ナハトとイヴが連絡を取り合って少しした頃
(ふふ、今頃イヴ=イグナイトは僕を見失って泡を食っているだろう.....)
イヴの【イーラの炎】と魔術的監視の支配領域から抜け出したザイードは来賓客用に用意された宿泊部屋にやってきていた。
ここまではザイードの目論見通り。強いて予想外なことを上げるならば外の三人のそれぞれの戦場に今回最も脅威になるであろう《月》がいたことだ。いかなる手を弄して三つの戦場並びに会場内にいるのかは知らないが我々の動向に気づいていない様子から計画に支障はないだろう。
部屋には人払いと認識操作の結界が張られている
その室内には一人の初老の男がいた
「来たか..........」
「ええ、来ましたよ。それでは早速行動を..............」
ザイードが不敵な笑みを浮かべその男に近づこうとした瞬間
虚空に亀裂が入る
それからガラスが砕けるような破砕音が響くと一部の空間が壊れる
そこから出てきたのは............
「ついに尻尾を顕わしたわね!」
「なッ............!?」
「あ、貴女は..........ッ!?」
壊れた空間から優雅に着地したのはここにはたどり着けないはずだったイヴだった
予想外の人物の登場にザイードともう一人の男は驚愕故に凍り付く
「お初にお目にかかるわ。以後お見知りおきを《魔の右手》のザイード。そして貴方が黒幕だったのね.............今回の王女暗殺計画の真の首謀者、ローレン=タルタロス教授!」
イヴ指した男の正体......
それは、魔術学院の教授にして学奏クラブ顧問を務めるローレンスだった
「ふふ、三人の外道魔導士で外から圧迫を掛ければ私を抜け出せると思ったの?でも残念ね私の
若干ブラコンが入り気味だが勝ち誇ったイヴからは自信溢れる笑みがこぼれ、眼前の二人を見下す
「.........小癪なッ!ザイード!」
「はっ.......!」
ローレンスの指示を受けザイードは床を蹴りイヴに掴みかかろうとする
その《魔の右手》をイヴに伸ばすが―――
「この距離で私を殺りたかったらリィエルか―――」
その刹那、嘲笑するイヴの周りに炎が渦巻き、帯状になってうねり
「
イヴの炎がザイードを瞬時に拘束する
「~~~~~ッ!~~~~~ッ!~~~~~ッ!」
黒魔【フレイム・バインド】身を焼き焦がす苦痛はそのままに、肉体そのものには全くダメージを与えずに、火傷の一つもなく敵を拘束・無力化する拷問用の術。
「..........それにしても貴方、凄く遅いわね。素人みたいだわ」
声なき悲鳴を上げ、芋虫のようにのたうち回るザイードにローレンスは一歩......また一歩と慄きイヴから後ずさる
「あら?逃がすわけないでしょ?貴方も大人しく捕まってもらうわ」
再び【フレイム・バインド】を起動させザイードと同じように拘束する
その後二人をイヴは呪詛の込められた鎖で縛り上げ、その上から白魔【スリープ・サウンド】で眠らせた。鎖につながれている彼らはどうあがこうと魔術講師は不可能。更に部屋にかけられていた人払いと認識操作の結界はすでに解呪済み。この瞬間を持ってイヴの勝利が確定した
「ふふ.........ふふふ.....やったわ!」
イヴは喜びが抑えられないといった様子で顔をほころばせる。
天の智慧研究会の
「これで、あの子を.......それにお父様だって..........んんっ!気を引き締めなさい私。最後まで油断禁物よ」
気を引締めなおすと早速イヴは宝石を耳に当て通信魔術を起動させる
「......もしもし、聞こえるかしら?こちら《魔術師》のイヴよ。実はね.......」
イヴは宝石型通信魔導器を通じてナハトやグレン達に情報を伝え次の指示を淡々と飛ばしていく
「ふぅ......これで良し、と」
一仕事終えたイヴは室内を見渡す
次の段階に移行するまで時間が空くためどうしたものかと見回すと、ふとあるものに気づく
「........あら、この曲は...」
室内に微かに流れていた音楽。それに気づいたイヴは発信源である蓄音機に近づく
「何かと思えば『交響曲シルフィード』...........下の会場で演奏しているのと全く同じ楽譜の演奏を録音したものね.........」
優雅さと民族的な子気味良さを兼ね備えたその曲は、実に耳心地が良かった。通常のそれにさりげない
「まぁ、この部屋に敵組織に関するほかの手がかりがないか調べるついでに音楽鑑賞と言うのも悪くないわね.........」
そうイヴは独りごち、ザイードたちが拠点にしたこの部屋を慎重に物色し始める
「うん..........魔力痕跡は........
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「わぁああああああああ!!!!」
イヴがザイードを捕らえたころ下の会場では丁度本選準決勝が行われていた。ナハトとルミアのペア、システィーナとリィエルのペアどちらも当然ここまで勝ち上がってきた。
そしてこの準決勝も―――
「やったね!ナハト君!」
「あぁ、お疲れ様ルミア」
心の底から笑みを浮かべ楽しそうなルミアに逸れにやさしい笑みで答えるナハト
当然というか必然と言うべきかナハト達は決勝戦への切符を手にしていた
そしてまた彼女たちも―――
「どうやら二人とは決勝で雌雄を決めることになったわね」
「ん」
やる気に満ち溢れるシスティーナと相変わらず眠たげなリィエルのペアもまた決勝への切符を勝ち取った
この二組はどちらもグループをトップで勝ち上がっての決勝のため会場もどちらが勝つのかと注目の的である。
「ルミアも『
「うん、わかってるよシスティ。私だって負けないよ?『
「ま、まぁ、ナハトは.....誠実で真面目で素敵な男の子だと思うけど.....って何言ってるのよ~私ぃーー/////////!?」
「ふふ......遠慮せず本気で来てね?......じゃないと私がナハト君をとっちゃうかも?ほら?『
悪戯ぽっくも不敵に笑うルミアにシスティーナは慌てる
「う具ググ......なんでそこでナハトが出てくるかわからないけど......わからないけどね!?......そこまで言うなら、正々堂々戦うわよ!どっちが勝っても恨みっこなしよ!」
「うん!もちろんだよシスティ!」
決勝を前に熱い火花燃やすルミアとシスティーナ
「..................」
(まだわからない.......あのヒントの意味するところは......)
ナハトは時間ができればすかさず思考を《魔の右手》の作戦を考察する。だがナハトをもってしても正解に辿り着けない。
「よう、なんだ?もてる男は疲れるってか?」
「おめでとうナハト君!」
思考を巡らすところにやってきたのはセラねぇとグレン先生だった
「ありがとうセラねぇ。そして先生はどうしてそうひねくれてますかねぇ~」
この瞬間僅かにでもナハトは警戒を怠ってはいない。常に周囲に怪しい人物や気配がないかを探ってる。
「そう言えばセラねぇ。今回使われてる『交響曲シルフィード』ちょっと編曲されてるよね?」
「そう言えばそうだね........それも中々いい編曲だよね~」
「確かに.....でも、俺は原曲のほうが............」
ダンスの師である彼女との些細な会話ここでナハトが脳裏にある言葉がちらつく
『目で見れば概ね五つの階段であり、目を瞑れば概ね八つの階段』
そうエレノアの言葉だ。ナハト今なぜ脳裏にちらついたのかを考察するためにセラに対する返答を前に黙りこける
「ナーくん?」
(あれ?今何か.......五つ........八つ........目でみる..........目をつむる......ッ!まさか!?いや、できるのか?.....いや、可能だ.......理論はこれで通ってる..........なら後は.........)
「ナーくん?ナーくんんってば!」
ナハトが一人黙り込んで思考におぼれているとセラが大きな声で呼びナハトの意識は戻される
「はっ!」
「も~どうしたの?ナー「セラねぇ!頼みがある!グレン先生にも!」.......ナーくん?」
切羽詰まった様子のナハトにセラとグレンは両者ともに心配げな表情になる
「セラねぇは今すぐリゼ会長のとこに向かって今回の曲の編曲された部分を調べてきて。それとリゼ会長にはどこかの部屋に精神強化の魔術をして籠ってもらうように伝えて」
「えっ!?なんで......ッ!う、うん。わかった!」
ナハトの真剣な表情を見てか戸惑うもすぐに動きだすセラ
「お、おい!一体「グレン先生は今から言う事をアルベルトさんに報告してください」.....お前まさかッ!?」
ナハトは真剣な表情で口を開く
「敵の暗殺手段の算段がつきました。急がないと対応が困難になります」
こうしてナハトはグレンに伝言を託して来るべき事態に備えるのであった
(だが問題はタイミングだ..........どこで仕掛けるのがベストだ?)
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ナハトは決勝直前にセラから聞いた情報を聞いて推測が確信へと変わっていた
(まさかこんな方法だったとはな........)
そして直ぐにセラねぇにはリゼ会長にするように言った指示をして別室に移ってもらった
また、アルベルトさんたちには決勝終了と同時に中に突入してもらい奴を拘束する算段を付けた。念のために万が一に備えてクリストフとバーナードさんには退路の確保をさせている。
(問題はリィエルとシスティーナに伝えてないこと。そして何よりルミアにも............)
ルミアの今までの楽しげな姿を見ていたナハトはとてもつらかった。ここでいえば確実に彼女は自分に責任があると思い込んでしまうだろう。だがそれは言わなかったとしても同じ。敵の手段がまさかあんなものでなければ秘密裏に処理できたかもしれない。
だが、ナハトやほかのメンバーがイヴに
(クソッ!結局ルミアを...........)
「ナハト君?どうしたの?」
「ッ!.........大丈夫だよ。ちょっと緊張してさ」
「..........そっか。実は私もなんだ」
2人は決勝前のわずかな時間語り合う
「でもね..........何も心配してないんだ.........どうしてだと思う?」
そう言うルミアの顔は少し悪戯ぽっくまるで『分らないでしょ?』と言いたげな顔だった
まぁ、実際のとこはそうなのだが.........
「.........楽しいから?」
何とか絞り出した解答に彼女は笑みをこぼす
「ふふふ........違うよ?正解はね..........」
ルミアはそう区切ると俺の手を取った
「ナハト君がそばにいるからだよ!ナハト君がいれば何も怖くない...........ナハト君がいれば私は何があっても大丈夫なんだ!」
そう言ってそのままナハトと距離を詰めナハトを抱擁する
「どう?ナハト君も.........私がいると安心できる?」
きっと彼女は俺が何か隠してることを気づいている............気づいたうえで何も聞かず俺を信じてくれる
そんな彼女に俺はどうするのことが正解なんだろうか...............いや、はなから間違っているのかもしれない
でも、せめて―――
彼女の信用には答えなくてはいけない
「あぁ、俺もルミアがいてくれるだけで安心する........もう大丈夫だルミア。決勝、楽しもう。そして..........」
「「絶対に勝とう!!」」
最後の決意表明の瞬間二人の声が重なる
その事を二人で笑うとすぐにナハトは手を差し出す
舞台へ美しい彼女をエスコートする時間が来たのだ
ルミアはその手を取る
舞台の終幕はすぐそこに迫ってきた
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(..........気づいてるよナハト君だからゴメンね..........あと少しだけ私の我儘に付き合って)
彼が今日だけでなくこの日を迎えるまで陰ながら何かを考えこむ姿を目にしていた
きっとまた私が関係しているんだとすぐにそう感じた
でも彼が守ってくれる。その甘美な響きが私を惑わせる
彼が守ってくれるのがうれしくてたまらない
彼が味方でいてくれるのがとても幸せだ
でも、彼は傷つく。なんでもないと言って私が大切と言って傷ついていく。
それは辛くてたまらない。だから親友のことを好きになって欲しいと思ったこともあった
でも、やっぱりどうしようもなく彼が好きだ
だから―――
まだ、彼との思い出が欲しい
彼が傷つき取り返しがつかなく前に彼とできるだけたくさんの思い出を作り
そして―――
取り返しがつかなくなる前に私は消えよう
だからお願いせめて今日だけは.......................
今回はここまでです。ナハトとルミアそれぞれの苦悩の答えが幸せな未来であってほしいと思う回でした。自分で書いてて辛くなってきます。原作とは違い早い段階で気づき、早い段階で話が動くことになります。それを踏まえたシナリオができればと思っていますが、展開は原作通りの可能性も大いにあります。だとしても読者様に楽しんでもらえるよう自身もこの物語にのめりこめるように執筆しますので次回も楽しみにしていてもらえると嬉しいです!
では、今回もここまで読んでくださりありがとうございました!また、お気に入り登録やコメント、評価をしてくださりありがとうございます!
再計:システィーナのヒロイン追加について
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