MCU『ブラック★ロックシューター』   作:おれちゃん

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Chapter3:シズ

 ヒースロー空港に降り立ったステラはファストフードチェーン店でハンバーガーを掻っ込むと運んでもらったブラックトライクに跨り一路ソールズベリーを目指す。

 ナターシャが聞けば頭を抱えているような状況だ。そもメールで送付されてきた写真の情報源が謎なのである。あともう少し忍べとか言われるだろう。

 

「そこのお嬢さん、何処に向かってるの?」

 

 途中、信号待ちをしていると眼鏡をかけた妖艶な美女が声を掛けてきた。

 

「ソールズベリー」

「あら、奇遇ね。私もそっちに向かってるのだけれど、お金があまり無くてヒッチハイクでここまできたのよ。お嬢さんなら襲われることもないし、良ければ乗せてくれない?」

「ごめんなさい、危ないことがあるかもしれないから、乗せられない」

 

 ステラが申し訳なくそう言うと、美女は気にしないでと笑顔を見せて去っていった。

 そうして一時間ほどかけてソールズベリーに到着し一息入れると北に向け少し走りストーンヘンジ最寄りの駐車場を見つけ止めると、装備をトランクに詰め、観光客たちの中に紛れて遠巻きからストーンヘンジを眺める。

 

「あら、奇遇ねお嬢さん」

 

 耳元で囁かれ驚いて振り返ると、そこには先程ヒッチハイクしてきた美女が笑みを浮かべ立っていた。流石に警戒するステラをよそにストーンヘンジの方を眺める。

 

「いいわよねぇアレ。人の歴史と未知を感じさせる代物。私は見れないと思っていたけれど、こうして見れるようになった」

「……」

「警戒しないでほしいわねぇお嬢さん。私はミー、別に喧嘩する気はないのよ? 招待状を見たでしょう?」

「アレ? ステラじゃない!」

「……⁉︎ シズ?」

 

 そんな所へステラの下に駆け寄ってくる人物がいた。元S.H.I.E.L.D.ドラコ基地の事務員、現在は国連で働いているシズである。

 

「ステラも観光に来たの? 凄く奇遇じゃない遠くからしか見れなくて観光地選び失敗したと思ってたらなんたる収穫!」

 

 ステラの手を握ってブンブンするシズはより落ち着きをじさせる容姿になったが、中身はそんなに変わっていない。そんな様子を尻目にミーはステラの耳元に口を寄せると、囁いた。

 

「伝言よ、第一セット開始」

 

 ドォン、とストーンヘンジ近くの草原が爆発したようにめくれ土が舞い上がる。出てきたのは巨大な腕だ。

 

「私たちは総督の血でネブレイドした新人類。命の恩人の暇潰しなら全力で手伝ってあげないとね。さて私はリリオとあっちの陽動かぁ」

 

 パニックに陥る観光客たちの激流を何事もないように去っていく。

 

「ステラ! アレどうにかできる?」

 

 さらにもう一つ腕が飛び出し、そこから現れたのは霊長類、ゴリラを思わせる長い腕を備えた怪物であった。

 全身を黄色に塗られた金属の装甲で覆い、それを意に介する様子もなく振り回し怪力を見せつけている。

 元S.H.I.E.L.D.なだけあってすぐさま避難誘導を始めたシズにステラがうなづき大きいトランクを開く。中から飛び出した翼を装着しブラックブレードとハンドガンを装備。

 突っ込んでくるそれに少しでも逃げる観光客たちから引き離そうとステラが全力でブースターを起動して突進、巨体を地面をえぐりながら押し返す。こちらも変わらず硬い。丸太のような腕の大振りは当たれば大ダメージは免れないような代物だ。ハンドガンの光弾も弾かれてしまう。

 

「どうして、どうしてこんな事するの⁉︎」

 

 答えは野獣のような咆哮だ。

 腕から隠されていたようにロングソード状のものが飛び出し一戦薙ぎ払うのを刀でステラはブースターでカウンタートルクを確保し受け止めた。衝撃で地面がめくれ轟音とビリビリと振動が辺りに撒き散らされる。弾き上げると巨体が大きくぐらつく。

 渾身の力で斬りかかるが、左腕の装甲に僅かに切れ込みが入ったのみだ。また弾き、いなし、飛んで翻弄し光弾で挑発をする。それがしばらく続いた後、ステラは何十回目かになる。渾身の斬撃を放った。それが直撃した左腕の装甲が遂に限界を迎え破断、そのまま丸太のような腕が切れ飛んで中を舞う。とどめを刺そうと唯一露出している顔を狙ってステラが刺突を放つ。

 ガキン、と刺さるはずのそれが急停止する。敵が歯でブラックブレードを噛んで止めたのだ。動かない。咄嗟に引っ張ってしまったステラにあらん限りの力で振り抜かれた右腕が直撃する。身を捻って串刺しは避けたが高威力のそれが当たった瞬間エネルギー波のようなものが弾け、ステラが吹っ飛びながらもブースターで姿勢制御、地面に着地する。

 

「ゲホッ」

 

 ステラが咳とともに血を吐いた。

 敵は左腕の切断面からぼたぼたと血が出る事を、意に介さずプッと噛んだブラックブレードを吐き捨てる。

 

「タリナイ」

 

 そう呟いて左腕をつかみ上げると投擲の姿勢を見せた。だが狙いはステラではない。振りかぶる先にいるのは避難誘導を終え迷子の子供を抱えようとしているシズだ。

 

「シズ!!」

 

 血反吐を吐きながら叫んだステラが飛び出す。全力でエネルギーを注ぎ込みハンドガンを放ち、命中するが弾かれ僅かに軌道が逸れるのみだシズは抱えていた子供を咄嗟に放り投げた。豪速球で投げられた左腕の小指のあたりがシズの左脇腹あたりを掠め、抉り取ってシズが血を撒き散らしながら倒れた。父親らしき人が投げられた子供を抱えて逃げる。

 ブースターで飛んで着地し、ステラがシズを抱き寄せる。

 

「シズ!」

「いやーやられちゃうとは……片腹痛いわなんちゃって……そんな顔しないでよステラ、私……貴女の可愛い笑顔が好きな……ん……」

 

 目を閉じたシズの体を揺するステラの後ろにドスリ、ドスリ、と敵が近づく。ステラは優しくシズを横たえると、左目から火をまき散らしながら跳躍した。

 その顔は怒りに染まっている。

 己を顧みない全力の殴打。右拳から血が吹き出すも構わず振り抜き巨体を数メートルは宙に浮かせブースターで加速しながら蹴りを叩き込む。反撃の裏拳をまともに受け錐揉み回転しながら地面に叩きつけられてもすぐさま姿勢を直し反転跳躍地面に刺さっていたブラックブレードを引き抜く。

 未だ一切破損を見せないブラックブレードはヴィブラニウムに対抗することを目的に開発されていた特殊な製法の金属でできている。それはP.E.G.A.S.U.S. 計画前に得られた四次元キューブのエネルギーを触媒に、それぞれの材料となる金属を高次元で結合させ完成した合金だ。地上最強の金属を破壊する為の合金。

 ある種今の状況はブラックブレードの想定通りの使い方ということになる。

 ステラは今までにないことをした。ロックキャノンに動力を供給するようにただひたすらにブラックブレードを握りしめエネルギーを送り込む。青くエネルギーを迸らせたブラックブレードの切っ先が灼け、それに構わずステラは突進しながら一閃、敵を横一文字に切り裂いた。

 敵の上半身と下半身、二の腕と前腕が上下に分かれ血を噴き出しながらその場に倒れる。ステラは受け身も取れず無様に地面をころがって、起き上がった。向かう先はシズの所だ。

 歓声は上がらない。皆逃げた後だ、遠くからヘリの音が聞こえてきている程度。

 以前マズマが言っていた。ステラの血を使ってネブレイドをしたと。総督が誰かはわからないが、血が需要だということだ。ここにバナーでもトニーでも誰でもいたら止めるだろう。確証がない上意味があるとも思えないソレ。だがハイスクールの勉強をしている途中のステラの知識ではシズを救えない。病院に搬送されても間に合わないだろう。だから、ステラは実行した。

 

「お願い……お願い上手くいって……!」

 

 倒れたシズのもとに来たステラが自分の右手の平を切って血を絞り出すそれを蒼白になり失血死寸前のシズの傷口に垂らした。

 

「う……」

 

 呻くシズの血色が僅かによくなる。そこへガコン、と物が投げ捨てられた。ロックキャノンだ。その先に居るのはナフェだ。

 

「第一セット勝利おめでとう~! いやーこれくらい勝ってもらわないと姉様の暇つぶしにもならないからね、第二セットは~私とお爺ちゃん!」

「こんなことをして、楽しい?」

「ん~姉様が楽しいならいいんじゃない?」

 

 目を細め怒るステラをおちょくるようにアーマメントの上に座ったナフェがパーカーから出る耳をぴょこぴょこ動かした。

 シズを庇う様に立ち上がったステラの前、ストーンヘンジの中心に何かが歩いて来る。それは人だ。ほとんどが白髪になった髪を総髪にし、その髪に見合わぬ堅牢な肉体が服の上からでもわかる男。ステラは目を見開いた。

 

「アハズ……!?」

「悪いなステラ。総督は暇つぶしをご所望だ」

 

 行方不明になっていたアハズがなぜこんな所に、そう思う前に透明な何かがアハズの動きに合わせてステラの首を掴む。ゆっくりと姿を現したソレは巨大な腕だ。抜け出そうともがくがダメージと疲労の濃いステラにそれは叶わず、やがて気絶するとそのままシズを放置してステラとロックキャノンを抱えナフェとアハズはストーンヘンジの中心で姿を消した。

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