ちなみにですが型月シリーズのキャラは
あまり登場しないと思います。多分ですが
傷んだ赤色さんも出てこなあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛
「────ぁ、ぐ」
シチューに浸したパンに噛み付く。
湯気を立てるほど熱を帯びたそれは
口内に入ると同時にシチューに入れていた
チーズの甘味を広がらせ、その熱で身体を暖める。
台所の鍋からの湯気が木造の家を温かくしているが
長春という名前に反して地獄のように寒い地域では
あまり意味がない。
ふと窓の外に眼を向けると、まだ雪が降っていた。
もう1ヶ月近く降り続いている。
「……………」
その光景を見ながら1年前の血と死体の海、
そして雪のような少女を思い出す。
惨劇は未だ鮮明だが、
対してあの少女はどこかぼんやりとしていて、
まるで霧がかかったかのように思い出せない。
………しかし、今年はまた一段と雪が早い。
暦を重ねるごとに秋という季節が短くなっている。
日本はまだ8月だった筈だ。
「…………いかん、積もる前に雪掻きをしないと」
パンを口に詰め込み、シチューを飲み干す。
木の皿をシンクに入れて水道を捻って水に浸け、
スコップを取りに部屋へ行こうとした時だ。
部屋にノックの音が響く。
そして、雪の上に何かが落ちたような音。
「?」
まさかこの雪の中、客人とは。
だがこんな山奥に一体なんの用だろうか。
遭難か、もしくは───
とにかく、入口へと向かって扉を開ける。
「………あ?」
燃えるような赤が視界の下で眼を引き、
視線は雪の上へと向かう。
そこに倒れていたのは、
眼を引いた赤髪の小さな少女だった。
「……………」
屈んで手を少女の口元へと当てる。
息は荒く、意識はないが先程まであったのだろう。
まだ頬は暖かい。
そして………問題が2つ。
1つ目だが、少女は全身を黒いマントで覆っている。
その脇腹の所が破れ、そこからの流血がある。
そして………2つ目。
彼女とマントを掴んで家の中へと投げ込む。
少々手荒いが、こればかりは仕方ない。
「厄介な土産を持ってきてくれたもんだな」
血の臭いに惹かれたか、
もしくはあの少女を餌として定めたか。
2匹の獣が、雪原の先………森の奥から姿を現す。
片方は2~3mはある黒い獅子、
片方は獅子と同じく大型の黒い狼だ。
白鞘から刀を抜き、右目の眼帯を外す。
随分と懐かしい感覚だ。
獣に合わせて『線』が視えてくる。
「────ッ!!」
「あぁ、来るのなら………殺すぞ」
刀を垂らし、疾走してくる狼を捉える。
黒狼は蛇行するように走り、
更に雪を巻き上げて撹乱しながら迫ってくる。
この獣たちが蠢く地で
生き残ることに特化した獣たちは
厄介なことにかなりの知能を得てしまう。
………だが、人の力を
理解しているワケではない。
────例えば、魔術だとか、この眼だとか。
ポケットの中から札を取り出し、
それを雪の煙幕へと投擲、右手の刀でそれを両断。
「〝風よ、吹き荒れろ〟」
瞬間、両断された札は竜巻となって
降り積もる雪ごと狼を大きく空へと打ち上げる。
そして2枚目の札を足元に叩きつけ、
竜巻に乗って飛び上がる。
「ふ───ッ!」
「───!?」
線をなぞるように、黒狼を斬る。
何の抵抗もなく、それはプツン、と
機械の電源を落とすように絶命した。
雪は霧散し、黒狼の死体と共に雪の上に着地する。
その様子を傍観するだけだった獅子へと
眼を向けるが、黒獅子はこちらへ背を向けて
森の奥へと消えていった。
野性の獣故に、生命の危機には敏感なのだろう。
「…ふ…ぅ………」
息を吐き、眼帯を付け直す。
それと同時に視えていた線は
右目の視界と共に消えてなくなった。
刀に付着した血を払い、鞘へと納める。
結局、刀を獣の血で汚し、札を2枚無駄にした。
無理に真っ向から戦えば怪我の危険もあるので
安全に殺すに越したことはないが。
とにかく、黒狼は食用にするとして……
家の中で死体が完成してしまっても困る。
魔獣と呼ばれる獣たちの血で
他の獣が寄ってくることはほとんどないので
黒狼は放置し、家へと戻る。
扉を閉め、投げた少女を探す。
壁に背を向けて少女は蹲っており、
その焦点の定まらない琥珀色の双眸が
こちらを見ていた。