とある姉弟のクリスマス
粉雪がしんしんと降り注ぐ季節。外は白銀に彩られるなか反対に綺麗な紅い髪の女性は暖かい部屋の窓から外を見ていた
「今日はクリスマスだったわね.................」
帝都にある一部屋でイヴは外の通りから聞こえる笑い声を聞きながらある年のクリスマスの思い出を思い返していた
「はぁ~まったく................書類の整理といい、無能な室長共といい今日も散々だわ................」
忌々し気に表情を浮かべたイヴは今日も今日とて軍で忙しく働いていた。そして今はその帰りで一人で寒い夜空の下を愚痴をこぼして歩いていた
「早く帰ってナハトの美味しいご飯が食べたいわ...................」
イヴはナハトと今は同居しており、偶々今日はナハトが非番なためナハトのことだからすでに料理の支度を済ませてくれるだろうと考えていた
(それにしても今日は交際している男女が多くいるわね.........今日は何かあったかしら?)
そう思うイヴの周りには手をつないだり、腕を組んだり親しい男女の間柄であることが伺える者たちが多くいた。イヴはあまりの激務ゆえに今日がクリスマスと言うことが頭になかった。そもそも軍人である彼女からすれば無縁の行事でもあるため当然と言えば当然かもしれない
(ナハトもいずれ好きな女性なんかできてあんな風に..............)
イヴは将来自身の弟であるナハトもこんな風に仲睦まじく女性と過ごすのだろうかと考えていた
イヴは身内贔屓なしにしてもナハトはかなりカッコいい容姿をしていると思っているし、性格も優しく真面目できっと交際する女性はさぞ幸せだろうと思っていた。だが、自分のことを姉と慕い、支えそばにいつもいてくれる最愛の弟が自分から離れていくことを考えるとどこか寂しく切ない気がしていた
(ナハトのはできればずっと一緒にいて欲しいけどそれは私の我が儘よね..............)
可愛いらしく自分の後ろをついてきていた頃の姿や今のたくましく頼りになる姿を思い返しながら歩いているとすぐにナハトの待つ家までついていた
「ただいま、今帰ったわナハト」
玄関を開け着込んでいたコートと防寒具を外し玄関にあるコート掛けに身に着けていた防寒具らをかけていると.............
「お帰り姉さん。今日もお疲れ様」
エプロン姿のナハトが室内のキッチンからねぎらいの言葉を掛けながら歩いてきた
「ありがとう..............今日も無能な室長たちの後始末で忙しくて.........」
「そっか.............非番だったけど読んでくれたら手伝ったのに」
「そんなことできないわよ。昨日まであなたは遠方での任務に従事していて疲れているでしょうし、それでなくてもかなりの量の書類整理を任せたりしていたんだから」
ナハトが非番な理由は数週間にわたり遠方で反政府組織などの調査・討伐の任務に出払っていたためである。そして昨日の昼頃に帝都に戻るとそのまま手つかずにたまっていた書類の整理までしたため流石に休ませる必要があると判断したイヴが非番にしたのだ
「それでも姉さんが心配だよ?すぐ無理するんだから」
そう言って二人は廊下を歩きだしリビングに向かっていく
「大丈夫よ。しっかり体には気を使っているわ」
「それならいいけど..............そうだ姉さん。お風呂もう沸いてるけどご飯の前に先に入る?」
「そうね.............外も寒かったし疲れたから先はいるわ。ナハトはどうするのかしら?」
「俺は作った料理の盛り付けとかスープを温めなおしてくるよ。姉さんはゆっくり休んで」
「それじゃあそうさせてもらうわ」
そう言ってイヴは自室に着替えを取りに戻っていく。ナハトもリビングに併設するキッチンに戻っていった
イヴが長風呂から上がり、幾分か疲れが取れてリビングに向かうと卓上には豪華な料理が並んでいた
「あっ、姉さん丁度いいタイミングだね。料理は全部出そろったから座ろ」
するとナハトが両手に白い湯気を上げるポトフを持ってキッチンから出てきた
「今日は随分と豪華ね...........何かあったかしら?」
「そりゃ一応クリスマスだしね。非番だったし少し張り切ってみたよ」
「クリスマス..................そういえば今日だったわね、すっかり忘れていたわ」
そう言ってナハトがポトフを置くとイヴは改めて卓上に並ぶ料理を見ていた
卓上にはローストビーフとそれに一緒に盛られた色とりどりサラダ、小さく切られたパンにチーズがいい感じに焦げて食欲をそそるにおいを醸し出すグラタンとどれもすべておいしそうで美しく盛り付けされていた
すると卓上に置かれた瓶とグラスに目が留まる
「ナハトこれワインかしら?」
「あ~違うよそれはぶどうジュースだよ。おいしくて評判のを買ってきたんだ。姉さんも俺もお酒に弱いから気分くらいはと思ってね」
「ふふ、そうね。確かにこれだけの料理なのに美味しい飲み物がないと味気ないわよね」
「食後にはケーキもあるから楽しみにしていて............さて、スープが覚めちゃうから食べよう姉さん?」
「そうね、冷めたらもったいないもの。早速食べましょうか」
イヴがそう言うと二人はそれぞれ席に着くと食事の挨拶をし、豪華な料理に舌鼓を打つ。
「「いただきます」」
イヴはまず最初に目についたとても美味しそうなローストビーフを口に運ぶ
「このローストビーフやわらかくて美味しいわね。お肉もいいものなんでしょうけど焼き加減も抜群だわ」
「お肉屋さんでいつもは買わない高めのお肉にしたからね、姉さんに喜んでもらえてよかったよ」
「それにしてもあなたの料理本当に美味しいわよね...............私としては少し微妙な気分だわ」
イヴは作るのは好きでも美味しいものが何故かできないメシマズである。姉として弟であるナハトに何か食べさせてあげたいと思い練習しているが今だに成果はなかった
「あははは、なら今度一緒に何かお菓子でも作る?」
「..........普通はそれを提案するのは逆じゃないかしら?」
「別にいいんじゃない?それに料理ならアルベルトさんのほうが俺よりおいしいよ?」
「私からすればどっちもどっちもよ...............でも、私はナハトの料理のほうが好きよ?」
「そうなの?」
「えぇ、だって私の大切な弟が作ったものよ?好きじゃないわけないでしょ?」
「そっか..............ありがとう姉さん、すごくうれしいよ」
それからも二人は笑みを浮かべ、仕事の事や昔の思い出話などいろいろな話をしながら食事を進めていた
きっと軍の者は今のイヴを見ればとても驚くほどにイヴの表情は普段の張りつめた鋭さは抜け、穏やかで幸せな笑みを浮かべて聖夜の晩餐を楽しむ姿がそこにはあった
「ケーキもおいしかったわ。素敵な食事を準備してくれて本当にありがとうナハト」
「どういたしまして姉さん。喜んでもらえて俺もよかったよ」
2人はナハトの手作りのケーキを食べ終えるとケーキを出すときにナハトが淹れた珈琲を飲みながらのんびりとしていた
「さて、姉さんクリスマスと言えば何か足りないと思わない?」
「足りないもの?そんなものあったかしら?」
ナハトは突然イヴにそんな問いを投げかける。イヴはその問いを受け何のことだろうか考えていると.............
「それはこれだよ」
そう言うとナハトはどこからか取り出したラッピングされた箱をイヴに差し出す
「メリークリスマス姉さん!いろいろと姉さんにお世話になってきてるからそのお礼の意味を込めてプレゼントだよ」
「クリスマスプレゼント.................ごめんなさいナハト。貴方がくれるのはすごくうれしいんだけど私は何も用意してないわ」
イヴは弟から送ってもらったプレゼントがうれしくないわけがなかった。だがそれと同じくらい自分がプレゼントを用意できなかったことを悔やんだ
「気にしなくていいよ?俺が姉さんに渡したかったんだからさ。それに姉さんは忙しかったんだし、気にしないで」
「で、でも.............私は貴方の姉なのよ?だから...........」
「いいのいいの。それに姉さんにはもうプレゼント貰ってるからさ」
「え?」
「だって俺の料理褒めてくれただろ?それにすごく幸せそうな笑顔を見せてくれたし、俺はそれだけで本当に嬉しかったし充分なんだ」
「ナハト..................」
「それにこうして二人で過ごす時間も俺にとっては最高のプレゼントなんだ。だから姉さんは気にしなくていいんだ」
そう言うナハトの笑顔は一寸の曇りもなく晴れやかだった。その表情を見ればナハトの言うことは本当だと分かるし、イヴだって嬉しくなる
「そう................私も同じ気持ちよ。ありがとう.............本当にこんな素晴らしい時間を私にくれてありがとうナハト」
2人はそれからもゆっくりと幸せをかみしめながら二人だけの時間を楽しんだ
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イヴはそんなナハトとの幸せな時間を思い出し穏やかな表情を浮かべ置いてあるサルビアの花を模したブローチの目をやる。そのブローチこそナハトがイヴに送ったプレゼントである。
(花言葉は尊敬..............そして家族愛)
ナハトのことだから意図していたのかもしれないその花言葉のこと考えそれを見ると弟が愛おしくてたまらない
「愛しているわ............ナハト」
その言葉に含まれる愛しているというイヴの感情の中に姉弟としての愛情だけでなくもしかしたら...............
なんて思わせるほどにイヴの表情は穏やかで、誰もが見惚れるほどに美しかった
再計:システィーナのヒロイン追加について
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