MCU『ブラック★ロックシューター』   作:おれちゃん

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アメリカのピーナツバターが甘くないとはじめて知りました


天才二人

 静かな湖畔に佇む家から、一人の男がのんびりと玄関を出て庭へ歩き出す。大量のガーデニングや畑を抜けて小さなテント前の小さなイスに腰掛けた。トニー・スタークは今、唯我独尊の気のあった自信満々な天才発明家という雰囲気は無くただの優しげな父親といった気風を漂わせている。

 

「ランチターイム。モーガン・スターク、ご飯の時間だ。食べるか?」

 

 テントの中に語りかけていると、中から小さな子供が出てきた。なぜか頭にあるアイアンマンの青いバージョンのようなモノを被っている。

 

「ごちそうをださないとやっつけちゃうぞ」

 

 掌にはリパルサーに見立てて光っているライトがくっつけてあり、トニーに突きつけられる。それにトニーが両手をあげて降参の意を示して笑う。

 

「ってコラコラそれはつけちゃダメだって。大事な記念日にママにプレゼントするモノだからね、ほら」

 

 トニーがモーガンからアーマーをスポッと取れば、ペッパーに似た艶やかな髪をした愛らしい顔が現れた。将来はママ似の美人さんになる事確実の愛娘である。

 

「ほーらランチなに食べる? ハンバーガーにフレッシュコウロギ挟む?」

「やーだー」

「意外に美味しいぞ、これ何処で見つけた?」

 

 ペッパー用の贈り物として作り、モーガンに下手に触られると危ないのでしっかりと隠してロックもしておいたはずである。

 

「ガレージ」

 

 しかし子供というのは親の予想を易々と超えて来てしまうようである。ガレージに置いてあったのは確かだが暗証番号付きの電子ロックが付いていたはずだ。既に天才の鱗片を見せているようである。

 

「これを探してたの?」

「ちがうよ、でもみつけたの」

「うーん、ガレージが好きだもんな。パパと同じだ」

 

 トニーがそうしてモーガンを抱えて家へとのんびり向かう。親子水入らずの団欒だが、そこへ来訪者が現れた。車の音が近づいてきて、ドアの開け閉めの音に振り向く。

 スティーブ、スコット、ナターシャの三人である。

 

「やあ、まあ歓迎するよ」

 

 モーガンをペッパーに任せトニーが飲み物を用意しつつスコットから作戦内容の説明を受ける。トニー自家製のコーヒーの水出し機を使ってアイスコーヒーを作り終えた辺りで説明が終わってスコットが一息ついた。

 

「まあ、よくわかったよ。喉乾いたろ飲むといい、シロップつける? ミルクは?」

 

 グラスにアイスコーヒーを注いで脇にシロップとミルクを置く。三人がそれぞれ受け取るのを確認しながら話を続ける。

 

「まずネーミングがナンセンスとかそういうのは置いておこう、まずこの作戦は……誰だっけ……そうだスコッチ君の壮絶な豪運、十億分の一か? を引き当て続ける必要がある。簡単に言おう、こっちに戻れなくなっておしまいだ」

「スコッチじゃなくてスコット・ラングだ」

 

 わかるか? と言いたげに肩を竦めるスタークにスコットが名前間違えを訂正する。

 

「それは悪かったスコット君。で、このタイム泥棒作戦、なんで誰もやっていない? 笑える妄想みたいなものだからか? 過去に戻れたとしよう、運良く戻った先にストーンがあったとしてそれを持ち帰って?」

 

 指をパチンと鳴らす。

 

「みんなが元に戻るハッピーハッピー。いいや、こうはならない下手すればもっとひどいことになる、僕らが全滅が関の山じゃないか?」

「きっと成功する、させて見せる」

「君の楽天主義にはもううんざりしてるところなんだが」

「大丈夫、タイムトラベルの原則を守ればいいんだよ。過去の自分とは話さない、賭けに使わない」

「おいおい勘弁してくれ。自分でわかってるだろスコット、バックトゥーザフューチャーのタイムトラベルは正しいか?」

 

 スコットがコーヒーに口をつけて首を細かく横に振った。

 

「……いいや、量子物理学的に正しくない」

「トニー、手伝って欲しいの」

「そうとも、みんなを取り戻せる希望が見えたんだ。俺の大切な人も、みんなの大切な人たちを頼むからはいって言ってくれ」

「悪いなナターシャ、スコット……これ以外のことだったら手伝えたのに」

 

 そこへモーガンがやってきてトニーに抱きついた。

 

「ママがパパをたすけにいけって」

 

 トニーがモーガンを抱きしめる。過去ではなく今の大切な存在。

 

「ああ、ありがとう助かった、もう一度言うがこれ以外の事なら存分に協力するよ。あ、ランチ食べていくか?」

「トニー、君の家族が助かってよかった。だが、やり直すチャンスなんだ」

「……僕は今ここで、やり直してる。ランチ食うなら仕事の話は無しだぞ」

 

 家の中に入っていくトニーを見送って、三人は車へと戻る。

 

「仕方ないわ、失うと言うのはとても恐ろしいもの」

「ああ、無理もない」

「でもどうする? トニー抜きじゃできないだろ。諦めんのか?」

「いや、絶対に諦めない」

「でもトニー以外に……」

 

 車に乗り込みながらナターシャが電話を取り出した。

 

「一人、心当たりがあるの。でもみんな会って驚かないでね?」

「誰?」

「会ってからのお楽しみ」

 

 ナターシャが車を運転しながら向かう。スティーブは予想が付いているようだ。

 暫く走ってやってきた飲食店に入り、奥の席に行く。

 

「お待たせ、ブルース」

「いいや、今きたばかりさナターシャ」

「お、ブルースってことはハルクの人……んん?」

 

 ナターシャに続いてバナーの姿を見たスコットが困惑する。スティーブも少し目を見開いた。

 バナーが緑色になっているのである。そうハルクみたいに。

 

「さ、何か食べちゃいましょう。ブルースはもう何か頼んだ?」

「いいや、みんなが来たら一緒に食べようと思ってね」

「じゃ頼みましょうか」

 

 店員さんに注文をして待ち時間の間にタイムトラベルの話をしている時も、料理が来てもスコットはバナーの方をガン見である。

 

「ん? どうしたんだい? ああ、そうか僕が緑色なの気になる?」

「正直めっちゃ気になるなにがあったんだボディペイントしてハルク感出してるのか?」

 

 バナーは微笑みながら一口水で喉を潤した。

 

「五年前、僕達は負けた。屈辱三倍さ、ハルクとして負けバナーとして負けハルクとバナー力合わせても役立たずだった。僕は自分を責めに責めた、でも……ナターシャが側にいてくれた」

 

 バナーが優しい眼差しでナターシャを見る。ナターシャも優しげに頷いた。

 

「それで思ったんだ、へこたれてどうする、必要なのは先のことだってね。そこからバナーとハルクは対話を続けた。ガンマ線ラボにも篭って一緒にいろいろ考えた。そしたら僕はハルクでハルクはバナーだったんだ。そこに主導権はない、理性と怒りは融合した」

 

 バナーが拳を握りしめると体がわずかに大きくなる。

 

「つまり今の僕は、二人ではなく一人なんだ。バナーでありハルク。まあバルクってところだね、はいバルクアップ」

 

 バナーが笑顔で眼鏡を外しダブルパイセップスのポーズをしたら体が二回りは大きくなってほぼハルクに変化した。服はかなりゆったりした物を着ていたがこの時の為であった。神妙な顔で聞いていたスコットが飲んでいたコーラを吹き出し咳き込む。

 

「ハルクだ!」

「ハルクさん!」

 

 子供達が走ってくる。手にはスマートフォンを持っていた。着ている服はそれぞれアイアンマンモデルのTシャツとブラックロックシューターモデルのパーカーだ。

 

「あの、写真いいですか?」

「あー良いとも。すまないスコット撮ってくれ」

「はい、グリ〜ン」「「グリーン!」」

 

 スコットがいい感じに写真を撮ってスマートフォンを返す。

 

「いい感じ、俺とも撮りたい? アントマンだぞ」

 

 子供二人がハテナを浮かべている。

 

「すまん忘れてくれ。く〜知名度が低い……いや今のがハルクファンだったからか? いやでもアイアンマンとブラックロックシューターのグッズ着てたよな……」

「と、とまあこんな感じで目立つからこうしているんだ」

 

 バナーが緑のバナー姿に戻る。

 

「ブルース、それでさっきの話だが」

「ああ、タイムトラベルでやり直しか。正直僕の専門じゃないんだ、安全の保証はしかねるよ」

「構わない、不可能を可能にするには挑戦が必要だ」

 

 スティーブの真剣な表情に、バナーは眼鏡をかけなおしてスティーブの眼差しを見つめ返す。

 

「わかった、出来る限りのことはやってみよう。腹ごしらえを終えたら早速取り掛かろう」

 

 四人は注文した料理にようやく手をつけ始めた。

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