MCU『ブラック★ロックシューター』   作:おれちゃん

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Chapter6:総督

「おや、しっかり来た様だね。アハズがしっかり意図を汲んでくれたようで何よりだ」

 

 水晶で構成された宮殿の中央にそれはいた。床も同じく水晶の様で、チェック柄。まるでチェスの盤上のようなその上には、折れてしまいそうな精緻な椅子やテーブル。

 そこで穏やかに読書と紅茶を楽しんでいた者が愉快げに顔を向ける。

 ステラと同じ顔、しかしその髪は白く、服は当時発見されたステラの姿をそのまま白く反転させたかの様。偶然か、ステラがパーカーの裾を閉じているのに対して丈の短いパーカーの上の部分だけ外套の留め具のようにしていた。

 ステラがやってきたと言うのに特に気にした様子もなくカップを傾けて紅茶を楽しんでいる。

 

「お前も如何かな? 生憎クラシックしか無いが」

 

 いつの間にか椅子が二つに増え、ティーカップには湯気を立てた紅色の液体に満たされていた。

 

「さあさあ座りたまえよ」

 

 微笑みかけるシング・ラブの言葉を無視し目の前に刀の切っ先が突きつけられる。

 

「アハズ達を止めて」

 

 あらゆるものを容易く切り裂くブラックブレードの切っ先が向けられていると言うのに特に気にした様子もなく、パタンと本を閉じて紅茶を飲み干した。

 

「成る程、二人はよくやったようだ。覚悟を感じさせる」

 

 カップをソーサーに戻し、軽く背伸びをして椅子から立ち上がると靴のヒール分ステラより高い目線が細められ笑みを深くする。

 ステラは刀を突きつけ、脅しているつもりなのに全く気にされず困惑していた。

 

「私が得たこの体のオリジナル、人間達は随分と高望みをしていたようだが、その愚かしさもまた愛おしい。おかげで偶然とはいえ、私と同じ力を持つ者が今目の前にいる」

「わたしはあなたと同じじゃ無い! 二人を止めて、でないと」

「でないとどうする?」

「……!?」

 

 切っ先がある事に気付いていないかのように歩を進めた、胴体に触れた刃が肌の弾力を容易く突き抜け、そのまま刺さっていき、背中に貫通しても気にも止めた様子はない。刺さったままにステラの顎を持ち上げ、キスをした。

 固まっているステラをよそにそのまま歩いて刀が引き抜け、垂れる血を拭うと傷はもう消えている。

 

「ミーの奴は楽しげにしていたが……やはりつまらないな。お前としてみるのは一縷の希望だったんだが」

「キスは……大切な人とするものだって聞いた」

「大切だとも、お前は私の楽しみ、稀有な存在だ。私と同じく無限の一端をその身に宿し、私に匹敵し得る」

 

 クスクスと笑うシング・ラブにステラは困惑を隠せない。

 

「あなたは……何がしたいの?」

「楽しみたい。この世界、テラで色々な事をしてきた。五感を満たし、三大欲を満たし、遊び、笑い、ゲームをし、昔にはなかった娯楽たちを享受し、投資で一山当ててみたり世界を旅し未知を既知に変え様々な事をした。……とても楽しかった。」

 

 溢れ出る何かを抑えこむかのように己を抱きしめ、シング・ラブは陶酔したように頬を染めて微笑みを浮かべる。

 

「だが足りない。そう、闘争だ! 命のやりとり、血で血を洗う戦乱! ソコヴィアでのアベンジャーズの活躍は素晴らしかった。惚れたよ。特にステラ、お前と言う存在に! 戦いが私を満たしてくれる。怒号が、争いが、死が、私が没入できる最も素晴らしい楽しみだ!」

 

 空から鎌が飛来し、地面に刺さる。ヴィブラニウムで作られているとは思えない白き鎌は神々しささえ感じさせる。それを手に取れば背中へ向け翼の集合体のような代物が飛び出してきて装着される。一つ一つが駆動するそれはまるで機械で作られた鳥の翼の出来損ないのようだ。

 シング・ラブの右目からピンク色の炎が立ち昇る。

 深められた笑みはあまりにも楽しそうで邪念がない。翌日のピクニックを楽しみに眠れない子供のようだ。

 

「性能は同等、私とお前の合わせ鏡。前の縛りも楽しかったが……全力を持ってただ楽しむ……これが私の望んだゲーム!」

「違う! わたしはそんなことしたくない‼︎」

「関係ないさ! 二人を止めたいのならやる他ないぞ」

 

 乏しい表情の中全力で睨むステラの左目から青い炎が立ち昇る。

 

「さあ……最終セット、私たちを始めよう」

「勝手な事言わないで!」

 

 開戦の狼煙をあげたのはステラだ。

 ロックキャノンの砲撃の連弾を鎌を回転させ弾き飛ばす。弾かれまくる着弾の爆風でティーカップが吹き飛んで床に落ちて割れた。

 

「おっと忘れていた。失敬」

 

 片手で鎌を回しながらパチリと指を鳴らすと置かれていたもの全てが消失する。弾かれる巨大な光弾の雨の中に紛れステラが急接近、ロックキャノンで直接ぶん殴るのを柄の部分で受け止め、そこを軸に鎌を回転させると衝撃波のようなものが飛び避けたステラの太腿の薄皮が切られ血が滲む。床と壁天井にまるで定規で線を引いたかのように切れ目が入った。

 

「今のを避けるか、素晴らしい」

 

 バトンを回すかのように大鎌を回せばそれに合わせて周囲が切り刻まれる。

 

「ウィング」

 

 ステラが飛来する斬撃波をロックキャノンで相殺し至近の斬撃の繭を突き抜け、鎌の内側に入り刀で切り裂こうとした瞬間姿が消え、ステラは空振りし、床を切り裂く。

 その刀身を踏みつけるようにシング・ラブが出現した。

 

「プッシュ」

 

 致命の一撃をステラは刀とロックキャノンを手放しブースターを吹かして回避。シング・ラブも鎌を捨てると下がるステラを追い、足を掴みんで振り壁にぶつける。

 追撃にかかるシング・ラブにステラがカウンターパンチを放つがタイミングが遅く、相打ちになる形で双方の頭が跳ね上がる。ぐらつくステラに対し笑みを浮かべたままステラの首を掴んで締め上げながらステラの顔面を何度も殴打する。

 

「グッ……ギッ……!」

「いい声と表情をする。嗜虐の趣味はないが……楽しいな」

 

 鼻血を流し痛みで薄く涙目になっているステラを引き寄せ表情を眺めようとするのを、ステラが渾身の力で暴れ拘束をぬけると頭突きを見舞った。そのまま膝蹴りを腹に叩き込み宙に浮いた所へ顔面狙いで後ろ回し蹴りを放つ。それを肘を使ってガード、シング・ラブは翼の集合体から、ステラはブースターから推力を発生させ空中で競り合う。

 生身同士の衝突とは思えない轟音が天井の水晶を共振で砕き雪が降るように破片が舞い落ちる。

 

「楽しい、楽しいな! 極上だ! さあもっと、もっともっともっと! 私たちのその先へ!」

「うる……さい!」

 

 ガードの上から反対の足を使ってステラが股にシング・ラブの頭を挟み込み締め上げる。振り解こうと振り回し壁に衝突、緩んだところを逆に床に叩きつけられる。

 

「癖の悪い足だな。お仕置きだ」

 

 踏みつけるように太腿にかかとを落とす、ヒールが肌に突き刺さりバキ、と大腿骨にヒビが入る。激痛に叫びそうになるのを歯を食いしばって堪え、ブースターで横滑りし足払いのような形になりながら脱出する。

 痛む脚もすぐに治癒するが、痛いものは痛い。立ち上がったステラがロックキャノンを手に取り追撃をガードする。己の拳が砕けようとも気にする様子なくガードの上から殴りつけられて衝撃を逃しきれずロックキャノンが自分の頭に衝突、額が切れ流血する。

 ロックキャノンを影にして不意打ち気味に砲身を蹴り飛ばしぶつけるとシング・ラブも鎌を手に取り打ち払う。

 大型武器ゆえの動作後の隙を狙いステラが切り掛かったのをまたも柄の部分を器用に盾にし防ぐ。

 競り合いながらステラがブラックブレードにエネルギーを込め刀身に青くエネルギーが纏われ武器破壊を狙う。しかし大鎌もピンク色のエネルギーを纏い拮抗し切断する事ができない。

 互いが瞳から炎を吹き出しながら鍔迫り合いが続く。

 刀を滑らせ切ろうとするステラに鎌を回し、間一髪鼻筋を切られながら石突きで顎を殴りつけて二人の間に距離が開く。

 

「素晴らしい。よくぞここまでたわわに実った!」

 

 流れた血を薬指で拭い、艶やかな唇に口紅のように塗る。震える肩で鎌を愛おしそうに抱きしめるその顔は、興奮に紅潮し性行為の最中のような妖艶さを醸し出していた。

 対するステラは眉を寄せ不快そうな表情をしていた。

 勝手な理由で戦い、勝手な理由で殺し、勝手な理由で被害を撒き散らす。容姿が同じなだけで天災か何かにしか見えなかった。

 隙だらけに見えるソレに切りかかれば瞬間移動で姿を消す。

 

「逸るなよ。お楽しみはまだまだこれからだろう?」

 

 ステラの背後至近に現れ、耳元でそう囁きながら息を吹きかけた。

 体を回転させ切り払った一撃をガードして後ろに飛んで衝撃を逃し宙返りしながら着地、悪戯っ気たっぷりである。

 

「おっとすまない……あまりにもからかい甲斐があってだな。許せステラ」

「いい加減にして」

「いいや、まだ足りないな」

 

 両者が武器を構え、再びぶつかり合った。

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