V・X・Tさん、誤字報告サンクス。
キッテルとルリが母艦に帰投した頃、ヤザンは搭乗機と共に地球に降下し、現地で活動する武装勢力と無線で交信していた。
そのヤザンが乗っている機体は、ZGMF-X24Sカオスガンダムである。キッテルが乗っていたインパルスガンダムと同時期に開発されていた機体であり、ヤザン専用の為か、海ヘビが装備されている。
「よぅ、スポンサー様の代理で来てやったぜ。テメェらが持ってるウィダンム六十機、直ちに寄越しな」
『な、なに!? いきなり来て当基地のウィンダム全機を寄越せだと!? ふざけるんじゃない! あれは基地の制空権に必要不可欠な戦力だぞ! スポンサーの代理だかなんだか知らんが、貴様の言うことなど聞くか!』
キッテルと戦うことに集中すべく、ヤザンは邪魔者を寄せ付けない戦力を欲し、自分のボスが援助している武装勢力に、供給した連合軍のMSであるウィンダム六十機を自分の指揮下に置くように指示を出したが、基地司令官はそれを容認しなった。
当然のことであるが、ヤザンは恐喝紛いなことを言って、無理に基地司令官より戦力を出させる。
「うるせぇぞ! MSも
『うっ…!? わ、分かった…! それだけは止めてくれ! 基地のウィンダム大隊を貴官の指揮下に入れることを許可する…! 基地の守備は、AS二十機で十分だ!』
「分かれば良いんだ。お前さんらは、大人しく俺たちスポンサーの言う通りにやってりゃあ良いんだ。それにお前らをどん底に追い込んだ、女どもを図に乗らせているISをやっつけられるんだ。本望だろうて」
『あっ、あぁ! 貴官の言う通りだ! 我々男性解放軍は、IS打倒の為に協力してくれる貴官らモンターク商会に感謝している。健闘を祈る!』
ヤザンの気迫にやられた基地司令官は、冷や汗をかきながら彼の要望を聞き入れ、ウィンダム六十機を貸した。同時に援助してくれたことを感謝しつつ、健闘を祈ると言って無線を切る。
「けっ、通りで女どもに取って代わられる訳だ。腑抜けばかりで、縮み上がった連中だ。どうして、ボスはこんな奴らに援助なんぞ。一銭にもならねぇぜ」
先の脅しに屈した基地司令官の態度を見て、ヤザンはなぜこの世界が女性に取って代わられた理由を理解した。おそらく女性しか扱えないISが登場しなくとも、遠い未来、女性に取って代わられる物と判断する。
「約束通り来たな。約束を守ることだけは褒めてやる」
約束通り、ジェットストライカーを装備したウィンダム六十機が来たことに、約束を守っただけのことは褒めた後、ウィンダム部隊に向けてISの討伐に出ると通信で告げる。
「良く来たな、お前たち。これから俺たちはISをやっつけに行く。誰が今まで世界を発展させて来たかを、図に乗っている女たちに向けお前たちの手で教えてやるんだ! 俺は女どもの用心棒の相手をする! お前たちはISを包囲してやっつけるんだ! 分かったな!?」
『はっ!』
やって来たウィンダム全機に向け、士気を向上させる連絡をすれば、乗っているパイロットたちは意気揚々に返答した。
「さて、いつまで持つかだ」
だが、ヤザンは六十機のウィンダムのパイロットに一切の期待していなかった。彼は六十機のウィンダム隊の練度の低さを見抜いていたのだ。操縦訓練はある程度は済ませているようだが、部隊運用の訓練は殆ど受けていないようだ。おまけに実戦経験はこれが初めてだ。動きの良いのが居るが、六機くらいだ。おそらく教官が乗っている。
熟練で練度や士気も高い同じMS部隊を相手にすると、一瞬で士気が瓦解して壊滅しかねず、通常兵器の部隊相手でも、その部隊が巧みな防衛戦を行えば、壊滅は免れないだろう。
あれだけ居ても、ISを落とせるには五分五分と言ったところだ。
そんなことを気にしつつ、ヤザンは六十機のウィンダムと共にキッテルが居る海域へと向かった。
『ポイントチャーリーにて、多数の国籍不明並び識別不能機を確認! 各員、警戒態勢!』
「何っ!? ここは後方だぞ!」
自分のために用意された部屋で、始末書を書いていたキッテルは、艦内に響く所属の識別不能機の発見を知らせるアナウンスに、直ぐに敵だと分かった。だが、この世界は安全な後方に当たる。敵に攻撃される可能性が低いはずだが、それが出現したので、万年筆を仕舞ってからハンガーに急ぐ。
途中、スーツを着た民間人の黒髪の女性とワルキューレ空軍の女性参謀が口論している場面に出くわす。スーツの女性の隣には、IS専用のスーツを着たルリが立っている。
「カポディストリアスは民間人だぞ! 戦闘に出すなど何を考えている!?」
「織斑女史、彼女が乗るISは第四世代です。現状の戦力内で性能は一番上です。不測の事態に備えるために、編成からは外せませんね」
「だからと言って、それを了承する教師がどこに居る!?」
話を聞くに、織斑と呼ばれる女性はルリの教師であるらしく、民間人の彼女を編成に加える女性参謀に対して抗議している。
警戒態勢に口論を始める二人に対し、キッテルは止めさせるために彼女らの間に割って入った。
「失礼する。フロイライン、今はいつ敵が攻撃してくるか分からん状況だ。気持ちは分かるが、口論は止めて頂こう」
「口論? 何を言う、お前たちは民間人、あんな女の子を戦闘に参加させるのか?」
「女の子? ルリのことか。大丈夫だ、私も出撃する。ルリには予備戦力として待機してもらうだけだ。出ることも無いだろうが、そうならないように努力する。参謀殿、増援部隊はどのくらいだ?」
確かに教え子を戦闘に出すことを認める教師は、そうは居ない。教え子であるルリを心配する織斑に対し、キッテルは予備として待機してもらうだけで、出撃することが無いように努力すると約束した。
次に参謀に、正体不明の部隊を迎撃する友軍部隊の規模を聞く。
「ライセンス持ちですか? 友軍部隊は第三世代のIS量産機、ヴァルキュリア・アーマー六機で編成されたIS第三中隊と、バーザム並びバーザム改二個中隊です」
「一個混成大隊か。天と地がひっくり返らない限り、大丈夫だ。教え子が出撃することは無いだろう」
参謀より迎撃部隊の規模と編成を聞いたキッテルは、織斑にルリが出撃することは無いと告げる。
「第三世代をもう正式採用していることには驚いたが、貴方の目を見れば、安心できる。貴方が誰だか知らないし、初対面の身であるが、カポディストリアスが出ることの無いように頼む」
「私も元からそのつもりだ。ルリは民間人だ、いくら我々より高性能な戦闘兵器に乗っていてもな。では、出撃するので失礼する!」
「では、私は戦闘を指揮するので。貴方は移住区に避難を」
自分が居るから大丈夫だと言うキッテルに、織斑は彼が歴戦の戦士であると見抜いてその言葉を信じた。
これにキッテルは元からルリを出すつもりも無いと答え、パイロットスーツを身に着けるために更衣室へと駆け込んだ。女性参謀も戦闘指揮を行うべく、
『レーダーに反応! 敵迎撃部隊! 照合確認、MS十八機! IS六機!! 総数二十四機!!』
「スクランブルか。展開は早いが、数が少ない。だが、こちらには都合がいい! お前たち、初の実戦だ! 腹をくくれ!!」
乗っているかオズガンダムをMA形態に変形させ、キッテル討伐に向かうヤザンは、教官が乗る僚機からの報告で迎撃部隊の数が少な過ぎることに落胆したが、実戦経験の無いパイロットが大部分を占めているので、彼にとっては都合が良かった。
数はこちらが上だ。数で押せば、一個大隊程度のスクランブルを倒すのはそう時間が掛からない。それに敵部隊はRMS-154バーザムとその改良型である。後は第三世代のIS六機だ。
そう判断したヤザンは、実戦経験の無い者たちに気を引き締めるように言ってから、先に敵迎撃部隊に向けて仕掛けた。
「沈めぇーっ!」
敵部隊のベースジャンバーと呼ばれるMS二機が載れるサブフライトシステムに乗るバーザム改に向け、ヤザンはカオスガンダムのMA形態のみが使用できる福相ビーム砲を発射した。
狙われた敵機は先行しており、長距離ビームが来ることを予想していなかった為に、右側に居たバーザム改は胴体にビームを受けて大破した。撃ち抜かれたバーザム改は、火を噴きながら海面へと落下していき、海面に落ちる寸前で爆散する。
「命中か! 動きが遅いぜ!」
命中して敵機が爆散したのを確認したヤザンは、敵の展開が遅いことを注意しつつ、先の長距離ビームを撃ち続け、味方の部隊に指示を出す。
「三機一隊で一機をやれ! 数はこちらが多いんだ! 負けることはない!」
三機一隊で一機の敵機に当たるように指示を出せば、味方のウィンダム六十機も展開して敵部隊との交戦を開始しようとした。だが、敵も慌てていないのか、長距離ビームによる反撃を行う。その攻撃を行ったのは、背部にキャノン砲を搭載したIS、
放たれたビームは、こちらの射程外に居るウィンダムを一機撃墜し、実戦経験の無い味方部隊に衝撃を与えた。
「向こうも長距離ビームか! 中々の狙いだ!」
『う、うわぁぁぁ!? 死にたくない! 俺は死にたくない!!』
『こらぁ! 逃げるな! 撃墜するぞ!!』
「ちっ、この程度で慌てよって! だから女にとって代わられちまうんだ!」
敵の反撃を褒めたヤザンだが、友軍機を目前で撃墜されたのを見て怖気づいた味方のパイロットは逃亡した。敵前逃亡だ。
教官は恐怖が伝染して全員が逃亡を阻止するために、逃げたウィンダムに向けて逃げるなと叫んでいるが、そのウィンダムのパイロットは聞いても居ない。これにヤザンはだから女に取って代わられると文句を言って、こちらに弾幕を浴びせて来るバーザム二機と交戦を始める。
『止まらんか! 貴様は敵前逃亡罪だ! 死ね!』
『わぁぁぁ! あぁぁぁ!? 熱い! 熱い!! 誰か出して! 出してぇぇぇ!! ママァァァ!!』
『ひっ!? ひ、人が死んだ…!? っ!? わっ!』
ヤザンが敵機と交戦を始める中、逃げたウィンダムが静止の声を聞かないので、教官はその味方機を敵前逃亡罪で撃墜した。敵前逃亡罪でビームを背後から撃たれ、火を噴きながら墜落していくウィンダムのコクピット内では、火が機内にも回って来たのか、全身を焼かれて叫び声を上げるパイロットの悲鳴が聞こえて来る。これに恐怖した他のパイロットは、思わず動きを止めてしまい、接近してきたバーザム部隊に二機が撃墜される。
更にVAが動きを止めた六機を撃墜すれば、攻撃してきた敵部隊の練度の低さを見たスクランブルのバーザム部隊のパイロットたちは、ヤザンのカオスガンダム以外は大したことが無いと判断する。
『敵の動きが変だぞ! いや、変じゃない! 実戦慣れしてないんだ!』
『あのガンダムは強いが、ウィンダムは数が多いだけだ! 俺たちは実戦慣れしていないウィンダムさえ倒せば良い! ガンダムはISに任せるんだ!』
敵部隊で実戦慣れしているのはヤザンのカオスガンダムだけだと判断したバーザム部隊のパイロットらは、ISのVAにヤザンのカオスガンダムを任せ、自分らはウィンダムを攻撃し始めた。部隊長はその指示を、IS部隊の長に出す。
『我々は敵MS部隊を叩く! 貴官らはあのガンダムの対処を頼む!』
「MSの相手は貴方たちの仕事でしょ!? それにあいつの方が…!』
『喧しい! そっちのが高性能だ! それに階級は俺の方が上だ! 上官命令と思ってやれ!!』
「勝手な…!」
階級が上なことを言い訳に、バーザム部隊はウィンダム隊を攻撃し始めた。ヤザンの対処を押し付けられたIS隊の隊長は、向かってくるカオスガンダムを相手に、死に物狂いで戦わされる羽目となった。
『貴様ら! さっきの奴みたいになりたいのか!? 死ぬ気で戦え!!』
向かってくるバーザム部隊に教官が乗る機体を除くウィンダムのパイロットたちは恐怖するが、先の教官に撃墜された味方のパイロットのことを言われ、ISと同じく死に物狂いで戦い始める。
その思わぬ戦いぶりに、バーザム部隊のパイロットたちも驚いたようで、何機かが撃墜されて退き気味になる。
『こ、こいつ等! 督戦隊にでも脅されているのか!?』
『ぞ、増援を要請しろ! このままでは押し切られる!』
実戦慣れしていないと思って舐めていたが、教官の督戦隊のようなやり方で死に物狂いで猛攻を仕掛けて来るウィンダム隊に圧された部隊長は、援軍を要請した。その援軍は、キッテルのインパルスガンダムとルリのISである。他は駆け付けて来る救援部隊だ。
「フン、中々のパワーでスピードだが」
一方でISと交戦しているヤザンはISの火力と機動力を褒めたが、女性にしか扱えないことが気に入らなかったらしく、自分の殺気に怯んで動けないそのISに接近し、一気に畳み掛ける。
「女しか乗れないのが、気に入らないんだよォーッ!」
その叫びと共に機体をMS形態に変形させ、ビームサーベルを振り下ろした。
ビームの剣を振り下ろされたISの絶対防御が働くも、ヤザンのカオスガンダムのビームサーベルは改良されて火力を増しているらしく、数秒ほど当てられただけで、絶対防御を貫通して操縦者を蒸発させた。ビームサーベルで切り裂かれたISは爆散し、残骸は海へと落ちていく。
「あ、ISが…!?」
「やられた…!?」
「他愛のない! これが世界を分捕ったISか? 噂ほどでもないぜ!」
ISが撃墜されたのを初めて見たISの操縦者たちは、衝撃の余りその場で固まってしまう。
噂ではMSを上回る性能と聞いていたヤザンであったが、こうもあっさりと倒せてしまったことに、噂ほどでもないと言う。ヤザンとカオスガンダムの組み合わせが強過ぎるだけのことであって、ISが弱い訳ではない。ヤザンの実力が高過ぎるだけである。
「気を引き締めて! 次は私たちよ!!」
最強であるISを倒したカオスガンダムに茫然とするISの操縦者らに対し、部隊長は指示を出して彼女らを正気に戻す。再び仕掛けて来るISに対し、ヤザンはビームを回避しながら反撃する。
「ほぅ、仲間をやられても、逃げ出すことは無いか。それだけは褒めてやろう。だが、容赦はせんぞ!」
戦場から逃げ出さないことだけを褒めれば、ヤザンは容赦することなく連携を取って向かってくるISに襲い掛かった。
一方で出撃準備を始めているキッテルは、無線で先に迎撃に向かったスクランブル部隊の被害が大きいことを知る。
「なに、敵部隊はウィンダム六十機にガンダムタイプ一機だと? それに迎撃部隊が苦戦している? このままでは全滅しそうだな。準備が整い次第、救援に向かう! 他の部隊はどうか?」
ヤザンとウィンダムの数が多すぎて迎撃部隊が苦戦していることも知ったキッテルは、直ぐに出撃して救援に向かうと告げ、他の部隊はどれくらいで間に合うかを問う。
『現在、付近に駐屯している出撃可能な空戦部隊は、可能な限り急行させております。ですが、戦闘地域に到着するまで二十分も掛かります』
「二十分だと? 遅い! 十分で来させろ! 二十分では迎撃に向かった部隊は全滅するぞ! 良いな!? それとルリのISは出さんぞ。彼女は民間人だ。軍が民間人を頼っていては、名折れだぞ!」
二十分も掛かると聞けば、キッテルは激怒して十分で急行させろと怒鳴った。それにルリは民間人だから出さないと告げ、軍が民間人を頼るなと説く。
『ですがカポディストリアスのISは予備戦力に組み込まれており、それに現状ではこちらが…』
「それでも戦うのが軍人だ! 軍が民間人を守らんでどうする? 貴様も軍人なら、腹を括って身を挺して民間人を守れ! 私は出撃するぞ!」
『はっ! そちらに敵部隊のデータを送ります!』
異論を唱える管制官に対し、キッテルは軍人が守るべき民間人を戦わせることを責め、例え負ける戦いでも戦うのが軍人と説教を行い、それから出撃すると告げた。
歴戦錬磨で英霊でもあるキッテルに論された管制官は、彼の言葉に促されて軍人としての誇りを胸に腹を括れば、インパルスガンダムに向けて観測した敵部隊のデータを送信する。データを受信したきっえてるは、敵部隊の現状戦力を確認した後に出撃すると伝える。
「データ受信確認! 出撃する!」
カタパルトは無いが、機体背部に搭載されたフォースのスラスターを吹かせて空中高く飛び、キッテルのインパルスガンダムは戦闘空域に向けて出撃した。
戦闘空域は近く、全速力で急行すれば物の二分で戦闘空域に到着する。キッテルのインパルスガンダムを見付けたジェットストライカー装備のウィンダムは、直ぐに手にしているビームライフルを撃ち込んでくる。
『死ねぇ!!』
「下手な射撃を! それに遅い!」
容易に避けられるほどであり、飛んでくるビームを躱したキッテルは遅いと言って、素早く機体のビームライフルを敵機に照準して撃ち込む。
敵のウィンダムのパイロットはこれが初陣であり、まだ戦闘のコツを掴めていなかった。対するキッテルはMSに乗るのが初めてでも、既にコツを掴んで熟練レベルに達しており、相手が悪すぎた。
素早く来た反撃のビームをパイロットは避けきれず、そのまま機体に命中して火を噴きながら海面へと落ちていく。先の動きで、キッテルは相手が素人の集団であると分かった。
「碌な訓練もせずに出て来たのか。素人を投入するとは…! ウィンダムを使うなど、一体どこから支援を受けているんだ?」
なぜ高価な機体であるはずのウィンダムを装備しているか疑問に思ったキッテルは、ウィンダムを正式採用している連邦軍が支援していると思っていたが、普通の軍隊ならこんなお粗末な状態では出さない。直ぐに支援組織は連邦軍では無いと判断し、別の勢力であると疑う。
「見え見えだ!」
続けざまに背後からビームサーベルで斬りかかって来るウィンダムがいたが、キッテルにあっさりと避けられ、背中に蹴りを入れ込まれ、そのままビームを撃ち込まれて撃墜される。
例え教官が乗るウィンダムでも、キッテルのインパルスガンダムには敵わないだろう。三機目と、続けて四機目を撃墜したところで、三機目のISを撃破したヤザンのカオスガンダムに見付かる。
『見付けたぞ! ニコラウス・アウグスト・フォン・キッテル!』
「私の名前を!? 何者だ!」
自分の名前を、それもフルネームで言ったヤザンにキッテルは何者かと問う。これにヤザンは、戦うためにやって来たと名乗りながら答える。
『ヤザン・ゲーブルだ! お前と戦うために、わざわざやって来たんだ! お前の本は読ませてもらった。少し脚色臭いが、先の動きで本物と見た。戦うには十分過ぎるぜ!』
「それだけで、仕掛けてきたというのか!?」
『そうだとも! 本を読んでいれば、お前も戦いたくてウズウズしてたんだろう? お前も俺と同じムジナと言うわけよ!』
「お前と同じにするなぁーッ!!」
名乗りを上げて単に戦いに来ただけだと答えるヤザンに対し、キッテルは怒りを覚えたが、同じムジナであると言われる。
確かに内心では前線に戻り、戦場の空を飛びたいと思っていたが、それほど戦闘狂ではない。ヤザンのこの言葉に激怒したキッテルは、敵機のカオスガンダムに向けてビームを乱射したが、冷静さを欠いた攻撃であるために、容易に避けられてしまう。
『フハハハ、お前らしくもない攻撃だな! どうした、バルキリーじゃないから本調子じゃないのか? それでは、この俺は落とせんぞ!』
ヤザンに指摘されたキッテルは冷静さを取り戻し、的確な射撃を行うも、彼のカオスガンダムは乗っている者の実力も伴って当たらず仕舞いだ。
だが、あちらの攻撃も同じ。キッテルは撃ち合いでは埒が明かないと判断してか、ヤザンのカオスガンダムにビームサーベルを抜いて接近戦を挑んだ。
『このヤザンに接近戦を挑むつもりか! 面白い! 元騎兵隊将校の実力、確かめさせてもらうぜ!』
戦闘機パイロットであるキッテルが接近戦を挑んできたことに、彼の自伝を読んでいたヤザンは、騎兵隊将校の実績がどれほど残っているのか興味が湧いたらしく、同じくライフルを仕舞って接近戦に応じる。
キッテルは騎兵隊として経験で敵が間合いに入る前にビームサーベルを上げ、間合いに入った瞬間に振り下ろそうとしたが、ヤザンはそれを読んでおり、振るわれた瞬間に躱す。
「っ!?」
『MSと馬は違うんだよ! 海ヘビを食らえ!』
回避しきれない速度で迫ってからサーベルを振るったのだが、避けられてしまったことにキッテルは動揺した。これにヤザンは空かさず、乗って来た機体に装備させていた電流武器である海ヘビを撃ち込む。
飛んでくる海ヘビの先端にキッテルは気を取り戻して操縦桿を握り、回避行動を行おうとするが、海ヘビの方が速く、胴体に先端が命中した。そこから高圧電流がインパルスガンダム全体に流れ出し、コクピット内にも及び、電流がキッテルの身体を襲う。
凄まじい電流が全身を走れば、それに伴う激痛がキッテルを襲い始める。余りの痛さに、キッテルは叫び声を上げる。
「ぐわぁぁぁ!?」
『海ヘビの味はどうだ!? 上手いだろう! MSは騎兵のようにはいかんぞ! 火達磨になるまで痺れさせてやる!』
ヤザンはキッテルを高圧電流で殺すようだ。その間に味方機は多数のウィンダムによって落とされており、残りはヤザンの海ヘビで苦しめられているキッテルのインパルスガンダムを含め、IS三機にバーザム三機、バーザム改一機を合わせて八機である。
『そのまま焼け死ねぇ!』
「うわぁぁぁ! あぁぁぁ!!」
これでヤザンはキッテルを倒せると思っていたが、ここに来て思わぬ敵の増援が現れた。
『っ! なんだ!?』
自分に向けられた殺気、自分のカオスガンダムに目掛けて飛んでくるビームに気付いたヤザンは、直ぐに海ヘビを戻して回避行動を取った。放たれたビームは外れたが、一秒もしない内に二射目が来て、友軍のウィンダム二機を撃ち落とす。
直ぐにヤザンは索敵を行い、ビームが飛んできた方へカメラを向けて確認する。それは、ビットを展開してこちらに接近してくるルリのISであった。
『小娘の乗ったISだと!? ふざけやがって!』
「まさかルリなのか!? なぜ来た!?」
乗っているのが戦場に似合わない可憐な少女であると分かったヤザンは苛立ち、ルリが救援に来たことに、キッテルは怒りを覚える。
軍人として、民間人である彼女を出すつもりは無かったキッテルであるが、ルリの救援が無ければ電流で殺されていた所だ。彼を助けに来たルリは、無数に来るウィンダムと交戦を開始した。
次回はIS(名前未定)に乗ったルリが、シン・アスカの如く活躍する予定です。
それとc.m.様、キッテルを電流攻めにしてしまって、ごめんなさい。