MCU『ブラック★ロックシューター』 作:おれちゃん
本日これの前に二話ございますお気をつけ下さい
「ストラッカーが殺された」
「なんだこの……悪趣味なバンクシーは? 僕らを煽るためにこんな事を?」
アベンジャーズタワーで、数日間情報収集をしていた一同に新たな情報が入った。例の双子がウルトロンに従っている以上、何かストラッカー経由の情報を封じる為の処置と考えられ、ナターシャがストラッカー関連の情報が消されている事を突き止めそれが正しい事を裏付ける。
消されてしまってはどうしようもない、と言いたいところだがここで元ヒドラ故の秘密主義が役に立った。ハッキングのリスクから結構な量の情報が紙でやり取りされていたのだ。
ロスコルがアベンジャーズに混ざり紙の資料を片っ端から漁っていく。ステラはというとロスコルに「そういう時に手伝いができるよう、ステラはハイスクールの自習をしっかりやるんだよ」と言われたので素直に自習中である。ただ何かあってもいいように傍に刀と大砲を置いて服も戦闘装束というかなり物騒な自習だ。
「超人クローン兵士計画……ヒドラは趣味の悪い事を考えるもんだ。何々? 代替合金の開発……? まったソイツ!」
トニーが資料を見て思案していた時、バナーが取り出した資料の中に見知った顔があった。世界を変える品があるだの、当時は気にも止めはしなかったが、もし関連するなら嫌な予感がする。
「この焼印……ワカナ……ワカンダの言葉で泥棒って意味らしい。正確にはキャプテンが説教するようなもっと汚い言葉」
バナーが調べればそれはワカンダというアフリカの奥地の国の言葉らしい。
全員がスティーブの方を見た。
「もう勘弁してくれ……だが、ワカンダという事は君の父と同じく?」
「ああ、その可能性が高い」
「待って、何があるっていうの?」
トニーが視線を移す。その先にあるものは彼の父、ハワード・スタークが作った星条旗を模した盾。
「……地上最強の金属」
クインジェットに全員が装備を整えて乗り込む。マリアとロスコルに見送られてアベンジャーズはジェットに乗り、タワーを後にした。
「作戦会議と行こう、僕とキャプテンとソーで先ずは正面から乗り込む目立っていくぞピカピカしていけ? バートンとナターシャは裏からこっそり乗り込む目立つなよこっそりだ。バナーとステラはジェットで待機だな。二人とも本気で暴れるとタンカーが木っ端微塵になるからな。木っ端微塵にするときは連絡するからよろしく」
「わかった」
そういうとトニーがボックスを開く。中には色々な料理がパックに詰められていた。
「では腹が減っては戦はできぬ、という事で食事にしよう。バートン、食べ終わったら運転交代だ少し待っててくれ」
「かまわんよ。ゆっくり食ってくれ」
ステラがハンバーガーに伸ばそうとした手が掴まれた。掴んだのはナターシャである。ステラがびっくりしているとナターシャがいい笑顔をしながら口を開いた。
「ステラ、ハンバーガーばかり食べるのは駄目よ。貴女好き嫌いが無いのは美点だけれど、好きだけ食べるのも立派な偏食よ?」
「おっとペッパーに続き第二のママか? ママが怒ると怖いぞステラ、従ったほうがいい」
「そうだなステラ、俺も幼き頃は母上が口をすっぱくする程注意されたものだ」
「ん……ごめんなさい」
ステラが少ししょんぼりしながらサラダセットとサンドイッチを手に取って食べ始めた。
「なら、ハンバーガーは僕が頂こう」
「キャプテンがハンバーガー食べるのはすごくこう……アメリカ的だな」
「確かに」
そうして包装を開けて口に運ぼうとしたスティーブとステラの目が合う。いや正確にはステラの視線がハンバーガーに注がれている。試しにハンバーガーを横に動かすとそっちに視線がずれていく。
「……ステラ、一口食べるか?」
「スティーブ?」
じっとりとナターシャがスティーブを見つめるが、スティーブは苦笑しながらステラの方へハンバーガーを差し出した。パクリとステラが一口食べて嬉しそうにしている。三年前は本当に表情があるのか怪しかったが、わかりにくいが今ではかなり表情が豊かになった。
「まあ待て、一口くらいなら良いだろう? 代わりにステラ、そっちのサンドイッチを一切れもらって良いかな?」
「いいよ。はい」
ステラが渡したサンドイッチとハンバーガーの二刀流というちょっと面白い状態にトニーが笑う。
「孫にせがまれる祖父って感じだ。これじゃキャプテン・お爺ちゃんだな」
「年齢的に否定できないな。むしろ曾祖父まである」
「キャプテン笑わせないでくれ」
「おいバナー笑って変身するんじゃないぞ。お前を突き落とさないといけなくなる」
そんな風に、一時とはいえ和やかな雰囲気がアベンジャーズの中に流れた。
そうして目的地につき、ジェットを着陸させるとハッチを開けアベンジャーズが出発していく。ステラとバナーは機内でお留守番である。
ステラが腰の翼を支えに座った姿勢をとっていて、その近くにバナーが座る。しばらくの間何も喋らずボーとしていた。
「みんなは大丈夫だろうか?」
「大丈夫」
「……そう言えば聞きそびれてたな。ステラ、僕とハルクが一緒って、どういう事だい?」
「?」
ステラがバナーの問いに首を傾げる。
「あーそうだな。もっと具体的に頼むよ」
「ん、ハルクは仲間を大切にしてくれる。バナーは仲間が大切だよね?」
「ああ、大切だ」
「バナーの大切なものはハルクにとっても大切なもの。バナーがされて嫌な事は、ハルクも嫌だ」
ステラの話を聞くうちに、バナーが立ち上がる。ステラが嘘を言うとは思えない。だが自分を信じることができず、悩みがそのままに反映されたようにその場を右往左往していた。
その様子にステラも立ち上がり、バナーの前に来ると左手を軽く挙げた。それを怪訝に思ったバナーだが、自然と左手が上がり、パチンと軽くハイタッチをした。ジンジンと甘い痺れが溶けていく左手を見つめていると、ステラが微笑んだ。
「ね?」
「あ、ああ」
バナーがぎこちなく微笑んだ時、突如通信機がノイズを吐き出した。
「なんだ?」
『気を付けろ精神感応……能力者がいる。人間では払い退け……』
「どうしたんだ? 僕たちの出番か?」
『バナー……ステラと一……機内に隠れてろ』
ノイズが激しく、通信の内容が読み取れない。
「わたしが出てみる。バナーはまってて」
「気をつけて、ステラ」
ハッチを開けてステラが外に出る。戦闘音が遠くから聞こえてくるがそこまで激しいものではない。
すると突如ステラが何かに吹っ飛ばされ宙を舞った。
「ステラ!」
慌ててバナーが飛び出すと次の瞬間、ステラが刺しつらぬかれ、鮮血が飛び散る。そこにいたのはタワーで見たあの醜悪なガラクタ、ウルトロンだ。溶けた顔の部分がと目が合い、それがバナーを笑うかのように光を明滅させる。血を撒き散らしながらステラを連れ去り、それに続くように同じガラクタ複数体が編隊飛行で追従していく。その編隊の中央には血を流しぐったりとしたナターシャの姿があった。
バナーが駆け出す。博士ゆえにスティーブやバートンのようにはいかない無様な走り。
バナーの心拍数が跳ね上がる。支配するのは、怒りだ。
「ふざけるなふざけるなふざけるな!!! 返せ! 返せ返せ!! ナターシャを返せええええええええ!!! ステラを返せええええええええ!!!」
言葉はやがて野太い咆哮に変わる。駆ける足は風より速く、それでもウルトロンには追いつけない。
目の前に立ちはだかるガラクタを緑に肥大化した拳で全力で殴り飛ばし、バナーはハルクとなってウルトロンを追いかけた。
「さて、あとは貴女だけ」
「……どうして? ……こんなこと」
地面をえぐってバウンドしたような跡の先、折れた木の根本にぐったりと背を預けたステラの前に例の双子、ワンダが現れた。
ハルクの怒りに呑まれた一撃は今までで最強の一撃と言っても過言ではなかった。流石のステラでさえしばらく動くこともままならないほどのダメージを受けていた。
魔女、ワンダ・マキシモフが顔を顰める。ステラの心を読んだのだ。まるで春の日差しを思わせる穏やかであたたかな心。その中にはアベンジャーズの面々が、ステラが出会った人々が、トニー・スタークが居る。ワンダは思わず、嫉妬してしまったのだ。同じトニー・スタークとの関わりだと言うのに、この差はなんなのだと。
記憶を読めばわかる。この少女も自分たちと同じ実験動物。なのにこの違いはなんなのだと。
「……トニー・スタークが憎いからよ」
「……ごめんなさい」
精神感応を使い、悪夢を見せる。これでここでの仕事は終わりだ。心配そうな顔をするピエトロと共にワンダはそこから姿を消した。
「……貴女が謝らないでよ」
倒れたステラにそう言い残して。