MCU『ブラック★ロックシューター』 作:おれちゃん
「僕は救助活動を手伝ってくる」
『僕は救助活動を手伝ってくる』
拘束されたロキが負け惜しみにふざけ出したのでソーがアスガルド式猿轡をロキに着けた。
「お待たせした。そちらの杖はこちらで回収しよう」
そうすると服の端に汚れを付け先ほどまで戦っていたのが窺える面々が入ってきた。彼らはS.H.I.E.L.D.の精鋭部隊S.T.R.I.K.E.のメンバーである。彼らもまたニューヨークでチタウリと戦っていたのだ。
「あ、アハズだ」
「やあステラ。久しぶり。この騒動だ、君も来ているのではと思ったが、まさかアベンジャーズだとはな」
「アハズも、どうしてここに?」
「P.S.S.は解散になったからね。私はそのまま本部のS.T.R.I.K.E.に移籍になったのさ」
二年前に比べさらに白髪が増えたアハズと軽く挨拶をして見送り、四次元キューブも運搬用アタッシュケースを準備してそこに詰める。
全員とりあえず傷の処置を受けて一息をつく。
そして下に降りようとエレベーターに乗り込んでいった所ステラが乗ると重量オーバーを知らせるブザーが鳴る。
「……」
ステラが下りるとブザーが鳴りやむ。
「ステラ、それ重すぎだ。置いていったらどうだ?」
トニーがロックキャノンを指差し指摘する。
「それは嫌だな」
「じゃ少し待ってるといい。安心しろここのエレベーターは速いからなそりゃもう」
「わかった」
かわりに乗り込んでこようとするハルクをトニーが制止した。
「いや待て待て待て、ハルクお前はエレベーター自体無理だから階段を使え。あんまり壊すなよ」
そのままエレベーターのドアが閉まってハルクが吠えた。
ステラが階段の方の扉を開いて下を覗く。ハルクが壁を軽く殴って凹ませつつ後に続くと、延々と階段が続いているのが見えた。
「……」
「……」
ハルクとステラが顔を見合わせる。しばらくエレベーターを待っていると、到着したので二人で乗ってみるがブザーが鳴る。
「ハルク、一緒に階段で降りようか」
ステラがそう提案すると何か思いついた様にハルクがステラを掴んでそのまま外に飛び降りた。
「それを渡したまえスターク」
「いやちょっと所有権とか権利とかその他もろもろ事情がいっぱいあるので無理なんですよピアース理事」
その頃、一階のスタークタワーエントランスではS.H.I.E.L.D.の理事であるピアースとトニー達アベンジャーズが謎の小競り合いをしていた。四次元キューブの処遇を巡って、武力行使とまではいかないが争いになっている。
そのすぐ脇の外のところにハルクが着地した。衝撃でガラスが吹っ飛んでもみくしゃになっていたピアースやトニーやその護衛まですっ転んだ。ステラをハルクが地面に下ろし吠えて周りの人々がびびって逃げ出し始める。
「ハルク! あんまり壊すなって言っただろう! やあそこの君、アタッシュケース確保しててくれてありがとう。さっ理事、今はあれが暴れるとまずいので後でまたという事で」
その拍子に吹っ飛んだアタッシュケースは何処から来たのか覆面をつけた特殊部隊員がしっかりと確保していた。トニーはそれを受け取るとピアースを躱してスタークタワーを後にする。
その後セルヴィグと四次元キューブのアタッシュケースをクインジェットで飛んできたマリア達に預けロキは檻に入れられトニーは全てをやり切った顔で背伸びをした。
「さー今度こそ全部終わったぞ。これでセルヴィグ博士が四次元キューブのケースを作るまで暇になった。さっ皆行こうか」
「どこにいくんだ? スターク」
そこへスティーブが役目を終えて帰ってきた。
「やあキャプテン、救助活動はひと段落ってところかな。言ったろう? ……シャワルマだよ話を聞いてなかったのか?」
「本気かスターク」
「ああ本気だとも今いかないでどうするっていうんだ。むしろ今こそ行くべきだろう?」
なあ? とトニーが周りに同意を求める。
全員が「まあ……いいんじゃない?」みたいな特に否定も肯定もしない状態なのでスティーブもそんな感じになってシャワルマの店に行くことになった。途中でハルクが元に戻ったので道端の商魂逞しく営業している服屋でバナーの衣類を買う。
「ヘイタクシー! なんて無理か」
「今それどころじゃないわよ」
大通りは廃車であふれており撤去の為の車両が端からちょっとずつ障害物を退かしているので使い物にならない。
なので徒歩で行く羽目になった。最初こそ変なテンションで元気よくしていたトニーも徐々にやらかしたなと言わんばかりに疲れ顔になっていくが言い出しっぺなのでやめようとは言えない。
「やあこんにちは。今日やってる? 七人なんだけど」
店内のものが色々吹っ飛んでいるが厨房は無事そうである。店主がなんとも言えない顔をしてから倒れたテーブルを起こして椅子を引っ張り出してきて拭き、なんとか客席の体を作ってそこに皆が座った。
「……それではアベンジャーズ、結成記念と初戦闘記念に食事会といこう、乾杯」
「「「「「「乾杯……」」」」」」
もう乾杯の音頭もテンションが死んでるし乾杯もテンションが死んでいた。店の端にブラックブレードロックキャノンステラの翼ムジョルニアキャプテンの盾バートンの弓と矢筒が雑に置かれてる様は中々にカオスである。
実際トニーが言う通りシャワルマはとても美味しい。グリルされた肉はジューシーで皮も柔らかく野菜もシャキシャキフレッシュだ。
「これ、おいしいね」
「そうだな……」
「ああ……初めて食べたが……うまいな」
「そうだろうそうだとも……それでこそ連れてきた甲斐があるってもんだよ……」
最初は料理の感想なんかで少し盛り上がったが、すぐに沈黙が辺りを支配する。
肘掛にまさしく肘を立ててスティーブが食いながら寝た。
バクバクと食べていたステラもいつのまにかテーブルに突っ伏し食べ終えた後の紙屑に埋もれている。ソーとトニーは黙々とシャワルマを食べ続けバナーも気がついたら行くぞ行くぞ言われ付いてきたので無言で食べている。バートンは背もたれに身を預けぐったりした様子で、シャワルマにセットで付いてきたポテトを貪っていた。
ナターシャはどうするのこの状況と言いたげな顔でアベンジャーズの面々を見回している。
予想外にステラが食べたものの、結構な量を食べる筈のスティーブとバートンがダウンしていたので残さない様、ソーとトニーとバナーは腹十二分目位まで食べる羽目になった。
三人がフードファイトのように食い続ける店内で、店員が割れたガラスを処理する音が静かに店内に響いていた。
「さっ皆注目。今日はここでお開きとしよう。また後日、神様のお見送りに集合することになるだろうから、連絡するウップ。今回の戦い、勝てたのは皆のおかげだ本当にありがとう」
食べ切ったトニーが苦しげな顔で食事会を締める。アベンジャーズの勝利祝いは戦いの時とは打って変わって死ぬほど情けない状態で終わる事となった。
それから少し回復したステラはロックキャノンを抱えて、ロングアイランドの自宅へ帰ることができた。その頃には日が暮れ始めていたが、こちらの方は被害がなく落ち着いた様子であった。
鍵を隠してある植木鉢をズラして取り出していると、家の中から駆けて来る音が聞こえてきた。
玄関が勢いよく開けられ、泣きそうな顔のロスコルが飛び出してきた。
「お父さん、ただいーーー」
ステラをロスコルが抱きしめた。
「大変だったろう……おかえり、ステラ」
「ただいま。大丈夫だよお父さん。痛かったし、辛かったけれど。怖くはなかったよ」
「ステラは優しいからな。こんなボロボロになって……よく頑張ったな」
「一人じゃなかったから」
ステラが微笑んだ。
「そうだな。仲間っていうのは、そういうものだ」
ロスコルも白い歯を見せながら笑った。
「さっステラ、今日は着替えてゆっくり休みな。あとそれはガレージに置いておこう。夕飯はどうする? 今日はハンバーガーひたすら食べてもお父さん許しちゃうぞ」
「ごめんお父さん、みんなで食べてきちゃった」
「そうか良かったじゃないか。何を食べたんだい?」
「シャワルマ」
「シャワルマ?」
「シャワルマ」
ステラとロスコルは笑いあいながら家に入っていくのだった。