MCU『ブラック★ロックシューター』   作:おれちゃん

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幕間/コンパウンドでの日々

 現在、アベンジャーズという名義でコンパウンドに待機しているのは、ステラ、ヴィジョン、ローディの三人だけだ。トニーはスタークインダストリーの仕事で忙しく、シズも本職はコンパウンドでの事務仕事だ。

 アベンジャーズ、として出撃する事も無い。何かあれば出撃するのは空軍の職業軍人としての立場を持つローディのみで、ヴィジョンとステラには国連から許可が下りることはない。

 二人には監視こそないもののコンパウンド内での待機命令が基本的に出されている。ヴィジョンがトニー特製の完全防諜電話を使って時折電話しているのはワンダである。ステラとも話をしたが、ヴィジョンが料理を作るのをいくら頑張ってるのを見ても不味いものはちゃんと言ってお腹を壊さないようにと注意された。

 今日も表に出ない情報でスティーブが世界の危機を防いだことが知らされる。

 立場こそ違えてしまったが、今も仲間は仲間たちであることがステラにとっての支えになっていた。しかし皆が皆国際指名手配の犯罪者という扱いがステラは嫌だった。

 

「ステラ、本当に無事で良かった」

「ナターシャ……バナーが」

「いいの……ステラは悪くない。私は行くわ。ステラも元気で……場所は違っていても、心はつながっているから」

 

 ナターシャもステラが目覚めたのち一度話をした後は姿を消し国際指名手配されてしまった。バートンは自宅で謹慎になっているらしく無事を報告する為に一度会いに行ったが、その際もステラは移動の申請をする事になった。

 ソコヴィア協定においてステラの装備は特に制限を課せられ、トニーが新合金"セカンダリ"で制作した新しいロックキャノンは国連の承認が無ければ取り出せないよう厳重に封印されている。代わりにステラは広報によく引っ張り出された。

 トニーは現状では協定側に不備があるとして改定案を提出しているが、ソコヴィア協定でヒーローの管理を担当するサディアス・ロス長官は現行の協定に問題なしと聞く耳を持つ様子はなかった。

 今日もステラはコンパウンドに待機し、ローディとババ抜きをしながらヴィジョンが作る料理を待っている。ローディ曰く岩塩をそのまま出してきたのかと思ったと言わしめた砂糖と塩を入れ間違え大惨事クッキーから反省し取り敢えずカレー作っているのである。

 

「ふ、見てろよステラ、オレは先日から行動分析学を履修してきたからな」

 

 ローディがステラの持つ二枚のトランプそれぞれに指を置いてステラの反応を確認している。

 

「……」

「……」

 

 全く反応しない。

 

「ええいままよ!」

 

 引いたカードはジョーカーであった。

 

「おわぁぁぁぁ! 待てよ待てよ」

 

 裏に隠してローディがシャッフルし、出したトランプをステラがシュッと引く。ジョーカーであった。

 このババ抜きはヴィジョンの料理に先に口をつける方を決める戦いである。ヴィジョンの料理、見た目は整っているが味がやばいパターンが多く実質毒味である。

 その日のカレーは普通に食べられるものだった。

 それから数ヶ月後、ヴィジョンが姿を消した。その数日前にワンダの元へ行くという話を聞いていたので、有言実行したのだろう。

 トニーによると新たなアベンジャーズメンバーの加入の予定もあったがオジャンになったらしく、完全にチームとしての体を成していない状態となった。良かったことといえばトニーとペッパーが遂に結婚を発表したことだろか。

 そんなある日、火災が起こっているのを見かけ、取り残された人を見たステラは駆け出した。火災の発生場所は取り残された人の下の階、消防隊では間に合わないだろう。火災の起きる建物を跳躍で駆け上り侵入すれば三人の逃げ遅れた人たちがいた。それぞれを安全の為に毛布に包んで抱えて飛び降りる。衝撃を和らげる為に道路のガードレールの上に着地し、また上に登り飛び降り着地をし、を三度繰り返し残された人達を全員助け出して野次馬から喝采を受け、その様子はニュースにもなった。

 この出来事に感謝状を送られつつも、裏では協定違反として厳重注意と一週間のコンパウンドでの謹慎を言い渡されることになった。

 トニーもローディもシズもロスコルもみんな怒った。三人の命やそれを守ったステラよりも曲がったガードレールの方が大切なのかと。

 ローディは憤りを隠せないながらも要請で出撃していった為、謹慎ステラは一人でポツンとラウンジに座っていた。

 そこへロスコルがやってくる。手にはハンバーガーチェーン店の紙袋が握られていた。

 

「……ステラ、ソコヴィア協定は、あの時のステラを守る為には……最適だったと俺は思ってる。だから社長の話にも乗ったんだ」

「わかってる。トニーも、お父さんも私の為を思ってくれてやってくれた」

 

 ステラがハンバーガーの包紙を開きながらそう言った。危険度の扱いではステラは核弾頭扱いだ。協定に署名した上でこの状態なら、署名が行われていなければコンパウンドの病室で眠り続ける事もできなかっただろう。眠ったまま隔離施設送りにされていた危険さえあった。

 

「でもな、お父さん思うんだ。その時はステラを守るためのものでも、今はもう、邪魔な代物だって。外からの危険を遠ざける囲いは内側の動きを妨げる檻になってしまうんだって」

「……それは」

 

 ハンバーガーを食べようと口を開いていたステラが目を伏せる。

 

「ステラに我慢させてしまってるのもわかってた。ステラを守るためなんだって勝手な事をして、でも親の役割は子供を檻に入れて守る事じゃない。飛び出していく子供を信じて見守ってやって……子供が疲れたらその時には拠り所になってやる、そういうもので俺はいいと思うんだ」

 

 ロスコルもハンバーガーの包みを開く。

 

「だからステラ、トニーやお父さんへの義理は事は気にするな。ソコヴィア協定がなんだ、ステラがやりたい事の邪魔するならあんな檻、気にせず破って信じた道を突き進んでくれ。お父さんはステラの意思を尊重するからな!」

「……うん!」

 

 ステラが悪事に手を染めるとは微塵も考えていないからこそ言えるロスコルの言葉に、ステラは力強く頷いた。

 

「さ、辛気臭い話はここまでにして、食べよう! 食べれば気分も良くなるから」

 

 ステラとロスコルがハンバーガーを食べ始める。二人だけだったが、その日はなんだかパーティをしている気分になった。任務終わりにローディがステラを慰めようとハンバーガーを買ってきたのでその日は三食ハンバーガーになった。

 

「ステラ? いい? 好きな食べ物を食べる事は悪い事じゃないのよ……だけどねステラ、三食ハンバーガーは見過ごせないわよ」

「……ごめんなさいペッパー」

「大丈夫、ステラも悪気があってやったわけじゃないのはわかってるわよ、ねえそこの男性の方々」

「「いや……慰めようと思って」」

「ええわかってるわ、貴方達の善意もとてもわかるわよ。でもトニーを見て、彼を見れば分かりやすいけれど、善意でも人は悪い方に転がっていく事が多々あるの」

「もういいじゃないかペッパー、僕にだってそういう時期はあった」

「今は違うでしょう? トニー、変えられない過去の訴追ではなくて、私はステラの今から先の話をしてるの」

「ペッパー結婚おめでとう」

「ありがとうステラ。それはそれとして」

 

 ステラが話を逸らしてみようと思ったがダメだった。業界で渡り合ってきた歴戦の仕事人にステラの幼稚な話題逸らしが聞くはずもない。

 三食ハンバーガーをした事をペッパーが偶然知ってしまった為ステラとロスコルにローディも巻き添えで食生活に関する説教を受ける羽目になった。

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