MCU『ブラック★ロックシューター』 作:おれちゃん
‐機密エリア‐
ブラックトライクが土煙を上げながら走っている。通話が届き、電話に出た。
ブラックトライクには両サイドに大きいトランクが備えられているがそれを難なく操りでこぼこした土の道を容易く走破していく。
「どうしたのお父さん」
『ちゃんとハンバーガー以外食べてるか? 寂しくなったらすぐに帰ってくるんだぞ』
「ありがとう、でも大丈夫。わたしは少し、この世界を見てみたいの」
『ステラなら、色々見ることができるさ。気を付けろよ』
「うんお父さん。最初に、遊びに来てって言われてたところがあるの」
ステラが電話を切り目的地に到着してバイクを停車させる。
「いらっしゃいステラ!」
そこではナターシャが手を振っていた。バナーもエプロン姿で姿を現す。
「やあステラ、ようこそわが家へ」
「バートンから可愛らしい動画が送られてきたの、見てみる?」
「うん、見るよ!」
バイクを止めてヘルメットを外すと、左右非対称になったツインテールを揺らしながらステラは二人の元へ駆け出した。
-ニューヨーク北部、新たなるアベンジャーズ施設-
高級車を走らせトニーが向かうのは元スタークインダストリーの倉庫、そして現アベンジャーズの本拠地だ。多くの人員が配置され、最新鋭のクインジェットも複数機が用意されている。
内部も考えられる限りの最高の環境。世界のあらゆる危機に対抗する為あらゆる対抗策を考える事を可能とする天才達が鎬を削り合う。そこにはセルヴィグ博士やチョウ博士の姿もあった。
「ルール変更か?」「新しい展開だ」
「ヴィジョンはいわゆる人工知能だろう?」「マシンだ」
「数には入らない」
「ハンマーを持ち上げた人間とは言えない」
「良い奴だがマシーンだ」
トニーとスティーブがヴィジョンがハンマーを持ち上げたことについてのお喋りをしている。ヴィジョンが影になってステラが持った事は二人には見えていなかった。
「ハンマーを持てるならマインドストーンを預けられる。彼のところに有れば安全だ。近頃安全は貴重だからな」
「……エレベーターにハンマーを乗せたって?」「持ち上がる」
「エレベーターはふさわしいか?」
「僕の車にも乗せられるぞ。ふさわしいか?」
ハンマー談議を遮るようにソーがトニーの方に手を置いて労わる。
「ずっとお喋りしていたいが……」
「なら行くなよ……」
ソーは優しげな笑みを浮かべて首を横に振る。
「マインド・ストーンを含め四つのインフィニティ・ストーンが続けて現れた。誰かが我々を駒にしてゲームをしてるに違いない。全てのピースが揃ったら……」
「ゲームセット?」
「謎を解けると思うか?」
ソーがトニーの胸元をポンと叩いた。
「ああ、こいつに比べればどんな謎も可愛いもんだ」
頷き、ハンマーを掲げたソーを光の本流が包み込む。そこにはもうソーの姿はなく、焼かれた芝生に幾何学模様が残されているのみだ。
「全く、芝刈りの苦労をわかってないなあいつは」
その場に背を向け二人は歩き出す。
「寂しくなるよ。僕がいなくても泣くんじゃないぞ」
「ああ、寂しくなる」
それに感心したようにトニーがちいさくこえをあげると、自動運転されたスポーツカーがやってくる。
「さて、退場の時間だ。バートンやバナーみたいに家族サービスしないとね。ペッパーに農場を作る……爆破されないと良いが」
「のんびりするのか?」
「君もそうしろ。ステラだってそうした」
「どうかな? 家族とか、安定とか、そう言うものを求めてた男は氷に埋もれたよ。出てきたのは別人だ」
トニーが車のドアを開く。
「大丈夫か?」
「ここが家だ」
少し不安そうに、笑みを浮かべてトニーは車に乗った。
アベンジャーズ・コンパウンドの一角。基地の人々が行き交い、己が職務を全うする姿を眺める一人の男の姿があった。
「おい、何をしてる? もうすぐ時間だぞ?」
「悪いなキャプテン。ちょっと早すぎてな、暇つぶしをしてるんだ」
その男は頭にゴーグルを着け、動きやすさと防御性能を両立したスタークインダストリー特製のスポーツウェアを着ていた。そしてその服には稲妻の意匠が施されている。
そのまま目にも止まらぬ速さでその場から姿を消した男にため息を吐きつつ、タブレットを眺めながらスティーブは苦笑する。
「ヤンキース黄金時代とはいかない。だが、鍛えがいがある。良いチームになれる筈だ」
スティーブが建物を抜け、集合場所の扉を開けて中に入れば、すでに新たなアベンジャーズが集合していた。
"ウォーマシン"ジェイムス・ルパート・ジム・ローズ
"ヴィジョン"
"クイックシルバー"ピエトロ・マキシモフ
"ファルコン"サミュエル・ウィルソン
"スカーレットウィッチ"ワンダ・マキシモフ
一同に介した彼らをまとめ上げるのは"キャプテン・アメリカ"スティーブ・ロジャース。
ここに新たなアベンジャーズが生まれたのである。
全員の顔を見渡し、スティーブは口を開いた。
「アベンジャーズ―――」
―――アフリカのとある地域。
「いやはや、これはすごいな」
サファリジャケットを身に纏う少女がそんなことを言いながら腰に手を当てる。垂らされた長い白髪をかき上げると、怪しげな桃色の瞳が細められ、瑞々しい唇が弧を描いて笑みを作る。
灼熱のアフリカの日差しでは焼けただれてしまいそうな白い肌を晒して樹海を見つめる少女の背後へ、伝統衣装に身を包んだ現地の住民が姿を現した。青い衣を纏い、刈り上げの髪形をした男だった。
「そこの旅人よ。ここから先は我らワカンダの民でも近づけぬ魔の樹海。命がおしくば引き返した方がいい」
「ああ、すまない。どうも楽しみを見つけてしまうと周りが見えなくなってしまう質でね。ご忠告ありがとう」
くるりと体を翻し、髪が艶やかに慣性に従って広がる。
「ところで、探し物をしているんだけれど、お前はどう思う?」
「どう、と言うのは? 困り事ならばこちらも探すこともやぶさかではない」
「まあまあ。そんな大勢で囲まなくたって危害を加えるつもりはないよ」
男の顔が僅かに顰められる。この女、何者だと。完全な配置で彼らボーダー族は隠蔽寸前まで迫ってきていたこの者を止めるためにきた。何も知らず進んだなら帰せばいい。何か知ってしまったならば、生かして帰すわけにはいかない。
「……なにを探している?」
白い少女の笑みが一層深くなった。
「ヴィブラニウム」
「……そんなものはもう無い。以前クロウと言う盗人に奪われたのがすべてだ」
「たかが二百五十キログラムが? 白金だって五千トンは掘られてるのに?」
姿を隠していたボーダー族が姿を現していく。それを意に介す様子もなく少女は言葉を続ける。
「別に君たちの国を脅かそうってわけじゃない。ただ己の要求通りの得物を作ってもらうなら、最高の材料を用意してやるのが義理ってものだと私は思っているだけなのさ」
その少女は唐突に走り出した。制止する間もない、その先に待っているのは女の死だ。
バチリ、と突然少女の空間が青白く光り、雷が落ちるような音をして少女を弾いた。サファリジャケットが焼け焦げ煙を吐いている。
「この者の隠蔽工作にかかれ、ここに来ていたことを悟られないように」
「あーもう、せっかく形から入ったっていうのに……」
ぎょっとしてボーター族は武器を構え、その少女を取り囲む。何事もなかったように起き上がった少女は破れてしまった自分の服を見て「探検家気分が台無しだ」と小さく独り言をつぶやいた。
ボーダー族の張ったバリアを意に介した様子もなく押しのけ再びバリアに接近する。手が触れた瞬間サファリジャケットが焼け消え、右目に薄紅色の火がちらつくと、白い丈の短いパーカーが構築され身に纏っていく。
青白く光り外界を拒絶するバリアの発光を意に介した様子もなく進んでいく少女に、ボーダー族の男たちは呆気にとられた。
「それじゃ、お邪魔します。外の君たちに言ったから、中には挨拶不要だね?」
そう言ってバリアを突き抜けた先、警戒し待機していたボーダー族の前に、少女は姿を現さなかった。