ロクでなしとチート主人公   作:graphite

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第九巻&第十巻 フェジテ最悪の三日間、夜の覚醒
序章


 

彼は夜だ............

 

包み込むような優しさ

 

何人も掴むことの出来ない幻影のような守り

 

敵を徹底的に穿つ武力

 

そのすべてはまさしく夜と言うにふさわしい

 

そして彼は一人、星降る夜空の下に立っている

 

その背中は優しさに満ちていて、それと同じくらいに寂しさがある.............

 

彼の力は強力だ

 

でも何か致命的な何かを削ってそこに立っているように見える

 

けど彼の横顔はどこまでも穏やかで――

 

「大丈夫だよルミア........俺はもう絶対に負けない」

 

「ナハト君!!!」

 

*******************

 

フィーベル邸の一室いつの間にか寝ていた少女が目を覚ます

 

「........今のは.........夢?」

 

夜の世界ともいうべき場所で、ナハトが二振りの直剣を握り何か強大な敵と戦おうとする場面を見ていた気がする。

 

その、ナハトはまるで人ではなくなってしまったかのようで.........どこかあの魔人に似た雰囲気だった。それでも変わらずあの私にいつも向けてくれる優しい笑みがどこか壊れてしまったかのようで..........

 

「.........大丈夫だよね?ナハト君は強い.......から。大丈夫..........」

 

まるでそれはここにいないナハトに問いかけるようで、それでいて自分にもそう信じ込ませるような言葉だった

 

 

 

 

 

 

 

 

「美味しい........やるじゃないルミア!」

 

ルミアがどこか不吉な夢を見てしばらく、ルミアは夕食の準備をするとシスティーナとリィエルに振舞っていた。

 

「えへへ.......今日は自信があったんだ」

 

ルミア少し照れながら嬉しそうにそう答える。ルミアはここ最近料理の練習に励んでいた。色々と理由はあげれられるが一番の理由は後悔しない為だ。いつか来るその時に備えて..........

 

「これならナハトも喜ぶんじゃないかしら?」

 

「へ?あ、あははは......それはどう、かな?ナハト君って料理とかそう言うのも凄くうまいから自信なくて.......」

 

「そうね.......私もなんかナハトのあの腕前見てると自信なくすわ」

 

システィーナの料理の腕はそれなりのもので同年代からすれば比肩する者はいないだろう。だが、ナハトの場合は本格的な料亭への潜入も考慮した腕前と言うこともあり女子としてはその敗北感が悔しくてならないのが二人にとっての共通点である。

 

「ん。ナハトの料理どれもおいしい。けど、ルミアの料理も暖かくて美味しいから大丈夫」

 

だが、リィエルが意図せずそう励ますとルミアも嬉しそうに笑い「ありがとう」とお礼を口にする

 

「そう言えばナハトって確か今日の深夜こっちに戻ってくるんだったかしら?」

 

「そう言えば帝都の方でお仕事があるって言ってたよね。別にゆっくり戻ってきてもいいのに無理してないといいけど........」

 

ナハトは急遽入った連絡を受け一時帝都に戻り仕事をしに行っているため今日まで数日間学院を家庭の事情と伝えて休んでいたのだ。本来ナハトが戻るわけにはいかなかったのだがリィエルの存在もあるためにやむなくいくしかなくなったのである。

 

その瞬間だった.........

 

ガタンッ!!

 

リィエルが眠たげな表情を一変させ険しい表情で周囲を突如として警戒し始める

 

「り、リィエル?一体どうしたの?」

 

システィーナが戸惑いながら聞くとリィエルは答える

 

「多分..........

 

答えようとした瞬間、あたりにガラスが割れるような派手な音が反響し、同時に屋敷に働く何らかの力場が消失する。招かれざる客を阻むフィーベル邸の結界が破られたのだ

 

「えっ.......なに、これ.........?何が起きて............」

 

「多分敵が来た」

 

そうリィエルがつぶやくと床に手を付け高速錬成成術【隠す爪(ハイドウン・クロウ)】を発動し臨戦態勢に入る。対照的にシスティーナはガタガタと震える

 

「し、侵入者!?」

 

目的はまた違いなくルミアだろう。天の智慧研究会の連中がルミアを狙って仕掛けてきたのだとすぐに理解する。ナハトも先生もいない状況にシスティーナは恐怖で冷静さをやや欠いていた

 

「大丈夫。安心して.........私が行く」

 

システィーナの不安を振り払うようにリィエルがそう言うと食堂から出ていこうとする。

 

そんなリィエル一人で行こうとするのをルミアがすかさず声をかける

 

「待って!一人じゃ危険だよ!」

 

「そ、そうよ!ここは逃げたほうが.......」

 

リィエルの強さを理解している二人。だが、それでも危険を冒してほしくないと願い逃げの選択を促す。だが.........

 

「........だめ。この家の.........クリストフとナハトが張った結界を、こんな簡単に破れる奴は多分すごく賢いし、強い。.........逃げるのだけは絶対に無理だと思う」

 

あのリィエルの断言.......

 

ナハトとリィエルは共通して圧倒的なまでに抜きんでた戦闘センスを誇るが、リィエルはナハトのように知識量から導き出される予測した作戦行動などはできない。その反面ナハト以上のずば抜けた直感・戦闘勘は、小賢しい思考や小細工を凌駕する。リィエルのそれは逃げの選択だけは取るべきではないと告げていた。

 

「........迎え撃つしかない」

 

逃げることは不可能。迎撃するしかない。

 

「二人はここで待っていて」

 

「だ、だったら私も........二人でなら!」

 

システィーナは震える膝を抑え込みリィエルにそう言うが..........

 

「だめ。足手まとい」

 

それをバッサリとリィエルは切り捨てる

 

「システィーナがいたら邪魔になる。だから...........ナハトを呼んで。多分ナハトはこの事態も想定内だと思う。連絡さえつけばすぐにでも動いてくれるはず............ナハトがくれば大丈夫」

 

リィエルはナハトがただで留守にするとは考えていなかった。きっと何らかの備えがあると直感で感じていた。

 

「「.....ッ!」」

 

だが、リィエルが冷静にそこまで考えているは裏腹に二人はリィエルの剣を持つ手が震えていることに気が付く

 

(リィエルが震えるほどの相手だなんて...........その上直ぐにナハトを呼べだなんてどんな敵だって言うのよ)

 

システィーナはリィエルのその判断に戦慄する。

 

その事実に打ちひしがれていると二人に近づいてきたリィエルがぎゅっと抱きしめる

 

「大丈夫、二人は私が守るから」

 

そうぼそりと、いつも通りのリィエルのように二人に伝える。だがその言葉には確固たる意志を感じ取らせるだけのものがあった。

 

その姿を見届けるとすぐさまシスティーナはナハトに連絡を試みようとすると......

 

『みんな無事か!?』

 

システィーナが駆けるより先にナハトの方から連絡が繋がる。ナハトのその声の裏では戦闘をしているのか金属音などが耳に入る

 

「ナハト!?え、えぇ........今のところは。でも、リィエルが一人で侵入者を迎撃に出て.........」

 

『やっぱり仕掛けてきたか。分身をそっちに向かわせてるけど........もう後数分かかる。兎に角二人は.........あぁ、もうしつこい!《紅蓮の獅子よ》!!!悪い俺も足止めくらってるから合流は遅れる。けど!必ず助けるから兎に角二人とも無事でいてくれ』

 

苛立ちげに魔術の詠唱の声と矢次の指示で余計に困惑するシスティーナ。完全にナハトを封じに来てることで余計に危機感をあおられる、が..........

 

『システィーナ!君は強い!!怖くていい..........でも、意志だけは持っていてくれ!ルミアもシスティーナも俺が必ず何に変えても守る!!こっちは雑魚しかいないからなるべく早く俺も向かう!!』

 

ナハトはシスティーナが聡い事、それでいて繊細である事を見越して励ましの言葉を贈る。ある意味では己自身に課した誓約ともとれる。

 

「わ、わかったわ!ナハトも気を付けて!」

 

『あぁ!こっちもあと20もないからすぐ片付ける!!』

 

それだけ告げると遂にナハトの通信は切れるのであった

 

*******************

 

 

システィーナの連絡から数分前

 

軍上層部から突如として帝都に帰還命令が下され帝都付近に潜伏している天の智慧研究会の殲滅を命じられ数にして40人ほどの外道魔術師を一人で相手させられた。確かに相手の中には魔術師に対して厄介なものも交じっており近接戦に秀でている自身が呼ばれるのは納得できる反面、ナハトからすればあの程度倒せるように鍛えとけと思わされる任務でもあった。

 

「ったく..........最近の奴らは使えない奴ばっかかよ。あれくらいなら普通に俺じゃなくても他の所でも十分だろうが........」

 

確かにナハトは帝国の中でも抜きんでているがそれにしたって今回の敵は厄介な部分はあれど冷静に策を練るなりすれば余裕だろうと愚痴りながら帰路についていた

 

まだフェジテからは距離があり暗い夜道を歩きながら早く風呂にでも入りたいなどと考えながら歩いていると...........

 

「..........《紅蓮の獅子よ》!!」

 

ナハトは突如左手を頭上に掲げると【ブレイズ・バースト】を放つ。そこには不意打ちを試みた黒い影がおり、たまらずそのまま直撃し焼き消される。

 

「天の智慧研究会の掃除屋(スイーパー)か...........まだいるな」

 

そう思い周囲を警戒しつつ、暗視の魔術も使い襲撃に備えていると..........

 

「おい.............なんだこの数は.........100はいるぞ?」

 

何と驚くことに優に100もの気配を感じ取る。明らかに異常事態だ。数は多いがナハトが突破しきれない事はない.............だが、この様子からして明らかに待ち伏せていたのがわかる。

 

(まさか俺がフェジテを離れてるのを狙って動いたのか?)

 

それは危惧していた........分身の維持限界は戦闘を考慮しないで一日弱が限度。数日間の維持は魔力的にできないのである程度戦えるようにした使い魔をいくらかおいてきたが本格的に拙いかもしれない

 

(使い魔は.............チッ!反応がないってことは潰されていやがる..........流石に警戒されてたか)

 

使い魔の反応を探るための魔導器を確認すると何も反応を示さず最悪の事態が進んでいることを確認する。そして使い魔を潰されたと言う事は俺の分身の弱点なんかもある程度想定されることも考慮に入れなくてはいけない。

 

(とにかく今は分身を二体作って俺もここを何とか突破するしかないな)

 

「《我万物欺く者なり・眼前にて悉く世は歪む・嘗ての虚像・今此処に現世と結ぶ》」

 

固有魔術【ホロウ・パレード】が起動し魔術陣から光が実体を持った人の形を成し過去のナハトの分身が現れる。

 

「少々手荒に行くとしますか...........《紅蓮の竜よ・猛き咆哮以って・蹂躙せよ》!」

 

黒魔改【ドラゴニック・フレア】が一直線に放たれ射線上にいた掃除屋(スイーパー)もろとも効果力の炎が地面を抉り消し飛ばす

 

「行け!!」

 

二人の分身はその出来た穴を高速で駆けていく。だが、掃除屋(スイーパー)共もそれを阻止しようと動くが.........

 

「《雷帝よ――舞え》!!」

 

【ライトニングピアス】が6発放たれると正確無慈悲に阻止しようと動いた者らの急所を穿ち一撃で絶命させる。

 

「さて......まずは数を減らすとしよう」

 

追うのをやめてナハトに襲い掛かろうとする掃除屋(スイーパー)を見やり余裕の面構えでそう言うと詠唱を開始する

 

「《残忍なる氷帝よ・昏き深淵の闇を以って・悉く奪い尽くせ》」

 

闇色の氷結の波動があたりに広がり、触れたものは悉くを凍てつかせる。凍り付いたそばからそのすべては死滅していく様はさながら神話上の極寒の大地そのもの

 

黒魔改【黒氷帝(ダークネス・ゼロ)】。ナハトの異能と掛け合わせた冷気は文字通り全て(・・)を氷結する。霊魂だろうと何だろうとあらゆる全てを凍結させるのだ。実体のない霊体などにも有効打になり得る正真正銘の死の冷気。

 

捉えられた掃除屋(スイーパー)共は一瞬で精神の全てを凍結され活動の一切を停止する

 

「数はこれで60ちょいってとこか.........」

 

最初の【ドラゴニック・フレア】と今の魔術で全体の四割もを数分と経たずに殲滅せしめるナハトはまさしく敵にとっては絶望そのものと言っていいだろう

 

耳に通信魔導器を取り付けシスティーナに預けてる片方の魔導器に発信をかけながら剣を引き抜き構える。

 

(兎に角早急に殲滅する.............もしかしたら先生の方にも動きがあるかもしれないけどあっちはセリカさんもいるはずだし問題ない)

 

数を減らしつつ、システィーナへの連絡は着きひとまずの方針は伝え終えた。あとは兎に角俺もこいつら全員を対処するのみだ。

 

(あと20......一気に片付ける)

 

「《疾風よ》!!」

 

一気に20人全員をひきつけ上空に回避すると次なる魔術を唱える

 

「《紅蓮の暴竜よ・大いなる逆鱗もって・悉く消し飛ばせ》」

 

超超極太の赤い炎の熱線で一気にすべてを焼き払い完全に倒しきれたと確認する

 

「これで良し早く.....」

 

その瞬間視界の端に白い発光が見える.......

 

「ッ!?」

 

一瞬でそれはナハトの下まで延び、直撃する寸前のところで回避する。そしてその軌道上にある木がばらばらと崩れているところを見て今の攻撃をした相手を察する

 

「まさかそっちから会いに来るとはな..........『破壊者(デストロイヤー)』」

 

真っ白いまるで色が抜け落ちたような長髪の細身の青年が冷たい笑みを浮かべて現れる。その男の右手には細く薄い剣が握られている。

 

「久しぶり.........と、言う気はしないな。何せ貴様に殺されたのはまるで昨日の様だからな小僧」

 

「【Project : Revive Life】か.........それで過去の亡霊が俺に復讐しようってか?ジーク?」

 

眼前にいる真っ白な男こそナハトの一番最初の強敵であり、『破壊者(デストロイヤー)』の二つ名でおそれられた外道魔術師。名をジーク=へレス。

 

「フッ.......復讐なんて考えてなどいないさ。ただ命じられたままに遂行するだけ............まぁ、私に偶々勝って増長している餓鬼を懲らしめるくらいはしようとは思っているがな」

 

クールでありながら内には破壊衝動を飼っている狂人がジーク=へレスだ。嘗てその圧倒的なまでの破壊能力で小国を滅ぼしたとさえ言われ、組織の中でもかなりのやり手で多くの軍人が葬られた。それほどまでに驚異的な相手なのだ。

 

「増長ね.............なら試してみるか?言っとくがアンタが死んでる間俺が全く何も変わってないと思ってんなら............もう一度死ぬぞ?アンタ?」

 

俺は剣を握り直し睨みつける。

 

「フッ.....あの時の餓鬼が大きな口を叩くようになったものだ。良いだろう。見せてみろ..........今の貴様がどれほどのものか試してやる」

 

こうしてナハトはかつて超えた壁と再び夜闇の下対峙する

 

そして刻一刻と事態は〝最悪〟に向け動きつつたった

 

 

 





遂に原作9,10巻の内容に入りました!シリアスで緊張感あふれる戦闘が幾度もあるこの二巻を楽しんでもらえるようナハトにもグレンにも大暴れしてもらえるよう頑張りたいと思います!そして、ついにナハトについてもいろいろとある超激動の回にしたいと思っているので楽しみにしていただければ幸いです!もうすぐ夏休みに入るので恐らくかなり更新ペースを上げられえると思うので他作品などもいろいろと進めていけるよう頑張りますのでどうかこれからもよろしくお願いします!

今回もここまで読んでくださりありがとうございます!お気に入り登録、評価、コメントをしてくださりありがとうございます!


再計:システィーナのヒロイン追加について

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