ロクでなしとチート主人公   作:graphite

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第七巻 社交舞踏会編
舞踏会の準備とその裏側


 

 

「本当にごめん!ルミア、リィエル......」

 

「もう......気にしなくていいのに」

 

「ん、平気」

 

システィーナが突然二人に謝る理由。それは三日後に迫った『社交舞踏会』の準備の事だった。システィーナはリゼと言う生徒会長の先輩と懇意にしておりよく手伝いをしていた一環で今回の準備に一般生徒側の代表として生徒会や実行委員などの橋渡しとなり忙しく働いていた。そんな忙しそうにする親友を見てほっておけなかった二人が手伝いを申し上げたのだが、システィーナにとってはそれが負担なのではと思っていた。

 

「私がしたかったことだし........それにこうしてるのも結構楽しいんだよ?」

 

「ん、私も楽しい」

 

そんな二人に..............

 

「なんて良い子たちなの...........」

 

システィーナは感激したような様子で二人を見ていると.................

 

「失礼。ルミアさん少しお話してもいいですか?」

 

「.....はい」

 

三人のところに一人のおしゃれした如何にも女慣れしたボンボンと分かる男子生徒がルミアに向けて声を掛けてきた

 

「はぁ........また(・・)だわ..............」

 

ルミアは小鳥のように首をかしげるのに対しシスティーナは露骨に呆れたようにする。リィエルはいつものように眠たげにして頭の上にはてなマークを浮かべているようだった。

 

「ルミアさん...........あの男....いえ、次の『社交舞踏会』のダンス・コンペに誰かと参加される予定はありませんか?」

 

「ええと........今のところはその予定はないですけど.....」

 

「そうですか........あなたほどの女性が参加されないなんて勿体ない」

 

そう言うとその男子生徒はにこりと笑いかける。そして..............

 

「もしよかったら..........僕とペアで――

 

男子生徒がそう言いかけた瞬間だった

 

 

「お~い、ルミア!」

 

 

そう言って駆け寄ってきたのは丁度先日まで遺跡探索の事件の怪我と禁呪の反動により治療院に入院していたナハトだった

 

 

「あっ!ナハト君!もう体大丈夫なの?」

 

「えっ?ち、ちょっと!?」

 

 

ルミアは目の前の男子生徒に目もくれず、すぐにナハトに駆け寄っていくと体のことを心配して問いかける。放置された男子生徒は周りから憐みの視線を向けられていた。

 

 

「平気平気。まぁ、まだ多少本調子ではないけど」

 

「そっか..........無理しないでよ?何かあったら言ってね?私が力になるから」

 

「あぁ、頼りにしてるよルミア............そういえば、ルミア誰かと話してなかった?」

 

「...........あっ!忘れてた.....」

 

ナハトがルミアに尋ねるとルミアは素で男子生徒のことを忘れていた。その発言にもう周りは男子生徒に心の底から同情していた。

 

「ご、ごめんなさい!えっと、お話と言うのは...........」

 

ルミアは謝罪をいれて先程まで話しかけていた男子生徒に話しかけるが.......

 

「..........いいんだ。なんでもない.......」

 

その男子生徒はそれだけ言うと肩を落としたように歩いて行ってしまった

 

「久しぶりねナハト」

 

「ん、久しぶり」

 

男子生徒が寂しげに立ち去るとシスティーナもリィエルも久々に学院であったナハトに声を掛ける

 

「あぁ、久しぶり.........っていうほどにも感じないな。二人ともお見舞いにたくさん来てくれたし」

 

「ふふ、確かにそうね.......でも、そこにいるルミアほどではないわね」

 

システィーナはからかうような笑みを浮かべそう言うとルミアは顔を少し赤くする

 

「も、もうシスティ!///だって........寂し.....って、システィだって同じくらい来てよね!?」

 

ルミアはナハトが入院してから一日も欠かさずにナハトとこに訪れていた。だが、それはシスティーナもほぼ同じだった

 

「うぅ..........そ、それは...私だってナハトの事が......って、違うんだからね!?////」

 

お互いが顔を赤くして照れたようにしている様子を見て周りの奴らはナハトのことを羨ましいと思う反面敵わないと思っていた。

 

 

 

その当のナハトは.............

 

 

「あ、あのナハト先輩!//////」

 

「ん?どうしたんだ?」

 

「私とその..............ダンス・コンペ出てくれませんか!/////」

 

ナハトはルミア達が言いあってる傍らでリィエルとそれを見ていると後輩の女子生徒がナハトを誘っていた。そしてそれは一人だけじゃなくその女子生徒の後ろにも複数の女子生徒が控えていた

 

「あ~ごめんな?俺実は一緒に踊りたい人がいるんだ」

 

「そ、そうですか............」

 

ナハトの答えに見るからに落ち込むその女の子にナハトはバツが悪くなり頭に手を乗せる

 

「また機会があったら踊ってあげるから元気出してくれ、な?」

 

「!///////は、はぃ//////////」

 

女子生徒は顔を真っ赤にしてその場を走って立ち去って行った。

 

実はナハトはルミアと噂されているがそれでもかなりモテるのである。特に後輩の女子生徒から人気が高く、お兄ちゃんのように優しくしてくれると後輩たちのなかではもっぱらの噂となっている

 

だがそんなナハトに踊りたいと言わせる女性がいるのだ。それは勿論..............

 

 

 

「ねぇ、ナハト君?少し軽薄すぎるんじゃないかな?」

 

「る、ルミアさん?何か怒ってます?」

 

ルミアにナハト気圧されていると...................

 

「そ、そうよ!軽薄だわナハト!///」

 

システィーナも顔を少し赤くして機嫌悪そうにナハトを指摘する

 

「システィーナまで怒ってるのか?まぁ、確かに軽薄だったかもな.............もしかしてあの子嫌気がさして走って行っちゃたのかな?」

 

((絶対違うと思う..........))

 

2人して目の前の鈍感なナハトに呆れていた。二人ともナハトがモテることは〝よく〟知っているため呆れていると先程のナハトの断り文句が気にかかった

 

「そう言えばナハト君ダンス・コンペに一緒に出たい人がいるの?」

 

ルミアがそれをナハトに聞くと帰ってきた答えは............

 

「あぁ、俺はルミアと出たいと思ってる」

 

「え?」

 

ルミアは最初断るための方便だと思っていたため予想外なことに驚いていた

 

「ルミアがもし踊る人がいないなら.............いや、いたとしても俺を選んでもらう。俺がルミアに『妖精の羽衣(ローベ・デ・ラ・フェ)』を着せてあげる」

 

「な、ナハト君.......?」

 

ルミアは普段とは違った強引なナハトに戸惑い、後ろに下がる。それに続いてナハトも迫ってくるためとうとうルミアは壁際まで追い詰められる。

 

 

「ち、ちょっとナハト?そんな無理やり誘うのは...............」

 

システィーナも普段と違うナハトに戸惑いながらルミアを助けようと思うがナハトの雰囲気にそれ以上口をはさめなかった

 

(ナハト.........なんだか少し怒ってる?)

 

システィーナがナハトに違和感を感じているとルミアは横にずれて逃げようとする。だがそれをナハトは両腕を壁につけルミアの退路を塞いでいた。

 

「逃がさないよ?」

 

そう言ってナハトは顔を近づけあと少しで触れてしまうのではと言ううところまで行くと近づけるのをやめる

 

「俺以外の男にルミアは渡さない。俺がルミアをエスコートする。必ずルミアに『妖精の羽衣(ローベ・デ・ラ・フェ)』着せると約束する。.............俺を〝信じて〟欲しい」

 

ルミアも当然ナハトと踊りたいという気持ちがなかったわけじゃない。だが、入院中ナハトはだれとも踊る気が無い様だったうえ、親友であるシスティーナもナハトに少なからず気があることを感じていた。だからこそルミアはナハトと踊りたいという思いを封印していた。

 

だが、『妖精の羽衣(ローベ・デ・ラ・フェ)』にはある有名な話がある。その逸話もあるうえにナハトからの熱烈な言葉にルミアはもう冷静ではいられず...........

 

こくん、っとルミアは気づけば首を縦に振っていた

 

遂に学園最強のガードを誇ることで有名なルミア=ティンジェルが攻略されたのだった

 

 

「ぐあぁぁぁぁぁぁ!壁ドンかよぉおおおおおおお!!」

 

「ルミアちゃんはそういう手に弱かったのかぁぁぁぁ!!」

 

ルミア自身が頷いたことに驚く暇もなく準備中の会場にいた男子生徒はみな地涙を流して絶叫していた

 

「ありがとうルミア。さっきルミアに確認せずに申請だしちゃって焦ってたんだよね。受け入れてくれて助かったよ」

 

ルミアの頭をやさしく撫でるナハトにルミアはもう何がなんやらと言った状態で、ナハトに頭を撫でられることを喜ぶべきかグレンのような発言をするところに突っ込めばいいのかわからなかった

 

「ちょっとナハト!?なんでそんなに無理やりルミアと?もしかして......〝あの〟ジンクスを信じて..........」

 

「ん?確かジンクスって『妖精の羽衣(ローベ・デ・ラ・フェ)』を着て踊ったペアは幸せに結ばれるってやつか?それなら信じてるといううか単に確率が高いものとして思っているけど?」

 

「じゃ、じゃあどうして...........?」

 

「そりゃ単純にルミアと踊りたいのとさっきも言ったけど俺以外の男にルミアを渡したくないからかな?」

 

「そ、それって........(もしかしてナハトはルミアの事......)」

 

システィーナはナハトもルミアも互いのことを特別想っていることは分かっている。だけどそれを最近素直に認められなくなっている気がしていた。

 

「な、ナハト君みんながいる前でそんなこと............//////」

 

ルミアはまるでナハトが独占欲を出してくれているみたいで恥ずかしい反面嬉しいような気持だった

 

「ん?......まぁ、何にせよルミアが頷いてくれて本当によかった。ありがとうなルミア」

 

「う、うん(アレ?今一瞬だけナハト君の様子が........)」

 

ナハトはルミアが受け入れてくれたことに安堵しながら先程の............半刻前の出来事に思い馳せていた

 

 

 

---------------------------------------------------------------------------

 

 

「おい、ナハト。一体どこ行くってんだよ.............」

 

最近ついに学院から給料をもらうのではなく払うことになってしまっているグレンが退院したことの報告に来たナハトに連れられて院内を歩いていた。するとナハトは裏庭で突然歩くのをやめると..........

 

「来たかナハト、グレン」

 

そこに立っていたのは鷹の目の男アルベルトだった

 

「お待たせしましたアルベルトさん」

 

「なんでてめぇがいんだよ.............」

 

グレンは忌々し気にそうアルベルトに向けて発言すると..........

 

「先生........最初にすいませんでした」

 

「は!?一体何で――」

 

グレンは自分に向けて突然頭を下げてくるナハトに驚きながらその真意を確かめようとしていると.......

 

「ご苦労様ナハト。私の駒を呼んできてくれて」

 

そう高慢に言う一人の紅い髪の美しい女性がこちらに歩いてきた

 

「ッ!てめぇはッ!?」

 

「久しぶりねグレン。会えて嬉しいわ」

 

「はっ!俺は嬉しくなんかねぇ.........《魔術師》のイヴ!」

 

その場に現れたのは美しい美貌を持ちながらも帝国でも屈指の魔術の腕を持つ特務分室室長である執行官No ,1《魔術師》のイヴ=イグナイト。ナハトの腹違いの姉であり、イグナイト家が代々受け継ぐの二つ名《紅焔公(ロードスカーレット)》を拝したイグナイト家の魔術師だ。

 

「あら?つれないわね。昔は随分と世話をしてあげたのに」

 

「忘れたとは言わせねぇ!ナハトの援護がなけりゃセラは死んでたんだぞ!お前が俺らを囮にしたからセラは魔術師として.............あいつがかなえようとしていた夢が叶えられなくなったんだぞ!」

 

「それがどうしたのかしら?」

 

怒り狂いそうになるグレンと対照的にイヴはどこまでも冷静かつ冷酷であった

 

「確かにアレは私の采配ミスだったのは認めるわ。そのせいでセラと言う優秀な駒が再起不能になってしまったもの。でもそれは果たして私だけの責任かしら?その場にいた貴方が守れなかったのも責任の一端があるんじゃないかしら?それなのに責任転嫁して女々しくないかしら?」

 

激しくなりそうな言い争いが始まろうとしたところで..............

 

室長(・・)........ここまでにしておきましょう。本題についてはやく話すべきです。グレンさん(・・・・・)も落ち着いてください。ここで言い争ってもセラさん(・・・・)が悲しむだけです」

 

仕事モードのナハト..........いや、《月》のフレイが二人を止める

 

「..........そうね、フレイ(・・・)。貴方の言う通りだわ」

 

そう言うと先程までのグレンの怒りなどどうでもいいように話を始める

 

「さて結論から言ってしまえば、この度、学院で開催される『社交舞踏会』で天の智慧研究会が王女の暗殺を目論んでいるわ。だからそれを私たち特務分室で秘かに迎え撃つわ」

 

「なッ!?」

 

グレンが驚くのも無理はない。そのことがわかっているのなら『社交舞踏会』を中止にしてしまえばいい。そうすれば被害はなくすことができるかもしれない。逆に言えば中止にせずにやれば一歩間違えれば大きな被害を起こす可能性を孕んでいる。

 

「馬鹿か!!そんなもん『社交舞踏会』を「中止にはしないわ」........なんだと?」

 

「今回の敵組織の仕掛けは、急進派の中核――第二団(アデプタス)地位(オーダー)》が直接動いてくるわ。これは、その敵を捕らえ、敵組織のしっぽをつかむ絶好の機会.......逃す手はないわよね?」

 

「何言ってんだ!一手でも間違えたらどれだけの被害が出ると思ってるんだ!?それなのに中止せずに作戦遂行なんて正気の沙汰じゃねぇ!!」

 

グレンの言うことは正しい。大人数が集まる中こちらが作戦をミスしたり敵が自暴自棄に暴れたりしたらどれ程の被害が出るか想像に難くない。だが...............

 

「..........それがどうしたのかしら?」

 

イヴはグレンの主張をそう冷酷に切り捨てる

 

「は?........お前ッ!?」

 

「はぁ~まだこと重大さを理解してないみたいね..................いい?長い歴史の中、常に社会の裏側で暗躍し続けてきた最悪のテロリスト集団、天の智慧研究会..........表向きは『優れた魔術師による世界支配』と言う思想を掲げているけど..............彼らがもっと大きくて、より最悪なものを狙ってるのは、諸状況により間違いないわ。そして、件の組織の目的について唯一明らかになっている言葉は..........禁忌教典(アカシックレコード)

 

「あぁ、そうだなっ!それがどうした!?」

 

「ごく最近、かの組織はその動きを変えたわ。何が切っ掛けとなったかは調査中だけれど..........その裏で秘かに推し進められていた禁忌教典(アカシックレコード)とやらに関わる計画のフェーズが次の段階に移ったのは間違いないわね。このまま連中の思惑通りに事が運べば、確実に取り返しのつかない事態になる。情報が欲しい.........最早、私たちに一刻の猶予もないの」

 

「それで学院の『社交舞踏会』を釣り堀に、ルミアを撒き餌ににするってのかッ!?連中の尻尾を掴むただそれだけのために!?........チッ、おい!ナハト!お前もなんか言えよ?お前だってこんな作戦反対だろ!?」

 

グレンはここまで聞いて怒りで冷静じゃない中一つだけ解せないこと。ナハトがこの作戦に反論しないのに気づいた。声を荒げながらグレンはナハトに問う。だが...........

 

「............やるしかないんですよグレンさん」

 

「なッ!?何言ってんだ!?お前にとってルミアは........学院の奴らは大切じゃないのか!?」

 

「...............リィエル」

 

ナハトは全く感情を窺わせない表情のままそうぼそりと呟く

 

「は?」

 

「グレンさん.........何で俺がリィエルの素性を知ってるか忘れましたか?」

 

「ッ!まさかッ!?」

 

「ふふ、ねぇグレン?随分とリィエルは人間らしくなったわね?作られた人形の癖に(・・・・・・・・・)

 

「てめぇッ!」

 

グレンは鬼の形相で睨みつける。そう、イヴは知っているのだグレンとアルベルトが偽装したリィルの素性の詳細を。だからこそそれを盾に使う

 

「理解してくれたかしら?最もこの作戦は政府も軍も認可しているの。最後まで難色を示していた女王陛下も最終的には了承...............ふふふふ、賢明なお方で助かったわ」

 

イヴの如何にも『そうなることがわかっていた』という笑みにグレンは1つの確信を抱く

 

「テメェ..........ッ!?陛下に何しやがった!!」

 

イグナイト家は帝国で知らぬ者はいないであろう程の大家。帝国古参の貴族であり数多くの優秀な魔術師を輩出した帝国魔導武門の棟梁。その当主は帝国最高決定機関である円卓にも席を置き、その発言力は非常に大きい。その家の力を使えば...............

 

昔っから、やたら小癪な権謀術数にたけたテメェの事だッ!裏で手をまわして女王陛下が盾に首を振らざる負えない状況を作ったなッ!」

 

 

イヴはその問いに応じず唯含んだ笑みを浮かべるだけ。だがそれは間違いなく肯定ととれる

 

「おい!アルベルトにナハト!お前ら本当にいいのか!?こんな作戦本当にやる気かッ!?」

 

「..........納得はしていない。だが、作戦の有益性は認めている。ならば遂行するだけだ」

 

「..........やりますよ」

 

2人は少し間があくも作戦の遂行することを決めていた

 

「そうかよ..........見損なったよクソが。特にナハト..........テメェだけは納得しねぇと思ってたのにな!」

 

「................」

 

ナハトはその言葉をただ感情を失った機械のように聞いていた。流石のグレンもいい加減にナハトの様子がおかしいことに気づく

 

(........まて.........アイツがルミアを利用することにブチギレてないは変じゃねぇか?)

 

今までのことを思い返してもナハトがルミアを撒き餌にすることに賛成なんてするはずがないのに今回黙り切っているのは明らかにおかしい。普段ならそこで冷静になれたグレンだが目の前には軍時代から目の敵にしていたイヴがいるため冷静さを欠いていた

 

「もういい............テメェら軍の思惑なんて知らねぇ。今から俺が学院に掛け合って――」

 

「あら?これは国家機密(トップシークレット)よ?外部に漏らすなら私は貴方を始末しなくてはいけないわ」

 

「........お前この距離で俺に勝てると思ってるのか」

 

遂にグレンが懐のアルカナを取り出し一触即発の状態になる。だが.........

 

「はぁ~私の二つ名忘れたかしら..........」

 

イヴがそう呆れたように言った瞬間。うなりを上げて紅蓮の炎が周囲を囲む

 

(しまったッ!眷属秘術(シークレット)【第七園】!?もうここはイヴの領域か!)

 

ナハトも使うイグナイト家の秘術眷属秘術(シークレット)【第七園】。指定領域内における炎熱系魔術の起動『五工程(クイント・アクション)』をナハトの固有魔術【原初の焔(ゼロ・フレア)】を除きすべて省略することのできる図抜けた物。つまりは詠唱なしで領域内に限り炎を自在に操ることができるものである。

 

更にもう既に魔術として成立している【第七園】はグレンの【愚者の世界】では打ち消すことができない為グレンは仕掛ける以前にすでに勝負は決していた。

 

だが、この【第七園】を打ち消せるものが一人だけいる

 

「室長消していいですよね?」

 

「フレイ..............聞く前に消さないでくれるかしら?」

 

同じ血族である《月》のフレイ...........ナハトだった。ナハトは展開されてすぐにその【第七園】を自身の発動させた【第七園】に切り替えさせるとすぐに炎を消した

 

「一瞬見せれば十分ですよね?それより早く作戦を説明するべきでは?」

 

「それもそうね.........では、今回の作戦の説明をするわ。まずは王女の護衛に関して――」

 

ここから最初にまず伝えられたのはルミアの護衛について。当然相手がルミアを狙うのならば一人は確実にルミアの護衛に付きっきりの護衛が必要となる。それは当然相手に不自然さを感じさせるものであってはいけない。だからこそナハトはルミアとペアになる必要があった。ナハトと言うイヴの駒の中でアルベルトと同等かそれ以上の戦力を誇る彼を付きっきりにしておけば敵も簡単には突破できないからだ。その後は細かい説明が入りまた後日にも集まることを決めるとイヴはそのまま立ち去った。するとそのまますぐにナハトも何も言わずにその場を後にしていった。

 

 

 

 

 

 

ナハトが何も言わないことをグレンは訝しみとめに入ろうとするが........................

 

 

「グレン」

 

「あん?なんだ..........言っとくがが今お前は俺の中で評価だだ堕ちだからな?」

 

グレンは忌々し気にそう言ってアルベルトのほうを振り返る。するとその瞬間...........

 

「ッ!グハッ!?............てめぇ何しやがる!!」

 

アルベルトはグレンの頬を殴り飛ばしたのだ。グレンは痛みを感じながら怒気のこもった目で突然殴りかかってきたアルベルトを睨みつける。だがアルベルトは鋭い双眸に呆れを感じさせながらグレンを見下していた

 

「貴様はナハトの教師じゃないのか?」

 

「は?んなもん当たり前だろ!だったらそれと何が......」

 

グレンは今の行動に何が関係あると膝まついたまま問いかけようとすると途中でアルベルトが遮りさらに言葉を重ねる

 

「まだわからんか戯け。ナハトが立っていた場所をよく見ろ」

 

「は?...........なんだこれ..........ってまさかアイツの血か!?」

 

ナハトが立っていた場所には赤いしみができていた。間違いなく何かの塗料と言うには違いすぎるそれにグレンはどういうことだと頭を悩ます。

 

「ナハトはこの作戦を一番遂行したくないはずだ。それにもかかわらず遂行しようとするのはなぜか考えろ」

 

「そんなもんわかるわけ..............」

 

「ふん!それでよくナハトの教師と言えたな。いいか?奴にとって自身より絶対的に大切と言える人物は俺の知る限り二人だ。それは王女とイヴだ。そしてイヴもナハトのことを大層大事にしている」

 

未だグレンは分からないようで口を開かずにアルベルトの言葉の続きを待つ

 

「そのイヴがわざわざ弟に嫌われることをするのか?そしてそれを聡明であるナハトが気づかないと思うか?」

 

「何を..............まさかッ!」

 

ようやくグレンは気が付く。ナハトの話を聞く限りイヴは相当なブラコンだ。そんな奴が何故わざわざナハトに嫌われかねないことをするのか。それは恐らくこの作戦を遂行させようとするイグナイト家から強制されているのだと考えられる。そしてナハトもそれに気づかないほど鈍くはない。

 

「奴らの生家は相当面倒な家だ。今回の作戦に何かあればイヴは相当苦しい思いをするだろうな。そしてそれをナハトは容認できるわけがない。だが、王女を撒き餌にすることも同じだ」

 

ナハトにとってルミアはかけがえのない存在だ。ナハトがルミアを見捨てるなどと言うところをグレンは想像すらできない。逆にどれほど傷つこうと必死で彼女を救う姿しか思い浮かばないのだ

 

「だからこそナハトは今回の作戦しかないのだ。イヴと王女の両方を傷つけない為に秘密裏に遂行するこれしか選びようがないのだ」

 

「.......................」

 

グレンは己の失言に悔いるしかなかった。この作戦を遂行する者の中で苦しむのは自身の唯一の家族と大切な人を天秤にかけなくてはいけないナハトだ。ナハトにとってどちらも捨てる選択肢がない以上作戦を誰にもバレずに一つの失敗もなく遂行するしかないのだ

 

「ようやく理解したか...........俺はこの作戦に従う外道だ。そしてそれを命令する上も外道だ。俺達を罵るのは構わない。そもそもナハトも覚悟の上だろう.............だがな、事情が推察できるだけの状況でナハトを罵るのならお前は唯の餓鬼だ」

 

(そうだ..........少し考えればナハトがおかしいことにも気づけたはずだなのに俺は..........)

 

「...........俺は行く。後はナハトと話すといい」

 

そう素っ気なく言うとアルベルトは踵を返して立ち去って行った

 

 

 

 

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ナハトは一人先程の作戦を聞かされすぐにルミアとダンス・コンペに出るための申請を通したあと一人で立っていた

 

 

(わかってる.............俺は最低だ。大切だと思ってる人を..........人たちを危険にさらすんだ。でも.........)

 

ナハトはこの作戦をすることを決めた自分自身を嫌悪する。ルミアもイヴも両方捨てきれない半端者の自分のせいで多くの人の命を掛けなくてはいけなくなっているのだ。

 

だがそれ以上に...........自分に向ける嫌悪以上にこの作戦を立案し実行させようとする政府上層部........ひいては姉にこんな作戦を強いる自身の生家であるイグナイト家に怒りを抱かずにはいられなかった

 

(上等だ..........《月》の恐ろしさを教え込んでやるッ!)

 

 

 

 

こうして帝国の先鋭が集まる特務分室と最悪のテロリスト集団天の智慧研究会が相対する波乱の舞踏会が始まろうとしていた

 

 

 

 





いよいよ今回から第七巻の内容を始めたいと思います!この第七巻と言えば初めてアルベルト以外の特務分室メンバーの明確な戦闘やキャラの特徴が描かれていて魅力的なキャラが一気に増えた印象があります。特にここからのイヴの人気ぶりと言えばすごいですよね。自分は勿論イヴも好きですが普段は好々爺としながらも戦いでは物凄く頼りになるバーナードや意外な一面を見せたクリストフも好きでロクアカのキャラは本当に魅力的でいいですよね!そんな魅力的なキャラとナハトが上手くからめる話にできるよう頑張るので楽しんでもらえると嬉しいです。

今回もここまで読んでくださりありがとうございました!またお気に入り登録、評価、コメントをくださり本当にありがとうございます!


再計:システィーナのヒロイン追加について

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