MCU『ブラック★ロックシューター』 作:おれちゃん
ロスコルは今、P.S.S.メンバーと共にクインジェット格納庫に着席している。そこにステラの姿は無い。
『ぴーえすえすコール。みんな気をつけて』
「おうともよ!」
「お嬢ちゃんの激励だ、気合入れてくぞ!」
「間も無く目的地、降下用意……ッレーダーロック!」
ドン、と衝撃と共に格納庫内が急回転を始める。
「左タービン破損! 行け行け行け!」
ハッチを開け無理やりメンバー達を輩出していく。全員が飛び降りたところで二発目のミサイルが直撃しクインジェットが爆散した。
『クインジェットのステルスを無視しただと? 一体……待てステラ君‼︎』
昨夜の襲撃から明け朝。ブリーフィングルームでは例のヘリの降下予測地点の情報が割り出されP.S.S.メンバーと共有されていた。
「ステラ君と同じく囚われ拘束された人間がいる可能性が排除できない以上事前の航空爆撃は不可能だ。よってこちらの最大戦力を施設制圧に投入させてもらう。これだけでわかるだろう諸君」
全員が頷きブリーフィングルームから出てくると、そこではステラが護衛をつけられて待っていた。
「みんな」
「おうお嬢ちゃん、いっちょお嬢ちゃんの仇討ちと行くから楽しみに待ってろよ!」
「死んでねえ! 縁起が悪いぞフォボス!」
「……わたしも行く」
「「「「ダメだ」」」」
「どうしても……?」
「そんな顔しないでお嬢さん。大丈夫、俺たち最強P.S.S.チームだ、お嬢さんも俺たちの仲間だから、信じてくれ」
ロスコルが懐から何か取り出す。それはP.S.S.メンバーと同じ意匠をしたドッグタグだった。しっかりと『P.S.S. Stella』と刻まれている。
「無理言って作ってもらったんだ。それを付けて、信じて待っていてくれ」
「……わかった」
その後ステラが準備の為移動する先で全員から背中を引っ叩かれまくるロスコルの姿があった。
フル装備を整えたメンバー達がクインジェットに乗り込むのを見届けた後、ステラはオペレーションルームに呼び出される。フランク司令曰くここが最もこの基地で強固な防御力を持っているとの事だが心配をさせまいと言う配慮も含まれていた。言い方はアレだが子供にはかなり甘いのである。
「これを、P.S.S.専用のインカムだ。このチョーカーもつけなさい。咽頭マイクの役割がある」
「ありがとう、フランク司令」
「ふふ、いかんなどうも孫を相手している気になってしまう。バレると処分されるから内緒で頼むぞ諸君」
「うう、ステラちゃんを怪我させるなんて大悪党さっさとやっちゃってくださいね司令」
ステラの脇ではシズが控えていた。一応ステラがオペレーションルームで動きまわらないようお目付役である。
フランク司令がここまでしてしまうのには若干の驕りがあったと言っていい。S.H.I.E.L.D.の東にS.T.R.I.K.E.あれば西にP.S.S.ありと言われる精鋭部隊だと言うことに。しかしそれもただの人間相手ならばだ。
「P.S.S.コール。間も無く目的地のモハーヴェ砂漠だ。気を引き締めろ。ほらステラ君も何か言うといい」
「ぴーえすえすコール。みんな気をつけて」
すると通信機の先から意気の良い返事が来る中突如それは起きた。
「クインジェット被弾!」
「クインジェットのステルスを無視しただと? 一体……待てステラ君! カーリー女史止めろ!」
「分かってます相変わらず足はっやいな⁉︎」
どうやって二百マイル近く離れたモハーヴェ砂漠に行こうと言うのか、子供の考えることは単純だ。クインジェットの格納庫に向かってるに決まってると近道をしてシズがそちらに向かうが、いない。と、その手前の建物に入ろうとするステラの姿があったので大慌てで駆け寄る。
「シズ、開かないの。開けて?」
「ステラちゃん落ち着いて、ロスコル達なら大丈夫、信じて待って。ステラちゃんだって怪我しているでしょう?」
「治った」
シズの説得も固定ギプスを引っぺがすステラがつけたインカムから刻々と流れる通信で効果が薄い。今の膠着はステラがこちらを傷つけないという善性を前提にしたものだ。
「シズ、ごめんなさい」
ステラが悲しそうに目を細め俯く。良かった止まってくれたとシズが安堵した瞬間ステラが扉を掴んだ。
「えっ嘘でしょ⁉︎」
整備室の扉がメキメキと変形していく。薄いアルミで作られているわけでは無い。しっかりと鉄で出来ている。相応に頑強なヒンジがバキリと折れ扉をステラがひっぺがした。そっと下ろすもゴン、と重量感ある音がした。そうしてステラはもう一度申し訳なさそうに。
「ごめんなさい」
「ごめんなさいってそういう⁉︎」
と言った。シズは口をあんぐり開けて突っ込んだ。
そのまま茫然と中に入っていくステラを見送ると中で暴力的なエンジン音がする。中にあるのはマニアが趣味で整備してるアレである。
シャッターも打ち破られるのかと思いきや中にある開閉スイッチをしっかり押してくれたようでシャッターが上がる。予想通り乗っているのは例のモンスターマシンである。ステラがちっちゃくビークルが勝手に動いているようにも見えてしまう。
シズの脇にステラが横付けすると。
「ごめんなさい」
「もういいって! もう止めないから行くなら怪我しないで帰ってきなさいよ⁉︎」
「……ありがとう」
そう言ってウィリーさせながら発進していったステラをシズは見えなくなるまで見つめていた。
「ステラちゃん、微笑みでもめちゃくちゃ可愛いわね……」
基地のゲートも開けられ公道に飛び出したステラに通信が入る。
『P.S.S.コール。ステラ君、此処までなってしまえば止まってくれと言っても止まらないだろう。ならば安全と速さの為ナビゲートをするからオペレーターの指示に従ってくれ』
『GPSでブラックトライクを捕捉……え? 時速三百マイル?』
フランク司令と代わったオペーターが目を剥いた。
ステラは暴れようとするブラックトライクを力で押さえ込みマシンスペックの限界値をたやすく叩き出していた。本当の意味で風のようになり道路を駆け抜けていく。
『前方に渋滞あり、注意してください』
点のようにしか見えない前方の渋滞が一瞬で迫るがトライクを傾け脇の畑に出る。段差を跳ね飛び停車していた大型トラクターを飛び越え土を巻き上げながら着地。渋滞脇を突き抜けていく。不整地となり速度は落ちたがそれでも百マイル以上を維持しているのは人間業では無い。
『信号機に干渉しろ。急げ』
途中の街の信号にはフランク司令達がS.H.I.E.L.D.として干渉し進路の妨害を許さない。交差点をを轟音と共に一瞬で通り過ぎた黒い風に何があったのかと左右を見渡すこととなった。
都市を抜けモハーヴェへ向かうほぼ直線の道に出ればステラはアクセルを限界まで全開にした。マフラーの先から火が吹き出す程に。
『推定速度よ、四百マイルです』
『シャオミンの奴めよく事故を起こさなかったな』
僅かながらその速度で走っていると通信が入る。
『道を外れて、そのまま直進してください』
「わかった」
道を外れた衝際にブラックトライクが跳ね、超重量の車体がスキージャンプの如く滑空した。着地時にスリップし盛大に砂埃を巻き上げながら左右に振られるが力で捻じ伏せ体制を立て直す。
地面に生えた草などをなぎ倒しながら車体が制御可能なギリギリまで速度を上げ爆走していると地平線の先で黒煙が上がっているのが確認できた。
「見えた」
アクセルを回し前輪が跳ね上がりウィリーの状態から丘を飛び上がりちゃくち、砂煙を巻き上げながらステラとブラックトライクは黒煙に向けひた走る。
彼女は二百マイルの道のりをたったの三十数分で走り抜けたのだ。