ロクでなしとチート主人公   作:graphite

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『炎の記憶』と〝極〟

 

 

グレンとナハトの女体化が解けてからしばらく。

 

遂に........遂に!!ナハトの待ちわびた短期留学最終日が訪れた

 

「よよよ...........イズさんと共に学べる日が今日で最後だなんて悲しすぎますわ。嗚呼........このまま私達と共にここで学びませんか?レーン先生も我が学園で教鞭をこのまま振るっていただきたいですわ...........」

 

「イズ!先生!また絶対遊びに来いよ!!絶対だぞ??特にイズはかならずだからな!!な??」

 

これ見よがしにイズに(ついでにグレンに)絡むフランシーヌとコレット。そして例の如く二人はイズの左右をがっちりとそれは絶対に放さんと言う場様にがっちりと掴んでいる

 

「あ、貴女達ちぃぃぃぃぃぃ~~!!!」

 

「むむむむ...........!!!」

 

そしてまた、システィーナとルミアも例の如くそんな彼女たちを見て不服気に見ている。そもそも分身なのだからそこまで気にしなくていいのでは?と思われるだろうが実は現在のイズは本体のイズ(ナハト)だったりする。

 

数日間の間は分身に任せていたのだが最終日に分身と言うのはいかがなものかとルミア達に言われたのだ。ルミア達自身分身相手に絡んでいくのも正直不快ではあったがお別れ会まで偽物と言うのはほんの僅かだが少々かわいそうだと思いナハトに本人で出られないか頼み込んでいたのだ。

 

そして当然内心でまたあの地獄を味わうのはちょっと.........そう思っていたナハトは葛藤するもルミアのお願いと言うことで引き受ける以外なく、自力で白魔【セルフ・ポリモルフ】と固有魔術【ホロウ・パレード】を複合させて何とか一時的に女体化状態にしていた。

 

(.......精神的にはちょっとあれだがこうしてルミアが普段見せないような一面も見れてるわけだし役得と思っておきますか)

 

ナハトはそう思えば少しだけ.......ほんの少しだけ楽になる。その上、確かに彼女たちに偽物をあてがうのも申し訳ない気持ちもあったわけだが——

 

「あぁ.............もういっその事イズさん私の家に招いてもいいですか?そうですね..........イズさんは義姉か義妹どちらがお好みでしょうか?私個人としてはその.........義妹として可愛がってあげたいなぁ~//////なんて思うんですけど?」

 

「そ、そうかもな.......な、なぁ?アタシのこと.......お、お義姉ちゃんって呼んでみてくれないか?」

 

フランシーヌ達は完全に今のイズの可憐な容姿にやられている。口では義妹だの言ってるが内心同性婚もありなのではと考えていたり............

 

だが当然ここまですれば黙っているわけがない二人がいる

 

「あ、貴女達ねぇ!?イズが困ってるでしょ!!!」

 

「ふふふ........第一イズは私の.......コホン//////........二人ともくっつき過ぎじゃないかな?かな?」

 

 

システィーナとルミアが二人を強引に引きはがす。何やらルミアに関しては凄まじいことを言いそうではあったがナハトは聞いてない。...............ウソジャナイヨ?

 

「きぃっ~~~~~!!私とイズさんの逢瀬を邪魔しないでくださいまし!!!」

 

「おう!ルミアにシスティーナ!!帰る前に一勝負と行くかぁ!?」

 

実はこの四人。授業中や授業外の時間で幾度もなくイズ(ナハト)をかけて模擬戦をしていた。因みにだがどれもルミア達の勝利である。

 

「《第二術式・起動開始》」ボソッ

 

そしてイズはなれたものでこっそり月のアルカナを片手に【月鏡】を起動させ壮絶な魔術戦の余波を回避していた。

 

「おい!イズ俺も.......ってぎゃああぁぁぁぁぁぁぁ!?!?」

 

そして近くにいたグレンもイズに助けを求めようとするが無慈悲かな........寸前で呪文の流れ弾を喰らうグレンであった(←ナハトのストレス発散の為の嫌がらせ)

 

「はぁ......ホント、コイツ等仲いいですよね」(´~`)モグモグ

 

「同意~」(´~`)モグモグ

 

実はだがイズがこの短期留学で最も仲が良くなった生徒は苦労人ジニーであり、二人はそんな様子を肴?に用意した食事をぱくついているのであった。

 

因みに仲良くなった理由は一緒に鍛錬したりお互い苦労を理解しあったからである

 

****************************

 

 

一方でその頃——

 

「お願い.....話を聞いて........エルザを傷つけたくないの」

 

エルザめがけて振るわれた剣を寸前のところで止められ瞳には涙を浮かべ懇願するリィエル。

 

二人は......いや、少なくともリィエルは今日まで大切な友人だと思っていた相手と殺し合いをしていた。そしてリィエルは殺意を向けられたエルザ相手にどうしても剣を振り下ろせずにいた。

 

だがそれはエルザにとって許し難いものだった。家族を殺した殺人者相手に...........自分が憎んだ相手に情けをかけられているのだ。一人の剣士として..........復讐者として屈辱的でしかなかった

 

そして何より彼女の忌むべき記憶........赤い炎と赤い血に染まった『炎の記憶』の中の彼女、イルシア(・・・・)は今と全く同じ状況で父を殺そうとしていたことを脳裏に思い出す

 

そして、それが彼女の怒りが再熱する

 

殺人者風情が涙を流すなど彼女には到底許せることではなかった

 

本当に泣きたいのは自分なのだ、と

 

「イルシアアアアアァァァァァァ!!!!」

 

リィエルが信じていた相手に激しい憎悪をぶつけられる

 

「ッ!?」

 

その裂帛の咆哮にあのリィエルが怯む

 

そして、復讐者の彼女の刃はリィエル(・・・・)に届く

 

リィエルはそのまま糸が切れたように体を沈める

 

この死合に勝ったのはエルザだった

 

ここから彼女の生活がもう一度再スタートできる........はずだった

 

「何で.........何でなのッ!?私は『炎の記憶』に打ち勝ったはずなのに何故ッ!?」

 

だというのに〝赤い〟リィエルの血を目に入れた時強烈な眩暈と吐き気に襲われる。彼女は震える体で子供の様に怯えたようになった体たらくのままいつもつけていた〝眼鏡〟を探す。

 

だが——

 

ガッシャ!!

 

「ご苦労様。エルザ」

 

そう言い卑しい笑みを浮かべ現れたのはマリアンヌと顔が見えないようにフードを被った誰か........だが、エルザにはなぜかそのローブの人間にだれかの面影を感じていた

 

「あらぁ?ごめんなさいねぇ?もうすっかり暗くて、うっかり貴女の眼鏡を踏んでしまったわ。...........やっぱり拙かったかしら?」

 

マリアンヌがそうぬけぬけと言いながらさらに会話を続けようとしてるところで...........

 

「「きゃあぁぁ!?」」

 

二人の女子生徒がその場に吹き飛ばされてきた

 

「......あらぁ?やっぱり学生程度じゃ貴方の相手は務まらないようね............」

 

エルザは暗闇の向こうから第三者が歩いてきているのに気が付く。そして現れたのはマリアンヌの隣にいるローブを纏ったものよりいくばくか背が低い同じようななり者だった

 

「ようやく尻尾を出したなマリアンヌ」

 

「私も会えて嬉しいわ。帝国宮廷魔導師団、特務分室執行官No,18《月》のフレイ=モーネ......あるいはこう呼ぶべきかしら........ナハト=イグナイト」

 

現れたのはナハトの分身だ。イヴから黒幕は恐らくマリアンヌである事、そしてエルザの過去を聞いてリィエルの復讐を目論んでる可能性を考慮して分身を備えさせておいたのだ

 

「《月》...............イグナイト......」

 

エルザはマリアンヌから出た言葉に耳を疑った。生前、父が勤めていた帝国軍の部署に《月》のコードネームを背負い自身よりも圧倒的に剣才を上と言わしめた私と同い年の少年。しかもその少年の生家があのイグナイト家だと言う事にも驚愕する

 

「........まぁ、知られてるとは思いましたよ。俺が聞きたいのはアンタが過去に所属していた蒼天十字団(ヘブンス・クロイツ)についてと俺のプロフィールを誰に........どこで知ったかだ」

 

「そうね.......イズが来た時から貴方が出張って来るんじゃないかと警戒はしていました。だって彼女似すぎですものねぇ?貴方の大切なお姉さんに...........さて、あなたの質問の答えは.............彼に勝ったら考えてあげますよ」

 

やはりマリアンヌは最初から俺の事を警戒していたらしい。

だが、そんな事よりも彼.........マリアンヌの隣にいる存在だ。

 

(手練れだな.........でもどこかで.....)

 

ナハトにとってもその相手にどこか既視感のあるように感じていた。ただ、現状まずわかるのは相手の立ち姿からにじみ出る手練れの気配。警戒心を高め剣を握る手に力を籠める。

 

タイミングを窺っているとそのローブ男はおもむろにローブを脱ぎ捨てた

 

その正体を知った時二人の少年少女は驚く

 

なぜなら.............

 

 

「サキョウさん!?..........まさかッ!?」

 

「お父.......さん?ど、どうしてお父さんは死んだはず.......」

 

そう、その正体は元《運命の輪》サキョウ=スイゲツ=ヴィーリフ。ナハトにとっては剣の手ほどきをしてくれた相手でもありエルザにとっては死んだ大切な家族

 

ナハトはこの状況でを成り立たせる唯一の手段を瞬時に理解する

 

「『Project : Revive Life』..........天の智慧研究会と繋がってるってのは本当みたいだな」

 

「私には少し彼の組織にパイプがあって彼を蘇らせてもらったのよ。貴方なら難なく倒してしまえるのでしょうけど............彼女はどうかしらね?」

 

マリアンヌはナハトの事を最大限警戒していた。そのため彼の組織に今回リィエルを手にし蒼天十字団(ヘブンス・クロイツ)で『Project : Revive Life』の研究で得られたものを提供する約束で協力を要請したところ受理され、こうして今この場にいる。

 

もっともナハトに勝てるとはマリアンヌは思っていない。何故ならマリアンヌも《月》がどれ程までに逸脱した存在かを裏で過ごしていたこともあり知っている。だが、足止めにはなる上彼女........エルザの存在が自身に仇なす存在への足かせになると踏んだのだ

 

「お父さん........お父さんなの........?」

 

ふらふらと不用意にエルザは一歩、また一歩と近づいていく。エルザにとって父親である彼の存在は大きく敵が戦力として呼び出したものだという思考が微塵もなくなっていた

 

「お父.......「シイッ!!」.........え?」

 

エルザが間合いに入った瞬間、エルザが全く反応できない速さによる抜刀術が放たれる。エルザは父親である彼が剣を向けたことに「何故?」と疑問に感じることしかできず、斬られそうになる瞬間に――

 

「セアァッ!!シッ!!」

 

ナハトが瞬時に間合いに入り込むと右手の剣で受け止めそのまま弾き上げ、流れるように左の剣で追撃をするも後ろに回避される

 

「エルザ。あの人は...........もうエルザの知っている親父さんじゃないんだ」

 

「う、嘘よ!!だってお父さんはあそこに........ッ!!」

 

そうエルザは悲鳴のような声で反論し、父のほうを向くが父の双眸には且つての温もりはなく、ただただ虚ろな目であった。それが否応なくナハトの言葉が事実であると知らしめていた。そのためエルザも悲痛な面持ちで反論の言葉が出てこなかった。

 

「.........エルザはそこで見ていてくれ。俺が決着をつける」

 

「だ、ダメっ!!お父さんを殺さないで!!お父さんを殺すというのならッ......!!」

 

エルザも頭では理解していても心では認められなかった。だが、そんな状態のエルザにナハトは努めて冷静に言葉を紡いでいく。

 

「..............俺を恨むなら好きにすればいい。でも...........サキョウさんを........エルザの親父さんを救うには今のあの人を殺してあげるしかない。もう一度奥さんの所に返してあげるのが俺たち残された者の責任なんじゃないか?」

 

「残された者の責任.............」

 

その言葉にエルザは急激に冷静さを取り戻していく。

 

「俺は俺のできること...........俺のすべきことをする。だから、エルザは最後まで親父さんを見届けてあげてくれ。.........例え今のサキョウさんが紛い物であっても」

 

ナハトは今一度、双剣をその責任を果たす思いを胸に握り直し構える

 

「お父さんを............お父さんを救ってください。お願い......しますッ!」

 

涙を流しながらエルザはナハトに頼み込む。

 

(もう父は――いない)

 

エルザにはそれが酷く惨い事実であり涙が止まらないほどに寂しい。

でも、だからと言って目をそらすわけにはいかない。

 

父の最後を見届ける.........それがエルザにできる最後の親孝行

 

そして遂にナハトとエルザの父、サキョウ=スイゲツ=ヴィーリフとの死合が始まった

 

 

********************

 

 

(魔術だけは絶対に使わない!!!)

 

双剣と打刀がぶつかり合う音が夜闇に響きっわたる中、ナハトは内心でそう決意していた

 

確かに手段を択ばず速攻でここを突破するのが一番だ。頭ではわかってる

 

だが、それで救える者は――いない

 

剣での真っ向勝負。正面から俺と言う剣士が彼の亡霊を打ち倒すことが()彼女(・・)にできるナハトの救いであり責任だ

 

二人の剣戟は恐ろしいまでに疾く、早く、速い。

 

サキョウの踏み込み、腰の回転、全身の発条、それらを鞘に滑らせながら伝えることで爆発的に加速する刃、生み出される魔速の斬撃はエルザのそれよりも洗練されており魔法の様な剣技にさしものナハトも攻めあぐねる。

 

ナハトも超人的な反応速度で防ぎながら卓越した剣技によって繰り出される怒涛の連撃で応戦するが相手が悪い。エルザ相手ならばそれで圧倒できただろうが相手はエルザの師でもある剣士だ。そう簡単にはいかない。

 

だが――

 

(やっぱり強い!だけど..........だけどッ!!アール=カーンの方がもっと強烈だった!!火のように苛烈で、どんな風よりも疾く、雷鳴よりも鋭かった!!)

 

そう、アール=カーンは眼前の剣士よりも遥かな高みにいた。なら、サキョウにはナハトは負けないし負けられない。

 

『ナハトよ、汝との戦いとても楽しく有意義であった!いずれまた剣を交えよう!尊き《門》の向こうにて我は待っている!では、さらば!』

 

あの時はマジかよと思った...........けど、同時に次は一人でも対等に――いや、彼の者を凌駕したいと思えた。なればこそ、ここで負けているわけにはいかない。

 

さらにナハトは加速する。

 

本能のままにひたすらに加速していく。

 

その視界に移るのは相手と何もかもが〝視える〟透き通った世界。

 

極限まで研ぎ澄まされた速さがナハトをさらに次のステージに押し上げる

 

そして、遂に決着の刻は来た――

 

 

 

「............〝終極ノ一閃〟」

 

 

 

その瞬間だった――

 

ナハトはその瞬間だけ【黒天大壮】にも劣らぬ速さに至り、その姿は霞の如く消え失せる

 

 

 

『魔速の剣戟に、〝神速〟をもって迎え撃つ』

 

否――

 

 

 

〝『神速を超越(・・)し、()に至りし剣閃にて斬り捨てる』〟

 

 

次に現れたナハトの立ち位置は気づけばサキョウの後ろに振り抜いた状態で立っていた

 

〝速さ〟の極みに至った剣閃は一切の目視、反応を許さずにサキョウのその体を分断し彼を地に堕とした

 

 

 

彼の借り物の命が尽きる最後の瞬間――

 

彼はその眼に成長した愛娘の姿を刻み込んでいた

 

そしてその愛娘もまた彼を瞳に刻み込み彼が逝くのを最後まで見届けるのであった

 

 

 






今回はここまでです。次回かその次くらいで第8巻の内容は終えられると思います。そすれば激動の9,10巻のお話に入れるので自分もとても楽しみです。ある程度の更新ペースを保てるよう頑張るのでこれからも楽しんでもらえれば幸いです。

それでは今回もここまで読んでくださりありがとうございます!お気に入り登録、コメント、評価をしてくださり本当にありがとうございます!

再計:システィーナのヒロイン追加について

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