MCU『ブラック★ロックシューター』   作:おれちゃん

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ヴィジョン

「ウルトロンは世界を救う事と滅ぼす事を混同しているの、創造主のスタークが似たような状態の筈よ」

「そりゃ怖い」

「もしそうなら、止めないといけないな」

「待って、トニーは滅ぼそうとなんてしないよ、そんな筈ない」

「いいやステラ、スタークの先走りを止めるだけだ。大丈夫スタークも言えばわかってくれる。ステラは黙って見ていてくれ」

 

 夜になりケネディ空港に到着した一行は人目を避けつつアベンジャーズタワーを目指す。夜だと言うのに一階エントランスはマスコミでごった返していたのでそれを避け中に入る。

 そこではクレイドルが機器に接続され、バナーとトニーが何かを行なっている所だった。

 

「あと三分でマトリクスのアップロードを開始しないと」

「一回しか言わないぞ」

 

 スティーブが姿を表す。トニーはスティーブが言おうすることがわかっていた。

 

「ゼロ回で良い」

「中止しろ!」

「いやお断り」

「わかってやっているのか?」

 

 それはウルトロンの作った危険物という事を忘れているのかとの問いだ。バナーにもトニーにもそれは十二分にわかっている事で反論のしようがない代物で、だから違う切り口から返すしかない。

 

「君はどうなんだ? 操られていないのか?」

 

 バナーがスティーブの後から入ってきたワンダを見て語気を強める。

 最後に入ってきたステラを見てバナーは笑みを作った。目は全く持って笑っていないが。

 

「成る程? 今度は僕じゃ無くてステラ達を操って同士討ちさせるつもりか?」

「怒るのは仕方ないけれど」

 

 ワンダの言葉を聞いて能面のような顔になったバナーが淡々と口を開く。

 

「怒る? それどころじゃないな。視線だけで刺殺できそうな気さえしてくるよ。今すぐ絞め殺してやりたいくらいだよ」

「バナー、あんな事があって」

「これから起こることを防ぐ為だ!」

 

 トニーが怒鳴る。最悪の未来を回避する為なら今のトニーはどんな事でもするつもりだった。

 

「何もわかってないくせに!!」

「これは遊びじゃない」

「その中の生き物は死神よ!」

「お前はすっこんでたまえどう言うつもりか知らないが君は敵だろう⁉︎ キャプテンも! なぜそれの言う事を信じる?」

 

 言い合いの中でステラが目を伏せる。ウルトロンの言葉が頭の中で再生される『仲間などと言う不確かなもの、仲間同士敵対したらどうするつもりだ?』と。今は敵対なんてほどではないけれども、起きない保証がないと言う事をステラはわかっていなかった。小さな諍いこそあったものの、ここまでの事を一度も経験していなかったことが、ステラの仲間に対する感覚を悪い意味で無垢にしてしまっていた。

 問答に出口がなく時間稼ぎをされてしまっていると感じたピエトロが高速移動で電源類を引き抜き場が固まる。

 

「いいよ? 続けて? で何?」

 

 戯けるピエトロの足元のガラスが割れ下側に転落。下にはバートンが待機していて、足を踏んづけてピエトロを押さえつける。

 

「速すぎて見えなかった?」

「ピエトロ!」

 

 飛び出そうとしたワンダの足にワイヤーが絡まり転倒、その背中に足を置いてナターシャが銃を構えた。

 

「ご機嫌よう? 魔女さん」

 

 警報音が鳴り響く中トニーとバナーがなんとかクレイドルを再起動させようと動くのをスティーブが盾を投げ機械類を破壊して妨害し、アーマーのパーツを装着したトニーがリパルサーでスティーブを吹き飛ばす。ステラが目と耳を塞いでしゃがみ込みそうになり、頭を振った。

 ワンダのサイコキネシスで銃を取られ吹っ飛ばされたナターシャに変わりバナーがワンダに組みつく。

 アーマーを部分的に装着したトニーとそれに殴りかかるスティーブの間にステラが割って入ると、当てまいと急停止した二人を掴んで床に押し倒す。

 

「……お願い……喧嘩しないで!」

「悪いな退いてくれ今は急がないといけないんだ頼む……!」

「ううっ……! あっ」

 

 泣きそうなステラの顔に硬直してしまうスティーブと対照にトニーは加速する。必死の懇願に手が緩んだ所をアーマーを脱いで抜け出し、立ち上がったトニーが見たのは乱入してきたソーだ。クレイドルの上に乗ってムジョルニアを掲げ、雷を纏う。止めようにも、アーマーを脱いで抜け出してしまった為手段がトニーにはない。

 

「やめろ!」

 

 バナーが制止するも聞く耳を持たないソーは雷をクレイドルに叩きつける。電源が落ち止まっていた進行状況がソーの雷を受けて急速に完了を示した。

 雷鳴の轟音の後の静けさの中で、クレイドルが内から破裂しソーが倒れる。

 クレイドルという蛹を突き破り羽化したそれは赤いアンドロイド、それはキョロキョロとあたりを見回している。状況を理解していないような落ち着きのない動きだった。

 起き上がったスティーブやステラ、その場の皆がその存在の一挙一動に注目している。

 ソーに突如飛びかかった赤いのが受け流されガラスを粉砕しテラスの方へすっ飛んでいく、あわやテラスのガラスまで突き破り落下するかと思われたが、その手前空中で突如静止。

 その瞳はテラス先に広がるニューヨークの夜景を見つめていた。光る全てが、遍く人の営みをあかいそれに見せつけ、それを慈しむように目を細めた。

 スティーブが盾を装備し直し構えるが、ソーがそれを制する。ムジョルニアを置き、それに近づいて行く。皆がテラス側に集まりことの成り行きを見守っている。

 青い着衣を構成しながら床に降りてきたそれが口を開く。

 

「すいません、とても……不思議で。ありがとうソー」

 

 ソーに礼を言いながらマントが構成され、ふわりとはためく。

 

「ソー、なぜ手を貸したんだ?」

「あるビジョンを見た。大きな渦が希望を飲み込む。その中心にこれがあった」

 

 ソーが指差す先には"ヴィジョン"の額に収まる黄色の石があった。

 

「この石は?」

「マインド・ストーンだ。六つあるインフィニティ・ストーンの一つ、全てを破壊する比類なき力を持つ」

「なぜそんなものに」

「スタークは正しい」

「それは……まさに世も末って感じだ」

「我々ではウルトロンに勝てない」

「バラバラではね」

 

 ステラが不安そうにみんなの顔を見回した。

 スティーブがハッと気づく。

 

「このアンドロイド、J.A.R.V.I.S.の声だぞ」

「ああ、J.A.R.V.I.S.のマトリクスを組み直して、新しいものを作った」

「新しいものはもうたくさんだ」

「そんなジジくさいこと言わないで」

「あなたはJ.A.R.V.I.S.なの?」

「いえ違います。J.A.R.V.I.S.ではない。ウルトロンでもない。私は私、ヴィジョンです」

 

 しかし皆、ヴィジョンに対する疑念が尽きる様子がない。その体はウルトロンが生み出したもので、その心は死んだはずのJ.A.R.V.I.S.を組み直したもの、そしてそれを成したのはウルトロンの前科のあるトニーだ。

 ソーがマインド・ストーンの有用性とそれの利用を提案するが、それは四次元キューブを転用しようとしたS.H.I.E.L.D.と同じ発想で、スティーブは苦い顔をした。

 

「ウルトロン、彼を殺したくはない。彼は特別だ。そして苦しんでいる。だがその苦しみは世界を滅ぼす」

「そのウルトロンはどこにいるんだ」

「……ソコヴィア」

 

 ワンダがそう答える。

 

「問題は君だヴィジョン。君は僕たちの味方なのか? それとも僕たちがまた生み出してしまった怪物なのか?」

 

 バナーは問う。怪物なのかと。

 

「敵か、味方か。事はそう単純ではありません。私はただ命の味方です。あなた達が殺戮者ならば、私は敵でしょう。ですが守る者なら、私はあなた達の味方です。ですが私はあなた達の意図通りに生み出せてはいない。ゆえに私は怪物かもしれない、でも私自身にはわからない事です」

 

 ヴィジョンがステラの前に立つ。少しの間、互いに見つめあった。

 

「それを。大丈夫、みんな互いの為を思っているだけですよ」

 

 ステラは差し出された手を見て、後ろを見る。そしてそこにあったものをヴィジョンに渡した。

 

「ありがとうステラ。皆さん。私は……あなた方が望んだものではない。だから信じてもらえないかもしれないでしょうが……止める為、行かなければ」

 

 ヴィジョンがソーにムジョルニアを差し出した。マキシモフ兄妹を除いた全員が呆気にとられたが、これ以上ない信頼を得ることとなった。

 ソーはハンマーを受け取った後、ステラを二度見した。

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