MCU『ブラック★ロックシューター』 作:おれちゃん
ステラが目を覚ますと、硬い床の上に寝転がっていた。冷えた床に掌をつけて、腰につけられたままの翼が擦れて嫌な音を立てる。ふわりとした触感に、自分の上に雑に毛布がかけられていることに気づいた。
「目覚めたか」
「おっはよ〜」
声に驚き毛布を跳ね上げ立ち上がると、傍にロックキャノンとブラックブレードがある事に気が付き手に取りそちらを向く。
ナフェは退屈そうにウサギのアンテナのついたアーマメントの上に腰掛け足をぶらぶらさせ、アハズは床の上で座禅を組んでいた。
「回復はしたか? ステラ」
「もう五時間は寝てたもんね〜」
「アハズ……ここは? どうして? 仲間じゃないの?」
「質問多いよぉ。ここはレルム。シング姉様の空間」
「仲間、それはP.S.S.隊員としての私のことか? ならば今は違う」
床に落ちた毛布を横目に見る。気絶したステラなど殺すならいくらでもできたはずだ。
「わたしを殺したいんじゃないの?」
「死ぬかどうかは姉様次第かなぁ」
「役目はステラ、お前を完成させる事だ」
「完成……?」
大量のナフェ隷属アーマメントが降ってくる。アハズが立ち上がり上着を脱ぎ捨てれば鍛え上げられ均衡の取れた肉体が露わになった。構えを取ればザハの体が浮き上がりザハを中心に据えた四肢型のアーマメントが姿を表す。
「甘さを捨てろ、でなければ死ぬぞ」
「っ……!」
繰り出された拳を避けナフェの張る弾幕をブースターを使い、さらに翼を四肢の代わりに重心移動の補助に使いとんでもない軌道を描いて回避する。ステラのロックカノンから放たれた光線がアハズの直撃コースを取るがそれを腕部で防ぎ反射した光条が天井を突き破り空に伸びていく。装甲の反射した部分が僅かに赤くなっていた。
そのままステラはアハズの懐に飛び込もうとする。そうすればナフェもフレンドリーファイアを避け遠距離攻撃が減るからだ。
アハズの乱打がそれを阻む。刀と拳がぶつかり合い表面にこそ傷が入るものの切り裂くことができない。光弾を躱しながらステラは左目に火を灯し、切りかかかる。
「むっ」
ガキン、という音共に外骨格の腕半ばまで刃が通った。しかし両断には至らず。腕を回転させ刀を取り上げようとするのをブースターで回転に合わせ腕の周りを飛び半回転、引き抜きながらその勢いを利用し空へ飛び上がるとロックキャノンを撃ち下ろす。
数発がナフェアーマメントを直撃するが即座に回避運動を行い隊列を変更し回避、地面に着弾し床がガラスのように融解し砕ける。
発生した粉塵を貫くように放たれる対空砲火を円運動で躱し落下で速度を溜め込みながらロックキャノンを盾に弾幕の中央を強行突破。ブラックソードで放つビームごとアーマメントを切り裂き着地した。
真っ二つになり機能を消失したアーマメントが床を砕きながらめり込む。ナフェは口笛を吹いた。
「やるぅー」
仕切り直しと言わんばかりに三人が構えながら止まる。
ステラが汗を拭いながらも警戒は解かない。刀にエネルギーを込めるのはとても疲れる。代わりに込めた量に応じて切れ味が増しているのだ。それはこれまでの切り方を学んで切れ味が上がったのとは一線を画す。
「見事だステラ、だが覚悟が足りない。なぜ躊躇う、何故迷う」
娘を褒めるような顔はP.S.S.隊員の頃のアハズとなんら変わらない。それが迷いを生み、攻撃の鈍化に繋がる。
「話し合いで解決できると甘ったるい事を思っているのか? 今度は謎の宇宙人じゃない、機械じゃない、ならば話し合えると? 甘い、ドゥルガーの様にねじ伏せて見せろ、それとも……また大切なものを奪われなければ為せないのか?
「っ……! 嫌だ!」
「なら〜私達を叩き潰して姉様を倒せばいいんだよ〜ん。私達はあくまであんたを育てる駒だし?」
ステラが駒という言葉に驚く。
「駒って……あなた達、仲間じゃないの?」
「はぁん⁉︎ 仲間? 姉様が私なんかと同格って言ってんの⁉︎ ……縊り殺しちゃうよ?」
「無駄に荒ぶるなナフェ、そういう事だステラ。問答は終わりにしよう」
構えをとったアハズは縮地といっても過言ではない静止状態からの急速な足運びで地面を踏み砕きながらステラに迫る。その拳をロックキャノンを盾にしようとしたところで、壁をぶち抜いて緑の大男が割って入り外骨格と組み合った状態になる。
「ハルク⁉︎」
「あっれ? 姉様ゲーム失敗じゃん、後で煽っておこっと!」
「総督は失敗して煽られるのも楽しまれるから困るな」
ナフェの乗るアーマメントに小さい円盤の様な物が音もなく張り付く。まるでアーマメントに目がついたみたいに二つ。その僅かな衝撃に気付いたナフェが首を傾げる。
「おにょ? っデババババッ⁉︎」
そこから高圧電流が流れ出して乗っているナフェごと感電させる。両足でアーマメントにくっついたディスクを蹴り壊すとようやく電気が止まりナフェは髪の毛を静電気で逆立てながらキレた。
「ちょっと! 誰よ人に痴態晒させて!」
跳ね上がった髪をクローで器用に梳きながらアーマメントの上に立ち上がり背後に円形に隊列を組ませる。
「あれで気絶しないってどうなってるの?」
「だが人だ。倒すことはできる」
ハルクが突き破った壁の穴からナターシャとパンサーが現れる。
「ナターシャ⁉︎ 猫さん⁉︎ どうしてここに?」
「パンサーだ」
「水臭いじゃないステラ、私達仲間でしょう? 困ったときは助け合う、そうでしょ?」
「……うん!」
ハルクが投げ飛ばすのを軽やかに着地。
アハズ、ナフェとステラ、ハルク、ナターシャ、パンサーが相対する。ステラ以外の三人をみてアハズは笑みを浮かべた。
「そういうことか……総督も人が悪い。ステラ、このまま進むがいい、私達を止めたいのならばな」
それを聞いてナフェが凶悪な笑みを浮かべる。
「早くしないと、死んじゃうよ! 誰がっては言わないけどね」
進むのを躊躇うステラの肩をボンっとハルクが叩いた。ちょっとかかとが地面にめり込んだ。ステラがそちらを見ればハルクが手をあげている。
「行け、ステラ。アレは明らかにお前の因縁だ。決着をつけてこい」
「ここは私達に任せて」
「……わかった!」
了解してステラがハイタッチをするとハルクが優しく胴体を掴んで掌の上に載せる。やろうとしていることに気づいたステラが頷くとハルクは思いっきりぶん投げ、矢のようにアハズとナフェの間を抜けていく。
しかし二人はもう完全に意に介さず三人の方を見ていた。
「S.H.I.E.L.D.の頃見た顔ね……アハズ」
「再会記念とはいかない様だ、エージェント・ロマノフ。そちらの御仁は?」
「私はただのパンサーだ。ステラの助太刀に来た、な」
「成る程」
ハルクが咆哮しアハズに襲いかかる。アハズの正拳突きとハルクのフック気味パンチが正面衝突し衝撃波でナフェやパンサー、ナターシャが吹っ飛ばされる。巨体二人はそのまま壁を突き破って行ってしまった。
「もう野蛮〜! 私があなた達の相手してあげるよ、頑張って避けてね?」
「ハルクと殴り合うなんて……さっさと加勢に行ったほうが良さそうね……」
「さっさと……? もしかして私のこと舐めてる? うっゼェふざけんなよ自分の心配してそれどころじゃなくしてやる!!」
「うるさい。まずは貴様らの贖罪からだ」
「……あんたもしつこいわねぇ、使っちゃったものは使っちゃったんだから諦めてよ。まっ」
両腕のアームを広げると左右にアーマメント達が広がっていく。意図して可愛く見えるように首を傾げ、ベーと舌を出した。
「穴だらけにしちゃえば、代わりにその口は開かなくなるでしょう? あははは!」
ナターシャが銃を抜き、パンサーが爪を出し、ナフェが操るアーマメントに突撃していった。