「グレン=レーダスは仕留め損ねた。だが、セリカ=アルフォネアとナハト=イグナイトの分身は始末した」
ラザールはアルフォネア邸から少し離れた小高い丘で待つ二人の男にそう告げる
「何者かによってルミア=ティンジェルがさらわれた以上あの二人...........引いては《月》は黙っていない。特に《月》と大陸最高峰の
それに答えたのは二人の男の片割れ........ダークコートに身を包んだ男だった
「そうだな。現にあの《月》は足止めを用意してるにもかかわらず、分身とはいえここに辿り着いた..........その上少なからず厄介な置き土産まで残してくれた...........全く、油断ならない男だが........まぁ、所詮は若造だ。大したことはないだろう」
ナハトの残した使い魔........そのどれもが厄介極まりないものだった。【月鏡】の応用による魔術耐性の高い物や物理耐性に高いものなど、その始末にやや時間がかかりほんの僅かだがこちらの策の進みが遅くなった。そして、その僅かな時間でルミアが攫われ、且つナハトがフェジテに間に合ったのだ。
「さっすが、ラザールさん!あの阿婆擦れババァと糞生意気なガキがいなきゃこっちのもんだよなぁ!?ぎゃ、はははははははは」
ダークコートの男とは対照的にチンピラ風の男はもう大勢は決まったという様に馬鹿笑いを決め込む
「だが、ラザール..........お前はグレン=レーダスを逃がした。確かにあの二人は目立って脅威となりうるがあの男も何をしでかすかわからない。藪蛇にならなければいいがな」
確かに、あの時この男を殺したのはナハトだ.........だが、それはグレンが無能と言うわけではない。あの時、たかが三流と見くびっていたグレンは魔術師殺しと有名な《愚者》だ。ナハトでなくても戦っていたら見くびっていたあの時では果たして勝てだろうかと自問していた
「.........なんにせよ我々はここで『現状維持派』との戦いに勝利する。ルミア=ティンジェルを攫った下手人がいるが.........関係ない。遅かれ早かれ死ぬのだからな」
そのラザールの手には小さな『鍵』が握られているのであった
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場所は変わり、とある小部屋の中。そこに一人の少女と一人の青年が二人の最強を待っていた
「遅いですね.....アルフォネア教授とナハト..........」
重い沈黙に耐えかねたシスティーナがぼそりと呟く
ここは下水道の通路を決まった順序で通らないと辿り着けないように魔術的に仕込まれたいざと言うときのためにセリカが燃料や保存食を備えた秘密の場所だ。
「ひょっとしたら教授とナハト道に迷ってるんじゃ........」
向かい合わせに座ったグレンを気遣う様に続けるシスティーナ。だが............
「それはない..............そろそろ現実を見るべきだな」
そう呟くとグレンは立ち上がる
「姿を現さない。通信魔術にも出ない。何らかの手段による連絡もない............鼠の使い魔を送って見えたのはセリカとナハトのローブの端くれだけ──」
グレンは続けてセリカの生存は絶望的だと話そうとしていると.........
『随分と........らしくないですね...........もう少し身内を信じられないんですか?』
「え?ナハト!?」
システィーナのポケットにいつの間にか入っていた通信魔導器からナハトの声が流れる。ナハトに事前に渡されていた物とは別の物から聞こえたため一瞬戸惑うと同時に安堵する。
『はぁ.........はぁ..........先生が.........そんな調子で............どう、するんですか?』
「おい!ナハト!無事なのか!?」
『ギリギリ........ですけどね...........セリカさんは..........システィーナの家にリィエルと一緒に.........寝かしときました..........はぁ......はぁ.......』
明らかに息が荒い上、途切れ途切れだがセリカが無事なことを伝えるナハト。だが、それによってグレンの胸中には別の懸念も生まれる
「そうか.........だが、お前は?声音も悪いし、息遣いも荒い。大丈夫なのか?」
『悪いんですけど.........この俺の維持はもう........限界です..........しばらくは........援護できないと思ってください...........』
この通信魔導器越しのナハトの姿と言えば至る所汚れ、その存在がうたかたの夢の如く崩れかかっていた。最後、ラザールの一撃をどうにかセリカと共に直撃するギリギリの所で事前にシスティーナの家に施しておいたマーキングに【飛雷神】で飛び、自分たち自身の服の切れ端を残しやられた風を装った。
だが、分身の維持はとうに限界が来てしまった。その上魔力供給と維持を本体が放棄したのだ。
それはすなわち本体が追い込まれている........或いはもう一人の分身の方にかなりの魔力を回してるか、かなり本体からぶんどっている弊害だろう。そうなると分身が意図的に消えるか、時期消えるかのどちらかでそれをギリギリまで持ちこたえこうして連絡をしたのだ。
「ッ.............そうか............分かった。こっちは任せろ.........お前はお前の相手にあとは注力してくれ」
ナハトの援護が期待できないと知ってグレンが落胆してしまった事に嫌悪する。自分が守らなくちゃいけない生徒にも拘らず、その生徒の力を頼りにし過ぎてしまった自分の不甲斐なさに打ちひしがれる。
『........先生。ルミアとシスティーナの事............任せます。俺は先生の事尊敬してるんでそこのとこは心配してませんが...........まぁ、強いて言うならセラねぇ泣かすような事態になれば焼きますからね?』
どこまでも聡いナハトはそのグレンの心情を察したかのように普段通りにも近い会話でおどけて見せる
「..........ふん!ガキが変な気ぃ使ってんじゃねぇーよ。任せろ........お前もルミアとシスティーナを泣かすなよ?そん時は俺が鉄拳制裁してやる」
『当然.....です.............それじゃ別の人に代わります..........俺はしばらく連絡が取れなくなると思いますが........上手くやり............』
「はぁ?ほかの人だ?一体誰だ.........ナハト?」
ぷつりとその瞬間、ナハトの声が全く聞こえなくなると同時に何かが落ちる音が響く。不穏に思いつつ再度尋ねようとしたとき──
『くくく........やぁ、グレン?ご機嫌はいかがかな?』
「んなッ!?ジャティスッ!」
すると次の瞬間に聞こえてきたのはもう二度と聞きたくもないような相手の愉快そうな声だった。
その通信魔導器は事前にジャティスが仕込んだもの。ナハトは業腹だが、ルミアに着けておいた魔力発信を頼りにジャティスへ情報を共有するために動きそして..........
『くくく..........流石のナハトも本体じゃない上、制限もあれば限界みたいでねぇ?今丁度ルミアに看取られて逝ったよ。あぁ、彼女の無事が気になるかい?それなら...........』
そう、ナハトの分身はついに消えたのだ。そして、それをまるでナハトが死んだかのように言うジャティスにグレンは嫌気がさし、どろどろと黒い感情が沸くのを必死に抑え込んでいると..........
『ナハト君.........って、え!?せ、先生!?なんで............』
一瞬、グレンの耳にルミアの声が届くとそれは徐々にフェードアウトしていく。
『どうだい?少しは安心できたかな?まぁ、君もわかってるとは思うがここで僕もナハトを怒らせることはしたくない.........もし仮に単騎で彼を相手するなら相応の備えが必要だ。だから彼女に危害を加えないことは信じてくれたまえ』
「クッ..........はぁ......業腹だがそれに関しては嘘偽りねぇだろうから信じてやる。だが、どういうつもりだ?ナハトが今回に限ってはお前を信用してもいいと言ったのはそれだけの根拠があるんだろ?」
グレンとてもしも怒り狂ったナハトを相手にするとなればぞっとする............いや、相対した時点で数瞬と持たず殺される未来が見える。普段は優しく比較的温厚だが、イヴや大切な人々..........そして何よりルミアに関しての沸点は割りかし低く、怒りの度合いが比じゃないだろう。
『さて、時間が惜しい。話を進めよう............そうだな、グレン。君にはゲームをしてもらおう』
ゲームだとのたまうジャティスに再び怒りがこみ上げるも必死に飲み込みつつ答える
「..........従うしかねぇんだろ?早く言え.........その代わりもし、ルミアやナハト...........俺の大切なもんを害したら今度こそ確実に地獄に送ってやるッ!」
『いいねいいねッ!やっぱり君はそうでなくては!!..........さぁ、早速君にやってもらうのは──』
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ドンッ!ドンッ!ドンッ!
巨大な拳が地面をたたく鈍い音がうっすらと明るくなった闇の中に響き渡る
(悪魔とバークスが鬱陶しい!........それに──)
「破ァァァァ!!!!!」
「シ.........ッ!!」
躱した瞬間必殺の威力のさらなる拳――ゼトの雷を纏う剛腕が迫る。ナハトはそれを冷静にいなしカウンターを入れゼトに距離を取らせる。
ナハトは今、フェジテに程近い道半ばで三人の外道と相対していた。この三人は一見してチームワークも糞もないのだが事の他に戦術がかみ合ってるせいで攻略が難しく非常に煩わしい。
そして特に取り分けて厄介なのは..........
(あの悪魔...........七つの大罪の『暴食』を冠したグラトニー。しかも厄介な能力『暴食』..........喰うことでその喰ったものの能力・耐性を得る...........得た能力の再現率は100%なうえ耐性も100%。しかも許容限界は底知れない以上許容限界攻めはまず不可能。そして生物なら喰った霊魂を取り込みさらに強化され、その相手を完全に模倣したうえ擬態まで完璧にできる...........どこまでの用意があるかはわからないが一番の脅威だ)
そう、この悪魔は一撃必殺で確実に殺すことが一番に思いつく攻略法なのだが、それを容易には許さない強力な能力を誇る。あの悪魔殺しの魔術も食われては耐性ができるためここぞというときまで使えない。
「あはははははは!!!どうです?どうですッ!?この悪魔は!!貴方にとって一番苦手なタイプでしょうッ!!その上この悪魔に貴方を食わせれば.............くっくくくく........あぁ、どれほど強くなることかッ!?」
(あぁ、そうだよクソッタレ..........どうしたものか)
そう、まさしくナハトの天敵と言えるものだ。単騎ならば多少の工夫でどうにかなるがゼトとバークスのダブルコンボで隙を作りにくいのが厄介だ。
(バークスの方はまだいい..........獄炎で回復限界まで追い詰めればいい。ゼトとヴァイスの悪魔が厄介だ)
バークスはかつてのように異能の力を使い再生能力などがあるがそれはさしてナハトに関してはそれほど脅威になり得ない。だが、ゼトと悪魔の存在があるせいで三人それぞれの厄介な点が浮き彫りになっているように思える
(この分身の後の事も本体の方の事も考えるな............街の方は.......ルミア達の方は今は先生を信じて託す!俺は俺がするべきことだけに今は意識を裂け...........相手の特性と自身の戦力すべてを活かせ)
確かに状況は悪い...........けど、この場の三人に対して必ず優位となるものは持っているのだ。ならばあとはパズルのように当てはめ、勝利を組み立てるだけだ。
「ほぅ..............あの時の貴様ならばその首、三度は落としていたが............未だ繋がっているとは感心」
「ふん..........舐めるなよ。もう一回直ぐにあの世に送ってやるよ」
林道の中。そこでは細く、薄く、身の丈程の長さの長剣を構える白い男と黒白の双剣に獄炎を纏わせた少年の二人の剣士が相対していた。
彼の剣はレイピアのようだが実際は東方の刀に近い。特有の技術からその剣によって放たれる斬撃は恐ろしい程の切断力を誇る。下手に受ければこちらの剣もろともナハトを切り捨てるほどだ。嘗てのナハトはこれによって剣ごと切り裂かれ深い傷を負ったことがあるため当然最大限の警戒をしていた。
「フッ..........そちらこそ舐めるなよ?もし、あの時の私がすべてだと思っているのならばそれこそ愚か極まりない」
この男は確かに今のナハトよりもまだ格段に腕が立たない頃倒した強敵だ。だが、正直な話ナハトがあの時倒せたのは偶然と言っていい。そのために今のナハトと言えど全く油断ならない相手である。
(そう........アイツは兎に角飛び抜けて強い。剣技で言えば師匠かそれ以上、ある意味では魔人よりも厄介な剣術だ............その上魔術の腕も一級レベルな上、奴の魔力特性を十全に生かした固有魔術は僅かにでも当たれば即死だ)
ジークの
ただ、もしジークが壊せないとすればそれは法則や世界の理だ。何せ法則なり理自体を壊せるのなら奴は自身の死を壊し、あの時倒れなかったはずだ。
だが、一つだけ............ジークのそれと似たような効果を持つ力をナハトは有している
(【黒天大壮】は元々ジークの固有魔術を相殺するための技だ..........獄炎なら同じ性質として相殺は可能だが、どちらにせよ厄介に変わりないし、二度も同じ手が通じる相手じゃない)
そう、ジークとの戦闘中にナハトが編み出した【黒天大壮】の原型は確かに身体能力を大幅に上昇させる技だが、本当の狙いは別にあった。それは自身を獄炎とほぼ同化させることでジークの破壊の魔術と獄炎のあらゆるものを焼き尽くすという性質をぶつけてその性質同士を相殺させることが目的だったのだ。それによりある程度の攻撃を気にせず特攻し不意を突いてナハトがジークを倒したのだ。
ナハトが対抗策を考える中ジークは魔術の詠唱を開始した
「《壊せ・壊せ・壊せ・破壊の極光よ・散弾となりと降り注げ》」
ナハトの頭上に大きな魔術陣ができるとそこから無数の白亜の極光が放たれる。数にしてそれは優に100を超えるそれは一撃でも喰らえば必殺のチート固有魔術だ。
「チィ........ッ!!」
ナハトは剣を振るい獄炎の斬撃で相殺しつつ距離を詰める。距離を取ればそれこそ魔術で蜂の巣にされかねない。ならばこそ近接して魔術ではなく剣での勝負に持ち込む
だが、それは勿論相手も承知の上。防がれること自体計算内であり、ナハトがこうすることも想定内だ
「シッ.........!!」
ジークは想定通り距離を詰めてきたナハトに対し鋭く一閃。その斬撃はあらゆる全てを切り裂く絶技。ナハトが速さと言う絶技に至ったというならジークは〝斬る〟ことの絶技に至っている。
(ここ..........ッ!)
正面から受ければ自身ごと切り捨てるその一閃をナハトはジークの剣の腹に自身の剣をぶつけ滑り上げさせ軌道をそらす。
そして、ナハトは二刀流だ。手数の多い利点を生かしそのまま攻撃に移るが.........
「馬鹿め」
だが、ジークは軌道をそらされ弾き上げられたにも拘らずそれを意にも介さない様子で既に斬撃を放ってきていた。タイミングは完璧で、恐ろしいことにナハトの攻撃よりも確実にジークの剣が届く華麗なカウンターだ。
だが、ナハトも抜け目なかった。
「──ッ!」
ナハトは剣を弾くと同時に自身の剣も上に投げ捨てていた。その投げ捨てた剣に、【飛雷神】で飛び緊急回避する。
そして──
「神千斬りッ!!」
渾身の一撃を放つ。ただ、この策には穴があり、剣を投げ捨てたことなど直ぐに気が付かれる。そこでナハトは重ねて一瞬だが微弱な幻術を使いあたかも剣を手放していないかのようにしていたためもあり警戒心を下げていた。
因みにだがナハトが幻術を賭けたのは剣を弾いた時だ。ナハトの腕なら剣戟音などの音や特定の所作に魔力を込めれば規模は限られるが幻術を起動させることは容易い、が──
「流石の腕だ...........あの時からそのちょこざな手管は見事なものだな」
白き極光を球状にして自身を囲い、獄炎を凌いだジークが冷たい笑みを浮かべ現れる。
相手はそんじょそこらにいる外道魔術師ではない。彼の者を正面から倒すことができるとすれば帝国内でも両手の数もいまい。
「だが褒めてやろう...........嘗て私と対峙した時とは飛躍的に成長しているのは確かだ。今のタイミングも幻術の使い方もより洗練されている。今ならばあの時よりも楽しめるというものだ」
「それはどうも..........だが、お生憎様だな。こっちは楽しませる気なんてさらさらない............押し通らせてもらうぞ亡霊」
二つの戦場でナハトの熾烈極まる戦いは更に加速する
この騒動の〝鍵〟は徐々にそろいつつあるのであった
ジーク=へレス
年齢28歳
魔力特性『万物の崩壊・絶滅』
容姿・特徴:長い白髪が特徴の超イケメン。声のイメージは櫻井さんでイケボ。
性格:冷静沈着で非常にクール。だが、魔力特性が内面の正確にも出てるかのように冷酷で残虐。壊すことに悦を感じる狂人
天の智慧研究会に所属しており、小国を滅ぼしたというほどの力を有している実力者。切断に恐ろしいまでに特化した剣術に圧倒的な破壊力と卓越した魔術の腕は当時ナハトが任務で会敵したことを聞いた時イヴが卒倒しかけるレベル。強さで分かりやすく言えば魔人より総合的に三段階ぐらいは弱いが弱体化したセリカを殺せるかもレベルには強い。ぶっちゃけかなりのチートキャラ
さて、今回はここまでです。今回出てきたオリ悪魔、並びにオリキャラはチートなナハトを苦しませるためのチートです。今回の章のナハトにはとことん苦難にぶつかっていってもらうためにナハト以外ならまるで瞬殺でもされそうな感じの敵を作ってみました。その分決着うなんかをどうするかとかが難しいですが、白熱した激戦を書けるよう頑張っていく所存ですのでどうかよろしくお願いします。
あ!あと皆さんは例のワクチンの接種はされてますでしょうか?自分はつい三日前に一回目の接種しましたがあれって結構ぐさりとさしてくるものなんですね。自分はまるでウマ娘の主治医の注射の様に思いましたw実際にあんな風にやられるとテイオーが悲鳴を上げるのも納得ですw副作用とかも怖いですが個人的には打つ方がいいのかな?って思ってます。勿論打たないのも一つで打たない人が差別されるべきではないですがなんにせよまた元の生活に戻れるよう個々人で頑張っていきたいですね。
それでは今回もここまで読んでくださりありがとうございます!お気に入り登録、評価、コメントをしてくださりありがとうございます。
再計:システィーナのヒロイン追加について
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