MCU『ブラック★ロックシューター』   作:おれちゃん

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Chapter4:ブラックトライク

「……すごい」

「わかってるわかってるねぇステラちゃん」

 

 格納庫の一角に案内された場所に安置されているのはバイクの前輪を二輪にした大型の乗り物だった。特徴的なフロントカウルと大型のタイヤが重厚さを表現し、特にフロントカウルや大きく伸びるハンドルガードは通常のバイクと違い金属で構成されている。大型バイクと表現するのも生易しい。大型バイクの代名詞ハーレーダビッドソンでも子供のように見えてしまいそうだ。

 

「クインジェット計画と並列して計画されたアーマートライク計画で試作された物でこっちは残念ながら試作品二十台で計画中止されたが、これも発想は画期的な代物だったんだ」

「何が?」

「よくぞ聞いてくれました。三輪でありながら機動性はバイクそのもので踏破性も馬力も桁違い! この特徴的なカウルには運転者を攻撃から守る装甲の意味と機関銃が内蔵されてて攻撃にも使える!」

 

 聞いたことあるわと言いたげなロスコルが呆れ顔をする。

 

「で、欠点は」

「馬力が馬鹿みたいにありすぎて人間じゃマトモに性能を生かせないことかねぇ」

「まあ今までのディーゼルバイクあたりで良いよな」

「やめて言わないで。でもいいんだステラちゃんがすごく興味を抱いてくれただけで」

 

 ステラがバイクの脇にまでやってくる。表情は変わらないが、バイクを見て回すその瞳には興味がとても宿っているように見えた。

 

「乗っていい?」

「いやいやいやいや」

「というか運転できるんすか?」

 

 運転できるかはさておき男二人には乗ってひどい目になる未来しか見えないので許可は出されなかったが、触ってもいいということで触ったステラ嬉しそうだ。表情は変わらないが。

 

「武骨なブラックトライクに華奢な女の子、見る分には良い絵だねぇ」

「ブラックトライク?」

「アーマートライクを黒くペイントしたのでブラックトライク。そのまんまっすがシンプルイズベストってやつだねあ、その感じいいね写真撮っていい? はいステラちゃん、 チーズって言って(セイ・チーズ)

「……? チーズ」

 

 シャオミンが何処から取り出したのかカメラをステラに向けチーズと言う瞬間にシャッターを切った。

 

「おお、いい笑顔」

「たしかに、今のお嬢さんも別嬪さんだけれど、笑うともっときれいだな」

「……」

 

 カメラに映った写真を三人で見てからステラは二人の前で立ち止まり暫く静止していると首を傾げてトライクの塗装に反射する自分の顔を見てからもう一度二人の前にやってくると自分の指で頬を押して口角を上げた。

 その様子に思わずロスコルは笑ってしまい、ステラの頭をポンポンと叩いた。

 

「いいんだお嬢さん。無理に笑わなくたって。今はまだ笑えないかもしれないけれど、お嬢さんが心から自然に笑えるようになる時が来るはずだからね」

「……わかった」

 

 そう言ったステラの顔はほんの僅かに口角が上がり、とても儚げな微笑が浮かんでいたが、まだ出会ったばかりの彼らでは気付くことはできなかった。

 そうしてラウンジに戻ってくればメンバー達と談笑しこっそりお菓子を貰い、シャワールームに行けば一角を完全封鎖しセクハラの危険(シズ)を排除。基地内の店で購入した寝巻きを身に纏ったステラがロスコルの部屋に設置されたベッドの上に座り込んでいた。

 

「じゃお嬢さん。こんな男とおんなじ部屋で安心できないかもしれないけどこれ部屋のカードキーね。寝れなくて外に出たくなったらこれを持っていかないとオートロックだから閉め出されちゃうから気をつけて。まあ閉め出されても扉を叩いてくれれば開けるけどさ。あと出ていいのはラウンジまでだからこれも注意して」

 

 ステラに金属製のカードキーを差し出し渡してくる。Tシャツ姿のロスコルの首でチャリンと音が鳴った。

 

「何をつけてるの?」

「ああ、これはドッグタグだよ。犬って事じゃない、識別する為のものさ」

「私も、それつけたい」

「うーんこれは俺のだし、お嬢さん用のを作ってもらわないとね。俺やフォボスとかが非番の日に作ってもらいに行こうか」

「ありがとう」

「うん。じゃあおやすみ」

「おやすみ」

 

 そうして電気が消え静まり帰った部屋でロスコルは思う。

 寝れない、と。自分が居心地悪いとかそう言う事は無いのだが、ステラが眠るのに自分が邪魔なのではと気になって仕方ないのだ。

 しかししばらくするとステラから寝息が聞こえてきたので、ロスコルもステラから背を向け意識を眠りに落とした。

 数時間後、ステラがふと目を覚ました。何かに呼ばれているかのような感覚を覚えたステラは言いつけ通りにカードキーを持って部屋を後にし、長い廊下を経てラウンジにたどり着いた。明かりはつき利用可能になっているものの人の姿は無い。

 

「外に出たらロスコルが悲しむ」

 

 その窓から空を見つめる。外に出てみたいとも思ったが言いつけを守らなかった時のロスコルが悲しそうな表情を浮かべそうな気がして出る気は無かった。

 ふと、窓の縁が赤く光った事が目についた瞬間、ステラの目の前の窓が壁ごと吹き飛んだ。衝撃でステラがラウンジの壁に叩きつけられ、打ち所が悪く気絶した。粉塵が舞い上がり遅れて警報が鳴り始める中、そのまま穴から侵入してきた完全武装の二人組が倒れたステラの寝巻きの袖をまくり振り下ろすように腕に極太の針を突き刺した。

 

「っ敵!」

 

 刺さった痛みで目を覚ましたステラが暴れて拘束バンドをつけようと取り押さえていた一人が軽く数メートル以上吹っ飛び割れた窓ガラスを突き抜けていく。しかしその隙にもう一人がスタンロッドを首に当て最大出力で電撃を喰らった結果、意識が遠くなり四肢に力が入らなくなる。

 その隙に襲撃者の用は終わったらしくくぐもった声を小さく出す。

 

「無事か。ああ、本体回収は抵抗のため断念。撤退だ」

 

 ステラの腕から針を雑に引き抜くと少し出血し寝巻きを汚した。

 そこに頭部に銃弾が直撃、ヘルメットに弾かれた。

 

「お嬢さんに何やってる‼︎」

 

 拳銃を構えて現れたロスコルへサブマシンガンを乱射、柱の影に隠れやり過ごす間に窓に空いた大穴から飛び出した襲撃者はステラから抜き取った血と共にもう一人もきっちりと収容する。

 ラウンジにP.S.S.メンバーが武装して集まってきたのを尻目に襲撃者は速やかにヘリに乗り込み逃走。精鋭のS.H.I.E.L.D.基地に襲撃を仕掛けるに足る見事な手腕を見せつけられることとなった。

 

「お嬢さん? ステラ! しっかり! 医療班!」

 

 ロスコルがステラの脇に先ほどの爆発で誤作動を起こし大量に転がった自動販売機の缶を挟んで左腕の止血をする。

 

「……ごめんなさい」

「謝る事なんてない! 悪いのはこんな事した奴らだ。怖かったろうお嬢さん……」

「おいおいどういうこった。悪党ってのはお嬢ちゃん一人の為にS.H.I.E.L.D.に喧嘩売って生きて帰れると思ってんのか?」

「それもわからん馬鹿には分らせてやるしかないだろう。しかし何故事前に察知できなかった?」

「空に上がったクインジェットは目標をロストしたらしい、ただのヘリでそんなことできるか?」

 

 フォボスやアハズが念の為周囲を警戒している。ロスコルはステラを抱きしめて頭を撫でた。

 敵の狙いがステラであると判明した以上病院へ移送するのは危険と判断され基地内の医療設備で処置を施した。軍医曰く傷は浅く一週間程度で完治する筈だが念の為固定して貰い、医療室で夜を過ごしてもらうことになった。P.S.S.のメンバー達は翌日のため休息、基地の警備に業務を受け渡し、ロスコルだけは襲われたステラの精神を鑑みて医療室で共に眠ってもらうこととなった。

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