腹に突き刺さりそのまま勢いよく吹き飛ばされる。
だが、ジャティスは流石の腕前で展開させていた天使で受け身を取り態勢を整える。
「ぐっ.............はぁ、はぁ............完璧なタイミング、より効果的な結果を出すための援護をするかナハト.............やっぱり君は本当に厄介だ………」
「お前マジでスゲェのな.............いや知ってたけどホント規格外だよなお前......アルベルトと組んでるときみてぇにやりやすいし。てかあの狼のやつなんだよチートかよ」
「やっぱり凄いなぁナハトは...........タイミングも技の精度も高い..............どれだけの研鑽を.........」
ナハト以外の三人は口をそろえ称賛する。因みにナハトの使った魔術は黒魔改【ライトニング・ウルフ】。〝自動追尾型〟の魔術なうえ簡単な命令も聞く戦える使い魔のようなもの。
「やっぱネックなのは威力だよな....................」
ナハトは称賛を受けているものの最後の魔術で仕留めきれなかったのが気にかかっていた。【ライトニング・ウルフ】が自動追尾であることや簡単な命令も聞くというチート仕様の魔術だがその分威力がやや落ちる。それでも普通なら十分に意識を奪い去るあるいは感電死させるほどの威力は出るし狼の牙と爪は十分に鋭く相手に突き刺さる。だが改善しなくてはと考えていた。
「グレンと組んだナハトが厄介であることは十分に考えられたがここまでとはね...............それに彼女の技量がここまでだったとはね」
「当たり前だ俺が鍛えてる生徒だ。強くなってもらわなきゃ困るってもんだ」
「評価を改めよう................グレン一人ではなく、君たち三人を倒すことで僕の正義はより更なる高みに至れる!」
すると叫んだジャティスは懐か疑似霊素粒子粉末パラ・エテリオンパウダーを取り出し大量にばらまく。今までにないその量に大技が来るということがわかる。
「させるかよ!!」
グレンもそれを察知したため走り出しやられる前にとどめを刺そうとするがジャティスはやめない。恐らくグレンが来るまでに完成させ決める腹積もりだろう。
「来い!僕の奥底に眠る正義の具現!僕だけの神よ!正義の神よオォ!!」
粉が徐々に光だしその姿を形どっていく。
ジャティスの深層意識の奥底に眠るもっと強大で偉大な存在が今ここに降臨しようとしていた。
「
ジャティス単独による、神の概念定義具現召喚。突き抜けた妄想の極致。これはもう錬金術【
人が立ち向かうには強大すぎるその存在が現れようとしたその時だった
「《大いなる
「《大いなる
2人の【ゲイル・ブロウ】の即興改変。システィーナのそれはただ突風を局地的に発生させるもので攻撃力は皆無だ。ナハトのそれもその〝風自体には〟攻撃力はない。だが………
「何!?」
ジャティス渾身の
「クソ............何故だうまく顕現できだと!?ッ!......ガハッ!ゴホッ!………何が起き......まさか!?」
ジャティスは失った分の粉をまき散らしても形を復元できなくなっているうえ自身も血を吐いていた。
(ナハトめ…!一体何を!?)
意味の分からない現象に一瞬戸惑うもすぐにナハトの仕業だということは分かったが何が起こっているかはわからなかった。
「どうだ?効くだろソレ?」
ナハトの異能を掛け合わせた黒い風の副次効果は万象を蝕み、腐らせ、爛れさせる〝瘴気〟だ。黒い風は瘴気を乗せて吹き、その瘴気に触れたものを蝕んでじわりじわりダメージを与えていくのだ。ジャティスが上手く具現化できなくなっているのは瘴気により粉を撒いたところからダメにさせていってるからである。
だが、当然瘴気がそのままそこにとどまるのは一時的だ。風が吹けば瘴気は押し流される。ナハトが意図的にそれをまき散らした状態にしない限り永遠ではない。
それでもジャティスにとっては致命的だ。なぜなら.......................
2人を信じて走り続けたグレンがいるからだ
「これで...........終わりだぁぁぁぁぁぁ!」
そう叫びながら放たれた渾身の拳はジャティスの顔面を捉える。
そしてそのすさまじい勢いの拳を受けたジャティスは大きく吹き飛ばされてその先の建物の壁を貫通し十字の骨組みに体をのめりこませ止まった。まるでそれは十字架に張り付けられているようだった
「はぁ.......はぁ………はぁ...........へっ、いい様じゃねぇか」
その様子を見たグレンは笑みを浮かべ一息をつく。
「「先生!」」
そこにシスティーナとナハトが駆け寄る。
「倒したの?」
「いや多分まだだな..................あれで倒れてくれるほど甘い相手じゃない」
「あぁ、アイツがこれでおとなしくなるようなタマじゃない………ほれ見やがれ」
そう言ってナハトとグレンが警戒しているとジャティスはよろよろと人口精霊タルパの肩を借りて立ち上がった。
「ゲホッ.............まさかここまで君たちがやるとは思わなかった」
そういうジャティスはなぜか上機嫌そうであった
「立ったてことはまだやるんだろ?いいぜ、とことん相手してやるよ」
ナハトもグレンもそれぞれの構えを取り臨戦状態になるが................
「いや、もういい.............僕の負けだ」
「は?」
突然敗北宣言をするジャティスに意味が分からないように呆気に取られているとジャティスはさらに続ける。
「僕の正義の象徴たる秘術.......
たった一回自身の術を破られただけで引き下がると言い出すのだ。どこまでも本当に度し難い相手だ。だが.................
「それで俺が逃がすとでも?俺は宮廷魔導士団の人間だ。アンタを捕らえてアンタが何を知ったか調べさせてもらう」
「あぁ、お前は調査されその後は封印刑にでも処されやがれ」
ナハトとグレンはここでジャティスを捕らえようとお互いに武器と拳を構える。
「くく、確かにこの状況っで君たち二人の相手をしたら僕は確実に捕まるね.........だけど」
そういうジャティスに斬りかかろうとしていると何かが倒れるような音が後ろか聞こえた。それにナハトとグレンは同時に振りかえるとそこにはシスティーナが顔色悪く倒れていた。
「な!?システィーナ!」
「チッ!そういうことかよ!」
ナハトがすぐにシスティーナに駆け寄るとグレンは鋭くジャティスを睨みつける
「彼女はもう限界だ............そんな彼女のいる状態で二人はまともに戦えるかな?」
そう、もしジャティスがそのシスティーナをうまく利用した立ち回りをしたらいくら消耗しているとはいえ厄介だ。ここは大人しくいかせるしかない。
「くく、わかってくれたようだね。それではまただ三人とも!今度は僕の正義が君達を打ち倒そう」
そう言ってジャティスは悠々と逃げていった。
「はぁ~もうくんなってんだよ.............どっかで勝手にくたばりやがれ......まったく」
「ははは、違いないですよね..............お疲れ様システィーナ。大丈夫か?」
グレンのそのジャティスに対する物言いにナハトは同意の意を示しながら倒れこんでいるシスティーナをおんぶしていた
「ありがとうナハト..........でも本当にもう無理。いろいろなもの削ったような感じがするわ」
「本当にお疲れ様..............それと本当にいろいろとありがとうシスティーナ」
「あぁ、俺からも助かった。ありがとうな白猫」
「ナハトはいいですが先生が素直なのは変な感じですね..............まぁ、素直に受け取っておきますけど」
「ひでぇな~」
そんないつもと変わらない会話の後システィーナは疲れ切った様で寝てしまった。無理もないこれだけの経験をしたんだ相当な負担だったはずだ。すると必然的に二人だけの会話になる。
「............なぁ、ナハト俺はこのままこいつらと一緒にいていいのか?」
「俺に聞きます?俺なんて先生の倍はヤバいやつですよ?」
偽名と言い殺してきた数と言い、倍と言うのがおこがましいくらいには先生よりひどいと思う
「うっ..........だってお前なんつーか吹っ切れたようにしてるからさ」
「そうですね..............システィーナの言葉で俺はすごく救われたと思います。だからですよきっと」
こんな歪な存在を認め確かな光を見せてくれたからナハトは今自分を持っていられると感じていた
「そうか..............で、俺の質問の回答は?」
「そんなの先生の俺みたいな奴が必要だって言われたんですよ?それにこうしてシスティーナがここにいるのが何よりもその答えなんじゃないですか?」
「..............そうだな」
そのままナハトとグレンは無言で歩いていた。その二人の顔はどちらも穏やかで、二人の先には暗い闇はなく眩しく光輝く未知の未来だった。
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後日この事件が完全に解決された後調査の結果被害者の数は1,000人以上にも及んだ。ナハトの足止めにはその半分は割かれていたことを知ったグレンは改めてナハトがチート野郎だと再確認したらしい。
その後いろいろな人間の話し合いの結果本来の事実とは異なる形で大々的に発表され幕を下ろした。
因みに帰ってきたグレンとナハトはすべてを聞いたセラにこってりと一日中怒られた。特にナハトがしようとしていた記憶消去のことやグレンが無理したことには涙ながらにも怒られ二人は本当に申し訳ないと思いながら謝罪しこれからはちゃんと相談することを約束し必死に謝った。
だが、ナハトの場合それで終わりではなかった。ある日学院にいる際にシスティーナがナハトのしようとしていたことをルミアにうっかり漏らしてしまったのだ。
「ねぇ、ナハト君?.........システィが言ってたことどう言うことかな?かな?」
「あ、えっと............そのなんといいますか...........あの時の自分はどうかしていましたと申しますか..............」ダラダラ
(システィーナどうすればいいのコレ!?ルミア笑ってるけどなんかオーラが凄いよ!!)
助けを求めナハトはシスティーナのほうを見るが..........
「........」フイッ
目をそらした。システィーナはあの時のナハトが居なくなっていくと思ってとても怖かったのだ。怒られて当然だと思った。ただ、一番は見たことないほど本気で怒っている親友が怖いのだ。
(待ってください!俺が悪いですが助けてくれ後生だから!!!)
すると遂にルミアは冷たい笑顔でナハト手首をつかみどこかに連れていく。
「(え?何この力?離せないんですけど!何されるの俺!?)本当すみませんでした!!!だか...........」
ナハトはそう言い切る前にルミアが空き教室に連れ込んでいき扉を閉じてしまったことでシスティーナはその先は何が起こるのかはわからなかった。
「...........自業自得よ馬鹿」
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ナハトとルミアの2人だけの教室。そこでナハトは護衛対象にびくびくと怯えていた
(勿論俺が悪いですよ?全面的に.......でも、俺何されるの!?とにかく土下座して...........)
ナハトの謝罪方法がややグレンに似てきているのはきっと気のせいじゃないだろうが今はそれよりも謝罪と彼女のご機嫌取りが重要だ。ここまで彼女を怒らせているんだ。それにきっと大切な彼女を傷つけてしまっただろう。だからこそ早急に.............
「え?」
ナハトが必死に思考をめぐらせているとルミアが一歩ナハトに近づきsのまま突然抱きしめたのだ
「る、ルミア?」
「私はナハト君を絶対に嫌いになったりなんかしないよ。たとえ何があってもそれは変わらないの。昔ナハト君が私に言ってくれたことを私も同じことをナハト君に想っているの」
「ルミア...................」
「不安なら私に頼って。また不安になったらこうして抱きしめてナハト君を安心させせてあげる。私が昔君にされて凄く安心したことなんだよ?......だからね、何があってもそばを離れないで...........ずっと私のそばにいて」
確かに今抱きしめられてとても暖かくて安心する。ナハトは初めて会ったその日ルミアを抱きしめ励ました。それが今逆に自分にされているとは思ってもいないなかったと考えていた。
(あの日..........ひどく怯えてすぐにも壊れてしまいそうな少女がこんなに強くなっていたんだな............)
「なぁ、ルミア........」
「どうしたのナハト君?」
「もう少しこのままでいいかな?どうしてかわからないけどルミアと離れたくない」
「うん..........いいよ。私もまだナハト君と離れたくないから」
2人はどのくらい抱きしめあっていたかわからない。でも、とても長い時間二人はそのままでいた。
以外に寂しがりな似た者同士の二人はお互いの温かさに安心して穏やかな表情を浮かべる。
きっと、遠くない日のいつの日か
二人が本当に報われ心の底から幸せに笑いあう日が来ることを..........................
今回で天使の塵編完結です。前回まではホントはナハトのこの記憶操作を目論んだことはルミアには知らせないつもりでしたがやっぱりルミアにも知ってもらうことにしました。等身大の彼と彼女であってほしいと考えたからです。さて、次回からは遺跡調査編です。この話と言えばセリカの過去の伏線にアイツとの戦いがとても見所ですよね!そんな魅力的な話を楽しんでもらえるよう頑張ります。
最後に今回もここまで読んでくださりありがとうございました!また、いつもコメント、お気に入り登録、いいねをしてくださりありがとうございます!
再計:システィーナのヒロイン追加について
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