MCU『ブラック★ロックシューター』   作:おれちゃん

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トリックスター

「ステラ、あそこにロキがいるからそこで降ろしてくれ」

 

 途中から飛んでいるのに慣れたスティーブが岩山の上でワイヤーミノムシのままのロキを発見しステラがそちらに着地した。その時翼端が地面にちょっと刺さったが問題なくスティーブを下ろし二人でロキの方へ近づく。

 

「お早い到着だな?」

「ステラ、こいつを見張っていてくれ。僕はあちらを止めてくる」

「気を付けて」

 

 岩肌を駆け下りていくスティーブを見送ってステラが背伸びをした。翼もつられて伸びるように動く。その先では木が折れたりなんか光ったりしているが、任されたのだからステラはただロキを見張るだけである。

 

「お前のような紛い物に見下ろされるとは、なんとまあひどい状況だ」

「紛い物?」

「ああそうだとも。自分で気づいていない阿呆なのか? 明らかだろう貴様が他者と違うことが、それとも己が周りと違うということから目をそらしているのか? 滑稽だな」

 

 縛られていても皮肉を言う口はしっかりと動くロキの話をステラはただ無表情に聞いていた。

 

「気付け、貴様の力を理解できるのはあらゆる人間を支配するこのロキのような者だけだということをな」

「……?」

「ちっ馬鹿には何を言っても無駄か」

「他の人と違うと、ダメなの?」

 

 純粋に疑問を投げかけてきたステラにロキはもう聞く耳持たないといわんばかりにワイヤーミノムシのまま崖下の戦いを眺め始め、ステラも返答がないのでそのまま黙っていた。

 しばらくして森の先で木々がすべて吹っ飛ぶような衝撃が走り、さすがにステラは様子を見に行くことにした。ただロキの見張りもしないといけないと思い、とりあえず簀巻きワイヤーを掴んだ。

 

「下郎が私に触れるな!!」

「あっごめんなさい」

「今離すんじゃないぐあーッ!?」

 

 持ち上げたところでロキが怒ったのでとっさに離した為ロキがそのまま崖下へ岩肌を転げ落ちていったのを慌てて駆け下りる。ゴンッと一発跳ねてそのままロキは下に落下。木々を突き抜けた先にステラが追い付くと、そこには腐葉土に上半身を残して若干斜めに突き刺さったロキの姿があった。

 

「おいふざけるなよ紛い物が!! 抜け!!」

「でも触るなって」

「貴様は馬鹿か!!」

 

 そこに三人がやってきた。

 

「おい一体どう言う状況だこれは?」

「キャプテン、"ここは地球だったのか"って言ってくれないか?」

「なんの話だ?」

 

 ソーが歩み寄る。

 

「もうこの縄も必要ない。俺が居るからな」

 

 ソーが力づくでワイヤーを引きちぎった反動でロキの右腕が振り上がる。

 

「おっともっと近くなったぞ」

「だからなんの話だ?」

「自由の女神さ」

「ごめんなさいスティーブ、落っことしちゃった」

「構わないさステラ。見ての通りロキは丈夫だ」

「キャプテン、この子に関してだとちょっと甘くなってないか?」

「そんなことはない」

 

 トニーが通信を入れるとナターシャが到着し五人を収容して今度こそヘリキャリアーへ飛んだ。

 捕まえたロキは特殊な檻に入れられる。監視カメラの映像がディスプレイ型のデスクに投影されニックとロキのやり取りを皆で観察する。

 

『あのケダモノ、人間のフリをしている。紛い物と言いアンタどれだけ必死なんだ? あんな化け物どもをかき集めて身を守ると?』

『どれだけ必死かって? お前は戦争を仕掛け制御不能なエネルギーを盗み安らぎと言いながら面白半分に人を殺す。我々としても必死にならざるを得ないだろう? 自分のしたことを後悔させてやる』

 

 ロキは嘲を隠さない。

 

『おお……後ちょっとだったのに惜しかったな。もう少しで四次元キューブの力が手に入った。無限のパワーがな、だがなんに使う? 全人類を照らし温めるためか? パワーは王がもってこそ価値がある』

『ではその王とやらが雑誌でも読みたくなったら読んでくれ』

 

 最後、ロキは映像が途切れるまで監視カメラ越しにこちらに笑みを向けていた。

 

「彼は面白い奴だね」

「ロキは時間稼ぎをしているつまり……ソー、どう思う?」

「ロキは軍隊を待ってるんだろう。チタウリという異世界の生き物だ。そいつらを率いて戦争を起こし、地球を手に入れ、見返りにキューブをくれてやるんだろう」

 

 皆の顔が険しくなる。

 

「だから通路が必要なんだろう。その為にセルヴィグ博士を」

「セルヴィグ? 友人だ」

 

 ここでソーから情報が共有され、セルヴィグ博士がソーの知り合いであり魔法で操られていることが判明する。

 

「だがロキはなぜみすみす、囚われの身になったんだ?」

「ロキに惑わされない方がいい。テクノロジーの面から考えよう。なぜイリジウムを狙ったのか」

「安定剤になる」

 

 トニーがコールソンと共にやってきて、イリジウムの使い方を解説する。先日渡された資料を読み込んでここまでもっていけるトニーの知力の高さが伺えた。

 その話について行けるのはバナーだけである。

 

「バナー博士はキューブを追跡する為にお呼びしたんだ。君も協力してくれ」

「ロキの杖を調べたが、魔法のようだがヒドラの武器とよく似てる」

「威力低いけれど、ロックキャノンにも似てる気がする」

「そこまではわからんがアレはキューブから動力を得ている。なぜ我々の優秀な仲間二人がロキに従順な空飛ぶ猿になったかも謎だ」

 

 大体が猿?とが頭にはてなを浮かべる中スティーブがオズの魔法使いと正解を言い当てた。ステラが拍手する。トニーとバナーはそのまま研究室へ行ってしまった。

 

「エージェント・シェパード、お望みの物は用意しておいた。物資置き場で確認してくれ」

「ありがとうニック」

「一応エージェントなんだから長官と言いなさい」

「ごめん長官」

「……エージェント・ロマノフ、案内してやってくれ」

「了解」

 

 ナターシャとマリアが他所を向いて笑いを堪えている。

 そうして各々が移動する。ナターシャがステラを案内するとど真ん中に鎮座したでかい箱が目につく。左下に"スタークインダストリー"と社名が付いているのでトニーのものだろうことは予想がつく。

 その脇に置かれたこちらもそれなり以上にでかい長方形のボックスには星のエンブレムが刻まれていた。ステラのヒーロー名をロスコル経由で知っていたS.H.I.E.L.D.職員の粋な計らいである。

 

「データでは見ていたけれど、大きいわね」

「ねえナターシャ、開かない」

「エージェント・シェパード? ……まってステラ、こじ開けようとしないで」

 

 電子ロックで開かないようになっているのを引っ張ろうとするステラを制止して暗証番号を入れれば蓋が横にスライドし、箱の横幅いっぱいの大砲が現れた。

 引っ張り出せば照明からわずかに金属光沢が反射するステラにはあまりに不釣り合いに無骨な代物を片手で容易くステラは持ち上げた。

 

「二年ぶり」

「試射してみる? デッキに出る必要があるけれど」

「いい、使い方は知ってるから。下手に使うと危ない」

「あ、でも持ってはいくのね? 良ければだけれどこれ、使って?」

「ありがとう」

 

 一緒に入っていたベルトをハンドガードと銃身の所に通せば簡易的にスリングのようになり肩にかけて持ち運びに便利という感じになった。銃剣の所もカバーが付けられているので安全である。

 

「便利。ありがとうナターシャ」

「良いわよ。それじゃ私は用があるから」

「またね」

 

 ナターシャと別れたステラはとりあえずブリッジに戻って来ると丁度スティーブが席を立とうとしている所だった。

 

「成る程、それが君の射手(シューター)たる由来か。すごいな」

「ありがとう。何かあればこれが火を吹くよ」

「それは心強い。僕はラボを見に行くが、ステラも来るかい?」

「わたしは熱力学とかガンマ線とかには詳しくない。行っても邪魔になっちゃうからここで待ってる」

「そうか、では後ほど」

 

 ブリッジを後にするスティーブを見送ってステラは一人テーブルに座ってのんびりとしていた。

 

「ステラ、少し寝てても良いのよ?」

 

 副長官のマリアが通りかかった時に一人で座っているステラを見てそう言った。エージェント扱いにはなっているがステラ自身が何か受け持っているわけではない。フューリーのアベンジャーズ計画に名を連ねる一人と言うだけなのだ。善性の存在である故にエージェントとしては非常に扱いにくいであろう。

 

「わかった。休息してる」

「……横になるなら部屋を用意するけど?」

「フューリーが時間的に急いでたから座ってする休息で十分。マリア、わたしは結構頑丈な感じ」

 

 ステラがサムズアップをしてそのままテーブルに突っ伏した。マリアは小さくため息を吐いて微笑むとヘリキャリアの指揮とエージェント達の統括に戻った。

 誰かが気を利かせたのかいつの間にか毛布がステラの肩にかけられていた。




感想返信をすると本編への熱量が逃げて筆が止まってしまうタイプなので返信はしていませんがとても励みになっています。ありがとうございます。
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