MCU『ブラック★ロックシューター』 作:おれちゃん
ニューヨークのS.H.I.E.L.D.支部。ここはスタークインダストリーとも提携し開発を主体に動く研究施設としての側面が強い支部だ。
ロスコルはここで電子工学関連の一般職員としてカルフォルニアのドラコ基地から異動してきた男である。去年にアハズが姿を消したとのことで元仲間として事情聴取を受けたが、今日はそれ以上の突然のニュースに休憩中に飲んでいたコーラを吹き出した。
「は? 長官が死んだ?? キャプテン・アメリカがなにか証拠を握ってて逃亡??」
「事実です。貴方の娘さんは彼と友好関係だ、何かあれば知らせてください」
「はあ……わかりましたよ」
エージェント・シットウェルの説明を聞いて了承したロスコルは取り敢えず外に出て公衆電話から家に電話した。少しすると家にいたステラが電話をとった。
『ハロー、どちら様ですか?』
「ステラ、俺だお父さんだよ」
『お父さんなら私の好きな食べ物は何でしょう』
「最近はピザも好きだな。もうちょっと健康に気を使ったほうがいいぞ昼なに食べようとしてる?」
『どうしたのお父さん。お弁当忘れた?』
「いや忘れてない。そうじゃなくて、誰か家に来てないか?」
『ううん、今プライマリーエデュケーションの自習してるけど誰も来ないよ』
「誰か来ても、お父さんに伝えちゃダメだぞ。でもステラがおかしいと思ったらお父さんに電話してくれ」
『ん、わかった』
ロスコルは息を吐いてそのままS.H.I.E.L.D.の職場に戻り、その日の仕事を終わらせて帰路に就いた。なんだか物の配置とか衣服が減っている気がしたが気のせいと言うことにした。
事態が一変したのは数日後、昼前に弁当を忘れていることに気付いた時だ。水で腹を膨らませて誤魔化すかとロスコルが水をがぶ飲みしていると突如職場のスピーカーが起動したのだ。
『S.H.I.E.L.D.の諸君聞いてくれ。スティーブ・ロジャースだ』
ロスコルは水を吹き出した。
『僕の事は耳にしているだろう。僕を捕らえる命令も出ているだろう。だが真実を知ってくれ……S.H.I.E.L.D.は変わってしまった。ヒドラに乗っ取られているんだ。アレクサンダー・ピアースがリーダー、S.T.R.I.K.E.チームとインサイトのクルーもヒドラだ。他にも何人も、隣にいるかもしれない。奴らはS.H.I.E.L.D.を完全に支配した!』
ロスコルを含め全員が周りを見渡す。聞く限りはワシントンD.C.本部の通信がニューヨーク支部にまで届いているのだろうが、ならば危険だ。ここはヘリキャリアの推力や武装なども開発した、最新の武器の研究などもしているのだから。
『ヒューリーをも撃った。それだけじゃない、ヘリキャリアが打ち上げられたらヒドラは邪魔者を自由自在に殺せる力を得る。僕らで止めるんだ。簡単ではないだろう、自由の代償は高い。常にそうだった。……だが払う価値はある。僕一人でも立ち向かうが、一人ではないと信じる』
演説が終わった瞬間一人が天井に向け銃を発砲した。
「お前らここから出ろ‼︎」
そいつはロスコルとは親しくはなかったが、ロスコルよりかなりの古株で人望のある男だった筈だ。
「何故?」
「ヒドラの為に」
警備員が銃を抜こうとした瞬間逆に撃たれた。悟った。インサイト計画とは別にここの施設の研究成果を狙っていると。
「おい、ロックを開けろ」
「……嫌だね」
保管庫へアクセス権限を持つ主任に銃口が向けられている。いつも情けなくペコペコしている主任が、鋭い眼光のまま要求を跳ね除けた。
助けなければ、とロスコルが目の前のパソコンから離れて席を立った。が、頭にゴリ、と硬いものが押しつけられる。隣の同僚がいつの間にか拳銃を持ち、ロスコルに銃を向けていたのだ。
「席を立つな。同僚のよしみだ殺さないでやる」
「……そうかい」
ロスコルが一瞬でその銃を奪い取り顔面を殴打。倒れた男の胸を思い切り踏みつけ気絶させる。そこからニューヨーク支部は銃撃戦に発展した。
「おらP.S.S.魂‼︎」
右ストレートを叩き込んで窓を突き破って敵を倒す。
一般職員が多数の中、元P.S.S.メンバーであるロスコルが主体になってヒドラメンバー達を制圧していく。P.S.S.は解散したとはいえ元はS.T.R.I.K.E.に並び称された精鋭チーム、そこに所属していたロスコルが並の戦闘員に負けるはずもない。
構築したバリケードの裏から敵を撃ち敵の攻撃からはバリケードで身を隠す。
一緒にその場を支える警備の奴が思わず嘆息した。
「いやあんた情けない奴だと思ってたけどすげえな」
「衰えたわもう息あがってる勘弁してくれ……誰か戦車持ってきて」
流石に実戦から二年以上離れているので衰えがある。ステラの無茶苦茶について行くために身体トレーニングを欠かさなかったのは吉と出ているが実戦離れは如何ともし難かった。
バリケードを作って職員を逃しつつ弱音を吐いていたら、外からキャタピラの音が聞こえてくる。どう見ても味方のそれではない。
ビルの外から砲塔がロスコル達を覗いていた。
「「戦車だーーーっ⁉︎」」
ロスコルと味方警備員が叫んでバリケードから逃げるとそこに戦車砲が打ち込まれ爆発してバリケードが破壊される。ついでにクインジェットまできた。降りてくる奴ら、インサイト計画の格好をしてるのでどう見ても敵である。
「くっそ奥まで後退‼︎ おい業務提携でスタークインダストリーの社員いるんだろ⁉︎ 誰か社長に電話しろアイアンマン呼んでこい!」
アイアンマンのいるであろうアベンジャーズタワーからはそこそこ離れているので向こうが気付いて来てくれるというのは希望的観測が過ぎ、あの人数に打ち勝つのは無理がある。
籠城して援軍が来るまで時間稼ぎするしかないとロスコルが撤退しようとした時、突如進行してきていた奴らが向きを変えてそちらに銃を撃ち始めた。
そして猛烈なエンジン音が迫ってきて、何人かが撥ねられた。
撥ねたのは黒い光沢に特徴的なフロントカウルをした大型リバーストライク。その名をブラックトライクで。乗っているのは当然、ステラだ。
そのままガシャコンとフロントカウルの装甲を動かして機関銃を動かしクインジェットを蜂の巣にして墜落させた。トニーが改良してくれたものでオミットされていた機能を復活させたのだ。
そのステラに向け戦車が発砲したがステラがブラックブレードを振ると砲弾が真っ二つになってステラの背後の建物をぶっ壊し、走り出したステラから後退しながら逃げる戦車の砲塔を切り落としキャタピラも切りセンサーも切りダルマにしたところでハッチをこじ開けて中にいる奴らを引っ張り出して放り投げた。地面に落っこちたヒドラの三人はその場で腰を抜かして動けなくなっている。
形勢が逆転したことに気付いたヒドラが建物から撤退しようとする。廊下を走っていたヒドラ構成員が何かに足を引っ掛けてこけた。見るとピアノ線が見えにくく張られている、そしてこけた先の死角にはS.H.I.E.L.D.職員達が角材やら鍋やらパソコンやらを持ってスタンバイしていた。ヒドラはボコボコにぶん殴られた。
そんな事がニューヨーク支部内で多発し、逃げようとするヒドラをロスコルが拳でぶん殴り一般職員がその辺にあった植木鉢でぶん殴り警備員が警棒でぶん殴り制圧する。
犠牲も出たがヒドラを全て制圧したニューヨーク支部で勝鬨が上がる。そんな中、ロスコルがブラックトライク脇で職員達の輪に感謝されまくってるのを割っていってステラに話しかける。
「ステラ、どうしてここに?」
「お弁当、忘れてる。はいこれ」
「あ、ありがとうステラお弁当忘れて困ってたんだ。いやそれどころじゃなくて……インサイト計画!」
上空に豆粒くらいのヘリキャリアが三機浮かんでいるが、それぞれが突如互いを撃ち合い、高度を下げ墜落していくのが見える。ついでにネットではS.H.I.E.L.D.の情報がばら撒かれ大騒ぎになっているのが確認できニューヨーク支部前にも野次馬が結構集まってきていた。だるまにされている戦車や墜落したクインジェットが広場前にあるというのに根性がたくましい。むしろあるから集まってしまっているのだろうか。
ニューヨーク支部のヒドラメンバーはとりあえず全員が制圧され研究成果も無事守り抜くことができた。特にスタークインダストリーからの出向者が全員無事だったのは大きい。
ステラとロスコルはガラスの破片やら散らばった書類やらでぐちゃぐちゃになった屋内から出て、ブラックトライクを駐車場にちゃんと止めてそこで食事を取ることにした。
少しして、ドカンとアベンジャーズタワーから飛んできた人物がカッコよく着地する。
「やあどういう状況かな」
「あースタークさん……なんかうちの組織もうダメそうな感じなので再雇用してもらって良いですか」
「歓迎しよう。ところでその混ざり合った何かの箱はなんだいシェパード君?」
「あー、ステラがお弁当持ってきてくれたんですが……」
「ごめんなさいお父さん」
「いやステラは悪くない。全部ヒドラとかいう奴らが悪い」
警察が中に突入したりヒドラメンバーをパトカーに詰め込んで大騒ぎになっている中、外の駐車場に移動してきたブラックトライクに腰掛けながらロスコルが弁当を食べていた。ステラもその脇でハンバーガーを食べている。
ロスコルがトニーに就活したら即時オッケーが出たので次の職場が決まったが、とてつもなくコネ入社である。しかも情けないことに娘のコネなので安堵すると同時にロスコルは遠い目をすることになった。