MCU『ブラック★ロックシューター』 作:おれちゃん
マイティ・ステラ
「……」
「……」
免許試験会場は異様な雰囲気に包まれていた。試験官も顔が引きつっている。
150cc以上のバイクの免許試験場なのだが、そこにドンと鎮座するブラックトライク。そしてそれに乗る少女。
試験は自家用バイクでやるのが通例なのだが、あんなもの普段から持ってるってどう言う状況だとなる。
あんなもの運転できるのか?と言う疑問に応えるかのように全く問題なく試験内容をクリアしていく様子に他参加者は動揺しミスを連発。
その日の試験は何時もより不合格率が高かったそうな。
「それじゃ、行ってきます」
「変な人についていっちゃダメだぞ。何かあったらすぐ連絡するんだぞ。ご飯はハンバーグとスパゲティだけじゃなくてバランスよく食べるんだぞ?」
「お父さんは心配性」
ステラが運転できるようになった記念にドラコ基地のシャオミンに会いにいくのだ。それなら伝手を使って空輸でもなんでもすれば良いのに、ステラはブラックトライクで行きたいと言う。
「この世界をいろいろ見ながら行って見たい」
などと言われればロスコルは引き下がらざるを得ない。
強盗に遭ってもまあ返り討ちだしなって面もちょっとあった。
途中ミズーリ州を通っている時に銀行強盗事件に遭遇したので全員ひっ捕らえてバンに詰め込んで警察署の前に置いていくようなことは実際にしたのでロスコルの予測は概ね正しかった。
荒野のハイウェイを自重して百マイル程度で走っていると、途中で荒野の先にトレーラーや車が止まっているのが見えた。
さっき買ったハンバーガーを食べるのになにかやってるのかと道を外れてステラはそちらへ向かう。ロスコルの言いつけ通り朝夜はいろいろ食べてバランスが良いのだが昼の運転の合間に食べるのにはハンバーガーが最適だったのだ。
到着してみればそこでは大の男たちがなんか地面に落ちたハンマーを持ち上げようと悪戦苦闘していた。
引っ張ろうとしたどっかで見た人に似ているお爺さんのピックアップトラックの荷台が剥がれ飛んで爆笑が起きる。
そんな所にやってきたステラが葉巻を吸っているおじさんに声をかけた。
「何してるの?」
「ああ、ハンマー持ち上げ大会さ。あれ見えるかい? 誰がどうやっても持ち上がらない。俺としちゃアレハンマーじゃなくて下に杭みたいなのが思いっきり刺さってるんだと思うんだがね」
「困ってる?」
「困っちゃいないさ。余興みたいなもんでね。お嬢ちゃんもやってみる?」
コクリと頷くステラにおじさんが声を上げた。
「ニューチャレンジャーのお出ましだぞ! みろこの可愛らしいお嬢ちゃん! ハンマーも悩殺で持ち上がるかもしれねえぞ!」
「ヒュー!」
「いいぞスタンジジイの車の敵とってやれぇ!」
盛り上がる中ステラは窪みの真ん中にやってきてハンマーの柄を触る。掴んだ時にズルッと金属部分が少し動いた。
微動だにしなかったそれの動きに騒いでいた近くの面々は息を呑んだ。
力を込めようとしたステラの手で普通に持ち上がった。
男たちから歓声が巻き起こった。お祭り騒ぎである。
「お嬢さんお嬢さん、はいハンマーを構えて、チーズ」
「チーズ」
トラックを破壊されたおじいさんがポラロイドカメラでステラを撮ってその場のみんなで記念撮影をした。記念撮影して元の場所に戻すとハンバーガーを食べながら大騒ぎして男たちがこぞってもう一回やるぞと気合を入れ始める。歓声を浴びながらブラックトライクに乗り直すと手を振りながらステラはまたドラコに向けて道を走り始める。
ステラが去ってから一時間ほど経って、そこにとある人物が現れる。
「こちらコールソン。目標を発見しました」
ドラコについてシャオミンに会えば、街中を走るブラックトライクの写真を撮りたいとのことで付き合ったり、その先でバイク乗りたちから歓声を浴びたり楽しく過ごし、帰路でも道から落ちた乗用車を引っ張り上げたり迷子の子を後ろに乗せて親御さんを見つけたり人助けをしながら、ようやく家にまで着いた。すると車庫が拡張工事をされておりブラックトライクを駐車してもシャッターがちゃんと閉まるようになっていた。
「やあおかえりステラ。ほぼアメリカ横断の旅だったけど、どうだった?」
二週間後、何事もなく帰ってきたステラをロスコルは微笑みながら出迎えた。ステラは少しだけ、それでも精一杯に口角を上げて。
「楽しかった」
と笑った。ロスコルにステラはまずブラックトライクを運転するステラの写真に基地の人たちとの集合写真を渡した。コレにはロスコルもウンウンと嬉しそうにうなづく。
そして次に渡されたのに困惑した。なんかハンマーを持ってポーズを取るステラと見知らぬ男たちと記念写真を撮ったステラの写真を渡される。どう言う状況だこれと言わざるを得ない。
しかしそれら含めて全部写真たてに入れてステラの部屋に飾られることとなった。
「お父さんと一緒の写真も欲しい」
ロスコルはなんか泣いた。二人で撮った写真はそれぞれの部屋に飾られる事となった。