MCU『ブラック★ロックシューター』   作:おれちゃん

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サノス

 そこはまるで隕石が落着したかのように大量のクレーターが存在していた。建築物は尽くが崩れコンクリート片と瓦礫と土の入り混じった大地は、先ほどまでアベンジャーズ・コンパウンドが存在していた土地だ。

 空に浮かぶ超巨大宇宙船サンクチュアリⅡから放たれた攻撃がこれを成した。

 地下に怪我を負ったステラ、バナー、ローディ、ロケットが取り残されバナーがハルクモードのパワーを持ってして崩れかけた天井を支えた。やろうと思えば上を吹き飛ばす事もできるが崩落の危険が高くできない。ローディのウォーマシンアーマーはアップデートによりステラのカノンランスと同じセカンダリ合金を採用した事でアーマーの駆動は問題なく行えたが武装は全損だ。

 

「息できない! 誰かこれ退けてくれ!」

「今助けるぞロケット!」

 

 瓦礫に挟まれたロケットを救出し、ぐったりした様子のステラと共にローディは支える。水量が大幅に増えていくのをウォーマシンのパワーで耐える。

 

「まずいぞブルース、ここはそのうち水没する」

「わかってるともローディ。ステラ、やれるか? あそこに刺さってるのは君の刀だろう? アレで天井を切ってくれ」

「……大丈夫、任せて」

 

 天井を支えながらもバナーが指示を出す。ステラの右腕の火傷は未だ治り切っておらず、左手でブラックブレードを手に取る。

 

「ローディ、ロケットを庇って、ロケット、口を開けて耳を塞いで」

「お……おいおい何するんだ……」

「いくぞ、ステラ、合図と同時に切るんだ……いまだ!」

 

 ステラが天井を切ると同時、バナーの豪腕が唸りハルクスマッシュが天井へ向け放たれる。ブチ破られた穴からは崩落の気配がなく、ローディとロケットが促されて先に入る。

 

「さて問題だ。こういう建物で最も頑強に作られるのは何か。トイレ? キッチン? 研究室?」

 

 ステラを抱えてバナーがゆっくり天井を離し穴を登ればその先には瓦礫や壁にヒビが入っているものの無事に空間が残っている。そしてそこにはステラのイノセント・カノンランスやウォーマシン用外付けアーマー、ソレの装備や多数の武器が鎮座している。

 

「答えは武器庫さ。僕一人で支えられたってことは上に何かつっかえとなる部分があったんだ」

「さっすがグリーンジャイアント……あったまいい……」

「ひと段落といった所だが、いったい何が起きた? タイムトラベルの代償か何かか?」

「いいや、何度も言うがバックトゥーザフューチャーじゃないんだ。過去で起こったことが今に波及する事はない」

「爆発の前、空に何かいたよ」

「なんだって?」

 

 武器庫の中に避難した四人がこの事象の原因を考えていると、ステラが床にブラックブレードの切っ先で傷をつけ、簡単な絵を描く。お世辞にも上手いとは言えないが、特徴をとらえたソレは明らかに地球のものではない。

 

「サノスの船……!」

「なんだって!?」

 

 バナー自身が見たわけではなく、統合したハルクが見ていたものだ。ソー達と地球へ向かう避難船で見たものがこれに近い。

 

「じゃあすぐここを出ないと! メーデーメーデー! 誰か聞こえるか!? 地下に閉じ込められてる。誰かいないか!」

『聞こえてる! 今行くよ!』

 

 スコットから返答があったが、他の面々からは無い。武器庫の上がどうなっているかが不明瞭で、無理に上に抜けようとすれば全員生き埋めだ。そうなると一番危険なのはロケットである。

 

「……おい、いざという時は俺のことは気にせずやれ」

「ロケット」

「いいや、死ぬ気は毛頭無いさでも今はソレどころじゃ無い、またサノスが来てるんだぞ?」

 

 そう言って備えられていた光線銃の点検を始めた。ローディも息を吐いて、壁に備えられたウォーマシンの故障した武装群を全て排除し、追加パッケージをウォーマシンに纏わせていく。この追加パッケージはハルクバスターをモデルにトニーが新造した物で、ハルクバスターほどの大型化はしないもののそれなりの大型化をする為操作に精通しているローディにしか扱えない代物だ。メタリックな白、赤、青に塗ららたソレは、パトリオットパッケージと呼ばれている。

 

「トニー、みんな、無事でいろよ」

 

 ローディは製作者であるトニーの無事を願った。

 これより幾ばくか前、地上付近で気絶していたスティーブが、トニーによって起こされた。

 

「よし、盾を離さない心意気はいいぞ。さっさと起きろ」

「な、何が起きた?」

「時間を弄ったしっぺ返しだ。すぐにわかる」

 

 トニーの手を取りスティーブが立ち上がる。壊れた建物の出口にはソーが佇んでいた。

 そしてその先に座り隙を潰しているのは、サノスだ。

 

「奴の様子は?」

「ずっとあそこで石弄りだ」

「ストーンは?」

「この下のどこかに埋まってるはず」

「絶対に渡すな」

「当然」

「よし……じゃあ俺達がやるべきことは決まってるな」

 

 ソーの体から稲妻が弾け、雲が集まり落雷がソーへと降り注ぐ。雷がソーの戦闘服を形成しムジョルニアとストームブレイカーが飛来する。まだ贅肉が抜け切っていないがその恰幅と編み込まれた髭はヴァイキングを思わせる。

 三人が臨戦態勢のまま歩み寄れば、サノスが三人を見つめる。

 

「……世界の半分の命を消すことで、もう半分を救えると思った。だがソレは……叶わなかった。過去を知っている者の中には必ず、新しい世界を受け入れられず、抵抗する者がいる」

「ああ、我々は頑固でね」

 

 サノスの声色に狂気が入り混じる。彼の価値観の根底が破壊された世界が今彼が座るこの世界なのだ。多くの星を襲撃し、人口を半分にし続けた破壊者の拠り所はアベンジャーズ達によって木っ端微塵に砕かれていた。

 それは神の及ばぬ宇宙的恐怖に晒された信仰者が正気を失うかの如く。しかし恐怖にサノスが晒される事も正気を失う事などない。故に彼は別の解を導き出すのだ。

 

「感謝する……今ようやくわかった。この宇宙を、一度原子レベルまで分解する必要がある」

 

 立ち上がり、両剣の上にかけられた兜を被る。

 

「そうして、お前達が集めたストーンを使い、新たな命を生み出す。その命達は何も知らず、与えられた物を享受する……幸せな世界だ」

「それで犠牲になる人々は?」

 

 三対一、全員が臨戦態勢となる。

 

「知らぬさ、誰も知らない。存在すらも、想像だにしないさ。お前達はここで死ぬのだから」

 

 その口上を皮切りにソーが雄叫びを上げストームブレイカーとムジョルニアを振るう。トニーもエネルギーブレードを形成し斬りかかり、スティーブが盾で殴打する。

 三人の猛攻をサノスは両剣を巧みに操り、時に拳で応戦し互角に立ち回る。強い、というのが三人が思った感想だ。五年前のサノスより明らかに身のこなしが鋭い。あの時のサノスは石の力と引き換えにガンマ線のエネルギーを浴び身体能力が落ちていたのだ。今のサノスは石を一つも手に入れていない、肉体における最盛期だ。

 ソーの放つ雷撃を両剣を回転させ受け止めトニーの背後からの攻撃を開いた手で白刃取りし地面に叩きつける。その隙にソーがムジョルニアをバッティング、猛スピードで迫るハンマーをサノスが躱すがアシストで投げられた盾と衝突し衝撃波がサノスを襲う。

 盾を手に戻し追撃にかかるスティーブにサノスがトニーの足を掴んで鈍器のように振り回し咄嗟に盾をどかしてしまったスティーブが吹っ飛ぶ。反撃しようとするトニーを全力で地面に叩きつけ小さくクレーターができ、動かなくなった。あまりの衝撃に気絶してしまったのだ。

 

『ボス! 起きて!』

「死ねサノス!」

 

 雄叫びを上げながら猛進するソーにサノスが両剣を構え正面からストームブレイカーと両剣がぶつかり合う。鍔迫り合いとなり雷が撒き散らされダメージをジリジリと与えられる状況にサノスが両剣ごとストームブレイカーを放り捨て拳による肉弾戦に移行する。

 リーチと体重の差、弛んだ贅肉が動きを阻害することが要因となってソーが肉弾戦でサノスに打ち負け殴られまくる。

 ソーがストームブレイカーを呼ぶとそれを奪われ突き立てられそうになるが、そこに突如ムジョルニアが飛来しサノスの横っ面を殴り飛ばした。ハンマーが空中で急停止、向かう先にいたのはソーではなく、スティーブ・ロジャースだ。キャプテン・アメリカが選ばれたものにしか持てないムジョルニアを持っていた。

 

「知ってたぞ!」

 

 笑みを浮かべるソーをサノスが蹴り抜き、両剣とハンマーを手に互いが突進する。それに打ち勝ったのはスティーブだ。サノスの顎をハンマーが直撃し、サノスの巨体を宙に浮かせた。

 距離を詰めようとしたスティーブの太腿へカウンター気味のサノスの攻撃が当たり追撃の足が鈍った。雷を纏い振るわれるハンマーを渾身の一撃で迎撃、本来の使い手であるソーならまだしもスティーブの腕力ではサノスにかなり劣る。衝突と共にムジョルニアがはじき飛ばされる。

 攻守が入れ替わりサノスの猛攻がスティーブを襲う。渾身の振り下ろしをキャプテンが受ければあらゆる衝撃を反射するヴィブラニウムの盾に刃がわずかに食い込み、それを支えるスティーブの左腕の骨にヒビが入る。

 トニーが強化したのは何もスティーブのスケイルスーツだけではない。キャプテン・アメリカの盾は不壊の象徴。だがそれを切断し得る存在をトニーは知っている。ステラのブラックブレードだ。知っているなら何の対策もしない筈はない。重量バランスの変化を最低限に、盾の裏を補強するようにセカンダリ合金を重ね複合装甲のように強度を上昇させていた。

 それによって切断には至らなかったものの、ヴィブラニウムと違い衝撃を吸収する性能は持たずスティーブの腕に衝撃が抜けてしまったのだ。

 追撃を受け止めきれなかったスティーブが瓦礫に叩きつけられる。

 

「長年の私の暴力も、虐殺も、悪意からではない」

 

 砕けた兜を放り捨てるサノスが狂気的な笑みを浮かべスティーブを見下ろす。背を向け離れていき、ある地点で立ち止まる、

 

「だが、お前達の星を滅ぼすにあたって、悪いが……楽しませてもらうぞ」

 

 手を軽くふれば、空に待機するサンクチュアリⅡから大量の敵が、ドロップシップが落着しブラックオーダーが姿を現し、サノス軍の圧倒的多数がその場に姿を現した。

 圧倒的陣容、勝ち目など一切ない。立ち上がるスティーブが盾を利用して、左手を固定する。たとえどれだけの敵が来たとしても諦める事はない。彼は、彼らはヒーローなのだから。

 通信機が音を立てた。

 

『キャプテン、聞こえるか? 左失礼』

 

 その声は、五年前失った仲間の声だった。

 

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