ロクでなしとチート主人公   作:graphite

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一時の別れ、そして刻々と動き出す『運命』

 

「とりあえず一件落着.......か?」

 

グレンとリィエルがとどめを刺すとナハトが手際よく拘束を済ませる頃にはナハトの広域氷結による蒸気機関の停止により列車は止まり、夜の静けさが取り戻された。

 

「そうですね。取り合えずコイツの身柄はこっちで処理しておきます」

 

ナハトはマリアンヌに視線を向けあとは特務分室(こちら)の仕事とグレンに告げる

 

「......てかお前さ。なんで【操火】使わなかったんだ?アレ使ってれば何ともなかったんじゃねぇか?と言うかお前ひとりでもどうにかできただろ」

 

「【操火】も【月鏡】同様アレで結構魔力食うんですよ。それに一人ならどうにかできると言いますけど、最初から俺一人で来てるのならそうでしょうね」

 

ナハトはもしエルザが立てないというのならグレン達を逃がした後に広範囲魔術で強引に制圧するつもりでいた。力業だが向こうが力業で来るならそれを上回る暴力で蹂躙するのは脳筋であるものの手っ取り早い手段と言えるだろう。

 

「........だろうな。お前ひとりだったら列車の連結外して女学院生徒達を安全圏内に離脱させた後に広範囲魔術なりお得意の眷属秘術(シークレット)で逆に炎をねじ伏せてただろうからな。悪かったよ足引っ張て..........」

 

「別に足を引っ張られたとかそんなこと思ってませんよ。それはあくまで結果論ですしね。当初の想定なら近接主体のこのメンバーで悠々と制圧できるはずでしたしね」

 

狭い空間では必然的に魔術は他者に必要以上の被害を被る危険性があるためナハトは近接主体のこのメンバーで来たことを別段判断ミスをしたとは考えてない。寧ろ最善手だったとすら考えている。下手に魔術主体のメンバーだったら本当に誰か死人が出てもおかしくなかった。

 

「だよなぁ..........全く、予想外な代物引っ張り出してきやがってコイツ」

 

グレンはナハトが片手に持つ半ばから折れた魔法遺産(アーティファクト)に視線を向ける

 

「で、ソレ......どうすんだ?」

 

「そうですね..........ぶっちゃけ俺が適当に魔改造でもできたらいいんですが........」

 

ナハトが自身も魔力特性なりを使って武器の一つにくわえるか、または軍の専門に預けるか悩みどころだった。だが、個人的には前者........或いは完全破壊をしておきたい。

 

「魔改造って.......まぁ、どちらにせよ上層部に預けるってのは少し怖いよな..........」

 

ナハトとグレンが考慮するのは帝国内部に巣食う蒼天十字団(ヘブンス・クロイツ)の存在だ。ナハトはともかくグレンはその存在を都市伝説くらいにしか思っていなかったが今回の事で実在することがわかった以上帝国に持ち替えるのはそれはそれでまた新たな火種になりそうで怖いものがある。

 

「でも、これやっぱり普通の解析はできないですよ。これを改造する気ならそれ相応の魔術でも作る必要がありそうですね」

 

ナハトは回収してから軽く解析しようと試みたものの何もわからないというのがわかったことだった。本格的に扱おうというならそれ相応の準備をしなくてはならない。

 

「そりゃ流石に魔法遺産(アーティファクト)だしな」

 

「はい。まぁ、諸々のリスク考慮して壊そうと思います」

 

「それがいいさ。俺達が扱うには大それてるしな」

 

人が扱うにはあまりに高度な代物でもあり危険なものだ。ナハトも実際のところ使いこなせるのならとは考えるが獄炎があれば事足りると至り破壊を決断する。

 

「《付呪(エンチャント)獄炎(ヘルブレイズ)》........神千斬り」

 

ナハトは窓の外に炎の剣(フレイ・ヴート)を投げ捨てると、それ目掛けてすぐさまナハトを象徴すると言っても過言ではない獄炎の斬撃でそれを完全に破壊した。

 

「これでこの件は終了ですね。自分はこのあと軍の者と事後処理するので先生たちは分身が来たら先に帰ってください」

 

「まぁ、そっちの方は特務分室(お前ら)に任せる。何か申し訳ねぇがな」

 

「フッ、意外ですね?サボれてラッキーじゃないんですか?」

 

「馬鹿言え.........生徒に仕事を任せるのは流石に情けねぇって思っただけだよ」

 

この人は本当に教師になってしまったようだ。最初はあんなにも杜撰だったのに今からすれば考えられないくらい真面目に..........でもないか

 

「てかお前自分を狙撃するとかぶっ飛んだ事するよな。お前のあれって確か威力・速さ共にアルベルトの全力以上じゃなかったか?」

 

「アルベルトさんのと威力比べるなんてしたことないから知りませんけどアレ以外方法が思いつかなかったんだからしょうがないじゃないですか」

 

あの時のナハト狙撃の威力は掠っただけでもただでは済まない電圧なうえ、放たれる一矢は軽く音速にすら届く魔導弓での狙撃専用の魔術、黒魔改【彗星(カミエータ)】。黒魔【ライトニング・ピアス】を威力、射程、弾速、命中率を独自の改変で極限まで高めたものだ。ナハトは剣でうまく弾けたが、少しでも剣の扱いやタイミングなどにずれでもあれば余裕で剣をへし折りナハトを貫いていただろう貫通力を有している。

 

「お前ホントぶっ壊れてるよな...........」

 

「セリカさんほどじゃないですよ」

 

「..............アルベルトじみたこともできるお前ならあいつ超えそうで説得力皆無だぞ」

 

そうぼやきながらルミア達を引きつれて学院に戻る準備を見届けると気絶したマリアンヌに向き直る。

 

「さて、やることさっさと済ませるとしますか」

 

ナハトはマリアンヌの前に立つとアルカナを取り出し固有魔術を起動させる

 

「《第一術式・起動開始》」

 

その瞬間、閃光が放たれここにナハトが誇る最強幻術が起動する

 

ナハトの目的はマリアンヌがもっている情報だ。蒼天十字団(ヘブンスクロイツ)の情報は当然としてイグナイト家との繋がりの有無や考えたくないが彼女が所属していた組織の目的の確認だ。

 

(..........さて、俺の個人情報に関しての出どころは..........やっぱ天の智慧研究会か。まぁ、エレノアの事もあるしばれてないってのが無理な話か...........)

 

最初にまずは自身の情報の出どころに関して調べると組織の者と接触した時にその情報を得ていたことがわかる。エレノアはかつて陛下の側近として内部深くまで潜入していたっで別段驚きもなかった。

 

蒼天十字団(ヘブンスクロイツ)に関しては.........チッ、やっぱプロテクトがかかってやがる)

 

記憶を覗いていると干渉を阻む何かがある事を知覚する。下手に干渉をすれば少しの事でその記憶を破壊されかねないのでその仕掛けに触れないラインで微弱に張り巡らせた知覚能力で探りを入れてその存在を確認する。

 

【幻月】は確かに決まればほぼ勝ちと言っていいナハトの切り札だがこの幻術は必ずかけられるわけではない。下手な精神防御や阻害程度ならば貫通するがガチガチに精神防御をされては貫通することは出来ないのがネックである。勿論、それをかいくぐる方法なんかもあるにはあるが基本的には不可能に近い。

 

(このプロテクトは幻術内ってこともあるし解けるには解けるだろうが解けた瞬間から記憶が消えていく仕組みか............それにコイツはマリアンヌ自身が自白しようという意思を感知した瞬間から作用するあたり厄介だな)

 

精神内の記憶に対する魔術........この場合で言えば呪いと言うのがふさわしい気もするが厄介なものを仕込まれている。外道集団なだけにやることに躊躇いないのが本当に厄介だ.........

 

(幻術内なら何とか..............)

 

意識してこのナハトが統べる世界の権能を使いプロテクトを無効化してこじ開けようとしていると..........

 

ガラガラ...........

 

突如そんな音と共にげ袁術世界の一部が崩れていくのを確認する

 

(なッ!?幻術世界が崩壊し始めてるだと!?まさかこいつ干渉された傍から崩壊するように仕込まれて......ッ!?マリアンヌの霊魂から脳までが崩壊を始めてやがるだとッ!?)

 

ナハトは気が付かなかったことに疑問に覚えつつも残された時間でプロテクトを強引にこじ開け読み取れる情報だけを断面的にかき集めていく

 

ナハトが気が付かなかったのはプロテクトの奥深くにひっそりと隠すように術式を書き込んでいたからである。強い干渉がされると表の術式を起動させることを意識させて微弱な干渉では感知できない裏の本来の術式を隠すカモフラージュにまんまとナハトははめられたのだ。

 

と言ってもナハトもそれを警戒して慎重に対応していたがこれは施したものが上手だったという要因が大きいだろう。

 

(時間内に俺もこの術解かないと俺の精神も壊されちまう!)

 

この崩壊の質の悪いところは施された者とそれに介入したものまでも巻き込むところだ。勿論ナハトのように精神世界に直接侵入するようなやり口でもない限りそう被害を受けるわけがないのだがナハトあらすれば本当に厄介だ。

 

(クソ!こいつ等が狙ってることの情報は不十分だが仕方ない.........だがこの〝崩壊〟。こんな凶悪な術普通じゃない...........仕込める奴なんてアイツしか............まさかいアイツも蘇ってるってのか?あるいはジャティスのように生きているのか?)

 

情報を精査しつつナハトはかつて対峙した強敵を思い出していた。

 

勿論、精神内を覗かれまいとするための術はあるにはある。だが、何もかもこんな滅茶苦茶に壊す魔術の類はナハトの知識にはない。いや............あるにはあるのだ。そんな何もかもを壊すと言った破壊者を。

 

そいつの魔力特性は『万物の崩壊・絶滅』........あらゆるもの、それが魔術だろうが物質だろうが文字道理なんでも壊す様から二つ名は『破壊者(デストロイヤー)』ナハトがまだ《月》のコードネームを与えられたばかりの頃の一番手古摺った任務での討伐対象だ。

 

恐ろしい魔術もさることながら近接戦の腕..........特に剣技においてもまだだ発展途上だったナハトを苦しめた強敵...........あの固有魔術(禁呪)【黒天大壮】を作るきっかけになった相手でもある

 

(またアイツと戦うことになるかもしれないとはな...........)

 

ナハトはマリアンヌの記憶から少しの情報を持ち出すとすぐに術を解いて逃げ出すのであった

 

 

************************

 

 

ナハトはその後要請した宮廷魔導師団と協力し事態の収束と事後の処理を進めた。これはナハトが一度帝都に帰還してからの事だが帝国上層部、魔導省のトップクラスの高官たちに蒼天十字団(ヘブンス・クロイツ)の背後関係も問い詰めるも一切を否定。ナハトの情報もその背後関係を裏付けるものはなく足取りを終えずじまいだ。ナハトもそっちではなく目的を中心に記憶を探ったので時間があればと歯噛みする。

 

ナハトの独断で記憶を覗いたことは普通に考えれば早計だったと言われかねないが帝国内部でもナハト程に強力な世親への干渉をできる魔術師はいない為軍でもさほど問題にもならず終わった。ナハトもこれは正直何らかの処分は考えていたので胸をなでおろしたと後に語る。

 

ここまでは短期留学が終わってからの話だ。ここからは駅でのこの短期学園で出会った友人らとの別れの話を紡がせてもらう

 

 

 

 

 

 

「うぅ.........イズさん......いえ、ナハト様私寂しいですわ.......もう帰られてしまうなんて.......」

 

「な、なぁ.......イズ......じゃなくてナハト。お前らと会えてその..........良かったと思う。アタシのこと忘れるなよ?」

 

月組の生徒総出でナハト達の帰りを見送りに来た。勿論この時のナハトの姿はイズなのだがそれでも完全にフランシーヌやコレット......彼女らだけでなく月組の生徒達皆がナハトの事を男性と知っても一人の共に過ごした学友として騙されていたにも関わらず別れを惜しんでいた。

 

ナハトもそのことを嬉しく思っていた。仕事と言うこともあり周りを欺いているのは仕方ないとはいえナハトも罪悪感がない訳ではないのでこうしてもらえるのは素直に嬉しいのだが...........

 

「ふ、二人とも近い.........(ルミアとシスティーナの目がヤバい!!)」

 

男だともうバレてるはずなの距離感は変わらず.......いや、もっと近くなっているような気すらする。そしてそれに比例するかのように後ろにいるルミア達の視線が鋭さを増していっている。しかもルミアは笑っているのが余計に怖い............

 

その後またナハトを取り巻いてルミア達が最後の喧嘩をすると今度はフランシーヌとコレットが今度は自分たちがアルザーノ魔術学院に行きたいと言ってくれたりとなんだかんだありながらも四人は四人なりに親睦を深めることができたのだろ

 

「ナハトさん」

 

四人が言いあってる間こっそりと抜け出したところでエルザに声をかけられる

 

「エルザか。いいのかリィエルとの別れは?」

 

「はい。もう十分私の想いは伝えてきました」

 

「そっか」

 

彼女はこの事件で多くの事を受け止めただろう。それが彼女にとってどんな事をこれからもたらすかは他人であるナハトにはわからないが、それがいい物であってほしいと願うばかりだ。

 

「ナハトさん。改めて父を......私を救ってくださりありがとうございます。もしあの時あなたが 咤してくれなければ私は何も変われないまま父の教えに背き父の全てをないがしろにしてしまったと思います」

 

「感謝は受け取るけどそれは君自身が強かったからだ。俺が発破をけたとはいえ立ったのは君自身だからね」

 

「それでもありがとうございます」

 

そう言ってまた深々と頭を下げるエルザ。

 

「...........エルザ。君はこれからきっともっと強くなる。多分君ならサキョウさんが背負った《運命の輪》のコードネームを拝命することができると思う。俺個人としては俺達(特務分室)みたいな血生臭いところに来ることは勧めないが一人の軍人としては人手が足りない俺達(特務分室)に欲しい人材だ。きっといつか君に声がかかるだろう。上からだけど大切なことだから先人としてのアドバイスを一つだけ...........確かに俺達(特務分室)の部署は多くの命を助けることができる。でもそれと同じくらいに濃く血に染まることを覚悟してほしい」

 

彼女はきっと軍人になりたいのだと心のどこかで察していたからこそのナハトの言葉だ。そして彼女はきっと特務分室の扉をたたく気がしてならない。だが、特務分室はそんじょそこらと訳が違う。凄惨な現場やギリギリな死地を俺達(特務分室)何度も何度も直面することになる。精神に与える影響は多大なものだ。

 

だからこそ慎重に決めて欲しいとナハトは願う。生半可な覚悟では息もできないほどに苦しい場所だから........

 

「............私にはナハトさんや父がどんな経験をしてきたかまだ想像すらできません。でも私はナハトさんやリィエルの場所まで行きます。父を継ぐ思いもあります...........でもそれ以上に私がそうしたいと願っています。この剣で人を活かしたいと願っています」

 

「覚悟があるなら君と一緒に仕事できるのを楽しみにしてる。何せリィエルのストッパーはいてくれないと困るからな」

 

ナハトは最後にはそう冗談(6割がた本気を含む)のように伝えると二人でくすくすと笑いあう。

 

こうしてナハトの波乱な............

 

 

いや、リィエルの新たな成長のきっかけとなった短期留学は終わるのであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

星が零れそうな夜空

 

星が溢れそうな星の海としか形容出来ない台地

 

そこに燃えるような赤髪(・・)の少年は一人白銀の輝きを放つ満月を見上げていた

 

「時は近い...........(ナハト)。お前がその()を使わなくてはならない時間はもう間もなくだ」

 

その少年の瞳に映るのは燃えるような赤髪(・・)の少年が二振りの直剣をもち金髪の少女を後ろにかばい戦う姿...........

 

その燃えるような赤髪(・・)の少年立つ地.............

 

 

いや、立つ世界(・・)は――

 

 

「月の幻影が守り、星の威光が敵を穿つ...........そして夜闇ががそのすべてを生み出す、か........(お前)はどうなる?俺のように諦めるか。それとも傲慢に.........何もかも選ぶか」

 

その少年は自身を諦めることで多くの者と誰よりも大切だった存在を守った。その結果大切な彼女彼女(・・)を悲しませるともしれずに.........

 

だが、()はどうなるのか?

 

自身のように諦めるのか

 

それとも完全無欠のハッピーエンドを求めるか

 

少年にはそれがわかるようでわからない..........でも、願うのならば........

 

本来(・・)感情は勿論、そこに肉体すらも得ないはずだった存在の少年の写し身のような彼に..........

 

少しで幸せで、望むような世界であるようにと世界の果てで祈るのであった

 

 

 





これにて八巻の内容終了です!本当に遅くなってすいません。他作品の方もなるべく早く更新できるよう頑張ります!おそらくこれが更新されたらルミアの誕生日短編も更新する予定です。その後から遂に激動の9~10巻のお話に入りたいと思います。早く書きたくて楽しみにしていたのでその意欲を全力でぶつけて楽しんでもらえる話にできるよう頑張りたいと思うのでどうかよろしくお願いします!

また今回もここまで読んでくださりありがとうございます!お気に入り登録、コメント、評価してくださり本当にありがとうございます。

再計:システィーナのヒロイン追加について

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