MCU『ブラック★ロックシューター』 作:おれちゃん
ロケットの船の修理が終わり、皆が彼の船にフル装備で乗り込む。ステラは腰の翼の関係で席に座れないので立ち座席を用意しての乗り込みだ。
船は容易に空高くへ舞い上がり成層圏を突き抜け眼下に地球の青い光が広がる。それにステラは少しだけ見惚れ、戦いに勝ちみんなを元に戻したらロスコルにその話をしようと思った。
「座標確認よし」
「ほいお前らで宇宙へは初めての奴は?」
準備を終えたロケットが後ろの座席を見ながらそんなことを言うのでスティーブ、ナターシャ、ステラ、ローディが手をあげた。
「何で?」
「俺の船で吐くなよ」
ロケットがにやりと笑いながらワープの為の加速を行う。猛烈な加速度が襲いかかり思わず三人は肘掛を掴んで踏ん張った。ステラは掴む場所がないので歯を食いしばった。なるほどその加速は常人なら吐くような代物だが、四人は歴戦のスーパーヒーローとスーパーヒロイン達、吐くような失態はしなかった。
目の前の景色が加速につれて星々の光が尾を引いていく。幻想的な光景をスティーブが眺めているうちに穴を突き抜ける。
空間を跳躍し目的の星付近まで一瞬で到着する。これが宇宙を股にかける人々の移動手段だ。格納ハッチからキャロルが外に出た。光を纏った彼女は本当に平気で宇宙にいる。
『私が偵察してくる』
そう言って大気圏に容易く突入していくキャロルを見送る。
キャロルが偵察している間に全員が降下準備を済ませてしまい手持ち無沙汰となった。そのせいか皆どこか落ち着かない。ステラは船の中をうろうろしソーはストームブレイカーをくるくる回しスティーブは若かりし頃のペギーの写真を見つめている。
「大丈夫、きっとうまくいく」
皆を見回しながら自分に言い聞かせるようにナターシャがそう言った。
「もしダメなら……そこで終わりだ」
『見てきたわよ。衛星も、船も無し。軍隊も防衛機構も一切見当たらない。彼一人よ』
バナーやローディが困惑した顔を見せる。最悪の帝王があまりにも甘い守りだ。罠なのではとも思えてくる。
「一人で十分」
相手が何人であろうとやる事は変わらないのだから。
ロケットが慎重に船を地表に下ろしていく。サノスのいる位置から少し離れた地点に着陸しステラとキャロルとローディの三人がスティーブとロケットにナターシャとネビュラをそれぞれ運んでもらう。バナーはハルクバスターで、ソーはいつもの飛行方法でそれに追随する。
狙いは速攻。ストーンによる対処の暇を与えずに無力化する事だ。ここはサノス以外誰もいない無人惑星、周囲の被害を気にする必要はない。大火力と機動力を備えた面々を主体にした作戦をスティーブが立案した。
その頃サノスはびっこを引きながら農園の中を歩いていた。粗雑な麻袋を引きずり、収穫に適したものを掴んでちぎり、麻袋へ詰めていく。十分な量が収穫できればそれを家に持ち帰る。簡素な木造の家はとてもサノスが住むような代物には見えない。
それらを包丁を使って切り分け鍋に入れ、ひとつまみ調味料を添えて火にかけた。まるで隠者ような質素な暮らし。サノスは己の狂信に全てを捧げ、もう何も欲は残っていない。そういう意味では仙人の暮らしに近かった。
それが青紫色の光に塗りつぶされる。薙ぎ払われた極大のビームに家屋が土台を残し木っ端微塵に吹き飛ばされサノスもが焼き払われた地面を転がる。咄嗟にガントレットで防御した顔以外は焼け爛れ着ていた服も熱量に耐えられず殆ど焼け飛んでしまった。
キャロルが上空から飛来しガントレットを踏み潰し手を閉じれないようにしながら首を締める。ローディとバナーがそのあとに続き両腕を拘束、ソーが斧で左腕を切り落としサノスが叫びを上げた。落下したガントレットがガラス化した地面とぶつかり硬質な音を立てる。
そこへスティーブ、ナターシャ、ロケットがやってくる。
ロケットが落ちたガントレットを拾い上げ、天を仰いだ。
「おい嘘だろ……マジか……」
焼け焦げ溶けだし美麗さの面影もない鉄屑のようなソレには
「……ストーンはどこだ」
「言いなさい、ストーンはどこ」
答えないサノスにキャロルが首をさらに絞める。開かれた口から吐かれたのはストーンの在り処などではなく、独白だ。
「……宇宙には修正が必要だった。だがソレが終わればもうストーンに用はない。厄災を撒き散らすだけだ」
「お前自体が厄災だろう!」
バナーが殴りつける。周りの農園に火がつき煙が上がり始めていた。あれだけびくともしなかったサノスがパンチ一つでぐらつく。だがその不敵な態度は崩れない。ナターシャは察してしまった。涙が溢れそうになるが、それでも問わねばならない。
「……ストーンはどこ?」
「消えた……原子に帰った」
ステラがブラックブレードを突きつける。首を左右に振り、脅す立場にありながら怯えた顔をしていた。
「嘘を言わないで、また使ったのは知ってる……本当のことを言って」
「ああ、使ったとも。ストーンを全て消し去るためにな、私も死にかけたが……こうして成し遂げた」
ステラから受けた火傷とは段違いに深い左半身の大怪我は破壊時の余波を受けた事が原因だった。
「妥協も容赦も一切しない、私は絶対なのだ」
ステラが後ずさって唇を噛みながらブラックブレードを下ろして俯いてしまった。ローディがそんな虚言信じないぞと言わんばかりに皆を見まわす。
「有り得ない、探せばきっとある。ステラの言う通り嘘を言ってるんだ」
「父は残虐だけど……嘘だけは言わない」
歩み出たネビュラがそうサノスの言葉を肯定した。サノスはその所業に似つかわしくない優しげな微笑みを浮かべネビュラを見る。
「おお……よく言ってくれた。お前には辛く当たりすぎたが」
ネビュラに父親として言葉をかけようとするサノスの首をソーがストームブレイカーで切り落とした。鮮血が飛び散り、頭を失った胴体がばたりと倒れ、頭共々物言わぬ肉塊と化した。
皆が呆然とした様子でそちらを見ている。
「……なにやってんだよ」
「……首をとった。サノスの首を」
ソーが感慨も、憤怒も、何の感情もない、ただ事実確認のような声でそう言ってその場を後にする。皆が何とも言えない顔でその場に立ち尽くしていた。
彼らは戦いには勝った。報復には成功したのだ。だが失った物はなに一つ戻らない。ネビュラがそっと開かれたままのサノスの瞼を閉じ、眠らせた。
地球への帰還も終始無言のまま悲しみに暮れる間もなく、彼らは次々と湧き出す新たな問題に対処していかなければならない。
皆が去った後、燃え盛る農園の中央ガラス化した地面に血溜まりを作り倒れる姿は、全宇宙の住民の半分をインフィニティ・ストーンを用いて虐殺した男の、あまりにも呆気ない最後だった。