MCU『ブラック★ロックシューター』   作:おれちゃん

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Chapter4:ナターシャ

-レルム宮殿-

 

「総督、ハルクが生きています」

 

 チェスをうちながらリーダーが口を開く。対面でのんびりと茶を飲むシングラブが面白そうに首を傾げた。

 

「おや可笑しいな。お前の言うとおりにきっちり心臓を貫いてあげたのだけれど……ハルクは不死身か? これじゃゲーム失敗じゃないか」

「貴女がそれを言ってしまうとおしまいな気がしてしまいますよ。奴は私の予測を超えてしまった。それだけです」

「私だって死ぬさ。好奇心は猫をも殺すというだろう? 昔ザハに言われたが私の好奇心は溢れ出る泉で出来ているらしい」

 

 互いに早打ちをしているようだが、リーダーには先が見えていた。三十二手先にシングラブのステイルメイトである。

 

「それはわかりますとも。この三年間嫌と言うほど見てきました。片っ端から料理を食べたり作ったり代替金属はあるというのにわざわざヴィブラニウムを手に入れたり」

 

 他にも作詞して歌手をやってみたり料理人の格好をして料理をしてみたり探検家の格好でアフリカに旅立ってみたり、シング・ラブのとりあえず形から入ってみる様は絵面だけ見れば愉快だ。

 

「だがいい素材の方が作り甲斐があるだろう? ヒドラとかいう組織の考えたモノは私たちが使うには役不足だった」

「それだけの力があるのですから、なぜ世界征服を行わないのですか?」

 

 シング・ラブの血を用いれば旧人類を新人類へとネブレイドすることができる。拒絶反応もあるが彼女は基本的に死にかけか病人か自殺志願者を狙ってネブレイドしていた。増やそうと思えばもっと増やせるはずなのに増やさない。アハズから得たマズマ博士の全人類を新人類へと導く野望の方が余程リーダーには理解できた。

 そしてそれを聞いたシング・ラブがきょとんとした顔をして、腹を抱えて笑い出す。

 

「確かに! それは聞かれたことがなかったな! 考えた事も無かった! あっはっはっはっは!」

「そこまで笑わずとも……」

 

 笑いを噛み殺しながら出た涙を拭い頬を揉んで笑いを堪え、それでもニヤつきを隠せず口を開く。

 

「世界を手中に収める、この場合は全宇宙かな? やってどうなる? 私からすればそんなものは、こういうことだ」

 

 指をすっと振ると、チェスの駒がすべて白色になる。

 

「これじゃつまらない、そうだろう? なんでも思い通りになるなんて、それならいっそ」

 

 パチンと指を鳴らすと、シングラブのキングを残しすべてが黒くなる。

 

「この方がまだ刹那的に楽しそうだ。まあこれだと私負けだが、どうせ引き分けるくらいなら負けの方が楽しい。でどうする? 次のゲームの相手……そうステラだ。アレもいい感じで熟成してきているし、下手に楽しいと私満足して退場するかもしれないが……ハルクはどうする?」

「負けるんですか?」

「まあ勝つんじゃないか?」

「総督……」

 

 クスクスとシングラブがまた笑う。いつの間にか駒の色は下に戻っていた。

 

「許せ、人をからかうのは楽しいものなんだ。そうだリーダーもネブレイドするか試してみるか? 上手くいけば私にとって代われるかもしれないぞ?」

「私に流れる血とどう作用するかわからない以上無理ですね。私はアボミネーションのようにはなりたくない」

「そうか、残念。怪物になったなら怪物退治で楽しもうと思ったんだが」

「……まったく人が悪い」

「すまないね。さて暇潰しは終わりだ。ナフェやアハズ達が突破されればようやく私の遊びの時間なんだが……巻き込まれると危ないからね、どこか好きな所に行っているといい」

 

 リーダーが去った後、大量に積まれた本の一冊を摘むとそれを読みながら紅茶を飲み始めた。

 

「私にも他者を支配する悦楽がわかればよかったんだが……残念だな、昔試した時に気付いてしまった。死人に統治も何も無いとね」

 

 一人彼女はため息を吐いた。

 

 

 

 

 

 

「どう、ブルース調子は?」

「だいぶ良いよ、刺されて一日しか経ってないがもうほとんど塞がった」

「でもまだ安静。良いわね」

「ああ、ナターシャ、僕の血がついた物はしっかり処分しないと危険なんだ……今はリビングには近づかない方がいい、ステラは?」

「それが……貴方の無事を見届けた後飛び出して行っちゃって」

「大丈夫だろうか」

「自分に化けた奴にブルースを殺されかけたのよ? あの子がいてもたってもいられないのはよくわかるわ。ほら怪我人はのんびりテレビでもみてなさい」

 

 キスをしてナターシャは食事の準備をする為に部屋を後にする。

 バナーがリモコンを使ってテレビをつけると丁度緊急ニュースをやっている所だった。上空からの俯瞰で抉れ飛んだ地面や切り裂かれたゴリラのような体格の怪物が映っている。

 

『世界遺産たるストーンヘンジで異例の事件が発生しました。これはその直後と思われるヘリから撮られた映像です』

 

 そこには大型の外骨格のような物を纏う二人組と、それに担がれた何かが映っていた。テレビカメラ故に不鮮明だが、バナーは気付く。ロックキャノンと、ステラの腰につけられている翼だ。それがストーンヘンジのサークルに入ると瞬間移動するように姿を消した。

 

「ナターシャ、おいナターシャ!」

『今回の事件で負傷者は避難誘導にあたっていた国連事務員が一名のみとなっておりますが、世界遺産近傍で起きた事件に世間では不安の声が広がっています』

 

 バナーがナターシャを呼び、事態を知ったナターシャがアベンジャーズ・コンパウンドに連絡をするが、繋がらない。

 

「ナターシャ、僕たちが行くしかない」

「でもブルース貴方……」

 

 ベッドから起き上がったバナーがふらつくのをナターシャが支える。

 

「アベンジャーズが頼れないなら、ステラを助けられるのは僕たちだけだ。困った時は助け合う、それが仲間だろう? 今まで感じたことがないほどの平穏を得た。ならそのお返しをしないと」

 

 決意に満ちた顔にナターシャは何も言わずに頷いた。

 バナーは久しぶりに超伸縮ズボンを履き、ジャケットを羽織る。ナターシャも装備を整える。トニー特製の多機能付きの服に手首には多機能リストバンド・ウィドウズバイト、グロック26にバトンを二丁、ティザーディスクもありったけ持ちステラから渡された数珠みたいなのは御守りとしてポケットに仕舞い込んだ。

 護衛に制止されるのはわかりきっていた為、彼らの目を盗んで地下に格納されたクインジェットに乗り込む。彼らも外からの侵入は警戒していたが、内側からの脱出に関してはあまり考えておらず、問題なく進むことができた、偽装されたハッチを開き、驚く護衛たちを置き去りに二人は飛び立った。

 ストーンヘンジへたどり着けば警察が警戒線を敷いて立ち入りを制限していたが、アベンジャーズ御用達のクインジェットが着陸し降りてきたナターシャとバナーには道を開けた。

 

「さあ、敵の本拠地に殴り込みといこう」

「ええ、大物さん? よろしく頼むわよ」

 

 二人がストーンヘンジの石柱を抜け、サークルの中心に立つ。

 

「……」

「……」

 

 何も、起きない。

 てっきりあの映像からここがポータルのようになっているのかと錯覚していた。

 

「あの、どうしたんですか?」

 

 サークルの外から警察に声をかけられる。と、そこに突如空から黒い全身タイツみたいな猫耳付けた怪人みたいなのが降ってきた。パンサーである。

 

「⁉︎」

 

 銃を抜いて構えるナターシャにその怪人は手を挙げて無抵抗の意を示す。

 

「落ち着け、私はステラの味方だ。ステラから渡された玉のような物はないか?」

「……これ?」

 

 お守りがわりにポケットに入れていた玉を渡すと怪人がそれを仕舞う。玉の存在を知っていたのである程度信用し、銃は下げる。

 

「わかってもらえたようだ。ステラには借りがある。返さねばならない」

「しかしどうする? 僕たちにこれ以上の手がかりはいまはな」

 

 その瞬間視界一切をピンク色の光が覆い。気が付けば三人は全く別の場所に立っていた。夜空なのに明るく、異様に白い土や金属の木のようなものが生えている異界と言っても過言ではない景色が眼前に広がっていた。遠くには水晶でできた宮殿のような代物さえ見える。

 振り返ればそこには幾何学模様をそのまま造形にしたような門らしき物が鎮座している。

 自体が飲み込めず困惑しながら警戒するが、何か起きる様子はない。

 

「どうやら迎え入れられたようだけれど……」

「襲ってこない」

「ええ」

「罠ではないのか?」

「敵陣に突っ込んだ時点で罠は織り込み済みだけれど」

 

 遠くから地響きのような音が届く。そちらの方を見れば空に柱が立つように青白い光線が一瞬通る。戦闘が起きているようで、戦闘の主など一人しか思い当たらない。

 

「いこう」

「ええ」

「さあ行くぞハルク……! ぐあぅぅぅぅゥゥゥウ!」

 

 バナーはハルクに変身し、ステラを助ける為ナターシャとパンサーに先行して飛び出して行った。

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