MCU『ブラック★ロックシューター』 作:おれちゃん
ステラが目を覚ましたのはヘリキャリアが大きく衝撃で揺れた時だった。跳ね起きたステラがロックキャノンを手に取り若干の混乱が見られるブリッジでマリアの元へ向かう。 窓から見える空はもう青く日が登っていた。
「マリア、どういう状況?」
「ステラ、緊急事態よ。貴女はバナー博士のところへ向かって。ラボの下、機関エリアよ」
「わかった……うーんここじゃこれは使えないよね」
椅子の上にロックキャノンを放るとブラックブレードを手に取ってステラは機関エリアへ向かった。
「バナー! どこにいるの?」
暗い機関エリアへきたステラだが中で破壊音が響くのに負けないように大声を出してバナーを呼ぶ。
「わたしが来たから大丈夫だよ! 出てきて!」
破壊音が徐々に近づいてきて正面の構造物が薙ぎ倒されていく。現れたのは緑の大男だった。ステラを見るなり咆哮を上げる。
「バナーはどこ?」
返答と言わんばかりのパンチがステラの防御を破って、ステラの頭が天井に刺さった。引っこ抜いて落下する際にお返しと言わんばかりに蹴り飛ばして着地、頭に乗った破片を振って落としながら刀を構える。
ステラは得心がいった。こんなのが暴れてたらバナーも怖がって出てこれないだろう。
そこへ機材の隙間を縫ってナターシャが現れた。
「待ってステラ! それブルース! バナー博士!」
「えっ」
驚いたところを殴り飛ばされナターシャの脇の電子制御板のような箱にぶつかって凹ませる。
「ごめなさい大丈夫?」
「あれがバナーって本当?」
「ええ本当よ。今の彼はハルク……どうにかして落ち着かせないと、気絶させても良いから」
「わかったやってみる」
そう言えば、バナーは自分が危険だと言っていた。こういう事だったのかとステラは理解する。でも悪意で暴れているわけではない。
適当に癇癪を起こしたように動くハルクにステラが適当にひっぺがした金属板を投げつけ意識を向けさせる。
「まだだよ」
ステラが起き上がって走り出すとハルクも周辺物を巨体でぶち壊しながら突進する。ステラが身長差を活かして股下を火花を散らしながら潜りブースターを起動、背中に突進しハルクを押し倒す。
起き上がろうとするハルクの背中に乗ると脳天に一発二発三発と峰打で刀を叩きつけた。
そこで上に飛ばれて天井とハルクに板挟みにされ押しつぶされる。天井にめり込んだのを抜け出そうともがくステラの髪を掴んで引っこ抜くとハルクはそのままハンマー投げのようにぶん投げた。
そのままカランと落下した刀をハルクが掴んでへし折ろうとするが、曲がらない。折れない。膝を使っても曲がる気配すらないそれに更に逆上し投げ捨てると床に柄近くまで刺さってしまった。
次はお前だと言わんばかりにナターシャに狙いをつけたハルクが突進する。ナターシャも気付いて逃げるが速力はハルクの方が上だ。
「マリアごめんなさい!」
そんなこと言いながら機材をなぎ倒し翼で飛んできたステラが間に割って入り、ハルクと体格差のあまり歪に組み合った状態となる。
「止まってバナー!!」
腰のブースターを吹かして止めようとしてもハルクのパワーに火花を散らしながら押し込まれるが、徐々にその突進の勢いが収まりハルクが停止するがその様子にステラもナターシャも息を飲んだ。ステラが止めたのではない、ハルクが自ら止まったのだ。
「バナー……ううん、ハルク?」
落ち着きを取り戻したような様子のハルクに二人が安堵していると、船が傾き出すと同時にポンッと小気味のいい音が聞こえ、ハルクの背中が爆発した。
「ハルク待っ」
それに再び怒りを全開にして暴れ出すハルクを宥めようとしたステラが裏拳気味に顔面を殴られ、ナターシャの目の前間一髪を通って壁をぶち抜いていき、ハルクは爆発の下手人である侵入者達の方へ物をなぎ倒しながら走っていってしまった。
『バートンにシステムを破壊された。奴は今独房エリアへ向かっている。誰か行けるか?』
ナターシャが辺りを見回す。ステラが壁の先から戻ってきた。顔面を強打された影響で鼻からは血が滴っていた。
「ステラ、大丈夫?」
「大丈夫、任せて」
ステラはサムズアップした。
ハルクをステラに任せナターシャはバートンを止めに向かった。
ステラが追いつけばそこには倒された侵入者達と勝鬨を上げるハルクの姿がある。さっきと違い鎮まる気配を見せない。
『ステラ! ハルクをラボまで誘い出して! 進路はこちらで誘導するわ!』
「わかった!」
パンパンと拍手してハルクの気を引くと簡単についてきてくれて誘導自体は簡単だったが、代わりにハルクが通るたびに物がぶち壊れるのでステラは内心謝りながらマリアの指示に従ってハルクを誘導する。
ラボを更に上に、傾きが増しつつも登ると、格納庫のようなエリアに行き着いた。
『ステラ? いい? こちらが合図したら天井にジャンプして掴まって』
隔壁を破ってハルクが現れる。ハルクはステラを見ると叫び声を上げながら跳躍して突っ込んできた。
『今っ!!!』
ステラがジャンプして天井に張り付くと床が左右に開き下の景色を見せる。開いたのと共に格納されていた戦闘機も落下していく。それはハルクも一緒で、こちらに手を伸ばすも重力には逆えず墜落していった。
「……バナー、ハルク、ごめんなさい」
『よくやったわステラ。お疲れ様』
閉じた床にべったりと座り込んでステラは鼻を押さえた。
傾きが完全回復した頃に、無線が流れる。
『コールソンがやられた……死亡を確認した……』
フューリーの声だ。コールソン、エージェント・コールソンとはステラはほとんど面識がない。一言二言喋ったことがある覚えがある程度だ。だがヒューリーの暗い声から、彼が大切な人を失ったのだと察せられた。
「コールソンの上着にこれがあった」
襲撃は終わった。しかしこれは負けと言っていいだろう。ブリッジに集まったのは、たったの三人。キャプテン・アメリカ、アイアンマン、ブラックロックシューターだけだ。フューリーも、後ろに控えるマリアも全員が暗い顔をしている。
「サインをもらい損ねたようだな」
ヒューリーが血塗れのカードをテーブルに放った。散らばったカードにはキャプテンアメリカの絵が描かれている。
「八方塞がりだ。通信は不能、キューブのありかは不明、バナーもソーも。何の情報もない。大事な仲間も失った」
自嘲するようにフューリーがテーブルに手をついて頭を振った。
「わたしのせいかも知れん。確かに我々は四次元キューブで兵器を作ろうとしていた。だがそれだけではない、同時にもっと危険な計画も進行中だった」
何かをしていないと落ち着かないのか、ゆっくりとフューリーはテーブルの周りを歩く。
「その計画とは、スタークは知っている。エージェント……いや、ステラもな。その名をアベンジャーズ計画という。目覚ましい力を持った者たちを集め、チームを組んでより大きな力にする」
そして誰も座っていない椅子の背もたれに寄りかかり、話を続ける。
「彼らが力を合わせれば、強大な敵にも必ず立ち向かえると思っていた……フィル・コールソンは死ぬまで信じていた。その実現を……ヒーローたちを」
トニーが立ち上がり、その場を後にした。
「まぁ……ヒーローなんてもう古いがな」
「古くないよ、コールソンは正しい。だってわたしは、わたし達は……」
フューリーの言葉にステラが立ち上がった。ロックカノンを肩に掛けてブリッジから去っていく。扉の前でヒューリーとスティーブに向けて振り返って、微笑んだ。
「困難に立ち向かうようできてるんだから」
ステラはそう言って後にすると、慌ただしく動く人たちの間を抜けて、機関エリアにやってくる。こちらも損傷を大慌てで修理したりしている人たちの邪魔にならないよう端をよて避けて行きながら目的の場所に使う。そこにあるのは突き刺さった柄、ブラックブレードだ。
それを握り、キギ、と火花を散らしながら引き抜く。
そうして格納庫を歩くスティーブ、ナターシャ、バートンへと合流した。
「こんにちは、わたしはステラ」
「バートンだ。よろしく頼む」
四人でクインジェットに乗り込むと、修理したスーツを纏ったトニーを先頭に、ヘリキャリアを一行は飛び立つのだった。