MCU『ブラック★ロックシューター』   作:おれちゃん

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Chapter3:P.S.S.

 ―S.H.I.E.L.D.調査部門基地・ドラコ―

 

「こんにちは」

「うむ、こんにちは。ステラ君。気分はどうかね?」

 

 白い髭を生やした老人、フランク・マリオン司令の前へステラとロスコルは出頭していた。かなり強面をした老獪だがステラにはどこ吹く風のようで臆することは全くない。

 

「健康体って言われました」

「それは良かった。しばらくの間B-7区画の37番にちょうどいい部屋があってそこに泊まってもらうことになる。いろいろ調査が終われば社会復帰の公共事業に委託することになるからそれまでくつろいでいてくれ」

「あの、司令? そこ俺の部屋なんですけど」

 

 おずおずとロスコルが手をあげるが。

 

「問題はないシェパード君。基地の女性陣からも君のところなら大丈夫というお墨付きをもらっている。ベッドを運び込んでいるから監督しに行きたまえ」

「あーもう! サーイエッサー!」

「あっ……」

 

 走り出すロスコルの背に手を伸ばしかけたステラを優しげな瞳でフランクは見る。

 

「ステラ君。君の記憶が曖昧なのは把握している。我々は君のような無辜の人々を巻き込むような不届きな輩を倒す為、日々活動している」

 

 その目線は白く透き通る腹部に刻まれたバーコードに注がれる。明らかに非人道的な行為が行われていたことが見て取れる。人身売買か、人体実験か、記憶を失う前のステラに何が行われていたのか、悍しい事実が眠っているのかもしれない。フランクはそのことへの憤りを隠し、ステラに優しく微笑んだ。

 

「だから今はどうか、この基地で気楽に過ごしてほしい。ドラコ基地は君を歓迎しよう」

「わかった」

 

 ステラがサムズアップをした。それを見てフランクは髭を撫でながらワッハッハと大笑いした。

 

「全く、シェパードの奴はよくやっているみたいだな。随分と懐かれた。まあそれでだステラ君。キミも助け出されてから検査でロクに食事を取っていないだろう? 自慢じゃないが当基地の食堂は絶品でね、是非好きに食べてほしい。おい、入れ」

 

 眼鏡をかけた金髪の知的そうな女性が入ってくるとステラの横に立ち敬礼をした。

 

「マリオン司令、本日はどのようなご用件で?」

「ステラ君、こちらカーリー女史だ。この基地で恐らく食堂について最も詳しい人物だ。カーリー女史にはこのステラ君に食堂を案内して欲しい」

「ああ、この子が例の……か、可愛いお人形さんみたい……いやジャパニーズフィギュアの方が正しいかしら

「女史?」

「失礼、食堂のことを考えていたらよだれが」

 

 ステラを見てニヤニヤと口角を上げてよだれが垂れそうになっているカーリーにフランクが少し困惑しながら声をかける。

 

「ではステラさん。食堂にいきましょう? 司令、失礼しますが食堂の後ステラさんは?」

「シェパード君と一緒に基地を案内してあげたまえ」

「イエッサー」

 

「あっ……こんにちは」

 

 カーリーに手を引っ張られて司令の部屋から退出したステラは忘れていた挨拶をするとカーリーは振り返ってワナワナと震え出した。心配になったステラが

 

「大丈夫?」

 

 と、首を傾げると

 

「ああもう辛抱たまらん!」

 

 飛びついてステラを抱きしめた。

 

「可愛い! もう純粋無垢な感じが最高!」

 

 なんてのたまいながらステラに向け頬擦りをしている。ステラは状況がわかっておらずそれを止めたりはしない。

 

「カーリー?」

「カーリーなんて他人行儀に呼ばないで! 私のことはシズって呼んでいいから!」

「楽しいの?」

「すごく楽しい‼︎」

「それならよかった」

「いや良くないよお嬢さん」

「いっだい⁉︎」

 

 ガツンと頭を引っ叩かれシズが悶絶する。涙目でそちらを見ればそこには書類を挟んだボードを縦にして持っているロスコルの姿があった。

 

「何すんのよ!」

「何も何ままでそっくりそのまま返す! 何お嬢さんにセクハラしてんの‼︎」

「スキンシップよ‼︎」

「セクハラする奴はみんなそう言うんだよ‼︎ お嬢さん、次こういうことされたら殴っていいんだからね」

「わかった。シズは敵?」

 

 ガーンといった風に涙目になるシズを尻目にロスコルが頬を掻いた。

 

「うーん敵って程じゃ無いんだけど……厄介な味方って感じさ。間違ったことをしたら正してあげないとね? お嬢さんだってあんなの嫌だろう?」

「特に嫌じゃない。ロスコルもやっていい」

「いややらないよ⁉︎」

「そう……」

「あーロスコルがステラを落ち込ませた」

「いやなんなの⁉︎」

 

 ロスコルが頭を抱えて悶えてからステラに近づくとその頭を撫でた。

 

「これが精一杯。我慢してくれ」

 

 撫でられながらステラはコクコクとう頷く。

 

「流石ロスコル、ステラちゃんは猫ちゃんか何かかしら」

 

 眼鏡を掛け直しシズがそんな事を言いながらステラとロスコルを連れて食堂に向かう。通りかかる職員から奇異の目で見られているがそれで萎縮してるのはロスコル位でステラとシズは気にした様子もない。

 

「さ、こちらが食堂。食券で注文だけどステラちゃん好きなものは?」

 

 ステラがしばらくの間俯いて考え込み始めた。なるほど山程ある食品の種類に圧倒されどれにするのか迷っているのだろうとロスコルは思った。見た目的にはサンドイッチとかチキンブリトー辺りを食べているのが似合いそうだが。

 

「好きなもの、無い」

「え? 意外とマイナーな食べ物が好きなの?」

「ううん、わからない」

 

 ロスコルとシズは深刻そうな顔を一瞬表出させ、努めて微笑みを浮かべた。

 

「よし、じゃあハンバーガーでも食べてみるか? 肉がジューシー野菜はシャキシャキ最高だぞ?」

「ダメよそんなジャンクなのは! ちょっとおしゃれにイタリアンスパゲッティといきましょう!」

 

 そう言って二人がお勧めの料理を紹介する。

 

「両方食べる」

「「えっ」」

 

 ステラの細身からはどう見ても食が細そうでとても両方食べ切れるとは思えない。が、せっかくの決定を覆したく無いので二人は少し少なめの品を選んだ。

 のだが。

 

「美味しい?」

「美味しい」

「それは良かった」

 

 なんとペロリと平らげてしまった。ロスコルとシズは目を剥いた。特にハンバーガーは隊員に向けてかなりボリュームがある。あんな細い体してるのに健啖家なのか。

 食事を終えてラウンジに向かえば途中ビークルの格納庫前を通りかかる。今は整備や試運転などをしている様子をステラは歩きながらじっと見つめている。

 

「お嬢さんは乗り物が好きかい?」

「わからない。でも楽しい」

「それを好きって言うのさ。ほらシズさんは食堂の案内がメインでしょお疲れ様」

「お疲れ様」

 

 そんなご無体なと言わんばかりのシズと別れる。そうしてラウンジに到着すればP.S.S.のメンバーが寛いでいた。

 

「おん? お嬢ちゃんにロスコルじゃねぇか」

「こんにちは」

「おっ、挨拶できるのは偉いぞ」

「シャオミン油臭い格好で入ってくるんじゃねえ!」

 

 寛いでいたフォボスが作業着のまま入ってきたシャオミンにキレる。

 

「何をやってたの?」

「ロマンさ」

「ロマン?」

「楽しいことさ!」

「計画中止の試作品弄りだろうが」

「それがいいんじゃ無いすか悪路でも百マイル、ハイウェイなら二百マイル以上出せますよ!」

「出したら木っ端微塵になるわ」

 

 あーあーまたやってるよとP.S.S.のメンバーがやれやれ顔をしているがステラだけは興味深そうに見つめている。

 

「おやステラちゃん興味あるのかい?」

「ある」

「本気か、まあお嬢さんの好きにさせてやらないとな。シャオミン気を付けろよ」

「ロスコルは来てくれない?」

 

 メンバー全員がロスコルを見た。全員がニヤニヤしている。

 

「わかったわかりました。ステラ、一緒に見に行こうか」

 

 ロスコルがそう言えばステラは嬉しそうにうんと頷き、メンバーはデパートで娘に振り回される父親を連想するのだった。

 

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