MCU『ブラック★ロックシューター』   作:おれちゃん

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短めです


幕間/ニューアスガルド

「さて、ザハも消えてしまったし私も手伝うとするか」

「いや誰だいあんた」

 

 サノス襲来から何とか脱出艇で地球にたどり着いたのはアスガルドの民の約半分。その後サノスの大虐殺では殆ど被害を被らなかったもののザハやサカールの革命家の何人かがチリと消えた。

 そんな最中とりあえず雨風を凌げる家を立て、脱出艇をバラして船にして漁に出られるようにしたりなど大忙ししていた時、謎の美少女がヴァルキリー、ブリュンヒルデの前に姿を現したのである。

 

「私だよ私。ラブちゃん」

「はあ!? あのこんなちびっこかったガキが!?」

「事実だがひどい言い方だな」

 

 ブリュンヒルデが自分の膝くらいに手をやって二歳児程度の小さかった度をアピールしているが、今目の前に立っているのはどう見ても十六歳くらいだ。しかし少しクセがあるロングヘアに赤い瞳はラブの特徴と一致する。

 

「しかしそのガキがいまやどうだ? 自画自賛だが絶世の美女だろう?」

「流石に若すぎだね。手を出す気にもなりゃしないよ」

 

 すらりとした体は華奢で細い。

 

「ほーう私への挑発か? 明日まで待つがいい」

「わお、新入りさん? 俺っちコーグ、こっちは相棒のミーク。よろしくね」

 

 装飾品やらを売って得たお金で購入した材木を建築の為に運ぶコーグが通りかかり気味に声を掛けてきた。脇をノタノタ歩く虫はやる時はやる奴であるが今は芋虫モードだ。

 

「よく見ろ私だ」

「え? 誰? 岩が剥がれた時に記憶もおっことしたかな?」

「ピギギー」

「え? マジ? ラブちゃん? いや急におっきくなっちゃってコイツみたいに脱皮でもしまくった? いやー脱皮カーニバルだね」

「確かに、急成長しすぎると骨が皮を突き破るからな」

「やめな想像しちゃったじゃない」

 

 ブリュンヒルデが顔を顰めるのをラブは笑って見ている。

 

「今回の件、私的にはとても不快だが、皆がこの状況でどう考え、どう動くのかとても興味がある。故にさっさと衣食住を揃えておきたい。この体はなにぶん脆いからな」

 

 死とは戦ってこそ。サノスは随分無粋な方法で多くの死をもたらした。ラブにはそれがサノスを嫌う要因だった。

 

「脆い割に常識外れな事してない?」

「何をいう、成長したら不可逆だし耐用年数はせいぜい八十年だ。食事も睡眠も休息も必要だ。脆いだろう」

 

 さも可逆で元に戻れたり耐用年数と言っているが寿命がそれより遥かに長い体を持っていたみたいな言い方である。

 そこへ風切音を立てながら一人の男が飛来した。ソーである。

 

「やぁ、何とか王様の家はできたよ。後は役場や道に石を敷いたりなんかが……おいちょっと?」

 

 ブリュンヒルデが完成したソーの家を指差せばソーは何も言わずにそちらにフラフラと歩いて行ってしまった。ブリュンヒルデとコーグとラブが顔を見合わせる。

 

「ありゃ重症だね」

「ああ、重症だな」

「ボッコボコって奴だね、今はそっとしてあげようよ」

「ピギー」

 

 そうして翌日。

 

「いや本当にデカくなってくる奴がある?」

「お前の挑発を受け取ったと言ったろう」

 

 クスクスと笑うラブの姿は二十五歳くらいの美女に変貌していた。リサイクル屋でとりあえずとして購入された安いダボついた服の上からでもわかる程度に豊満な体をしている。

 

「それでどうだ? 手を出す気になったか?」

「まあ守備範囲には入ったけれどさ、やめとくよ下手な神様よりよっぽどタチが悪そうだ」

「昔から同じ事を言われているな。人の命を弄ぶ悪神だのダークエルフより面倒くさいだの」

「何でちょっと自慢げなの」

「少し前だがそれはもう大大大満足な事があってな、その所業を思い出すとあながち間違ってないかなと」

「怖、あとこんなところでトリップしないでくれる?」

 

 ラブが恍惚の笑みを浮かべて自身を抱いてクルクルしているのをブリュンヒルデがため息を吐きながら肩を竦めた。絶世の美女もこういう表情をされると台無しである。

 

「失礼、で、孫の奴はまだ出てこないのか?」

「あー……」

 

 そこへソーがやってくる。

 

「おいこいつ誰だ?」

「やぁ孫。私だよラブだよ」

「そうか。所でヴァルキリー、酒はあるか?」

 

 ソーは特にラブに興味なさげに、虚な目をブリュンヒルデに向ける。

 

「おい、酒はあるか?」

「……あるけど」

「くれ」

「……わかったよ」

 

 購入された備蓄の中から大きい業務用のビール缶を取り出すが、ソーはそのままそれを抱えてもっていってしまった。ブリュンヒルデはそれをなんとも言えない顔で見ていた。

 

「あの様子は見た事があるな。お前みたいだ」

「……ああ、わかってる。下手すりゃアレはあたしより重症だ」

 

 ふらふらとした足取りでビールを抱えて家に入っていくソーを遠目に見つめながらブリュンヒルデは小さくため息を吐いた。

 

「でもまぁ、雷神だ。自力でどうにかできるだろう」

「あんたそう言ってどう立ち直るのかを観察したいだけじゃないの?」

「まあそうだな。人数は減ってもなんだかんだアスガルドの民は働き者、私も大きくなった甲斐があまり無い」

 

 アスガルドの人々は当然ながら地球人より力が強い。体も強く作業も着々と進んでいる。ラブから聞いた車などが通れる程度の道を作り他所へと繋げて交易を可能とした事でソーが持っていったビールも得られた。ニューアスガルドとしてこの地域もいずれは有名になるだろう。

 

「じゃあなんで大きくなったのよ」

「本来の意味でなら、傍観者がしやすいようにだな。昨日の容姿は元となった人物の関係である子ににすぎている」

「ふうん……まあ悪さはしないでくれよ」

「しないさ」

 

 釘を刺してきたブリュンヒルデに手をひらひらとさせながらその場を後にする。

 

「見せてくれよ雷神、その折れた心の軌跡を」

 

 立ち直っても良し、おれたまま地に落ちても良し。観察者は小さく笑みを浮かべながら、アスガルドに現代の環境を整えるべくコーグに話をつけに行くことにした。まずはネット環境である。

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