MCU『ブラック★ロックシューター』   作:おれちゃん

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注意タグをつけるべきとの事でしたのでつけました。失礼いたしました。
表現が誤解を招いてるようなので直しました。失礼しました。


Chapter1:黒豹

「……?」

 

 一瞬、ブラックトライクとは違う風切音が聞こえた気がしてステラはあたりを見るが、矢のように過ぎる景色に異物は無い。ステラが向かうのはバナーとナターシャが暮らす秘密のエリアである。万一を考えて周辺に人里がないエリアが選ばれているので、向かうステラの通る道も一面の草原と森と言った風情で、少しガタボコとした土の道はブラックトライクで走るのが少し楽しいものであった。

 そこへ、突如空から黒い何かが降ってきた。ブラックトライクのフロントに着地したソレは即座に地面に足を突き刺し急ブレーキがかかり流石のブラックトライクでも後輪が浮く。

 ステラは即座に操縦を放棄し首のチョーカーを叩いた。

 跳ね飛んだブラックトライクのトランクが内側からこじ開けられてブラックブレードとハンドガンをマウントした一対の翼が飛翔し空中に投げ出されているステラの腰の部分に装着され、刀と銃を取り着地する。トニーが改造を施してくれたものでマーク43の機能を応用し今のように緊急時に装着できるようにしたものだ。

 そのまま横転したブラックトライクが土埃を上げる先から、一人の……怪人のような奴が姿を現した。

 

「誰?」

「ヴィブラニウムはどこだ?」

「……?」

 

 ヴィブラニウムなら知っているが、ここまでされる謂れはない。地面を転げたにもかかわらず見た目が無事そうなのはトニーの改良のおかげだが、さすがに整備せねば前のように走れない状態だろう。

 

「ヴィブラニウムはどこだと聞いている。髪の色を変えていようと我々の監視網からは逃れられない」

「知らない」

 

 ジャキリ、と猫のように爪が迫り出し、ジリジリと距離が詰まっていく。大地を獣の如く蹴り爪で切り掛かってきた腕を刀で叩き払う。結構な威力で殴ったにも関わらず意に介した様子もなくステラを殴り飛ばす。機械か何かかと刃を返して切り裂こう剣を振るう。

 気にも止めず突っ込んでこようとした黒猫みたいな敵を袈裟斬りにするが当然切れていない。が、ごく薄く引っ掻き傷程度の傷が入ったことに敵は驚愕しているようであった。

 ブースターと翼の反動を利用して巧みに躱すステラを豹が擬人化したかのようにしなやかな体の動きで追撃を仕掛けてくる。距離が開くたびハンドガンを放つが、こちらは刀と違い全く効果が無いようである。

 ステラの左肩を抜手が掠めパーカーが裂け、黒いのの頬を刀が擦り傷がつく。互いが互いを蹴り飛ばしあい大きく距離が空いた。

 

「やはり何か知っているな?」

「知らないって言ってる」

 

 またも襲いかかって来ようとしたところで、突如男が停止した。

 人なら耳がある部位に手を当て、何かを聞いているように見える。

 

「……なに? 北アイルランドのウォードッグからも報告が来た?」

 

 迫り出していた爪が仕舞われ、ステラの方を見つめる。

 

『顔の構造……一致、骨格、身長、一致、動作解析結果……不一致うっそこれ人違いだよ兄さん』

「なに……?」

 

 殺気が霧散したのを感じ、ステラも構えを解く。

 

「お前、双子の姉妹などはいるか」

「居ないよ」

「……」

「……」

 

 沈黙している二人の上から変なピンクの、角を取った三角形見たいなものが降ってきた。二人が後ろへ飛び、地面に落着したソレを警戒する。

 

『ヤッホー、お二人さん。仲良くなにしてるのー? 私も混ぜて?』

 

 それから声がすると共にガキンと三角形のものから二本のアンテナが飛び出し、ウサギの耳が生えたかのような形態となり浮き上がる。その意匠はステラが以前見たことがあった。マズマが繰り出したロボ達のそれだ。

 

「マズマの所で見た……ロボ?」

「は? そんなクソださい名前じゃないし。これはね、アーマメントって言うのよ」

 

 そして森の影から一人の女性が現れた。ステラよりも僅かに背は低く、アーマメントと似たウサギ耳のようなものがパーカーより飛び出している。何より目につくのはその両腕に装着された物騒なマジックハンドの様なものだろうか。

 

「しまったー、ださいセンスに物申したくて飛び出しちゃった、てへ」

「貴様、何者だ?」

「んー? あっ。貴方の事ならシング姉様から聞いてるわよ。出会ったら伝言を頼まれてたの!」

 

 わざとらしく思いついたような顔をしてニタニタと笑みを浮かべる。

 

「"拝啓、ブラックパンサー殿。ヴィブラニウムご馳走様でした、僅かですが頂いたものは全部使ったので大変満足しています。皆様のご多幸とご隆盛をお祈りいたします"だって!」

「遺言はそれだけか?」

 

 怒気を発しながら駆け出すブラックパンサーの進路を妨害するようにさらに複数のアーマメントが空から現れ濃密な光弾の弾幕を形成した。いくらパンサーのスーツを纏っていると言っても熱攻撃を受け過ぎれば加熱しその温度に対し中身には限界が存在する。

 黒き風となって大地を疾走し光弾を躱して接近を試みるがうまくいかない。

 そこへステラがブラックトライクに仕込んであったロックキャノンを引っ張り出して光線を発射しアーマメントを撃ち抜こうとする。が、弾かれた。チタウリの装甲より余程堅牢なそれに、瞳から青い火を散らし毎秒二十連射の砲撃をぶつけると赤熱化し破損、一機が墜落する。

 

「あーコラ! 怒られるのは私なんだからね!?」

 

 するとアーマメント達がランダムに動き出し狙いをつけられないようにしながら手当たり次第に光弾をばら撒き始める。二人を狙い始め弾幕の密度が下がった事でブラックパンサーが潜り抜けて爪で切り裂きにかかることができた。

 その爪先がマジックハンドによって防がれた。タングステンの棒でさえ引き裂けるようなブラックパンサーの爪が効かないのはつまり、コレもヴィブラニウムでできていると言う事である。

 弾き飛ばされそうになるのを背を反らして躱し蹴りを叩き込む。ぐっと肺の空気が押し出されるような声を上げた女に追撃に掛かろうとして、上から三本指のマジックハンドに叩き伏せられる。

 そこへステラも迫りロックキャノンで質量攻撃、銃剣部分がアームに僅かに食い込み火花を散らす。後ろから放たれる光弾に翼を上向けて緊急防御、灼熱化し黒と白の塗装が剥げたがステラも翼も無事だ。

 

「あなた、誰?」

「うっわ姉様と声まで一緒、キモ」

 

 不快そうな顔を浮かべた少女にブラックパンサーが足払いでバランスを、ソレを見たステラがロックキャノンを押し込み体勢を崩す。

 飛び上がり重力加速と体重を合わせ渾身の力で切り裂こうとしたところを本体に当たろうとお構いなしと言わんばかりにアーマメントが光弾を射撃、被弾しようともスーツが弾くが弾ききれなかった分が熱としてスーツに溜まる。しかしソレより早く切り裂き、身を捻った少女のパーカーを引き裂き腕に傷を負わせた。

 痛がるそぶりも見せず、きゃー助けてーと首をイヤイヤ少女は振る。

 

「いや時間稼ぎきついよシング姉様〜、勘弁して欲しいなぁ」

「悪かったね。もう終わったよナフェ」

 

 突然の衝撃にステラとブラックパンサーが受け身も取れずに吹っ飛ばされる。

 

「……え?」

 

 そこに立っていたのは、ステラと同じ顔をした少女だった。色彩がただひたすらに違う。着る服から何まで彼女は白を基調としていた。そしてその瞳は、ピンク色だった。

 

「貴様……!」

 

 ブラックパンサーがいち早く立ち上がる。

 

「おっと、王子様か。ご機嫌麗しゅう。そしてこちらはテレビでは見たが実際見るのは初めてだな……なんと言うべきなのだろうな? お母さん? お姉さん? いや意表をついて従姉妹か?」

「ちょっと姉様? 用が終わったなら帰っちゃおうよー」

「おっとそうだ。まあゲームは果たしたのだから帰るとしよう」

「待て!」

「待って!」

 

 静止する二人を見渡して目を細め、ペロリと唇を舐めるがシングは頭を振る。

 

「いかんね悪い癖だ。今回のゲームは終わりだ。摘み食いしては次がつまらない」

 

 二人が同時に切り掛かった瞬間ナフェとシングはその場からアーマメントごと瞬間移動し姿を消した。

 ブラックパンサーとステラが向き合う。

 

「……誤解をしていた。すまなかったな」

「大丈夫、仕方がない」

「名は?」

「ステラ」

「こちらは名前を明かせない。パンサーとでも呼んでくれ」

 

 地面に倒れたブラックトライクを丁寧にブラックパンサーが起こしてくれる。

 

「この詫びはいずれ、今は奴等の消息を追わねばならない」

 

 数珠のような物を一つ、ステラに渡してくれた。

 

「困難が訪れたとき、それに願うといい、その時こそ今の借りを返そう」

 

 空からワイヤーが垂れ下がってくる。ステラが上を見上げるが、何もいない。その間にもブラックパンサーが空に上がり、すぐに見えなくなった。

 ステラは白い自分とそれに従うウサギ耳みたいな奴ナフェの言葉を思い出す。

 

『時間稼ぎ』

『終わった』

 

 妙な胸騒ぎがしてステラは腰に翼をつけたまま、トランクに刀と大砲を慌てて詰めてブラックトライクを走らせる。幸いにも故障はなかったが、雨が降り始めた。構わず進む。

 バナー達の家が見えてきた。しかし外に誰もいない。家の明かりもついていない。

 ブラックトライクを乗り捨てて玄関に手をかければ鍵が開いている。

 駆け込んだ先で、ナターシャが床に座っているのが見えた。

 

「……ナターシャ?」

 

 ステラの声に弱々しく振り向いたナターシャの顔は涙に濡れていた。

 ステラは見てしまった。

 

「バナー……バナー! バナー!!!」

 

 そしてそれに抱かれ、眠るように、心臓を貫かれ血を流すブルース・バナーの姿を。

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