MCU『ブラック★ロックシューター』   作:おれちゃん

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仲直り

「……スコット、バンの準備をお願いするよ」

 

 白衣を着たバナーに促されてスコットがバンのトランクを開けて量子トンネルを起動させる。

 

「電源設備は?」

「主電源から予備電源、補助電源まで全部問題無し」

「それなら大丈夫。もし電力が切れるとスコットが過去に取り残されるからね

「え? なんか言った?」

「……スコット、大丈夫だ、絶対に成功させよう」

「……あぁ! 任せろ!」

「ねえ、そうは言ってるけれど大丈夫?」

「……正直に言おう、タイムトラベルなんて前人未到の冗談みたいな代物、なにが起きるかわからない。緊急時には備えておいてくれ準備完了だ!」

 

 バナーとナターシャがサムズアップをする。不安にさせまいと作り笑いである。

 

「一週間前に君を送る。一時間暫く歩き回ってくれこっちは十秒で戻す。ヘルメット被って」

「頼んだぞ」

「任せてキャプテン。不可能を可能にしてやりますよ」

 

 スコットはヘルメットを被り敬礼しながら量子トンネルを潜っていく。

 

「カウントダウン、三つ数える。いくぞ、二、一、ゼロ!」

 

 量子トンネルからスコットが帰還する。だがその様子がおかしい。

 

「なんか……若返った気分」

 

 なんだか若い。幼さはないが青年といった風情だ。

 

「待て、何かおかしい」

「スコットちょっと待ってくれ、もう一度行くぞ」

 

 再び量子トンネルを潜って出てきたスコットが直立してるのも奇跡的な老人になって出現する。

 

「おっほぁー腰がぁー痛いのう」

「おいおいこれ大丈夫なのか!?」

「これは不味い、これなら……こうか。緊急だ、ナターシャ電源の所へ」

「わかったわ」

 

 もう一度量子トンネルを通ると、今度は赤ん坊の姿になった。

 

「…………」

「大丈夫だスコット、元に戻してみせる」

 

 唖然とするスティーブの脇で懸命にバナーが機械を弄る。

 

「ナターシャ、合図したら電源を落としてくれ!」

 

 再三スコットが量子トンネルを潜る。

 

「今だ!」

 

 ナターシャが電源を落とすと同時、元に戻ったスコットが現れる。

 

「ああ……この感じは……漏らしたのは年寄りの俺か? 赤ん坊の俺か? それとも今の俺かな……?」

「……失敗だ。タイムトラベルはタイムトラベルでもこれじゃワインの熟成くらいにしか使えない。スコットとりあえず着替えよう」

 

 バナーが肩を落としながらため息を吐く。スティーブもダメ元ではあったが結果から言えば縋ろうにも掴もうにも藁の一本すら見えない。気晴らしにコンパウンドから出て外のベンチに座り込んだ。

 そこへ路面をタイヤが切りつける甲高い音を立てながら猛スピードでやってくる高級車の姿があった。それは勢い余ってブレード痕をつけながらスティーブを通り越し、バックして運転席を立ち上がったスティーブの前まで戻す。

 

「浮かない顔してるな、スコットがダイヤモンド記念日と誕生日を行ったり来たりしたか?」

 

 パワーウィンドウが開かれて顔を出したのはトニーだ。

 

「時間旅行をするつもりが、彼の中の時間があっちへこっちへ高飛びするんだ。危険すぎる、誰か止めなかったのか?」

「君は止めたさ」

「そうだったか? まあいい、そんなことより、だ」

 

 トニーが車から降り左腕につけられた機械を見せる。

 

「出来たよ、時空を超えて機能するGPSだ」

 

 その言葉に一瞬呆気にとられたスティーブがその意味を理解して顔がほころんだ。トニーが指を三つ立てた。

 

「ストーンを得るにあたって優先事項を伝えておくぞ。失った命を取り戻すこと、僕が得たものを壊さない事、なるべく死なない事だ。出来るか?」

 

 指を折りながら言葉に出される優先事項に、スティーブは小さく頷き続ける。

 

「当然だ、必ず守る」

「じゃ、仲直りだ。……怒りに囚われて意地を張り続けた。そんなものに蝕まれ続けるのは避けたい」

「僕もだ」

 

 スティーブが手を差し出し、トニーがその手を取り握手を交わした。

 

「ただいま、トニー・スターク」

「おかえり、スティーブ・ロジャース」

 

 出て行ったのはスティーブだ。だからただいまと言った。トニーはそれにお決まりの返しをしてハグをする。互いに相手の背中をポンポンと軽く叩いた。

 

「さて、君に返さないといけないものがあるんだ。借りパクのまま七年も経ってる」

 

 トニーが車のトランクを開けて、トランクのカバー下から丸いものを取り出す。赤白青の星条旗を模したキャプテン・アメリカを象徴する盾だ。雑に取り出したようなしまい方に反して、その表面はピカピカに磨かれている。アベンジャーズの内戦の際スティーブが手放し、それ以来トニーが大切に保管していたのだ。

 

「受け取れない」

「なんで、これは君の物だ。言ったろう借りていた物を返すって。それにガレージに置いておくとモーガンが実験を始めて危ないんだ。金槌で叩きまくって柄を折ったり」

 

 トニーが盾を裏返して、スティーブの左腕に装着する」

 

「あるべき所に収まったって感じだな」

「ありがとう、トニー」

「みんなには内緒だ。全員分はないからな。チームのみんなを集めるんだろ?」

「ああ、今準備してる」

「F.R.I.D.A.Y.駐車場に停めておいてくれ」

『了解、ボス』

 

 車をF.R.I.D.A.Y.に任せコンパウンドの建物の中に入り、バナーとも再会のハグをした。緑色になっていて面食らうトニーを見てナターシャもスコットもスティーブも思わず笑ってしまった。

 呼び掛けに応じて続々とアベンジャーズが集合を始めた。そんな時にスコットが昼飯を持って外に出て来ると、遠くから重低音が聞こえて来る。そっちを見ると黒い大きな車体に小さな体を乗せて、特徴的な左右非対称の髪を靡かせながら、スコットの近くに後ろに色々積んだブラックトライクが停車した。ヨーロッパ帰りのステラである。

 

「うおっすげぇ本物初めて見た!」

「? こんにちは」

「あ、こんにちは! 俺アントマン。流石ブラックロックシューター ナイスなバイクに乗ってるね」

「ありがとう。アントマン……? あ……ん?」

 

 アントマンがなんだか分からず首を傾げスコットの顔を見て五年前のデシネーションに巻き込まれたヒーロー達の中にいた事を思い出し、しかしなんでいるのか分からず再度首を傾げた。

 その様子にスコットがガックリと頭を落とした。

 

「やっぱ知名度低いのか……」

 

 ステラがスコットを唯一知れる機会であったろう内戦の際は眠っていたので完全初対面なだけである。

 そこへ空からロケットの宇宙船が降りて来る。ベンチに置いてあったスコットの昼飯が全部風圧で吹っ飛んだ。

 

「おわぁぁぁぁ!? 俺の昼飯!」

「おいステラ! バナーの奴はどうした!」

「今きたから知らない。二人ともおかえり!」

 

 そこからハッチから降りてきたロケットの姿に唖然としているスコットとそれと普通に会話するステラが対照的である。ネビュラもステラの挨拶に返事をしてさっさと中に入って行った。

 

「いやなんか……凄いな……ん?」

「いっぱい買ってきたから、あげる」

 

 スコットが茫然としていればステラがブラックトライクの荷物からハンバーガーチェーン店の紙袋を取り出して、その中にミッチリ入ったハンバーガーから一つを渡してくれる。

 

「おお、優しいありがとーうぁあ!?」

 

 スコットが礼を言おうとした所で近くに飛んできたローディが着地、驚いて上に放り投げたハンバーガーをローディがキャッチしてスコットに渡す。

 

「今日はレギュラーサイズだな」

 

 ステラとローディが手で軽く挨拶をして去っていく。

 

「ステラお帰り!」

 玄関から出てきたバナーが手を振っているのでステラが振り返す。

 

「ただいまバナー! ロケット何処かいくの?」

「これからコイツとソーの所に行ってくる! 土産はしっかり買ってきたろうな!」

「買ってきたよ! いってらっしゃい!」

 

 スコットとステラが手を振って見送る中、バナーとロケットはソーの居るニューアスガルドへ向けてまた空へ飛び上がって行った。

 ステラも玄関に荷物を下ろして駐車場にブラックトライクを駐車して中にいる面々と合流する。

 

「やあステラ、スティーブと仲直りしたよ」

「ああ、仲直りだ」

「うん、やっぱりそれが一番」

 

 腕を組んで仲良しアピールをステラにするトニーとスティーブにナターシャが吹き出したが、ステラは安堵したように小さく息を吐いて二人に微笑んだ。

 タイム泥棒作戦に向けて続々と仲間たちが集まり始めていた。

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