MCU『ブラック★ロックシューター』 作:おれちゃん
深夜、惑星直列から暫くしたのち。
時空異常の起きていたロンドン、グリニッジピアから僅か二十五キロ地点のリッチモンド公園の中央、そこで数名の人物がカプセルを中心に電子機器やアンテナのような機械を配置し何かの作業を行なっていた。
その一人はアハズだ。もう一人の男はやけに長いシルクハットを被り、仮面に手袋と皮膚を一切露出しない格好をしていた。
笑い声を上げながらその男がタッチパネルを操作すると、空に亀裂が生じる。ピンク色の光線が砕けた空間から溢れ、一部が周囲の地形や鹿を薙ぎ払って炎上させた。それらが設置されたアンテナに直撃すると電流のように伝いカプセルへと流れ込んでいく。
「なかなか派手だな。リーダー博士」
「あの怪物ほどじゃない、あんな化け物に比べて俺は小綺麗にできるのさ」
閃光を意にも介さずともせず二人は空を見つめている。
やがて破裂するように空間に大穴が開き、そこからピンクの火の玉が飛び出し一帯をその色に染めた。
隕石が落下するようにその火球がカプセルめがけ落下し、爆発のような閃光が発生。その衝撃でアハズもリーダーも吹っ飛ばされ電子機器たちも火花を上げて破損する。
閃光で、より暗闇を深めたような深夜の公園のクレーター中央に残されたカプセルが内側から殴打され歪む。
それを見て笑みを浮かべる男の顔は、緑色をしていて、マスクと共に吹き飛ばされた際に外れたシルクハットの下には異様に長い頭があった。
ガキン、とカプセルの蓋が弾け飛んで、すらりとした足がその姿を現す。淵にかけられた指は細く、起き上がったソレは例えるならアルビノの女豹か。
己の手をくるりと回し手の平から甲までを眺める。
「随分と幼い体だ」
澄んだ高い声が空気を震わせる。
「申し訳ありません。予定と違う事態が発生していたもので、先に体に貴女様を下ろす必要がありました」
「構わない。不満があるわけではないんだ許せ」
アハズが片膝をついてそれに向かって臣下の礼を取る。同じくリーダーもその後ろで礼を取った。
それに柔らかい笑みを浮かべながら立ち上がったその肢体は控えめながらも稀代の彫刻師が彫った女神の如く。
まるでありとあらゆるものを愛するかのような目線は、逆説的にありとあらゆるものに特別はないと知らしめる。
「さてザハ、今は何と名乗っている?」
「
「成る程、単純だがお前らしいな。そちらのは?」
立ち上がり、一矢纏わぬ姿に白髪を貼り付け、のんびりとした歩みでアハズの隣を抜け、その後ろに控えるリーダーの前に立つ。
「……サミュエル・スターンズと申します」
「私の復活に手を貸してくれたこと、感謝しよう。お前は私に何を望む?」
「……とある男を殺したいのです」
「良いだろう」
ツっと頬を撫でられただけで麻薬のような快感をリーダーは感じた。何と危険な存在をこの世界に降臨させたのかと、しかしその明晰な頭脳はある男を殺す為の最短ルートしか示していない。その為にコレは必要だ。
「しかしまだ……その体は完全ではありません。今は雌伏の時」
「構わないさ、もとより暇で暇でしかたなかった。数千年何もできず暇だったならあと十年は暇でも問題はないさ」
それが首を振ると、ピンクの粒子が寄り集まって白い服として再構成されていく。
「なんだ、情報に入ってたものをそのまま再現したが、今のテラの奴らはこういうのを着ているのか?」
「若干特殊ですね。しかしテラも豊かになり様々なものがあります。今はその豊かを楽しむべきでしょう」
アハズがそう提案するとそれは笑みを浮かべた。
「それは良い。それなら私もこちらでの名前が必要だな」
所変わってニューヨーク、日の暮れた街並みをブラックトライクでステラが後ろにロスコルを乗せて走行している。
「いや悪いねステラ、アハズの奴が行方不明になったとかで知り合いの俺とかフォボスとかにもS.H.I.E.L.D.が取り調べをしててね」
「アハズが? 心配」
「あいつはなんだかんだ言ってすごい奴だからきっと大丈夫さ」
「P.S.S.魂ってことかな?」
「そうそうだいたいそれであってる」
「なら、きっと大丈夫」
スロッグスネック橋を渡りながらステラは微笑んだ。
「シング・ラブなんてどうだろうか?」
己の名を決めたそれの顔は、余りにも印象が違うと言うのに、ステラと同じ顔をしていた。