MCU『ブラック★ロックシューター』 作:おれちゃん
誤字報告誠にありがとうございます
真っ暗で、灯りもない。
此処には誰もいない、そんな道をただひたすら誰かを探しステラは歩き続ける。地平線の彼方に、小さな光が見えた。
それをステラは追いかけて追いかけて追いかけて追いかけて追いかけて追いかけ続け、ようやく距離が縮まる。
その背中は見慣れたものだ。
ロスコルの背中だ。会えた。やっと会えた。一人じゃなかった。駆け寄りその肩に手を触れた瞬間、ロスコルが崩れる。
崩れた砂は暗闇に溶けて消えてしまう。消えないよう必死に握り締めても手のひらから溢れ落ちる。
また、誰かがいる。あの特徴的な盾は、スティーブだ。彼へステラが手を伸ばすと、また、スティーブが崩れる。
誰かがいる。
トニーが崩れる。
誰かが、
バナーが崩れる。
誰、
ナターシャが崩れる。
バートンが崩れる。
ソーが崩れる。
ペッパーがマリアがフォボスがフューリーがローディがサミュエルがシズがフランクがギブソンがあの子があの人が彼が彼女が人が人が人が人が人が人が人が人が。
此処にはもう誰もいない。ステラ一人だ。
誰か、誰かと駆け回る。足がもつれて転んだ。足首から先が解れて消えている。体を支えていた手も消えて真っ暗闇にただ一人倒れ伏す。
目を瞑れば、ステラ自身の全ても消えていくようだった。
もう誰もいない真っ暗闇。そんな時間がどれほどすぎたかわからなくなった頃。何も無い体に熱が伝わる。温かい。
薄ら開かれた瞳の先、己の手が淡く光を放っていた。
ステラの視界が開ける。まぶたが持ち上がり木造の天井が目に入る。クインジェットの中では無い。アベンジャーズタワーでも自宅でも無い。ステラは仰向けにベッドに寝かされていた。右手に感じた熱に、右へ首を傾ければ、バナーとナターシャがステラの手を握って、椅子に寄り添って眠っていた。
ゆっくりと起きたステラは握られたままの二人の手を左手で包む。ツ、とステラの頬を涙が伝った。ギュッと二人の手を握っていると、ナターシャが目を覚ました。
「……ステラ、良かった目を覚ましたのね?」
バナーを揺すって彼も目を覚ます。
「……やあステラ……その、ごめん」
「大丈夫、バナーは悪いことしてない。ねえナターシャ、ちょっといい?」
「どうしたの?」
そう言いながらベッドから出たステラはナターシャを抱きしめた。ギューと十秒程そうしていると、次はバナーにも同じようにギュッと十秒程抱きしめる。戸惑っているようでナターシャの顔を見れば、そのままにしてあげなさいとナターシャは小さく頷く。
「あら? ステラは甘えん坊さんね?」
「ダメ?」
「ううんむしろウェルカム。ね、ブルース」
「ああまあ……そうだね」
そこへ私服を着たバートンがやって来てステラを見ると嬉しそうにははにかんだ。
「お、目が覚めたか。安心したよ。ここは俺の家だ、ゆっくりくつろいでてくれ」
バートンの下の扉の影から子供が二人、ステラの方を覗き込んでいた。
「ライラにクーパーだ。俺の愛しの子供達。ステラ、仲良くしてやってくれ」
「こんにちは」
「こんにちわー」
ステラはバートンの方へやってくると、彼の子供二人が挨拶をする。
「ライラ、クーパー、私はステラ。よろしくね」
ステラの微笑みにライラとクーパーは少し恥ずかしげにしていた。
「バートン」
「なんだステラ……どうした?」
「なんとなく」
バートンもギュッと抱きしめてからステラはその場を離れていく。
「どうしたんだ? ステラの奴」
「分からないけれど……彼女も私達と同じ、見せられたものを乗り越えようとしてるんだと思うわ」
バートンがその場を後にすれば、ローラが憂いを帯びた顔をしていた。心配そうに理由を聞けば、ステラのことだという。
「あんなに幼いのに、アベンジャーズだなんて。あの子にももっと違う道があるはずなのに」
「幼い? ステラが?」
「わかりやすいじゃない。私から見れば十歳位の子供と同じようにしか見えないわよ」
バートンがステラの様子を見てみるが、今までのヒーローとしての働きが色眼鏡になっているのか、そうは見えない。そういう意味でローラの目線は正しいのかもしれない。単純な戦闘力だけで見ればバートンは敵わない。あの華奢な見た目で雷神ソーに準ずる腕力を持っているのだから前に腕相撲をして余裕で負けたのは少し苦い思い出だ。
「ブルースとナターシャのことも気付いてなかったホークアイちゃんには仕方ないことね?」
「それを言われると弱いな」
バートンはそう言いながらローラの額にキスをした。
「秘密主義のメンバーもいるが……ソーは違うと思ってたんだがな」
「まぁ、時間をやれよどんな悪夢を見せられたことやら……」
「最強のヒーロー達が、これほど簡単にダメージを……」
「君は平気だったみたいだな」
「……悪いか?」
「暗い面を持たない人間は信用できない」
「……見せてないだけだ」
薪を割りながらトニーとスティーブがそんな話をしていると、ステラが家から出てきた。トニーもスティーブも思わず安堵の笑みをうかべている。
「ステラ、良かった眠り姫みたいに王子様のキッスは要らなかったみたいだな。いや僕はやるつもりはなかったがねロスコルに下克上されてしまうからね」
ステラが駆け寄ってきたので斧を台に刺してそんなことを言っていると、トニーにもギューっとステラが抱きついた。
「ステラ? 待ったちょっと苦しいぞ万力か?」
「あ、ごめんなさい」
トニーから離れたステラがスティーブの方を見て、スティーブは小さく嘆息して微笑み、両手を広げた。
「ステラ、おいで。僕は超人兵士だからね、思いっきり抱きしめても構わないさ、スタークと違って頑丈だ」
トニーが肩を竦める。その脇でステラが飛びつくようにスティーブに抱きついた。ギュウ、と抱きしめる力にスティーブの肉体がメキメキとちょっと嫌な音がしていてトニーがオイオイオイと言った顔をしたが、抱きしめているステラの頬を涙が伝っている事に気づき、真顔になる。
「……僕たちは戦いを終わらせて家に帰らないといけない、だからウルトロンのようなものが必要なんだ」
「スターク? 言ったろう、先走れば罪なき者が死ぬ」
「……その顔を見て先走れないほど、僕は薄情者にも心まで鉄男にしたつもりはない」
ちょっとスティーブでも苦しいくらいに抱きしめてくる顔をよく見る。ステラが泣いている姿など、スティーブは初めて見た。
スティーブが体を回して、ステラを間に挟みトニーとスティーブが互いに苦い顔をする。どちらも間違った事は言っていない。それ故に平行線なのだ。
ステラが満足したのかスティーブから離れた頃には、どこか清々しい感じの顔をしているが、男二人は苦い気持ちが抜けずにいた。
「わたし、怖いものなんてない、痛くても辛くても我慢できると思ってた」
そんな二人の間でステラが口を開いた。
「でも、我慢できたのはわたしの力じゃなくて、みんなのお陰。ロスコルが、スティーブが、トニーが、ナターシャが、バナーが、バートンが、ソーが、マリアがみんなが一緒だから、わたしはここにいられる」
ステラがしているのは、宣言だ。
「だからアベンジャーズを全滅させるなんて、絶対にさせない」
「ああ、絶対にウルトロンを止めよう」
「そうだな……今はまずそれに専念するしか無いか」
「そういえば、ソーは?」
「どこかに飛んでいった。ハグはまた今度にしておくといい」
そこへローラがやってきた。トニーにトラクターを直して欲しいとのことで、その場を後にする。ステラはトニーに代わって薪割りをする事にした。
「……何をやってるんだ?」
「やあフューリー、トレーニングのついでって所だな」
「フューリーおはよう」
途中からスティーブと一緒に斧を使わずに薪を割り始めていたらトニーがフューリーを伴ってやってきて、呆れられるのだった。